
ビデオゲームの歴史は企業間の競争の歴史でもあります。ライバル同士の企業や、ゲーム同士が競い合うことでジャンルを活性化させてきた部分は数多いのです。
ですが、歴史はシンプルなライバル同士の競い合いのみを描くことに終わりません。時に、なんとライバルの企業同士が合併したり、ライバルのゲーム同士がコラボしたり、ライバル企業のゲームを開発するようなこともしばしば起きてきました。
そんなライバル企業同士の愛憎渦巻く関係の最先端、それが『NINJA GAIDEN 4』に他ならないでしょう。
本作はコーエーテクモゲームスのTeam NINJAによる「NINJA GAIDEN」シリーズの最新作。ところが今回の『NINJA GAIDEN 4』の主要な開発は違います。なんとあの「ベヨネッタ」シリーズや、『ニーア オートマタ』のプラチナゲームズなのです。
ハイスピードでコンボを叩きこみ、スタイリッシュな動きを見せつけるスラッシュアクションを作り上げてきたTeam NINJAとプラチナゲームズの両雄。そのふたつがタッグを組んだことは、まさしく歴史的な出来事といって間違いないでしょう。
しかし、同じジャンルを得意としながらも、歴史も文化も違う両者。コラボレーションには摩擦は生じなかったのでしょうか?
いよいよ10月21日の発売を控えた出展となる「東京ゲームショウ2025」にて、そんな両者の開発についてお話を伺う機会がありました。Team NINJAからはプロデューサーの平山正和氏、プラチナゲームズからはディレクターの中尾裕治氏に、まさかのライバルチーム同士の開発における文化的な違い、歴史的な違い、そしてアクション作りの生理的な気持ちよさの差についてなどを伺ってきました。
Team NINJAとプラチナゲームズ、開発文化の違いは “調整”にあった?
―― いよいよ来月発売ですね。初めてTeam NINJAさんとプラチナゲームズさんが組むと聞いてから、「ライバルの開発チーム同士が組んだときの、お互いの開発の文化的な違いってどれだけ大きかったのか?」というのが気になっていました。
たとえば野球で言ったら、阪神を巨人の選手やコーチなどが全て改造している、というようなイメージなんです。まずありえないですし、実現したとしても絶対に球団の歴史も環境も違うから摩擦が起きると思うじゃないですか。でも『NINJA GAIDEN 4』はそれが実現してしまったというか。すごいことだけど、簡単じゃないことも多かったんじゃないかと思いまして。

中尾裕治氏(以下、中尾):どちらから行きますか?
平山正和氏(以下、平山):どうぞ。
中尾:わかりました。開発は基本的にはプラチナゲームズが行い、Team NINJAさんに定期的にビルドをお渡しして見ていただくという形で進めていました。お互いの方針に関して、調整におけるその健全なぶつかり合いはありました。「もう少しこうしたい」という。
――そこは気になりますね。改めて「ベヨネッタ」シリーズや、『NINJA GAIDEN』の過去作をやり直していたんです。やはり両シリーズって、一見すると同じスラッシュアクションに見えるけれど、まったく違う開発の文化的歴史を持っていることを感じたんですね。
たとえばコンボアクションひとつ成功させるゲームプレイひとつ取って見ても、プラチナゲームズは豪華な演出で返してくれるように作っている印象があります。一方、Team NINJAは、どちらかというとゲームプレイの流れを途切れさせないようにさらっとした演出にしているように思える。歴史的には「デッドオアアライブ」シリーズに携わってきたチームでもありますから、格闘ゲームのようなプレイ感があるといいますか。
もっと細かく言えば、ヒットストップの使い方も両者でまったく違うと思うんです。
中尾:最初の方針として『NINJA GAIDEN』らしく作ることは曲げずに開発してきました。しかしプラチナゲームズとしてリスペクトを持って作っていったものの、プラチナらしい部分が開発途中で出すぎてしまうところもありました。
――なるほど。
中尾:ビルドを触ってもらい、「ここをこうした方が『NINJA GAIDEN』らしいですよね」という話し合いを定期的に行っていました。
もうひとつ、私自身が『NINJA GAIDEN』の大ファンなんです。そこから当時は「こういう利便性はあったけど、こういう弱点はあったから、そこはこういう風に補完した方がいいんじゃないか」というディープな話し合いを行っていました。でも見方を変えれば、相当シリーズのオタ語りを2人でしながらやっていたという感じの調整でしたね。
なんというか、ある種、濃いぶつかり合いのようなものはありました。
平山: まさにおっしゃっていたところというのが我々もプラチナゲームズの魅力だと思っていますし。
中尾さんは他のインタビューでも、「こういったところがTeam NINJAの特徴だと思う」というようなことを言ってくださったりすることがありました。我々としても、やはりシリーズの新しいタイトルを作る上で、そういうプラチナさんの良さは入れたい。
