古参には懐かしさを、新規ファンには歴史を―ロバート・ウッドヘッド氏らに聞くリメイク版『ウィザードリィ』の魅力【インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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古参には懐かしさを、新規ファンには歴史を―ロバート・ウッドヘッド氏らに聞くリメイク版『ウィザードリィ』の魅力【インタビュー】

Apple II版の制作秘話もうかがって、「もう高いボーナスポイントが出るまで粘らなくてもいいかなぁ」とちょっと思ってしまいました。

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古参には懐かしさを、新規ファンには歴史を―ロバート・ウッドヘッド氏らに聞くリメイク版『ウィザードリィ』の魅力【インタビュー】
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2024年5月23日(Steamのみ正式版は24日)にPC(Steam)とコンソールの各プラットフォームでリメイク版『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』(以下は邦訳:『ウィザードリィ 狂王の試練場』)がリリースされます。『ウィザードリィ外伝 五つの試練』など、Steamでも世界観を異にした様々なスピンオフがリリースされている同シリーズですが、『リルガミンサーガ』から考えても四半世紀ぶりのクラシックなナンバリング、とりわけ初代『ウィザードリィ』の主流ハードでの復活に湧いたコアゲーマーも多いことでしょう。

今回はそれを記念して、1981年にアンドリュー・グリーンバーグ氏と共に『ウィザードリィ』を生みだしたロバート・ウッドヘッド氏と、今回のリメイク版の開発を担当したDigital EclipseのCSO兼パブリッシング責任者であるジャスティン・ベイリー氏の2名にインタビューを実施。リメイク版の魅力や、オリジナルとなるApple II版制作時の思い出をうかがいました。

◆「ウィザードリィらしさ」へのひとつの答え

――まずは、ウッドヘッド氏についてお聞かせください。今はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

ロバート・ウッドヘッド氏(以下ウッドヘッド)1989年にAnimEigo(アニメイゴ)という会社を設立して以来、日本のアニメを買い付けて英語の吹き替えや字幕を付けて海外に配給する仕事をしています。

ビデオゲームに関しては、AnimEigo設立以降は自分で作るより他のゲームクリエイターにアドバイスするような立ち位置になっていますね。

――5月23日に正式リリースされる『ウィザードリィ 狂王の試練場』リメイク版の製品ビルドはプレイされましたか?

ウッドヘッドもちろんです。Digital Eclipseのスタッフからはフィードバックを求められましたが「これはすごい、よくできているじゃないか!」としか言うことがありませんでしたね。まったく、やりやすい仕事でした(笑)。ビルドのプレイでチェックしたのは「ウィザードリィらしさがきちんと出ているか」くらいです。

ロバート・ウッドヘッド氏

――ウィザードリィらしさ、興味深いフレーズです。生みの親であるウッドヘッド氏が感じる「ウィザードリィらしさ」とは、どのようなものでしょうか?

ウッドヘッド言葉にするのは難しいですね…。なんと言えばこの感覚がうまく伝わるか分かりませんが、「リスクとリターンの絶妙なバランスが取れているか」でしょうか。

例えるなら、迷宮でまだ先に進むか、街へ引き返すかを悩むあの瞬間。引き返す決断をしたのはいいが帰り道で強敵と遭遇して「もっと早く引き返しておくべきだった…」と思いながらモンスターと対峙するあの瞬間。そうした時に抱く感覚が、私にとっての「ウィザードリィらしさ」かもしれません。

その点、今回のリメイク版や、ドリコムが現在開発中の最新作『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』は、どちらも「ウィザードリィらしい」タイトルになっていると感じました。

◆ウッドヘッド氏ならではの「ゲームの遊び方」

――ウッドヘッド氏は「ウィザードリィ」シリーズ最初期の4タイトルを手がけられましたが、どの作品のシナリオが一番気に入っていますか?

