『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】

国内版Xboxのみで2004年に発売されながらも、未だに世界中にファンを持つ『METAL WOLF CHAOS XD(メタルウルフカオス エックスディー)』が誕生した理由、そして今回のリマスターに至った流れを伺いました。

連載・特集 インタビュー
『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】
  • 『METAL WOLF CHAOS XD』ハイテンションで作った大怪作メカACTがリマスターに至るまで―フロム・ソフトウェア竹内Pインタビュー【gamescom 2018】

「gamescom 2018」のDevolver Digitalビジネスブースにて、『METAL WOLF CHAOS XD(メタルウルフカオス エックスディー)』のオリジナル版を手がけたフロム・ソフトウェアの竹内将典氏にインタビューを実施。国内版Xboxのみで2004年に発売されながらも、未だに世界中にファンを持つ伝説的アクションゲームが誕生した理由、そして今回のリマスターに至った流れを伺いました。



――今回、リマスターという形でDevolver Digitalからリリースを打診された時、どのような気持ちでしたか。

竹内将典氏(以下、竹内):正直、かなり複雑な気持ちでした。このゲームは日本のXboxでしか出ていないということもあって、セールス的には本当に良くなかったんですよ。私が作ったゲームの中でもワーストではないでしょうか(笑)。ゲームの内容には自信があったんですが、あまりにゲームのセールスが悪かったことや、14年前のゲームを今発売することに関しては大丈夫なの?と思いました。今回のプロジェクトに関してはDevolver Digitalの方からやりませんかと言われたんですが、すぐにOKだとは言えなかったんですよ。

やりたいと言ってもらえるのはもちろん嬉しいのですが、ビジネスとして成立することが重要ですから。開発当時、私はいちクリエイターでしたが、今ではフロム・ソフトウェアのある程度の立場になってしまったので、やるかやらないかは半年くらい悩んでいましたね。その半年の間、私は暗にやめた方がいいんじゃないかということを伝えていたのですが、Devolver Digitalの方から、こんなにもプレイしたいと言っている人がいるんだとSNSの反応も見せてくれて、今ではアメリカにも売れる土台がしっかりとあるので、ビジネス的にも成功する確率は凄く高いのだと説得されました。

――私の周りもE3に合わせて発表されたときに喜んでいた人が多かったです。

竹内:E3では発表したときも日本のTwitterのトレンドで2位ぐらいまで上がっていて、凄くびっくりしました。「え?どういうこと??」みたいな(笑)。Xbox360やXboxOneで過去のゲームのエミュレーションが追加されるたびに、常に日本のユーザーからはいつか『METAL WOLF CHAOS』ができるようになるに違いない!、みたいなSNSなどの書き込みが多かったのですが、結局、できなかったので。そういったものが期待値としてあったのかもしれません。今回はXbox(One)だけなく、PS4とPCでも出す予定なので、どれかを勧めてもらえたらなと思います。


――リマスター版ではテクスチャは新しく作り直しているのでしょうか。

竹内:一部は高解像度のものに作り直してはいますが、ほとんどは当時のままです。やはり、当時のままの体験を求めているユーザーが多いので、解像度や画角、フレームレートなどのプレイアビリティを向上させた以外は、オリジナルを忠実に再現することに重きを置いています。

――本作のノリノリな感じのシナリオは竹内さんが書かれているのでしょうか。

竹内:そうですね。仕事が忙しくて全然寝ていない深夜のハイテンションで書いてました。『METAL WOLF CHAOS』は40人くらいのチームで10ヶ月で作ったんです。あまり寝ていなかったように記憶しています。

――10ヶ月で作ったのはすごいですね。ちなみに同じ時期の『アーマード・コア』シリーズは何人くらいで開発していたのでしょうか。

竹内:当時の『アーマード・コア』は100人超えていました。時期的には『アーマード・コア ネクサス』や『ナインブレイカー』、『フォーミュラーフロント』などを同時期に開発していた頃で、開発の規模が大きくなっていった時期ですね。なので、規模的には『METAL WOLF CHAOS』は少数体制です。

――そんなことを感じさせないくらい当時としてはグラフィックが美しかったと記憶しています。

竹内:そこは開発のベースにXboxで開発した『O・TO・GI ~御伽~』というゲームがありまして、そのエンジンをかなり流用しているのが大きいですね。


――Xboxでの開発で苦労された点とかはありましたか。

竹内:当時、Xboxと競合していたハードはPS2でした。PS2に比べるとXboxはPCライクなハードでしたので、開発そのものはPS2よりも楽でした。でも、ずっとPS向けのゲームを作っていましたので、逆にPCゲームの制作ノウハウってなかったんですよ。『METAL WOLF CHAOS』を作る段階では4、5作ほどXbox向けのゲームを作っていたので、もう慣れていたというのがあります。マイクロソフトさんもXboxが初めてのゲームハードでしたので、サポートもすごく厚くて、なんでも助けてくれていました。

――当初はマルチプラットフォームで展開するという計画はなかったのでしょうか。

竹内:当時の状況が一番大きいのですが、マイクロソフトさんが参入して、PS2がそれを迎え撃つという構図でした。それぞれのハードでしかプレイできない独占ソフトを各プラットフォーマーさんたちが競っていました。フロム・ソフトウェアとしては、当時はそこまで体力のあるメーカーではなかったので、プラットフォーマーさんの戦略に乗って開発するのがお互いにとってメリットがあった時代だったんです。このゲームに限らず、マルチプラットフォームで作ろうというゲームはあまりなかったと思います。

――『METAL WOLF CHAOS』は当時のE3で発表されていますが、その後、日本国内だけの発売になった理由というのは?