だけど、あくまでプラチナさんの新作ではなく、シリーズのナンバリング最新作であることは絶対に外せないところでした。その『NINJA GAIDEN』らしさについては、最も議論や調整が多かった部分です。
“会社の垣根を越えて”とよく言いますけど、本当に中尾さんとは毎日ずっとやり取りしていたので、まさにその言葉通りでした。
中尾:そうですね(感慨深く)。その中で、今回は新しく “鵺の型”というシステムを入れました。これはこれまでの『NINJA GAIDEN』に無かったシステムなんです。
―― 鵺の型は『NINJA GAIDEN 4』ならではの戦闘方法ですね。特にこのアクションにはTeam NINJAとプラチナゲームズのクリエイティブの、ちょうどいい落としどころを感じました。

中尾:まさにおっしゃる通りで、鵺の型を強くしすぎると大味なゲームになってしまう懸念がありました。やはりシリーズの持つ、アクションの繊細さを大事にしたかったのです。
鵺の型というシステムが生まれるまでは早かったんです。しかし、そこからのチューニングはずっとやっていました。バランス取りをずっとやって、今の形に落とし込んだという感じでした。
――プラチナゲームズらしさとTeam NINJAらしさって、長年のあいだ会社で仕事する中で、文化的なものとして身に染みてくるところがあると思うんです。まず平山さんに伺いたいことで、『NINJA GAIDEN』の新作を開発するうえでのTeam NINJA文化ってどこで感じましたか。
平山:「NINJA GAIDEN」シリーズの特徴って超人アクションを体験できることですよね。ゲームの要素を分解していくと、プレイヤーがこういう風にしたいアクションが出ることは重要だと思っています。
多彩なアクションの選択肢の中から、自分の思い通りに動かすことができるというところが、結果的に超人アクションに繋がることがシリーズのアクションの根幹にあると考えています。
これは先ほどおっしゃられた、格闘ゲームらしいというところにも紐づく話になります。いわゆる敵と自分のアクションスキルで、相手が何をしてきたから自分が何を選択をするのかという、フェアな攻防をできるようにするために詰めています。
Team NINJAでは「プレイヤーと敵がフェアでなければならない」というのがよく話に出ます。それは今回の『NINJA GAIDEN 4』をはじめ、そういったところを重要視していますし、アクションの自在な手触り感といったところが『NINJA GAIDEN』の大きな特徴の1つかなと思います。
―― 私は歴代作品をプレイすると、まずキャラクターやストーリーの深みを作るよりも、徹底的にスムーズなゲームプレイを磨くことに集中している印象があります。高フレームレートで安定させ、滑らかな動きで戦わせるということを徹底している感じがするんですね。
もちろんコンボも魅力ですが、どちらかというとコンボを競うというより、死中をどう切り抜けるかというゲームプレイに集中しているといいますか。これは本シリーズを打ち立てた板垣伴信さんの作った開発文化のように考えてきたのですが、実際のところはいかがでしょうか。
平山: おっしゃる通りの部分はあると思いますね。Team NINJAはアニメーションの大切さをかなり重要視していますし。
プラチナゲームズの文化として、そのアニメーションチームとバトルを作るチームは、かなり密にやり取りをするチームでもありました。アニメーションチームからの提案もあるし、我々もこういう風にしたいといった密な議論は昔からの文化としてあります。そこは徹底してやっていますね。
―― 中尾様はプラチナゲームズの文化はいかがでしょうか。入社した頃から今までに感じたことを伺えますでしょうか。

中尾:入社は2018年ですね。プラチナゲームズの文化って、それこそ今回の『NINJA GAIDEN 4』の中でも入れたのがダイナミックさのようなところはプラチナならではだなという風に思って入れています。
加えて、アクションゲームとしての体験自体を、ジェットコースターのように一気に駆け下りていくようなものにするところは、プラチナゲームズがアクションゲームを作る中で文化的にとても大事にしている部分です。
―― 確かに初代『ベヨネッタ』を思い出すと、オープニングからもう主人公と建物が落下してるところで戦うみたいなシチュエーションでしたね。私の印象では、プラチナゲームズはアクションの競技性はもちろんですが、演出やシチュエーションですごい体験を与えるイメージがあります。
中尾:そういう部分もありますし、ゲームプレイで驚きとか喜びを強調して表現しているところは分かる気がします。
たとえば今回の鵺の型や、 “滅却”の演出にしても、今まで以上に気持ちよさが高まるようにかっこいい演出にしたり、下げからの上げのような体験のカーブを極端にしていくところがプラチナの文化的な良さかなと思います。
