2025年5月8日、「東方Project」原作者のZUN氏は同プロジェクト最新作の『東方錦上京』の体験版について、Steamストアページからリジェクトを受けていたことを明らかにしました。
ゲーム内容・情報が不透明なものはSteamから弾かれる。たとえ「東方」の知名度でも例外ではない

東方Project第20弾となる『東方錦上京』の体験版は、5月5日に開催された同人イベント・博麗神社例大祭にて体験版が頒布、それに合わせて各種ゲームサイトでも配信が開始されています。現在はDLsiteにて体験版が配布されていますが、Steamでも体験版が配布される……はずでした。
ところが、XでのZUN氏のポストによれば「ストア上のゲームの説明が簡素すぎる」と言われてリジェクトされた……とのことです。これは一体どういうことなのでしょうか。
開発者向けのSteamの使い方をまとめたSteamworksドキュメントの「体験版」のページ、「個別のストアページの要件」の項目によれば、ストアページには以下の条件が必須とされています。
体験版の具体的な内容を明記した詳細な説明を記載してください。
体験版でサポートされている機能、言語、プレイヤーモードのリストを表示してください。
特定の機能、言語、またはプレイヤーモードがベースゲームではサポートされていても、体験版ではサポートされていない場合、体験版のストアページにはそれらを含めないでください。
また、混乱を避けるため、それらの要素はベースゲームでのみ利用可能であることを明記してください。
体験版のコンテンツに固有の予告編と少なくとも5つのスクリーンショットを提供してください。
カプセル画像とライブラリアセットには、そのアプリが体験版であることを明確に示し、ベースゲームとの区別をつけるようにしてください。
コンテンツアンケートの回答が体験版のコンテンツを正確に反映していることを確認してください。
このうち、おそらく問題になりそうなのは「体験版の具体的な内容を明記した詳細な説明を記載」「体験版のコンテンツに固有の予告編と少なくとも5つのスクリーンショット」、そして「アプリが体験版であることを明確に示すカプセル画像とライブラリアセット」です。
改めてDLsiteの『東方錦上京』体験版ストアページを見てみると、タイトル画面のスクリーンショットが1枚載っているだけです。上記のSteamストアページに必要な「スクリーンショット5枚」も、「固有の予告編(動画)」も用意されていません。また、タイトル画面のスクリーンショットにしても体験版だとわかるのは右下の小さな表示だけで、サムネイルでは体験版だとわかりません。
筆者の推測でしかありませんが、それらについて本当に最低限のものだけがSteam用に新たに用意された(あるいはされなかった)うえで、ZUN氏が自身で言うように「説明が簡素すぎた」なら十分リジェクトの対象となりそうです。
とはいえ、前作『東方獣王園』のSteamストアページもデモ動画1本、スクリーンショット5枚だけと比較的シンプルなのを見る限り、「シンプルなストアページにする」というのは従前からのZUN氏の意向なのかもしれません。が、今回はそれが裏目に出てしまったように思います。
なお、説明文についても『東方獣王園』の時点で非常にシンプルな記載(英語非対応のタイトルのためか、Steamの言語を英語に変えても英語の説明文は用意されていないようです)なので、今回の体験版ストアにおけるゲーム内容記述が本当にほぼ皆無だった可能性もありえそうですが……。
いずれにせよ、こうしたSteamストアページの制限は粗製乱造されたゲームがむやみに登録されることを防ぐという目的もあるわけで、そうした制限がたとえ「東方」という伝統あるコンテンツの原作者自身であっても適用されるということは、Steamの審査体制は多くのユーザーが思ったよりはしっかりと運営されているという何よりの証拠ではないでしょうか。