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『Rez』や『スペースチャンネル5』はどうやって生まれたのか?水口氏が語る「なぜ」から始まる革新的なゲーム作り

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『Rez』や『スペースチャンネル5』の生みの親として知られ、近年では『Child of Eden』などを生み出したゲームクリエイター水口哲也氏。先週末に京都みやこメッセにて開催されたBitSummit 2014にて登壇した水口氏は、「Independent DNA」と題した基調講演を行い、いかにしてインディーらしいイノベーティブなゲームを作るのかを語りました。

ひとまず水口哲也氏はここで言うインディーとは独立した会社を立ち上げるようなことでは無く、どのような形でイノベーティブ、つまりは革新的なものを作るかという点から見たインディーやインディペンデントであると前置き。ジャンルは特に関係なく、本能的に面白いものを考えるというアプローチはどうすれば良いのか、24年ゲームを開発してきた中の経験から語ると伝えています。

■「どうやったらもっと面白いモノが作れるのか?」でゲーム業界へ

1993年にセガへと入社し、『セガラリー』に始まり『Rez』や『スペースチャンネル5』などの有名タイトルを手がけてきたことで知られる水口氏ですが、そんなゲーム業界へと入るきっかけになったという2つのモノを同氏は紹介。1つ目は人工知能の研究者であるマーヴィン・ミンスキー氏が書いた「The Society of Mind心の社会)」という一冊の本です。

「心の社会」はAIの技術書などでは無く人間の心のフォーカスした書物で、例えば「赤ん坊は積み木を積み上げる。しばらくすると何事もなかったかのように壊す。しばらくするとまた積み上げる。そして壊す。積み上げては壊す」のは「なんでなんだろう?」という疑問を読者へ投げかけるような内容。人間の喜びや感情をサイエンスな面から観察し簡単な言葉で説明してくれる同書で、「どうやったらもっと感動するものが作れるのか、どうやったらもっと面白いものが作れるか」を考えるきっかけになったと水口氏は伝えています。

またもう1つが「Powers of Ten」と呼ばれる1977年に製作された映像作品。家具メーカーであるハーマンミラー社に椅子のデザインを提供したことで知られるチャールズ・イームズとレイ夫妻がIBMに依頼され手がけた同作品は、10のべき乗を繰り返して地球から宇宙全体へ、さらに宇宙から地球へ戻りさらに原子の世界を探索していく教育映画で、初めは公園に居る男性の姿を捉えた「1m×1m」から「10m×10m」、「100m×100m」から「1,000m×1,000m」へと範囲を拡大していき、今度は逆回転でミクロの世界へ入り込んでいく。人類が月に行った10年後、まだCGの技術も無い時代に生まれたこのアートを水口氏は、「人間の意識に凄く影響を与える、新しい考え方のスイッチを入れる」ような映像作品としています。

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水口氏はゲームを作る上で、このサイエンスを象徴する「心の社会」とアートを象徴する「Powers of Ten」が常に心の中にあったと説明。実際に自身の作品作りにどのように影響したのか、2001年に発売された「ミッドナイト・ハイ・シューティング」から語りだしました。

■『Rez』に見る「人間が盛り上がる同期のメカニズム」

2001年にPlayStation 2とドリームキャスト向けに発売された『Rez』は、ワイヤーフレームで表示された電脳空間に登場するウイルス達をロックオンレーザーで倒していくというシューティングゲーム。敵を何体か破壊したり、ロックオンボタンを押すことで多種多様なSEが入り、プレイヤーが奏でたSEとBGMが融合して1つのグルーブを作り出すという作品となっています。

「音楽が好きな人はこの世の中に沢山居て、ゲームが好きな人も沢山居て、その楽しさとか気持ちよさを一緒にすることは出来ないんだろうか」。この着想のきっかけとなったのが1997年にスイスのスウィツァランドにて参加したテクノフェス「ストリートパレード」。十万人もの人々が音楽に合わせて踊り、光や色が動く光景を見て、「凄いものが循環している」と水口氏は感銘を受けたと明らかにしています。「音楽というもので人がこれだけ楽しんで、色んな物を感じて。DJと観客の間で音と光とか色を介しながら、人が物凄い盛り上がっている状況を見た時に、これを体験に変えることが出来ないかと考えた」。