―― プラチナゲームズでは、アクションでうまくコンボが成功した時、その成功した実感を高めるように豪華な演出が入る印象があります。たとえば「ベヨネッタ」シリーズだったら、ひとつのコンボの区切りで、巨大な足を召喚してドカーンとキックするカッコよさを入れていますよね。
中尾:まさにそうですね。
―― コンボのあり方をTeam NINJAとプラチナゲームズのアクションを比べても、かなり文化的に違うように見えるんです。『ベヨネッタ』と『NINJA GAIDEN』ではアクション中のヒットストップの置き方が全然違って見えるんですね。こう言っていいのかわからないですが、よく最後まで組んで開発を走りきったなと(笑)。
一同:(笑)。

平山: まさにその今おっしゃったヒットストップについては、いろいろやり取りがありました。ヒットストップのケレン味を、最初はもう少し強めに入れていただいていた時代もありました。
ですが、手触りだったり滑らかなアニメーションの繋ぎなど、そういった部分を実現する上で、ある程度調整する中で、少し抑えたところもありました。それでもゲームプレイの気持ちいい瞬間に関しては、逆にこう残していたりするのが現状の『NINJA GAIDEN 4』だったりするんですよ。
通常のコンボには基本的にヒットストップは入っていないのですが、鵺の型のモードの時には、手触りとして特別感を出すために少し入れています。
―― ありがとうございます。『NINJA GAIDEN』は、コンボがうまくいったときの滅却もあっさりした演出で、すぐ次のアクションへの流れが途切れないように演出を抑えていると思うんですよ。そこに『デッドオアアライブ』のような、初期の格闘ゲーム的な文化が通っていたのかなと私なんかは思っていたりするんです。
一方、プラチナゲームズさんはコンボが成功するほど、強い演出をする傾向を感じていました。両者の方向性は真逆だと思いますから、開発のどこかでぶつかりあってなかったのかを考えたりしたんです。
中尾:ありました。全然、実話ですね。
平山: そうですね、ありました。かなりやり取りしましたよね。何回も何回もね。
―― やはりですか。開発の最初の方で「こんなに開発の文化が違うのか!?」といった印象はお互いにありませんでしたか。
中尾:ありました。ありましたね……(しみじみと)。その中で譲れない部分と、「でも『NINJA GAIDEN』なんだよな、この作品」と思い直す繰り返しでしたね。
―― 中尾さんはプラチナゲームズに入る前、ファンとして「NINJA GAIDEN」シリーズをプレイして、魅力を肌で知っていると思うんです。その記憶と、実際プラチナゲームズに入り、仕事していく内にプラチナゲームズ文化の考え方にゲーム開発も心の中で変わっていったと思うんですが、『NINJA GAIDEN 4』を作るうえで葛藤はありませんでしたか。
中尾:私が今回の『NINJA GAIDEN 4』で達成したかったことで、「シリーズのプリミティブな体験自体は損なわないようにしたい」というのがありました。
久々のナンバリングとして出て、全然ゲーム体験が様変わりしたらファンの方もガッカリすると思いますし。私自身もそれを望んでいるわけではないんですね。やはり「ナンバリングで新しいことをするのはいいでしょ」とはならないので。ある意味、変なプライドは捨てて、真摯にTeam NINJAさんに『NINJA GAIDEN』らしいところをしっかり詰めるためにお話を聞いていきました。
元のシリーズの体験自体を損なわないようにするというところは、私の気持ちとしても徹底していました。なのであまり自分の中でのギャップのようなものはなかったです。
―― 開発期間はどれくらいになりますか。

平山: プロジェクト自体を3社でやっていこうという話が出たのはだいぶ前で、おそらく5年ぐらい前ですね。その後、本格的に開発が始まったのがだいたい3年前ぐらいになります。
※本作はマイクロソフト側のオファーで企画が始まり、コーエーテクモゲームスとプラチナゲームズらが関わるプロジェクトとして始まった。
―― 開発の何年目ぐらいで、Team NINJAとプラチナゲームズの開発文化の折り合いがついてきた実感がありましたか。
中尾:これがまた少し不思議な流れで、鵺の型を含めたゲームの骨子は早々に決まって、開発を進めていくんです。「これだったらまとまりそうだ」と開発していったんですが、どちらかというと、先ほどのヒットストップの話のように、調整段階にいろいろありました。
アクションがひと通り入った後、いろいろ調整をしていった時に「このヒットストップ、妙に重くないですか」という反応がTeam NINJAさんから返ってきました。「この重いヒットストップは意図していますか?」と聞かれ、「意図しています」という話から発展してチューニングのターンでかなりやりあいましたね。
――それはまた緊張感が想像できるやり取りですね!