ウッドヘッド手がけた作品はすべて我が子のようなものなので、それは「子供たちの中で一番愛しているのは誰?」と言われているようなものですね。答えを出すのが難しい質問です。

一方で、開発者としての視点だと、特に苦労した1作目『狂王の試練場』と4作目『ワードナの逆襲』が思い出深いです。1作目は当然すべてを新規に作り出す必要がありましたし、私にとって初のゲーム制作だったので挑戦の連続でした。苦労した分、完成した時の満足感も大きかったです。

そして、ワードナが主人公である『ワードナの逆襲』は、それまでの3作品の構造をまったく逆にした、大きく異なるシステムだったので再び同じような苦労を抱えることになりました(笑)。

――昨今の様々な作品の影響もあり、今回のリメイク版のリリースで初めて『ウィザードリィ』に触れるユーザーもいると思いますが、なにぶん古いゲームなので、そういう人たちが本作をどう楽しめばよいかについてアドバイスなどはいただけますか?

ウッドヘッド実は、それも答えるのがちょっと難しい質問です。というのも、私は「きちんとプログラムが動作しているか」、「システムが意図した通りのものになっているか」などを確認しながらプレイしてばかりいるので、ユーザー目線で自身の『ウィザードリィ』をプレイしたことはほとんどないんです。

ジャスティン・ベイリー氏(以下ベイリー)オリジナル版は、1作目『狂王の試練場』から2作目『ダイヤモンドの騎士』のリリースまで1年も空いていないくらいでした。ユーザー目線でプレイする余裕はなおさらなかったかもしれませんね。もしかしたら、リメイク版のテストプレイが(ウッドヘッドにとって)じっくり遊ぶ初めての機会だったかも……?

ジャスティン・ベイリー氏

ウッドヘッドそれは今回のリメイクでも開発者目線でしたね。私はプレイヤーである前にプログラマーなので、どうしても開発者目線でばかり見てしまいます。言い換えるなら、結果として出力されたものよりも、その制作過程に思いを馳せる方が楽しい。それが、私なりのゲームの「遊び方」なんです。それと、自分自身が作ったゲームにはサプライズがないというのもあります。いつ何が起きるか、全部分かっているわけですから(笑)。

◆古参ファンには懐かしさを、新規ファンにはRPGの歴史を

――それでは質問を変えて、リメイク版をプレイしての感想を教えてください。

ウッドヘッド現代風のグラフィックで彩られた画面上にApple II版の画面を同時に表示できて、双方が同期しながらリアルタイムで進行するのは実にユニークで名案だと思いました。

ベイリーウッドヘッド氏がPascalで書いたコードをリメイク版にもそのまま使用しているからこそできる芸当です。

画面右下に、オリジナル版の画面がそのまま表示されています
オリジナル版の画面は中央にレイアウトすることもできます

ウッドヘッドApple II版の頃から遊んでくれている人は、リメイク版にも「ウィザードリィらしさ」がきちんとあるのが分かって懐かしさを覚えるでしょうし、当時を知らない若い人も「昔のゲームはこんな処理をしていたのか」と歴史を感じながら楽しめるんじゃないかと思います。どちらの層も満足できるゲームに仕上がっていますよ。

リメイク版で一番気に入っているのは、オプション設定の豊富さです。Apple II版そのままのゲーム性にもできるし、各種設定を調整してファミコン版や、現代のゲーム風に寄せることもできます。

ベイリーゲームに関するオプションは細かく行えるようになっています。それは制作者に敬意を払い、オリジナル版のすばらしさを再現するだけでなく、プレイヤーの皆さんの経験も大切にしたいと思ったからです。

『ウィザードリィ 狂王の試練場』を遊んだことがあるとひと言にいっても、Apple II版が初めての人がいれば、コンソール版が初めての人もいます。そして、そういう人たちに「ウィザードリィらしさは何か」とヒアリングすると、どのプラットフォームで初めて触れたかで答えが異なるんです。

皆さんの経験――歴史をそのまま再現すべく、これだけのオプション設定を追加するにいたりました。(1980年代~90年代に『ウィザードリィ』のノベライズや攻略本などを多数手がけた)ベニー松山氏に、今回あらためてゲーム中に収録されるモンスター解説テキストの執筆をお願いしたのも、本シリーズの歴史を大切にすればこそです。

豊富なオプション設定で、自分にとって思い入れのある『ウィザードリィ』に近づけられます

◆「ボーナスポイント ガチ勢」の存在を知ったウッドヘッド氏の反応は!?

