『聖剣伝説』とは何だったのか? この10年の答えがいよいよ姿を現わす。『聖剣伝説 VISIONS of MANA』先行プレイレポート | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『聖剣伝説』とは何だったのか? この10年の答えがいよいよ姿を現わす。『聖剣伝説 VISIONS of MANA』先行プレイレポート

新しいマナの樹と聖剣の物語を始める前に。主にビジュアルとゲームシステムを体験。

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『聖剣伝説』とは何だったのか? この10年の答えがいよいよ姿を現わす。『聖剣伝説 VISIONS of MANA』先行プレイレポート
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『聖剣伝説』とは何だったのでしょうか?

筆者には“情緒的な一本のストーリーを体験するアクションRPG”という確固たるイメージがあります。『ファイナルファンタジー』シリーズや『サガ』シリーズがタイトルごとに違う挑戦をする一方、『聖剣伝説』シリーズは物語の体験に特化したシリーズという、揺るがない軸を持つ印象があります。

もしかしたら、旧スクウェア作品全体で共通していた物語の良さを抽出したようなシリーズと言えるかもしれません。『聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-』(以下、初代『聖剣伝説』)~『聖剣伝説2』(以下、『聖剣2』)で完成された方向性は、いまでもシリーズ全体の印象を決定づけていると思います。

ところが『聖剣伝説』シリーズ全体を振り返ると、その方向性が必ずしも維持されていたとは言えません。タイトルによっては一本道ではないストーリー進行だったり、時にはストラテジーにもなったり、 “情緒的な一本のストーリー”の体験とは趣向が異なるケースも多くありました。

特に2006年から2007年にかけて、シリーズの灯が一度消える瞬間を間近で見た経験はトラウマになるかのようでした。ニンテンドーDSの『聖剣伝説DS CHILDREN of MANA』からPS2の『聖剣伝説4』、そしてDSの『聖剣伝説 HEROES of MANA』に至る、まるでフラミーが地上へと墜落していくかのような流れに血の気が引いたことを、いまでも生々しく思い出せます。『聖剣伝説』シリーズには物語という確かな軸があるように見えながら、その軸が実は強固なものではなかったと思い知らされるかのようでもありました。

『聖剣伝説』とは何だったのでしょうか。それはファン以上に、シリーズを再生させようとする作り手が直面したことでしょう。プロデューサーの小山田将氏が率いる開発陣が、2014年に『聖剣伝説 RISE of MANA』をスマートフォンで配信して以来、10年以上もかけ、初代『聖剣伝説』から『聖剣伝説3』をリメイクし、『聖剣伝説 Legend of Mana』(以下、『聖剣LoM』)をリマスターする中で再びこのシリーズが何者だったのかを掴もうとしていたと思います。

そして『聖剣伝説 VISIONS of MANA』(以下、『聖剣VoM』)とは、その10年で見出したひとつの答えなのかもしれません。発売前にメディア側として先行体験させてもらいながら、「長らく軸を失ったシリーズが立ち直るとはどういうことか?」を考えていました。

実質的に17年越しのコンソール向け『聖剣伝説』完全新作

『聖剣VoM』の試遊を開始して早々に考えたのは 、「そもそも『聖剣伝説』シリーズを現代の水準に到達させるとはどういうことなのか」でした。『聖剣VoM』の発売が発表されるまで、『聖剣伝説』シリーズのコンソール向け完全新作は、2007年に発売された『聖剣HoM』でした。およそ17年という長期間にわたり、『聖剣伝説』シリーズがゲームシーンの最前線から遠のいていたところから、よくぞここまで戻ってきたという感慨があります。

左から、ヒナ、ヴァル、モートレア、カリナ

主人公ヴァルの姿を見ると、シリーズの約30年がそのまま凝縮されたかのように錯覚します。そのシルエットとカラーは初代『聖剣伝説』の主人公のようでもあり、バンダナを付けた姿は『聖剣2』のランディも彷彿とさせ、腹筋を見せる服装は『聖剣LoM』の男主人公を思い起こさせます。