水口氏は続いて、日本に帰国後アフリカのケニヤを旅して帰ってきた友人のDJから見せて貰ったという1997年の映像を紹介。30分程の映像は道ばたで酒を飲む人々を撮影し始めたもので、ふと誰かが「バンバンババンバンバン」とリズムを鳴らしだすとそれに反応して音を鳴らしたり手拍子したり立ち上がって歌い始める人たちが現れ始めるという、なんでも無い風景から人々が盛り上がっていく姿を映し出した内容。「このメカニズムは一体どうなっているんだろう。人間ってどうなっているんだろう。気持ちが良いとか楽しいとか、凄く盛り上がることをグルーヴと言うが、あの気持はどういう風なメカニズムで生まれてくるんだろう」。

一冊の本「心の社会」と同様に、「What is groove?(グルーヴはどうやっておこる)」という疑問を自らに問いかけ始めた水口氏は、シューティングゲームにて撃つと出る効果音が音楽化していく体験が出来ないかと考え始めました。当時はそんなゲームは存在せず周囲からもなにを言ってるのかよくわからないと反応を返されたものの、ゲームを達成して面白いという感じと、音楽を演奏してだんだん気持ちよくなっていく感じを、どういう風にしたら組み合わせられるかを念頭に着想は進みます。


「グルーヴ」はどうやって起こるのか?音楽では先述のアフリカでの映像やバンド演奏などで見られる「Call and response(呼びかけと反応)」や「Act and react(能動と受動)」があり、ゲームのそれと同じだと水口氏は発想。双方が持つそれぞれの要素を組み合わせることで、「Making chemistry of resoname(そして共鳴や共振が起こる)」のではないかと考えた

さてこの着想から『Rez』の開発へと続く中で、水口氏が最も重要としたのが「Quantization(クオンタイゼーション: 同期)」。人種や国境に関係なく、"人間は誰しもが"リズムがシンクロすると気持ちい。バラバラだったものが同期すると、気持ちいい。そこで、不確実なリズム入力を、気持ちのいいリズムの拍に強制的にクオンタイズ(同期)したらどうなるというアイディアにたどり着きます。『Rez』の誕生です。

「適当に押してもどんどん音楽化していく。音楽を演奏するミュージシャンのような気持ちよさと、DJがどんどんとトラックを変えていく気持ちよさみたいなものを上手く配合して、プレイヤーのハイブリットな体験となって気持ちよくなる」。水口氏によれば少人数チームでプリプロダクションにかなり時間をかけたとしており、1年半から2年をかけ、映像や音をデザインするデザイナーにシンプルなモノを作り上げるようにも指示し、ベーシックな基本構造を作り上げていきました。シンプルな内容でちょっと面白さと気持ちよさを感じられるところまで育て、そこから一気にサウンドやビジュアルを増強し始めていくという手法を取っています。

さて『Rez』から少し時が前後し、セガのユナイテッド・ゲーム・アーティスツ時代に生み出したもう1つの名作について水口氏は語り始めます。『スペースチャンネル5』です。

■「なぜミュージカルは楽しいか」から始まった『スペースチャンネル5』

「なんでミュージカルは楽しいのか?」。『STOMP』やマイケル・ジャクソンのミュージックPVに触れた水口氏は、人がミュージカルを見て幸福感を得られるフィーリングを、ゲームに組み込むことが出来なかと考え始めます。「ミュージカルにはモブダンスがあり、みんなで同じ動きをする。歌やダンスやセリフや演技がだんだんとストーリーになっていく。ダンスで笑顔に、ハッピーに、ポジティブな気分になる」。これらの要素をゲームでやろうとした結果生まれたのが『スペースチャンネル5』です。


1999年と2002年で全2作が発売された『スペースチャンネル5』は、宇宙のテレビ局「スペースチャンネル5」のキャスターである「うらら」が現場へと取材におもむき、銀河全体を巻き込んだを大事件を解決していくという内容の作品。十字キーと2つのボタンを使ったリズムゲームで、ミュージカルの一幕のように各ステージが1つのストーリーに沿ってダンス、演出、音楽で進んでいきます。

前述の『Rez』でも辿り着いたような、歌、セリフ、踊り、それぞれバラバラだったものピタリと合うと鳥肌が立つ現象。歌いだした時の意外性、セリフに込めたメッセージ性でラブリーな気分になる、そして笑いがある。そんなミュージカルの多種多様なエレメンツを含んだゲームを作り出そうと『スペースチャンネル5』の開発は進みます。1997年に作り始められた同作は、『Rez』と同じく当時としては珍しい少人数チームでコンセプトを練っていくスタイルを採用し、ビジュアルをまだ搭載していないAやBや矢印ボタンを画面上に表示するシンプルな形で開発が進められていきます。

