
残された最後の神器を巡って新たな戦いが繰り広げられる『アサシン クリード シャドウズ』の拡張コンテンツ「淡路の罠」。本土とは異なり安全地帯が存在しない淡路島をどうサバイブしていくか、道を歩いているだけでも油断できないスリルが楽しめます。
舞台となる淡路島は、近年だと玉葱や新しいテーマパークが注目されますが、数々の大きな戦の足場になってきた瀬戸内の要衝であり、古くは日本神話にも登場する「日本の要」と呼べる島なのです。


淡路島はイザナギ、イザナミの国生み神話に縁がある場所で、「古事記」には「淡道之穂之狭別島」として日本原初の島の一つとして登場しており、名所の絵島が二柱の神が最初に降り立った「オノゴロ島」に見立てられています。伊弉諾神宮は日本最古の神社であり、樹齢900年を超えるという境内の大樹「夫婦楠」からも千年の時を感じることができるでしょう。

淡路は古くから朝廷にとって重要な役割を担い、海産物を納める「御食国(みつけくに)」の一つに指定されていました。淡路には「海人族」と呼ばれる渡来の勢力がいたと見られ、国生み神話も海人族から伝わったという説もあります。2015年には松帆銅鐸が出土し、周辺には多数の鍛冶場跡と鉄器が見つかったことから、古墳時代における金工生産地だったのではないかと、淡路の位置付けが再検討されつつあります。
百人一首にも収められている撰者の藤原定家が「来ぬ人を 松帆の浦の 夕凪に 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」と詠んだように製塩が盛んであるほか、764年の藤原仲麻呂の乱に関わった淳仁天皇の流し先にもなっています(淡路廃帝)。

平安の頃からは沼島を中心に海賊が勢力を伸ばし、瀬戸内海に台頭する水軍の拠点になります。淡路水軍の中では安宅氏が筆頭として力を付け、戦国期に入ってきた三好氏、毛利氏と手を結んで織田との戦いに加わりました。石山合戦における木津川口海戦で活躍したのが安宅氏率いる淡路水軍です。
毛利氏は岩屋城に入って西伐の秀吉軍と戦いましたが、秀吉軍は3日で淡路全土を掌握、安宅氏もこれを機に滅亡していきます。ゲーム中の岩屋城は損傷が著しく、トラップが大量に仕掛けられた忍びの根城として使われていますが、これは毛利と秀吉軍の激しい戦闘があった名残なのかもしれません。


平定後の洲本城には仙石秀久が入り、更に先にある四国の長宗我部に再編した水軍と共に向かいます。「淡路の罠」で木村邦が乗っ取ったのは、おそらくこの仙石が四国攻めで不在だった時期だと推察されます。
仙石秀久の後には脇坂安治が入ると、朝鮮出兵で淡路の民が多く徴兵されました。このときの犠牲者を弔う「高麗陣打死衆供養石碑」が松帆の地があります。洲本城は江戸以降も幾度か城主は移り変わり、現在は鉄筋コンクリートの復元天守が建っています。
「淡路の罠」の冒頭では淡路に伝わる伝統芸能「淡路人形」が演出に用いられ、劇中劇を『アサシン クリード クロニクル』のように2Dアクションで進行する一幕もあります。淡路の人形芝居の起源は諸説ありますが、一般的には室町時代に西宮神社に仕える百太夫という傀儡師が島に渡って伝授したと言い伝えられています。物語はまさに西宮神社の巡業から始まるので、演出としては上々だったのではないでしょうか。


この淡路人形は、江戸時代には人形浄瑠璃を取り入れて全国巡業をするまでに発展し、最盛期には約40座ほどがあったようで、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。日本の人形芝居と言えば3人で操る文楽の形式が有名ですが、淡路人形ではそれ以前の一人で操る形が残っており、大がかりな転換がある舞台セットも特徴です。現在は「淡路人形座」が唯一活動している状況ですが、海外公演やオンライン配信も積極的で今後の継続も期待されます。
神話に連なる古代から現代のサブカルまで様々な時代の文化が集まる淡路島。本作を通じて興味を持ったり、テーマパークを訪れたりした際には、少し足を伸ばして日本の起源を覗いてみるのもいいかもしれません。
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