仲間たちも同じです。カリナから『聖剣2』のポポイを見出すことはたやすいですし、ロシアンブルーの猫を思わせる獣人族・モートレアからは『聖剣LoM』のダナエを思い出します。「聖剣伝説とは何か」と過去作をリメイクしながら探った10年の軌跡が、まるでキャラクターデザインに表れているかのようでした。

少なくともキャラクターモデルの美麗さは、ここ10年のシリーズの中で最高のものでしょう。前作『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』(以下、『聖剣3リメイク』)のモデルをさらにブラッシュアップしていると言えます。

『聖剣伝説』シリーズ全体のキャラクターデザインをHACCAN氏が担うようになってから20年近いわけですが、ここに来て初めて「リメイクを今の時代に合わせるための絵柄」という役割ではなく、彼のオリジナルデザインが3Dとして立ち上がったことも大きいです。

現代的なゲームデザインに見えて、初代『聖剣伝説』への回帰

そんなヴァルたちが降り立つのは広大な大地。本作では“セミオープンフィールド”を採用しています。すべてがシームレスに繋がるオープンワールドではなく、限定された地域を自由に動ける形式ですが、世界観を体験する意味では十分な広さです。

また、セミオープンフィールドの採用には後述するバトルアクションも含め、安定したパフォーマンスを保つ意図もあるかと思います。『聖剣VoM』は基本60fpsで描画されています。これも現代のアクションRPGとしては必要なクオリティに到達させているポイントですね。

無論、描画のクオリティが高ければいいというわけではなく、“何を体験させるか?”が重要でしょう。試遊をひと通りやってみて、意外にも思い出すのは初代『聖剣伝説』の記憶です。『聖剣VoM』にはシリーズ原点のような体験があちこちに潜んでいます。

(画像は『聖剣伝説コレクション』公式サイトより)

初代『聖剣伝説』とは、何もかも失っている主人公がヒロインと偶然出会い、広大な大地を旅するものでした。いまでも僕はゲームの後半に「聖剣を求めて」の勇壮な音楽に乗って、チョコボを操り世界を駆け巡った記憶が鮮明に残っています。

『聖剣VoM』でセミオープンフィールドを駆ける体験は、そんなシリーズの原点を思い出します。現代のRPGらしく、メインとサブのクエストの双方をこなしながら進める形ですが、古くからのファンとしてはやっぱり初代『聖剣伝説』と通ずるものを感じるのです。

初代『聖剣伝説』はシリーズ全体から振り返ると、まだシリーズのイメージが固まっていないこともあって異色の立ち位置でもあるのですが、『聖剣VoM』の雰囲気はそんな忘れがちな原点に回帰している印象です。特に主人公のヴァルと、(今回の試遊では登場は控えめでしたが)ヒロインのヒナのふたりが初代『聖剣伝説』の主人公のように見えることも理由かもしれません。

『聖剣VoM』の試遊を続けていると、やがて記憶が『聖剣伝説2』~『聖剣伝説3』へ回帰していく思いになります。そう強く感じたのはバトルパートのことで、本作は『聖剣3リメイク』のシステムをより推し進めた形であり、ほぼアクションに振り切った作りであるためです。

通常攻撃と特殊攻撃を組み合わせ、敵の攻撃を回避し、最後に必殺技を叩きこむという、現代のアクションRPGとして求められる水準に到達しています。加えて多様な魔法での戦闘もできるあたりは『聖剣伝説』シリーズらしさを強固なものにしていると言えるでしょう。「サンダーセイバー」など、懐かしい魔法の名前もありました。

戦闘では、主人公のヴァルだけではなく、仲間も自由に操作の切り替えが可能。個人的にカリナのアクションが面白かったです。カリナはラムコという小さな聖獣と共に戦うスタイルなのですが、これが過去作でいうフラミーと一緒に戦っている感じがあってよかったですね。

「精霊器」がもたらす、ゲームプレイの拡張

なにより『聖剣VoM』ならではのバトルを彩るのは、「精霊器」でしょう。これはシリーズに登場してきたサラマンダーやウンディーネといった精霊の力を持つアイテムのことです。精霊器は戦闘中に使用することで敵の動きをスローモーションにするなど、精霊ごとに様々な効果をもたらします。