――せっかくお会いできる機会をいただけたので、Apple II版のことも少しだけ聞かせてください。キャラクターメイクでは時おり高いボーナスポイントを得られますが、どのような狙いがあったのでしょうか。

ウッドヘッド当時はまだキャラクターメイクに関する比較や参考になるような他のゲームもありませんでしたし、「たまにしか発生しない」程度であれば、プレイヤーのちょっとした助けになっていいんじゃないかな……くらいの気持ちでそうしただけですね。

――実は日本では、高いボーナスポイントを目当てにキャラクターメイクに時間をかけるプレイヤーの姿も見られます。

ウッドヘッドボーナスポイントの数値を気にする……時間をかけてまで粘る人が出るというのは、まったくの予想外でしたね。

私としてはその時間をキャラメイクより(パーティーを結成してからの)ゲーム部分に当ててもらいたいので、もし当時の自分がその可能性を予測できていたら、今とは異なる形の『ウィザードリィ』が世に出ていたかもしれません(笑)。

ついついやってしまう、ボーナスポイントの吟味

――(笑)。キャラクターは最大20人まで作成できましたが、この数字に意味はあるのでしょうか?

ウッドヘッド理由はいくつかあります。まず、迷宮でパーティーが全滅してしまった場合に備え、遺体を回収するキャラのための枠を用意しておく必要があるのがひとつ。

それと、当時のPCはとても高価だったので、家族や友人が1台のPCとソフトを共有して遊べるようにするのもいいかなという気持ちもありました。

リメイク版はプレイヤーの育成に応じたレベルのキャラを雇用するシステムがあり、全滅時は彼らを雇用すればすぐ救出に向かえます

――当時を考えれば、「今日は友人が作った戦士を借りようかな」というプレイも楽しそうですね。

ウッドヘッドまた、『ウィザードリィ』を制作していた頃の私はコーネル大学の学生で、当時は週末になるたびに(テーブルトークRPGの)『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に夢中になっていました。

私が所属していたグループはメンバーが多かったので、毎回同じ顔ぶれで卓を囲むわけではありません。だから、私はいつも「今週は誰と組んで冒険にいくんだろう?」とワクワクしていました。もちろん参加するキャラクターの顔ぶれや、彼らの成長度合いも毎回違うわけです。もしかしたら、そういう感覚も伝わるものになっていたかもしれませんね。

そして、最後に20人という上限に関して実も蓋もない理由を挙げるなら、単に当時のメモリではそれが限界だったんです(笑)。

リメイクで日の目見た幻のイベント、その真実は

――そう言えば、初代『ウィザードリィ』のApple II版に隠しメッセージが存在するが、不具合で表示されないらしいという話を知ったのですが、これは当時、実際に起こるイベントとして想定していた内容なのでしょうか。(編注:このメッセージ、今回の『ウィザードリィ』リメイクではしっかり見ることができます)

今回のリメイクで日の目を見た幻のイベント?何処で起こるかはキミの目で確かめてみよう。ただし1回しか発生しないので注意。

ウッドヘッドおそらくダンジョンのあるマスに来るとそのメッセージが出る仕組みとして組んでいたはずです。最終的に販売されたゲームでも表示されたかははっきり覚えていないのですが、「あるマスに着いたところでメッセージが表示される機能」を試すために入れたんじゃないかな。

該当の内容は、確か「サンダー・ザ・バーバリアン」(1980年に放送されたアメリカのテレビアニメ)のことを指していました。ちょっとした遊び心ですね。遊び心があるので、言葉遊びだったり、隠し要素だったりを自分の作品に入れるのが趣味なんです。

(編注:ウッドヘッド氏が取材の合間に、海外小説「SHOGUN 将軍」の直近で制作されたドラマ版の話題を楽しそうに振ってきてくれたのが印象的でした。ウッドヘッド氏は過去に日本メディアのインタビューに対し同作の過去に作られたドラマ版が初代『ウィザードリィ』で侍や忍者を世界設定に取り入れることになった理由のひとつであったと発言されています)

――他の作品へのリファレンス的なところですと、近年、日本のSNSでレイバーロード(初代『ウィザードリィ』に登場するモンスター)が、「The Chronicles of Thomas Covenant」(アメリカのファンタジー小説)からの発想ではないかという推測が一部でされていたのですけれども、そういうことは覚えていますか?

