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プロゲーマー「ももち」、日本のe-Sportsプロライセンス発行について声明

プロゲーマーおよび、忍ismの代表として活動している「ももち」こと百地祐輔氏は、「日本国内におけるプロゲーマーのライセンス制度について」と題した声明文を忍ism公式サイト上で公開しています。

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プロゲーマーおよび、忍ismの代表として活動している「ももち」こと百地祐輔氏は、「日本国内におけるプロゲーマーのライセンス制度について」と題した声明文を忍ism公式サイト上で公開しています。

これは先日、 複数メディアにて報じられた国内e-Sportsにおけるプロライセンス発行の発表を受けたもの。今回の声明で百地氏は、「自分と普段から関わっているあらゆる方々、ゲーマーの皆さん、コミュニティの皆さんの意見を反映・代表するものではありません」と前置きしながら、あくまでも個人の主観に基づく主張であることを強調しています。

まず、百地氏はライセンス制度については全てを否定をするつもりは無いとし、 同氏やほかのプロゲーマー自身が定義の部分で苦しんだ経験があることから、良い方向でプロゲーマーの定義の議論が進んだり、定義が明確になることについては自分も望んでいる、としています。しかし一方で、「なぜ新設される予定の特定の団体に“プロを定義”する資格があるのか」 といった点が気になったとのことです。プロゲーマーの定義を模索し、今も現在進行形で探し続けてきたという百地氏は新設される団体に対し、「あなたたちは誰ですか。ゲームが好きな方々なんですか。」という思いを抱いていることを明かしました。

百地氏は、日本における「ゲーム」は全国にあるコミュニティ主導で盛り上がってきたものであり、百地氏らプロゲーマーがプロとしての価値を高めてこれたのは「コミュニティ」の後押しや「プレイヤーの皆さん」の力が大きい、という考えを明かします。そのなかで同氏は、日本での「プロゲーマー」の価値を作ってきてくれた一人一人が把握していない、どこかも知らない会議室で「ライセンス制度」の話が決まり、一方的にコミュニティや各タイトルのゲーマーにライセンス発行が告知されることは、決して誠実ではなく、ゲームやそこにいる人たちに対する愛を感じることが難しいやり方だと問題提起します。

しかしながら、百地氏自身は、こういった取り組みをビジネス化することについては、決して悪いことではないとし、その理由をビジネスにならないものは「いつかなくなってしまうかもしれない」と語りました。 日本では、過去の例としてコミュニティ主導のゲームイベントも、プレイヤー主導で本業を持つ人々がボランティア的に行ってきた経緯があり、そうすることでコミュニティもタイトルも盛り上がったとする一方、未だイベントを主催する側がお金をしっかりと稼げるような仕組みが完全には確立されていないと百地氏は課題点を挙げます。そして、この問題を改善するため、お金の流れや仕組み自体を変える、もしくはプロゲーマーの地位や価値を上げていく試みが必要かもしれないとしながら、そういった意味で今回のような試み自体は否定するべきではないとしました。

また、同時に百地氏はこの制度で本当にプレイヤーはハッピーになれるのか、もしくは「制度を作りたい・作ろうとしている側の人たちが一方的に何か得をするような仕組み」なのか、つまり、「このライセンス制度は誰が望んでいるものか」「誰のためのものか」を考える必要があるとしています。もし、この制度が「ゲームそのもの」よりも「自分たちの私欲や利権を重視」する人々によるもので、プレイヤーの明るい未来を謳いながら、実際はコミュニティやプレイヤーの声を聴かず、欺くものだったとするなら、百地氏自身が、「そういった大人たちの闘争や政治の道具として一方的に消費されてしまわないように戦う覚悟がある」と強い意思を表明しました。