精霊器は戦闘だけでなく、フィールドの探索にも生かされます。たとえば風の大精霊・ジンの力を持つ精霊器(ジンブーメラン)が使える場所では、谷底から風を巻き起こして崖の向こうへ移動できます。

今回の試遊ではジンブーメランによるフィールド探索のみ体験できましたが、本編では多彩な精霊器による探索ができるものと思われます。イメージとしては、新しい精霊器が手に入る度に世界各地で探索できる範囲が増えていく、というメトロイドヴァニアのような体験もありそうです。

精霊器にはさらなる能力を秘めています。それがクラスチェンジです。ヴァルやカリナたちが精霊器の力を使うことで、これまでと別のクラスへ変わり、武器とアビリティも変わることでまったく別の戦い方が可能となるのです。

たとえばヴァルの場合、月の大精霊・ルナの精霊器(ルナスフィア)を使うことで、ランスと盾を使用する攻守に優れたクラス・イージスとなることができます。各キャラクターが精霊器ごとに様々なクラスに変わるため、おそらく本編では様々なバリエーションのクラスを見ることができるでしょう。

ここも『聖剣3リメイク』的ではあるのですが、キャラクターの強さに依存してクラスチェンジに制約があった『聖剣3リメイク』とは異なり、『聖剣VoM』のクラスチェンジは、戦闘中を除けばいつでも自由に行えます。本編では戦略的にクラスを変えながら進めていくゲームプレイも期待できそうです。このように精霊を全面的にフィーチャーしたゲームデザインは、本編の世界観や物語に繋げた作り方と感じられ、スマートな印象があります。

本編の物語はどう転ぶのか?

今回の試遊は、このように『聖剣VoM』の基本的なヴィジュアルとゲームメカニクスのみが体験できるものでした。少なくとも、ここ10年の『聖剣伝説』シリーズという括りで見ればクオリティの面では間違いなく過去最高と言って良いものです。特に『聖剣3リメイク』の内容に満足したファンなら、引き続き『聖剣VoM』に触れても違和感なく楽しめるでしょう。

ただ正直、現代の(セミ)オープンワールドのアクションRPGにはとてつもない強豪が揃っています。先日リリースされた『GRANBLUE FANTASY: Relink』なども含め、相当な人気ジャンルなのは確かです。

その中で『聖剣VoM』ならではのオリジナリティに期待するならば、やはり物語性に他ならないでしょう。ストーリーに関しては、まだ公式サイトにある情報以上のものは明かされていません。

『サガ』シリーズの河津秋敏氏は、『聖剣伝説』シリーズの魅力を「何の犠牲も無しに何かが成し遂げられることなど無い、というリアリズムだ。主人公はもちろん、ライバルも敵もこの等価交換から逃れることは出来ない」、「かわいらしいキャラクターとアクション、対するストーリーにおけるリアリズム。このギャップが聖剣伝説の作品性であり魅力だ」と正鵠を射る批評をシリーズ30周年記念サイトにて残しています。やはりそこには物語性への評価の高さが評されているわけです。身近な人間が、まさしく「聖剣伝説とは何か?」を鋭く言葉にしています。

今回の試遊では、シリーズならではの「かわいらしいキャラクターとアクション」が現代で求められるクオリティに達していることが明らかになりました。あとは、そのかわいらしい見た目に反したシビアなストーリーや世界観が出てくるのかどうかでしょう。そればかりは、本編で初めて見えることかもしれません。

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam)を対象に2024年夏の発売を予定。「聖剣伝説とは何だったのか?」……ファンがその答えを体験するのは、もうすぐです。


小学生の頃から『聖剣伝説』ファンだった少年が、大人になり枯れかけたマナの樹を蘇らせるまで。『聖剣伝説 VISIONS of MANA』小山田将プロデューサーインタビュー

Game*Sparkでは、プロデューサーである小山田将氏が『聖剣VoM』にたどり着くまでの、少年時代から現在までの長い思いも伺ったインタビューも公開中。こちらもあわせてご覧ください。


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《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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