最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2021年3月25日にTML-StudiosとAeroSoftよりPC向けに早期アクセスでリリースされた『The Bus』について生の内容をお届けしたいと思います。
『The Bus』とは
これまでもさまざまな乗物系シミュレーターを開発してきた、ドイツのデベロッパーTML-Studiosによる次世代ドライビングシミュレーター。プレイヤーは1:1のリアルスケールで再現されたドイツの首都・ベルリンを舞台に都市バスの運転手として業務をこなします。
交通法規に則ったバスの運転はもちろん、ドアの開閉やチケットの発券、室内灯などさまざまな操作ができる本作。エディットモードで時刻表や路線なども変更可能で、自分だけの路線バス運行も楽しめます。
早期アクセスの現在では、2台のバスを使用して街を走るフリーモードがプレイ可能。系統と路線のエディットモードも用意されています。
『The Bus』の実内容に迫る!
本作には現在チュートリアルモードは用意されていません。まず、スタート画面でバスの種類と路線、時間などを設定する必要があります。現在使用可能なバスは「CITYWIDE LF 12M 3D」「CITYWIDE LF 18M(連節バス)」の2種類です。とりあえず通常のバスを使用するのがおすすめです。
ゲームは、まずプレイヤーがバスに乗り込むシーンから始まります。本作ではバスの運転だけでなく、ドライバー自身が自由に動き回ることも可能です。とは言え、この機能は「ただ自由に動ける」という以上の意味はありません。フォトモードがあるため気に入った風景や観光名所で記念撮影するくらいでしょうか。
ふと、バスの方を見ると乗客たちが待っていました。彼らは諦めることを知らないため、すぐに業務開始しましょう。バスを出発させるにはシートに座りエンジンを始動し、コンピューターなどの機材設定をする必要があります。本作は日本語に対応しているため,、作業に関しては指示に従えば問題ありません。
なお、本作はマウス&キーボードを使用してプレイをおすすめします。コントローラー/マウス単体でもバスの運転はできるのですが、機材などの各種操作の手が足りません。マウス&キーボードの場合、右クリックを押すことで「マウスモード」に変更され、スイッチやコンピューターなどをクリックで操作できるようになります。
さて、出発準備も完了して乗客もバスへと乗り込みました。いよいよ路線バス業務の開始です。
最近はみんなキャッシュレス決済なんですね
路線バスの業務内容は実にシンプルです。指定されているバス停を周りながらお客さんを乗降させるだけ。本作は「乗るお客さんがいる」or「降りるお客さんがいる」場合にバス停にマークが付く親切仕様なので、運転中もよほど速度を出していない限り対応しやすく作られています。
バス停に到着したら前扉を開けてお客さんをお迎え。この際、チケットを現金で買う人がいた場合、コンピューターを操作して対応することになります。もっとも、ほとんどの客さんはキャッシュレス決済のため、チケット発券は一回のルートで10人もいないのが現状です。この辺は時代の変化を感じますね。また、後扉を開ければお客さんは勝手に降りていきます。
実際にゲームをプレイしてみてまず思うのは「ベルリン道路狭い!」ということでした。いや、実際は片側2車線で、バス用の道路も併設されている場所が多くて広い作りになってはいるのです。しかし慣れない道路のせいか走りづらく、多くの道路は路上に車が列をなして止まっているためプレッシャーが大きいのです。
合流道路も多く、場所によっては突然「半キャラずらし」のようなテクニックを要求されるコースも。本当にここにバスが通っているのかな……と思わせる恐ろしいルートもありました。また、バス専用道路が突然工事中で塞がれてるというパターンも存在しています。このあたりはゲーム性を持たせるためのデザインでしょうか。正面からぶつかって大事故になりましたが。
当然の話ですが、車は安全運転が大切ですね。なお、今のビルドでは事故などにペナルティは存在していません。
リアルスケールベルリン満喫!森鴎外「舞姫」を訪ねて
さて、本作は「1:1のリアルスケールで再現されたドイツの首都・ベルリン」が舞台。具体的にはベルリンほぼ中央部・ミッテ区付近をメインに作られています。ミッテとは「中央」を意味する言葉で、歴史的建築物と最新の建築物が同居している地域です。
ミッテ区は、かつて森鴎外がドイツに留学中に住んでいた地区。そのため、現地には「森鴎外記念館」が建てられています。ゲーム内でも記念館は再現されており、建物に大きく「鴎外」と書かれているのが確認できます。
森鴎外の代表作「舞姫」をご存知でしょうか。1890年に発表された短編小説で、ドイツに留学した主人公・太田豊太郎と現地の少女エリスとの出会いと別れを中心とした物語が描かれます。本作に登場するのは、森鴎外の留学経験に基づいたベルリンの風景と言われています。
こちらは森鴎外の「舞姫」にも登場しているブランデンブルグ門です。
胸張り肩聳えたる士官の、まだ維廉一世の街に臨めるまどに倚り玉ふ頃なりければ、様々の色に飾り成したる礼装をなしたる、妍き少女の巴里まねびの粧したる、彼も此も目を驚かさぬはなきに、車道の土瀝青の上を音もせで走るいろいろの馬車、雲に聳ゆる楼閣の少しとぎれたる処には、晴れたる空に夕立の音を聞かせて漲り落つる噴井の水、遠く望めばブランデンブルク門を隔てゝ緑樹枝をさし交はしたる中より、半天に浮び出でたる凱旋塔の神女の像、この許多の景物目睫の間に聚りたれば、始めてこゝに来しものゝ応接に遑なきも宜なり。 青空文庫「舞姫」より引用
この後ろには同じく小説内に登場している大通り「ウンテル・デン・リンデン」も存在しています。ここはバスで走れる部分ですね。
或る日の夕暮なりしが、余は獣苑を漫歩して、ウンテル、デン、リンデンを過ぎ、我がモンビシユウ街の僑居に帰らんと、クロステル巷の古寺の前に来ぬ。 青空文庫「舞姫」より引用
豊太郎のモデルの一人とされている武島務が通っていたフンボルト大学です。後述していますが、一部の像などは再現されず。
豊太郎とエリスが出会った古寺(教会)のモデルの可能性が高いとされる場所の聖マリア教会。現在の研究では、ガルニゾン教会(現存せず)の方が有力とも言われます。
なお、本作では美術品などの多くが再現されていません。このあたりは権利関係の問題なのでしょう。画像はフリードリヒ大王騎馬像のある場所です。
とはいえ、実際の写真と見比べる限り、本作の再現度はかなり高め。ベルリン観光ソフトとしても面白いですね。
ここまで紹介してきた『The Bus』。現在プレイ可能なのがフリープレイだけのため、ほぼドライブ専用のゲームです。しかし、作り込まれた街の風景や細かい操作系統で行う"仕事感"は高い満足を得られます。
エディット機能については、説明不足とロードの遅さで正直使用しづらい状態。今後わかりやすいチュートリアルが実装されることで、より遊びやすくなることを期待したいところです。
本作の早期アクセスはおおよそ一年から一年半の期間を予定。製品版ではバス種類を増やすほか、マルチプレイモードやバス会社運営モードなどを実装予定です。また、Steamワークショップへの対応も行われます。
タイトル:The Bus対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2021年3月25日
記事執筆時の著者プレイ時間:7時間
価格:3,000円