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「今のゲームは60ドルで狂気の沙汰」『Bulletstorm』元開発者が低価格化とフランチャイズ化を語る

先日、インディーゲームの低価格競争が生む弊害をお伝えしましたが、AAAタイトルのユーザー間でも価格に対して求められる内容は年々上昇していると、『Bulletstorm』を手掛けた元開発者が業界の変化を語っています。

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「今のゲームは60ドルで狂気の沙汰」『Bulletstorm』元開発者が低価格化とフランチャイズ化を語る
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先日、インディーゲームの低価格競争が生む弊害をお伝えしましたが、AAAタイトルのユーザー間でも価格に対して求められるコンテンツ量やクオリティーは年々上昇していると、『Bulletstorm』の開発を手掛けた元開発者が業界の変化を語っています。

「振り返ってみれば、我々は中堅AAAゲームが死へと向かうという、業界に起きた大規模な変動の最初の犠牲者だったのかもしれない。クオリティーにおいて中堅という意味ではなく、10人同時のマルチプレイやCo-opモードがないという点でね」そう語るのは元People Can Flyのクリエイティブディレクター、Adrian Chmielarz氏。近年、ゲーマーが購入費の対価として求めるコンテンツは増大してきていると、GamesIndustry Internationalのインタビューに答えました。

「今の業界で言われているのは、60ドルのゲームを売りたかったら200ドルのゲームだと感じさせろということだ」続けて同氏は、「Bulletstormは60ドルのゲームを60ドルで売った。近頃は60ドルなんていったら馬鹿げていると思われる。コンソール機でだって遥かに安い値段でハイクオリティーのゲームが何百と転がってるんだから。2014年の今、1つのゲームに60ドルなんて狂気の沙汰なんだよ」

『Bulletstorm』はPeople Can FlyとEpic Gamesから2011年にリリースされたタイトル。レビューでは好意的な評価を得ながらも大ヒットには至りませんでした。2012年にEpic Gamesの社長、Mike Capps氏は本作について次のように述べていました。「Bulletstormは決定的に成功だったと思うし、多くの人は新しいものが見れてとても満足していたようだ。売り上げという観点では、良くはあるが驚くほどではなかった。EAは我々にもっと上を期待していただろうね」Epic Gamesはその年People Can Flyを買収、Chimielarz氏は同社を去っています。


また、同氏はパブリッシャーがいかに作品をフランチャイズ化していくかについて触れ、Electronic Artsが大型フランチャイズへ成長させることを試みた作品として『Dead Space』シリーズを例に挙げています。「どういうわけか約300万本の売り上げへの期待と適切な予算設定に留まらず、EAは第2のCall of Dutyを作ろうとしたんだ。500万本売れない限り爆死だよ。十分利益になり得る作品だが、それは予算とコンテンツを賢く運用できればの話だ」

Chimielarz氏は賢い運用事例として、成功を収めた全てのIPをクロスプラットフォームに対応させることを提案。『Assassin's Creed』のような年単位の大型フランチャイズの潜在価値を理解する一方で、それだけに固執した結果最も影響力ある業界最大手のパブリッシャーから中堅タイトルの開拓意識がなくなったことを指摘しています。その上で、低予算で大ヒットを記録し5つの関連作品を生み出したParamount Picturesの映画『Paranormal Activity』を成功例に出したインタビュアーに対し共感しているようです。

「私も完全に同感だ。フィルムメーカーは全てのホラー映画をインディー・ジョーンズレベルにしようなんて考えない」「やり方が分からないからじゃない。彼らは徹底しているんだよ。スマートに繁栄しているんだ」と、映画制作会社がいかに予算運用を意識し、与えられた範囲の中で利益を上げているかを賞賛しました。「Dead Spaceに必要なのはそういうことだ」


しかし、同氏はAAAゲームの開発思想や業界トップに見る創造性の消失を払いのける一方で、Rockstar Gamesの『Red Dead Redemption』やNaughty Dogの『The Last of Us』、MachineGamesの『Wolfenstein: The New Order』といった革新的かつ没入的な大ヒット作の成功事例も認めているようです。問題の根本はゲームそのものではなくそれを取り巻く憶説や恣意的な目標の構造にあり、AAA業界や観衆は幅広いアイデアをわざわざ狭めてしまう価格や容量、固定観念という時代遅れの考えに囚われているとのこと。

「残念なことであるし、正気ではないことを証明している。ゲームが長編であることを望むプレイヤーがいながら、統計を見れば彼らの半数以上は作品の半分も見やしないんだから。明らかに何かがおかしいと思わないか。7割から8割のユーザーはゲームをクリアしないんだよ。狂気じみていると思わないか」

「最初の議題に戻るが、問題は価格に直結していると思う。低価格になるほど私たちはゲームに詰める中身を考えなくなるんだよ。そして万人受けすることだけにフォーカスする。何をしたって文句を言う人間は必ず存在するという事実を受け入れなくちゃ。作品の中身が濃厚なら、伝えたいストーリーが思い通りに伝われば、その反響は20ユーロで100時間の娯楽を買えなかったとぼやく人たちの不満なんかよりもずっと強力なんだから」


Chimielarz氏の心の叫びは、薄利多売に染まっていくゲーム業界に真っ向から立ち向かうクリエイターとしての強い信念が感じられるようです。「それこそまさに、今私たちがThe Vanishing of Ethan Carterの制作で取り組んでいることだ」と語る同氏は現在、自らが立ち上げたスタジオThe Astronautsで人々の心を動かす新たなヒット作に挑んでいます。
《河合 律子》
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