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新作SRPG『Blackguards 2』インプレッション―ダークな物語とオールドスクールなシステム

『ブラックガーズ 2』はドイツのTRPG『The Dark Eye』をベースにしたシミュレーションRPGです。前作の評判を受け、続編が1月20日にリリース。今回はメディア用のプロモーションコードを頂いたので、インプレッションをお届けします。

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Blackguards 2(ブラックガーズ 2)』はドイツのTRPG『The Dark Eye』をベースにしたSRPGです。前作の評判を受け、1月20日にリリースされたばかりです。開発のDaedalic Entertainmentは本作で日本参入をはたし、公式ローカライズも行われています。今回はメディア用のプロモーションコードを入手したので、インプレッションをお届けします。

本作はヘックスのマップで行うターン制戦略シミュレーションです。単なる戦闘だけではなく、マップ上のさまざまなギミックを活かた攻略が特徴。基本的な戦闘や成長のシステムは前作を踏襲しており、ストーリーにも前作のキャラクターが登場します。

同じくターンベースのRPGとしては、『Baldur's Gate』の系譜をつぐ『Divinity: Original Sin』がオープンワールド形式を採用して、より現代的なRPGとして復活しました。それに対して、本作はマップをひとつずつ攻略していくオールドスクールなタイプ。日本の『ファイアーエムブレム』や『タクティクスオウガ』といったシリーズに近いものです。

ダークな物語とアクの強いキャラクター



ゲーム冒頭ではチュートリアルとともに物語が展開します。主人公のカッシアは登場と同時に地下の迷宮に監禁されます。彼女が何者なのか、なぜ囚われたのかは、この時点では不明。物語とともに明かされていきます。カッシアは監禁生活により精神を病み、さらにクモの毒によって顔が醜く変形していきます。心の支えとなるのは迷宮で発見した『よき支配者』という謎の書物。いつしか支配欲だけが彼女の生きがいになっていきます。

監禁生活から4年後、彼女は偶然にも迷宮から脱出するチャンスをものにします。脱出したカッシアは醜い顔をマスクで隠し、自分を陥れた支配者マーワンへの復讐を開始。落ちぶれてしまった過去の英雄「ブラックガーズ」を仲間に引き入れます。自らの死を願う戦闘狂タカテ、奴隷に落ちぶれた魔術師ザーバラン、強欲のドワーフのナウリム。前作の主人公たちがここで登場します。さらにカッシアは旧勢力の軍隊を率いるファラマッドを配下に引き入れ、勢力を拡大。目指すは仇敵マーワンの座る玉座。立ちはだかる都市を占領し、思いのまま略奪していきます。



このように本作はRPGとしてはかなり陰鬱な内容です。ダークヒーローそれ自体は珍しくありませんが、本作の主人公は女性で、なおかつ醜い顔をマスクで隠しています。しかも、主人公カッシアの目的はプレイヤーにはっきりと示されません。プレイヤーはなぜ彼女が王国に反旗を翻しているのか、ゲームを進めながら考えていきます。

さらに前作の主人公たちも含めて、仲間になるキャラクターは輪をかけて奇人変人ぞろい。強欲、好色、残忍とその悪名は尽きません。しかしながら、悪事を働いた事情が明らかになるにつれ、彼らとて単なる悪人ではないように思えてきます。いずれにせよ、日本のRPGではまずありえない展開とキャラクター。個人的には大いに興味がわく内容であり、難しいマップもストーリーに惹かれて乗り越えていきました。

オールドスクールで渋い戦闘システム



戦闘システムは非常にオーソドックスです。画面下に表示されるアイコンの順に、ユニットごとに行動を決定していきます。各ユニットは素早さに応じてヘックスを移動。ただし攻撃や魔法を使用する場合は、最大距離の半分しか移動できません。また特徴的なのは「待つ(wait)」というコマンド。手番が回ってきたユニットであっても、行動を決定せずパスすることが可能。これにより相手側の出方を見たり、道をふさいでしまった他ユニットを先に移動させたり、柔軟なオペレーションが可能です。

もうひとつの特徴は、マップ内にインタラクション可能なオブジェクトが多数あること。脱出や救出といったミッションではレバーを操作、防衛戦では敵の進軍経路を予想してトラップの設置が可能。その他、タルの山を倒してバリケードにしたり、ロープを切断して天井に釣られた木材を落としたり、様々なギミックが容易されています。また魔法によってオブジェクトを燃やしたり爆発させることも可能です。



勝利条件はマップによって異なります。敵ユニット殲滅、特定地点への脱出、友軍の救出などおなじみのものがそろっています。ただスタート時にはっきりと勝利条件が示されないため、マップ上で発生するイベントはしっかりと読む必要があります。また勝利条件さえ満たせば、味方ユニットが戦闘不能になっても問題ありません。クリアするとユニットは自動的に回復、特別なデメリットもありません。

マップ内のギミックをのぞけば、本作の戦闘は古典的なSRPGやターンベースストラテジーの枠を出るものではありません。システムも凡庸で攻撃や魔法のエフェクトも地味。良くも悪くもオールドスクールな作りで、昔のゲームをそのままプレイしている手触りがあります。とはいえ、毎回異なる背景とギミックが用意されたマップをひとつずつ攻略する楽しみは、最近のゲームからは得がたい体験でした。