ひとまず矢印キーとABボタンを画面に表示し、タイミング良くレスポンスすれば成功という、「記憶力と反射神経」で楽しめる基本構造を作り上げた水口氏。「旗揚げゲーム」と「花いちもんめ」をゲームとして簡単にやるとどうかという実験を行い、そこで面白さがわかってから様々な要素、例えば敵に襲われているキャラクターを救出すると視聴率が上昇していきディレクターが喜ぶといった循環していく要素を配置していったと当時の開発を振り返ります。

ジャンルでは無い」。水口氏はこの日の基調講演における重要なことの1つとしてこのフレーズを口にしました。「ジャンルからモノを考えないということは凄く大事。多分インディーゲームとかインディペンデントでイノベーティブなこの世の中にないものを作ろうと思うと、ジャンルではなくてなにが面白さのエッセンスなのか、組み上げていくほうが凄く良い結果が出やすい」。

■様々なジャンルを循環していく水口氏の作品

Q Entertainmentにて水口氏はパズルゲームと演奏する気持ちよさを組み合わせた『ルミネス』を2004年に発売。技術の進化と共に可能なチャレンジが増えていく中、「自分がミュージック・ビデオの一部を作っているような感じに出来ないか」と、同作では背景にPVが表示させながら、クオンタイズ(同期)させ、手前のブロックと合成させるという表現が可能になったと説明しています。

また『ルミネス2』を開発する際に、「ミュージックビデオとゲームを融合する」という中で「ゲームをやっていて底抜けにハッピーになれるような楽曲」が欲しくなったと語る水口氏。そんな曲を探しても見つからない中、勢いで作ってしまえと生み出されたのが2006年にインターネット上でも話題となった「Heavenly Star」です。


ゲームのために製作されたはずの楽曲&PV「Heavenly Star」は、YouTubeに掲載したところ視聴数が一気に伸長し、「逆にこれを音楽でやったら面白いんじゃないか」という逆転の発想が生まれます。同年に立ち上げた音楽ユニット「Genki Rockets」は、2007年には東京新木場の倶楽部で開催したライブに4,000人が集結。「ゲームのために色んな意味や思いを込めて作ったものが、また別な展開をし始める」。水口氏は音楽や映像がシンクロする気持ちよさ、どういったところに感情が動いていくのかを、今まで手がけてきたゲームのようなインタラクティブ性はないものの、「Genki Rockets」のライブを通して改めて実験します。

この実験が「僕の人生を変えることになる」と伝える水口氏。常に自身の立ち位置がゲームやインタラクティブにあるものの、全然異なる事をやってから再び戻ってきた際には新しい意味が見えると説明しています。

また2010年にはソニーの最新技術と共に「make.believe」と名付けられた3Dライブを実施。これは参加した人たちに3Dの眼鏡をかけて貰い、3Dの巨大LEDモニターを見ながらライブをやっていくという試みで、低い音や声をイコライズして音楽に合わせて上昇するバブルがレイヤーに沿って上昇し、映像と音が一緒になったような世界を生み出す。水口氏は映像と音が一緒になった言葉に出来ない凄い体験を改めて認識し、まだ自分の進んでいる道に奥があるんだと思ったと語っています。

ミュージックやビジュアルライブといった様々なジャンルでも展開されていく水口氏の「どうして面白いのか?」に対する実験。筆者と同様に、セガ時代に水口氏の作品に慣れ親しんだゲーマー達がゲームジャンルへの回帰を願っていた事は想像に固くありませんが、これらの別ジャンルでの体験が新たにゲームへと2011年戻ってきます。『Child of Eden』です。



2010年ロスで開催されたE3にて正式発表された『Child of Eden』は『Rez』の精神的続編とも言える作品。ウイルスに侵されたクジラを浄化していくと浄化した部分が美しい声を奏で、ボイスオーケストラや歌のようになっていく。音楽に合わせて撃っていくとスコアが上がるようになっているな。『Rez』のテクノ的なサウンドは減少したものの、水口氏が近年プロデュースしてきた「Genki Rockets」のサウンドを多用し、幸福感の強いグルーヴを生み出す今までの活動を組み合わせた集大成的な作品となっており、またKinectで音楽の指揮者のようなプレイが可能というアピールも話題になりました。