ウッドヘッド本当にそれで元ネタが合っているかどうか自分は覚えていないのですが、もしその小説シリーズの悪霊「レイバー」からの発想だったとすると、きっとアンドリュー(初代『ウィザードリィ』の共同開発者のアンドリュー・グリーンバーグ氏のこと)が入れたネタですね。

なぜかと言うと、貧乏だった大学生のときにそのシリーズがめちゃくちゃ面白いと勧められて、お金の余裕もないのに当時出ていた4冊を全部買ってしまったのですが……1冊目が本当に気に入らなくて。とはいえ、4冊買ってしまったので、買ったからにはと全部読みました。

結果ですか?話が進むたびにどんどん嫌いになっていって、最終的にはシリーズ自体を大嫌いになりました。だから、そのネタを入れたのは絶対に自分で無いとだけは言えるんです(笑)。

――ありがとうございます。それでは最後に『ウィザードリィ』ファンや、これから初めて作品に触れる人へのメッセージをお願いします。

ベイリー『ウィザードリィ 狂王の試練場』が戻ってきました。ファンの皆さん、迷宮に帰還する準備が整いましたよ。これから初めて触れてくれる人は、本作が『ウィザードリィ』ファンになる絶好の機会になると思います。

ウッドヘッド私が1981年に『ウィザードリィ』を生み出した時は、本当に自由を感じながら楽しく制作できました。今思うと、まるで誰かから贈り物でももらったかのようにね。

だから『ウィザードリィ』の名を冠する新たなタイトルやリメイク作品を手がける人たちも、かつての私と同じように自由に作ってくれればそれが一番よいと思っていますし、それを遊ぶプレイヤーたちも、同様に楽しんでもらえたら嬉しいです。


リメイク版『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』は、PS5・PS4/Xbox Series X|S・Xbox One/ニンテンドースイッチでは5月23日0時より配信中。Steamでは早期アクセス実施中です。(Steam版の日本語実装を含む正式版へのアップデートは24日午前1時予定)です。

なお、SteamではGame*Sparkがお届けする『ウィザードリィ』の外伝シリーズ作品『ウィザードリィ外伝 五つの試練』も配信中です。世界設定はリメイク版『ウィザードリィ 狂王の試練場』と異なるものですが、レスポンスのスピーディさを重視したシンプルなシステムのもとで、それぞれ独立したつくりの数多くの独自のシナリオや、ユーザーの制作したオリジナリティあふれるModシナリオ群が1本のソフトウェア上で楽しめる作りです。罠名・呪文の手動入力などコア層向けのオプションも搭載しています。


インタビュアー:Arkblade,撮影:乃木章,書き起こし:蚩尤

インタビュアー/関連業界のあちこちにいたりいなかったりしてる人 Arkblade

小さいころからPCゲームを遊び続けて(コンソールもやってるよ!)、あとは運と人の巡りで気がついたら、業界のあちこちにいたりいなかったりという感じの人に。この紹介が書かれた時点では、Game*Sparkに一応の軸足を置きつつも、肩書だけはあちこちで少しづつ増えていったりいかなかったり…。それはそれとしてG*Sが日本一宇宙SFゲームに強いメディアになったりしないかな。

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撮影/現場に足を運びたい 乃木章

フリーランスのライター・カメラマン。アニメ・ゲームを中心に、親和性のあるコスプレやロリータ・ファッションまで取材。主に中国市場を中心に取り上げています。

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書き起こし/汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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