プロレスとは華やかなスポーツ・エンターテインメントでありながら、同時に人間の集合と離散を繰り返す苦いドラマもあるジャンル。それはプロレスをビデオゲームに仕上げる側も無縁ではないようです。
かつて世界最大のプロレス団体・WWEのビデオゲームを開発し続けていた、日本のゲーム開発企業であるユークス。その関係は実に20年以上に渡り、毎年のように新作を生み出し続けていました。ところが『WWE 2K19』の開発を最後に、同団体のゲーム化から離れている模様です。ではそんなユークスは次のプロレスのゲームはなにを作るのか……？ と思われたなか、なんと次に手掛けたのは、プロレス団体AEWのゲーム化『AEW: Fight Forever』でした。
AEWとはWWEとは違う方針を掲げている団体。所属選手もかつてWWEに長期で所属し、大人気を博していた者も数多いです。長きに渡り、WWEのゲームを作り続けた企業が、WWEの思想と異なる団体をゲーム化するということ、それはプロレスゲームもまた、現実のプロレスのように人間の集合と離散を反映していることに他ならないでしょう。今回の東京ゲームショウ2022の試遊では、そんなユークスの新たなプロレスゲームがどんなものかを確認できました。
簡単操作で人気選手のレスリングを魅せる
『AEW: Fight Forever』は極めてシンプルな操作でプロレスができる一作です。今回の試遊では、WWEで活躍し、あとにMMA（※総合格闘技の名称）にも挑戦するなど多様なキャリアを送る人気レスラーのCMパンクや、DDTや新日本プロレスで活躍したケニー・オメガなどの人気選手を操作できました。
ゲームプレイはパンチとキックをベースとした打撃技ふたつのボタンと、組んで投げ技を仕掛けるボタンを基本としたわかりやすいもの。そのほかにロープに振ったり、相手が倒れている間にポーズを取ってアピールするなど「エンターテインメントとして楽しめる試合を作る」ポイントも押さえています。
基本的なゲームプレイのフィーリングは、どちらかというと打撃技で試合を作っていく方がやりやすい感じがありました。勝ちを目指した場合は「相手との距離を取ってパンチしてダウンさせて……」と、なんだか3D格ゲーみたいなやり方をしてしまったんですが、面白いのはパンチとかキックを連打していると「同じ技を使っている！」って画面に表示されることなんですね。
実質的に「お前、試合が単調になってるぞ。しょっぱい試合してんじゃねえぞ！」って怒られちゃうんです。ほどほどに真剣勝負な手触りがありながら、かつ試合を作ることを忘れるなというあたり、WWEと違う価値のAEWとはこういうことか……とか考えてしまいました。
やっぱり試合を盛り上げるのは各レスラーならではの必殺技ですよね。本作では必殺技のゲージがあります。うまく多様な技を出しつつ、相手を圧倒していくとゲージが溜まっていき、満タンになることで必殺技を繰り出せます。必殺技ではカメラもアップになり、凝ったカットから一撃をお見舞いするのでなかなかの爽快感があります。技が決まればほぼほぼ3カウントを取ることができ、試合を終わらせられます。
『AEW: Fight Forever』はユークスの新たなプロレスゲームとして、シンプルにして爽快感のある手ごたえを押し出しています。ちなみに今回の試遊には実装されてなかったんですが、本編では謎のバッティングのミニゲームやコイン集めなどシュールなゲームモードも実装される模様。WWEに対するAEWとはなんなのかを考えるうえでも、興味深い一作となりそうでした。
『AEW: Fight Forever』は、PC（Steam）/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに発売予定です。
