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【第3回 京都インディーズゲームセミナー】NIGORO楢村氏講演: 「ゲームを売りたい君へ。」

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第3回京都インディーズゲームセミナーの2番手は『LA-MULANA』や『薔薇と椿』などのNIGOROから楢村匠氏。事前に公開されていたATNDでの予定講演内容は「複数体制でのゲーム制作と販路について」……ずいぶん勢いよく方針転換したようでしてないような。ともあれ、ど真ん中直球255km/hなスライドに会場が瞬間的に張り詰めたことは確かです。

最初に、楢村氏をご存じない方向け(会場にいたのかどうかわかりませんが)に、自己紹介から。いわく「ディレクター・グラフィック・広報・音楽。プログラム以外雑用を含め全部やる」と、インディーらしさフルスロットル。そこにプログラマーが参画し、販売を前提に活動を始めたのがNIGOROです。

一部メンバーが音信不通になるなど試練を乗り越え無料フラッシュゲームをベースに知名度を上げるに費やした期間は約2年。雑誌に掲載されることもあり、あるタイトルの宣伝用フラッシュゲームや、ガイド用ゲームなどのオファーが舞い込み、それを通じ人脈が広がり好転していったとのことです。

『LA-MULANA』が世界に発信されるまで紆余曲折がありましたが、なんだかんだでPLAYISMの手によりローカライズが成功し、GOGでの配信、SteamGreenlightの通過を経て、ひとまずの「成功」に着地します。オリジナル版から数えると10年近くはたずさわっているタイトルとのこと。

さて、ここから本題。「ゲームを売りたい君へ」と題されたプレゼンテーションの内容は抽象論や精神論ではなく、きわめて具体的なものでした。それは、"言語"。さらにいうと"フォント"です。実際に会場で紹介されたスライドとは順序が前後しますが、まず結論の1枚からご覧ください。

2つ。

何故こうなるのか、について。キーポイントは3つ。「1: UNICODEを使え」・「2: 言語の違いを知れ」・「3: テキストは外に出せ」。ローカライズを意識したことがある方ならばこれだけでもNIGOROがどのような地獄を垣間見てきたのか想像できるのではないでしょうか。

この3点について60分の講演に重厚さがあった理由をいささか悪し様に表現すれば、そのすべてがNIGOROの体験談、それもとくに「失敗談」に基づいているからだったといっても過言ではないでしょう。言語の壁や表現の問題ではなく、"フォント"。ただそれだけが、いかにしてそびえ立つ壁になったのか。それが本プレゼンの要旨です。

英語は1バイトで足りるけれど日本語は足りない。

アルファベット・英語・記号で済む英語と比べ、日本語は漢字・平仮名・カタカナ・アルファベット・数字・記号その他。UNICODEを意識したテキスト構成をしていなければ、まずその段階でひどい難題が待ち受けているということです。

日本から海外に向けて販売する際、移植担当者が「全然文字が表示されてない」と泣きついてくる、そもそも2バイト文字の使い方かがわからないといった事態が発生し、販売が1年ずれ込むというケースを多々見てきたと楢村氏。ただ1年遅くなるだけでなく、話題性が低くなったり、ハードそのものの寿命が尽きたりと、二次災害が起こることを強調しました。

言語の違い。

原始的であるがゆえに深刻な問題です。日本語ならばいわゆるモノスペースフォント(プロポーショナルでない)で対処できる部分が、アルファベットならばそもそも横幅を統一させること自体が一般的でない、また上下幅も日本語以上にブレることを指摘。

解決策として、まずは無理やりなものではすべて大文字にすること。これは当然というべきか、デザイナー楢村氏の美学が許しません。また、Wiiの標準フォントを使うという方策もありえましたが、可愛らしすぎて作品とのミスマッチが激しかったそうです。これはWii版『ラ・ムラーナ』のリリースに際し実感したことでしょう。そして、有料のフォント素材を使うという案。これはいくらかの制約(bitmapでの使用に限る等)があるものの、フォント不在問題を回避できる有効な策だったようです。

