キャッチコピーでみるゲーム史、第5回は「”セオリー”をぶっ壊せ!!」です。日本では2010年9月28日にコーエーテクモゲームスから発売された『クォンタムセオリー(QUANTUM THEORY)』のキャッチコピーのひとつです。
ダブルコーテーションで括られていることから分かるように、分類としては【3】ゲーム性と世界観の両方を示すもの、に該当すると思います。ちなみに当初は同年3月に発売予定で、このキャッチコピーは発売延期の前に使われていたものです。
海外ではメジャーなサード・パーソン・シューターというジャンルに挑んだ本作。ファンタジーをベースにした世界観、シドとフィレーナという男女キャラクターの協力アクションといった差別化を図りつつも、発表当初から”ギアーズ(※)・クローン”というありがたくない異名をもらうことになってしまいました。(※Microsoft/Epic Gamesの『Gears of War』シリーズ)
結果として海外で低評価となってしまった本作。カタカナ語としての「セオリー(定石、常套手段)」をぶっ壊すことを謳った作品が、劣化クローンのような評価に定まってしまったのは皮肉なことかもしれません。
『QUANTUM THEORY』は、Team TACHYONという、テクモの海外戦略に基づくチームによって開発されました。グローバル戦略タイトルのひとつである本作にも「海外で通用する国産タイトル」を目指す、という高い志があったのです。
PS3、Xbox 360を中心とした前世代には、日本産の新規IPシューターがいくつか発売されています。海外を意識したとき、やはりシューターというジャンルは避けて通れないものでした。
2006年にはカプコンから発売された『ロスト プラネット』、キャビア開発でAQインタラクティブから発売の『バレットウィッチ』、2010年にはプラチナゲームズ開発でセガから発売の『ヴァンキッシュ』、2012年には龍が如くスタジオ開発でセガから発売された『バイナリー ドメイン』など。2011年には、発売はEAながら、日本の開発スタジオであるグラスホッパー・マニファクチュア開発の『シャドウ オブ ザ ダムド』といった作品もありました。
3作目までつくられたロスプラを除けば、どれも大成功とはいえませんでしたが、そこには、安定のジャンルや続編に依らないチャレンジがあったはず。現在は「人気シリーズの続編という”セオリー”」をぶっ壊そうとする試みは、ほとんど見られなくなりました……。
「ギアーズ・クローン」という異名は「”セオリー”をぶっ壊せ!!」を掲げたチャレンジの結果であり、批判だけにとどめてしまうのはさみしいような気もしてきます。
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