竹内:開発の途中で、すでに次世代機となるXbox360が出ることがわかったためです。このゲームは2004年12月の発売だったのですが、翌年のアメリカのゲームイベントでXbox360の発売がアナウンスされましたし。今の『ダークソウル』などは日本と同じタイミングで海外でもリリースしていますが、当時はリソースもなく、同時にローカライズすることができなかったので、基本的にはまず日本で出して、それから欧米版のローカライズを始めていたんです。

仮に『METAL WOLF CHAOS』を欧米で発売するとなると、日本で発売してから6ヶ月、長いと12ヶ月くらいかけてローカライズしていくことになります。そうなると、Xbox360の発売時期の直前になるだろうと予測されました。それはビジネス的にあまりいいことではないんです。それならば、Xbox360用の新しいタイトルを開発した方がいいのではないか、ということでキャンセルとなりました。海外で出すつもりでE3で発表したんですけどね。


――そうすると、もともと海外向けに開発をしていたと?

竹内:このゲームはアメリカが舞台ですが、ゲームのコンセプトとしては私がアメリカに対して持っている、ある意味偏見みたいなものを意図的に先鋭化させた内容になっています。台詞回しに関してもそういったコンセプトが反映されていて、日本語に翻訳された海外の小説やドラマのように、日本人ってそんな話し方しないよね、という言い回しで日本語でセリフを作っていきました。言ってしまえばジョークに近い表現ですね。それを英訳してもらったんです。

――発売当時から輸入してプレイしていた英語圏のプレイヤーも多くいましたが、彼らからの反応はどうだったのでしょうか。

竹内:主人公もぶっ飛んでいますし、オペレーターのジョディもちょっと頭のおかしいキャラクターとして捉えられていたので、変な英語の言い回しもそういうものだという捉えられ方をしていたようです。みんなおかしいと思っているんでしょうが、実際にプレイしていくと次第に受けいれられていくようです(笑)。

――プレイしていた当時から気になっていたのですが、マイケルの台詞で登場する「大統領魂」ってなんだったのでしょうか。

竹内:「なぜなら私はアメリカ合衆国大統領だからだ!」という台詞もそうですが、当時はアメリカ人って決め台詞を持っている人が多いイメージを持ってたんですよ。アメリカ人はカッコよく決めたいときに決め台詞を言っているという思い込みがあって、マイケルも決め台詞を言わないといけないなと思いまして(笑)。

――最終戦あたりだと台詞だけでなく展開も凄すぎて、プレイヤーが置いていかれる感じがありました。

竹内:それは開発の段階から思っていました。置いてけぼりっていうレベルじゃないくらいプレイヤーを置いていってるよね、という自覚はあったのですが、それでもいいかと思いやっちゃいましたね。


――私は当時プレイして、あの突き抜けた感はすごく良かったと思いました。

竹内:そう言っていただけて良かったんですが、社内でもあまりにもぶっ飛びすぎていると言われていたんです。もうちょっと抑えた方がいいんじゃないかという話はされたことはありました(笑)。フロム・ソフトウェアという会社は良くも悪くもいろいろなことにチャレンジしていくというスタンスがあって、作り手にやりたいことがあれば、それをやってみればいいじゃないという。

作品を作るときは、アクセルとブレーキを交互に踏みながら進めるものですが、この時の私はブレーキを踏んだ方がいいんじゃないかと思っていたところに、みんなが私の足をアクセルペダルに押し付けてブレーキを踏ませないようしていたという状況でした。

――竹内さんが手がけた『NINJA BLADE』は『METAL WOLF CHAOS』と世界観が繋がっていましたね。

竹内:『METAL WOLF CHAOS』はゲームの内容に自信があったのにセールスが全くダメだったのが悔しくて、その後に作っていた『NINJA BLADE』にちょっと出してみたいなと。そのあたりは完全に制作者のわがままとして入れました(笑)。

――Devolver Digitalが『NINJA BLADE XD』を出したいと言ったらどうしますか。

竹内:どうなんでしょうね(笑)。『NINJA BLADE』はDevolver Digitalさんが好きなゲームとは違う気もしますが……。フロム・ソフトウェアとはいろいろと気が合うところがありますので、今後も一緒にやっていければと思うところはあります。

――リマスター版のタイトルに『XD』とありますが、これはどう言った意味なのでしょうか。

竹内:このゲームに普通にタイトルをつけると、HD化なので『METAL WOLF CHAOS HD』となるのですが、普通にHDだと面白くないよねとDevolver Digitalさんからありまして(笑)。初めてアメリカで発売するのだからアメリカでアピールできるタイトルにしようという話がでました。その時に、XboxやX-Menなどもそうですが、「X」の文字はアメリカ人にとって謎めいていてかっこいい文字なんだそうです。だったら、「HD」でなく「XD」にするのがいいのではないかと。

――最後に期待しているファンに一言お願いします。

竹内:当時は国内のXboxでしか出ていなかったゲームなので、今回はいろんな人に楽しんでプレイしてもらいたいです。

――本日はありがとうございました。


伝説的メカアクションゲームのリマスター版『METAL WOLF CHAOS XD』は、国内ではフロム・ソフトウェアからPS4、Xbox One、PC向けに2019年中頃発売予定です。
《Daisuke Sato》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top