『Child of Eden』では、最初にシナリオを書くのではなく40ページほど日本語と英語の詩、さらに2,000枚ほどの詩を書き、スタッフにクリエイティビティや創造性を引き出すため、100パーセント説明したモノではなく詩のようにその間を自分で想像し、その想像した世界観を前に出してくれということをスタッフに願ったと伝える水口氏。同作では音とフィジクスを連動させたビジュアル、また音楽のデータや波形を拾ってオートマチックにパネルの動きや映像の変化、パーティクルの量や飛び方を計算するシナスタシアエンジンの製作などを実現。またKinect操作に関しては直感的に指揮者のような体験を求めたものの、Kinectがリリースされた初期の頃であったため、バックエンドで様々なエンジニアが働きレイテンシの幅を狭めていってくれたとも伝えています。


コントローラーを装着したあのサウンドバイブレーション実験映像も披露。バイブレーションを立体的にするという試みで、例えばミュージックスコアのバイブレーションをメインに、背中の方はアクションに対応するなどして、振動の立体化を目指した


■水口氏の辿り着いた「シナスタジア」、インディーのDNAとは「Why?」

常にサイエンスとアートが必要だと語る水口氏は、自身の中で出来上がったテーマが「Synestesia(シナスタジア: 共感覚)」であり、感覚が交差するところに生まれる、新たな印象、表現であると解説。このギリシャ時代から存在し、100年ほど前のアーティストの間で使われていた言葉を、水口氏は「30分ほど動けなくなった」というロシア出身の画家ワシリー・カンディンスキーの1916年の作品「Moscow」を取り上げ、1日のモスクワの風景を1枚の絵に凝縮するという感覚が、現代のアーティストたちが持っている感覚と同様なのではないかと指摘しています。


カディンスキーが「1枚のキャンパスに表現してアートへと昇華」したのと同様に、水口氏は「音の世界を光や色へと変化させインタラクティブなものへと昇華」させました。もしカディンスキーや水口氏が異なる時代、さらに技術の制限が解放され表現力が上昇した世界に生まれていれば、表現するものや彼ら自身のテーマは異なっていたかもしれません。しかしそういった各々のスピリッツに辿り着き持つことが「インディペンデントのDNA」であり、インディペンデントの会社を建てるとかそういうことではなく、いかに新しい創造をイノベーションにやっていくかだと水口氏は語ります。
    水口氏「凄い涙を流す感動からちょっとした感動まで色々あると思いますが、気持ちの流れってのは見えないプロセスですよね。見えないものを可視化する、気持ちの流れを設計する、体験をデザインするつまりはコード化する。この気持の化学反応を作るってのが、僕達のやっていることなんじゃないかなあ。ゲームって何かを達成したい、そして達成したものの周りには色んな物がくっついてくる。それを建築家のように設計していくのが我々の役目なんじゃないかな」
水口氏は「インディペンデントのDNA」とは、「Why?から考える」ことであり、ジャンルからモノを作ろうとせず、人間の本質を見極めることが重要だとし、「なぜ人間はこれが面白いのか」「なぜ人間はそれが楽しいのか」「なぜ人間はあれが気持ちいいのか」という疑問を投げかけ続け、自身のフォームを形作っていくことが重要だとしています。テクノロジーが進化する中で新たな表現の形を獲得し、「Why?」から始まる人間の本質を見極めれば、その中にジャンルすらも超越したイノベーティブなものが生まれるのです。

■ゲームはコンピュータサイエンスの中で最も進化する

前述した「心の社会」を記したマーヴィン・ミンスキー氏は、映画『2001年 宇宙の旅』にてコンピュータ「HAL」のアイディアを提供したことでも知られており、過去に水口氏はミンスキー氏との対談を果たしました。「エンターテイメントは重要な計画の頂点に位置づけされているよね、ですからゲームデザイナーはプログラマーの頂点に居るんだよね。多分ゲームはコンピュータサイエンスの中で最も進化するんじゃないかな」。コンピュータゲームを全く知らない人工知能の研究者ミンスキー氏から出たため、周囲をも驚かせたというこの言葉を、水口氏は各々の解釈がありまたゲームがどんどんと形を変えていく可能性があるとした上で、自身はポジティブに受け止めていると吐露しています。

「Independent DNA」とは、新しい会社を作るとかいうことではなく、いま世の中にない、新しい新鮮な切り口と体験を、今の時代にピッタリ合うようなものを考える。ジャンルにとらわれず、人間の本質的なものから新しいものを生み出していくには、観察力や洞察力が必要だとし、これを日々鍛え続けるんだと水口氏は最後にコメント。気が付くと48歳になっていたと語る水口氏ですが、恐らく60歳や70歳になればもっと良いものが作れるようになるとし、ゲーム開発が素敵な仕事であると締めくくっています。
《ishigenn》

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