自由度の高い成長要素



ユニット育成の自由度は非常に高いです。成長には戦闘に勝利すると得られるAPを消費。キャラクターシートの5つのカテゴリーにポイントを割り振っていきます。「武器技能(Weapon Talents)」は使用武器の熟練度。9種類の武器による命中率と回避率を向上させます。「能力(Talents)」はトラップの回避やノックダウン耐性といったパッシブスキル。「特殊技能(Special Ability)」はスキルツリー状になった各種ステータスの底上げ。そして「魔法(Spells)」と「特殊回避(Special Maneuver)」は、それぞれ「魔力(Astral Energy)」と「持久力(Endurance)」というリソースを消費するアクティブスキルです。

原作となるTRPGに従ったためか、ステータスの名称は非常にわかりづらく、さらに低品質なローカライズが輪をかけて混乱させます。とはいえ、名称が複雑なだけなので、慣れれば問題はありません。ツリー状の成長要素は少なく、得意武器や魔法などは最初から自由に選択可能。魔法を使用できるユニットは限られるものの、かなり自由度の高いキャラクタービルドが可能です。



慣れないうちは効果がわかりやすい「武器技能(Weapon Talents)」にポイントを振ることをおすすめします。キャラクターごとの得意武器を決定して、集中的にポイントを振ります。さらに割り振ったポイントは、命中と回避の比率を自由に分配可能。ともあれ攻撃がヒットしなければ勝利できないため、最初は命中側に全振りしても良いでしょう。慣れてきたら回避に特化したセカンダリーウェポンを戦闘中に切り替えるといった戦術も可能です。

成長の自由度が高い分、最初はかなり迷います。本作では戦闘イベントは有限であるため、得られるAPの上限は固定されているようです。そのため、無駄なAPを使用しないようにメリハリが付いた成長が重要。装備品や消耗品を購入するお金も手に入りづらいため、いい加減なビルドを行うと容易に詰んでしまいます。

ワールドマップとゲームの流れ



ファラマッドの軍隊を引き入れると、ワールドマップでの行軍が可能になります。ワールドマップでは複数の拠点から次の目的地を決定し、戦闘を開始。戦闘にはナウリム、ザーバランなどのヒーローユニットの他、ファラマッドの軍隊の兵士を使用可能。投入できるユニット数はマップによって異なっており、多くても10数人の規模です。

戦闘に勝利すると拠点に応じたステータスなどのボーナスが得られます。また3回の進軍に対して、1回の防衛戦が発生。負けると拠点が奪われ、ボーナスも無効になります。再び進軍して取り返すことは可能ですが、防衛戦は勝利しても報酬がないため、これを繰り返して自軍を強化することはできません。



マップの難易度は結構なばらつきあります。初見でクリアできるところもあれば、何度も挑戦して、ビルドを見直したマップもありました。あまりにも難しいマップは後回しにすることも可能。別の拠点を占領して自軍を強化した上でのぞみましょう。とはいえ、いつかは挑戦しなければいけません。自由に戦闘を繰り返して自軍を強化できないため、緊張感のあるゲームプレイになります。

マップによっては戦闘後に人質を捕らえて、キャンプで尋問が可能です。尋問は選択肢を選ぶことで進み、成功すると有益な情報が得られます。最後には人質を逃すか処刑するかを選択。これらの行動がどういう結果を引き起こすかはゲームを進めて見なければわかりませんが、本作ではプレイヤーの選択によってストーリーが分岐するシステムになっています。そのため慎重に決定を下し、場合によっては先にセーブを行うべきでしょう。

アラは目立つがSRPGのファンならば楽しめる



最後に細かな操作やローカライズについてコメントします。操作はマウスとキーボードを使ったオーソドックスなスタイルですが、マップのカメラは自由に動かせません。マウスホイールによってトップビューの角度までカメラアングルを傾けることは可能。ただしズームや回転ができないため、戦況を把握するのはやや難しいです。さらにキーボードショートカットも最低限のものしか用意されていません。特に行動ユニットへのフォーカスといった機能がないのは煩わしさを感じました。本作の特徴であるリングコマンドも含め、お世辞にも使いやすいUIとは言えないでしょう。

さらに現段階ではローカライズの品質は低いことは否めません。フォントの読みにくさ、文字のはみ出しや漏れといった基本的なことから、上述したステータス関連の訳語のミスまで、全体としてアラが目立ちます。ゲームをプレイしてストーリーを理解するには問題ないレベルですが、物語の面白さや声優の熱演が素晴らしいだけにこの点は非常に残念です。



結果として本作はアラが目立った昔ながらのオーソドックスなSRPGです。もちろん豊富なマップ上のギミック、自由度の高い育成要素といった特徴はありますが、結局のところ、一番の見どころはその世界観と物語にあります。ダークな主人公たちがマーワンの支配下の都市を占領していく姿は、日本のSRPGのファンなら『タクティクスオウガ』のウォルスタ解放軍を想起するでしょう。そして、プレイヤーの選択によっては都市を略奪することも解放することも可能です。まさに「僕にその手を汚せというのか」という名セリフが似合う暗く陰鬱なオールドスクールSRPG。凡庸で洗練されているとは言いがたいですが、2015年の現在のビデオゲームでは貴重は作品であることは間違いありません。
《Shin Imai》
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