世界中のゲームコミュニティに「プロゲーマーにさせてもらっている」と話す百地氏は、コミュニティに不誠実でないように最大限配慮すべきとしながら、 ライセンスは、プレイヤーとそれを支持し、支えてくれる全ての存在のためにあるべきだとの考えを明確にしました。さらに百地氏は、パートナーであるチョコ氏が行ってきた格闘ゲーム以外のゲームタイトルでの広報、ゲームコミュニティ全体の活性化、メディア、イベント出演などの活動内容を説明しながら、"これも現在のプロゲーマーの1つの形"と話します。同氏は、時代の流れでプロゲーマーの定義は変わってきており、今回のプロライセンス制度もその1つのように感じているそう。(プロではないが)プロと同等の腕前を持つプレイヤーもいるゲームの世界で、ライセンス発行をすることにより「曖昧な境界線に線を引く」という意味で制度としての役割を果たす可能性に触れつつ、それでハッピーになる人がどの程度いるのかについては、現時点で「賞金付きの大会」が一体どの程度の頻度・金額・規模感で行われるのかすら不明瞭、とさらに疑問を呈します。

百地氏とチョコ氏は、忍ismという法人を立ち上げ、イベント運営や後進の育成などをしていますが、同氏はこれも「プロゲーマー」としての活動であると考えているとのこと。 ゲームそのものに集中するべきかもしれない、現役のプロゲーマーが法人や後進の育成をするべきではない、などという意見があるかもしれないとしつつ、色々な形の「プロゲーマー」がいていいと思っており、実際にその「いろいろな形」の1つを体現していると語ります。とはいえ、反面それは業界が成熟していない裏返しでもあるともしています。

プロゲーマーは賞金獲得額など「強さ、実績」という部分が「プロ」のイメージとして大きく、人気、個性、カリスマ性なども必要かもしれない、としつつ、百地氏自身は「賞金のため」という思いが「目の前の相手に勝ちたい」という思いを上回ったことは人生で一度もないとしました。「プロゲーマーになることがゴールではない」と語る百地氏は、結局、大事なのはプロゲーマーになってからで、その中で「プロゲーマー」という役割を担う人は「プロとして自分が何を成したいか。」が明確である必要があると考えているそうです。

プロゲーマーとして活動する目的については、色々あってよいとした百地氏は、自分を応援してくださる人々など、全ての人々に応えつつ、良い試合をすること。そして、できる限り前を向いて発言をし、立ち居振る舞いに気を使い、そのうえでコミュニティと垣根をつくらずに耳を傾け、対戦相手に常に敬意を払うといった自分たちの思いや、今までの歴史、そしてこれからが「ライセンス制度」というものに集約しきれるかというと、決してそうではないという思いに至ったこと明かします。

最後に百地氏は、冒頭と同じようにライセンス制度の全てを否定はしなかったものの、「自身の信じた道と、コミュニティと共に歩んでいく」との思いが固まっているという立場を明らかにしました。ライセンス制度でプロの定義を決め、シーンを盛り上げてくれる点は賛成・歓迎としながらも、そこにゲームに対する愛情やビジョン、プレイヤーやコミュニティに対してのリスペクトが見えないと、ゲームに人生をかけてきた「プロゲーマーだけではない1個人の百地祐輔」としては無視できないと改めて結論づけています。

百地氏は今後、「御協力する場面が出てきた場合は、自身が納得した上でその判断をしたいと思います」としており、ライセンス発行を行うと明らかにしたCESA及びJOGA、e-Sports業界3団体との対話する可能性も排除はしていませんでした。日本のe-Sports界では、賞金付き大会の話ばかり取り上げられますが、日本でe-Sportsの制度を設計したり、整備する側の議論の中で、「プレイヤー」「コミュニティ」の議論が抜け落ちているのではないかと話す百地氏。課題、疑問点を"個人の主観"として明らかにしながら、「だからといってどちらか片方だけでは「日本のe-Sportsは発展しない」ということはこの業界の今の現状がそれを証明しています。双方が歩み寄り、よりよい未来につながることを私は願っています。」と締めくくっています。

すべてのゲーマー(もしくはゲーマー以外も)が、「プレイヤー」「コミュニティ」のいずれかになる場合があるかもしれませんが、いよいよe-Sportsが全世界的に波及した昨今、今一度、日本のe-Sports界について、本格的に議論すべきときが来ているのかもしれません。
《秋夏》
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