テキストを出力できるようにせよ。

楢村氏いわく、「常識かもしれない」。NIGOROの主要メンバーは全員離れた場所に点在しており、パラメータ1つ変えるのにも足並みが合わなかったりするため、逆にそうした枠組み作りができあがったのでしょう。一方、『ツクール』をはじめとするツール製タイトルではこの弊害が顕著になり、PLAYISMが泣いたこともあるとか(ここで会場笑い)。

事実、PLAYISMとのやり取りで一番リテイクが来た部分が「チェックできないメッセージ」。テキストだけをチェックするサブプログラムはきちんとNIGOROで内製されていました。

ここから、『LA-MULANA』がプレイヤーだけでなく開発者も苦しめていたという事例。

「導きの門」、これだけでどう処理するかという問題に。
翻訳、フォントの幅もろもろを鑑み併記する形に着地。


アイテムをナンバーで管理。


Googleドキュメントでテキストを共有。
これはゲームに限らず有効でしょう。


メニュー画面で苦闘。半角にしたら文字が潰れて読めなかった。
全角化で対応。


コンフィグの翻訳。一見地味だが横幅が限られているという厳しい壁。
既存のゲーム構文("画面設定"→"Screen")などで対応。


スペイン語対応。立ちはだかるアクセント記号の壁。
ぎりぎりドットを下げてねじ込むことで対応。
いわく、「スペイン語はなんとかなった。」


なんとかならなかったロシア語。
一般的な日本人の語学力ではなるほどお話になりません。
米露が対決するFPSや、アニメ『攻殻機動隊』くらいでしか耳にしませんから。


キリル文字に相対した楢村氏の心境(下部AA)。
読めない、発音できない、フォント幅が合わない、等。
こうまでしてロシア語に対応した動機は、ロシア語圏からのアクセスが3割ほどを占めていたこと。

惨苦を乗り越えるのは言うまでもなく世界に挑戦するためですが、これは美辞麗句のたぐいではなく、単純に売上の問題があります。具体的な数字は出せないとしつつも、Steamでリリースされた際のインパクトが極めて大きかったと強調しました。つまり、ただでさえ販売にかかるリソースが限られているインディータイトルにおいては、日本語圏内だけで留まっていることはそれだけで限界(または死)を意味するということです。

GDCの講演にあったとおり、ゲームの根幹に部分は海外と日本では共通しているという事実も指摘。そもそも日本のゲームをわざわざ探してきてゲームをプレイする人は日本が好きだから少なからず日本語を扱えるということ、逆に日本語でないからといって毛嫌いしてはいけない(カタコトでも恐れてはいけない)としました。

また、昨今国内でも盛んなヘイトスピーチ問題については、海外勢でもファンが「自治」をしてくれており、嫌なフレーミングを抑止してくれていることに感謝の念をにじましていました。

最後に、

ゲームを創るのは楽しいです。私はゲームを創っているだけで楽しいです。会社勤めのときには、隙をみつけてはドットを打ったりしていました。完成させたいというパワーがあればこそ、評価を得られる作品を創ることができたのだと思っています。

なればこそ、さきほど申し上げたとおり、場当たり的な対応をしていると、後々やってきたチャンスを見逃すことになります。今はツクール製のゲームがSteamで販売される時代です。コンシューマの移植のチャンスすらごろごろ転がっています。

そうしたものを掴みたいならば、私たちが味わった地獄をふまえていただければ、ほんの少しの手間をかけるだけで高い効果を得られることでしょう。ぜひ、面白いゲームを創ってください。

と締めくくった楢村氏。今でこそPLAYISMからの発信で定着しているものの、『LA-MULANA』が辿ってきた苦難の道をふまえると、重みに満ちた言葉といえるでしょう。


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《Gokubuto.S》

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