平山: そういう調整のやり取りのように、開発初期よりはむしろですが、ここ1年、2年ぐらいの開発中期以降が1番やり取りも多かったです。実際のビルド自体も、1年前のビルドと今のビルドはもう全然別物だったりするぐらい、いろいろ試行錯誤しながらやってましたね。
―― その調整段階で、ようやく両者の思惑が合致していったような。
中尾:それこそ両者の共通してる部分ももちろんあるじゃないですか、ただ、そこはガワの部分だったので、まだ最初の方の実装では細かいところに気づけなかったんですよね。
―― 両者はゲームの見た感じは似ていますが、開発の文化的な流れはかなり違うため、その誤差をどう埋めていくのかのような。
中尾:先ほどの調整の件も含めて、進捗していけばしていくほど、より細かく違いが明らかになっていくので、そこをこうすり合わせていったイメージが近いかもしれませんね。
両者の開発文化の原点にいた、板垣伴信氏と神谷英樹氏についてどう考えているか
――そこがとても興味深いところですね。両者とも、開発文化の源流にあるクリエイターの影響は大きいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
Team NINJAであれば、やはり板垣伴信さんが作った文化はどれだけ大きいのか。プラチナゲームズであれば、神谷英樹さんの作った開発文化は影響が大きいのかなどが気になります。特に、歴史的には板垣さんと神谷さんがライバル同士とファンから見られていた時期もありましたし。
平山: 私は直接、板垣さんが在籍されていた時代にはいなかったのですが、今回の『NINJA GAIDEN 4』にはTeam NINJAのスタジオヘッドである安田(文彦氏)がプロデューサーで入っています。
安田はもともと「NINJA GAIDEN」シリーズにずっと対応していました。過去作ではディレクターも担当していたので、そういった経験の中で大切にしてきた部分を理解しています。
また伝統的にTeam NINJAで大切にしてきたこととして、先ほどお話ししたフェアな攻防をはじめ、そういった部分は開発に限らず、安田から私自身も学んだところもあります。アクションゲームの手触り、モーションの繋ぎといった細かいところも含めてですが、やはりそういったところはチームに継承されていると思います。
――中尾さんはプラチナゲームズで神谷英樹さんの作った開発文化の影響についてはいかがでしょうか。
中尾:私の中での解釈なので、少し神谷さんと考えが違ったらあれなのですが。神谷さんって、どちらかというとプラチナの文化を固めるというよりは、神谷さんが出したタイトルを中心に、それぞれのクリエイターの個性を爆発させるための開発文化作りのようなのが中心だったかなと私は思っているんです。
なので、神谷さんが作っているゲームを中心に、神谷さん色に染まったゲームばかりができる、ということではなく、クリエイターそれぞれの独創性や、それぞれが大事にするものを遺憾なく発揮していく環境のようなところが、プラチナゲームズの良さだったのかなという風に思っています。
そこは今も続けているつもりですし、私も続けていこうと思っている部分だと思っています。これはプラチナゲームズだけではなくて、ゲーム業界全体を通しても、そういう各々のクリエイターの個性とか大事にしたいものは貫いていくべきかなと思いますし。
私が直接そう言われたわけではないですが、神谷さんから肌で感じながらやっていたということがあるので、自然とそういう大きい考えの部分に関しては継承しているかなと思います。
――お話を伺って納得するのは、やはりプラチナゲームズの作品はアクションが強いと言われる他にも、キャラクターや世界観づくり、音楽の演出もトータルで強いことですね。それは各ポジションのクリエイターの力が発揮できる開発文化があるのか、と感じました。
中尾:ある種、全部にこだわるようなところはあって、それが強く出ているのかなと思います。とても微細なところにこそ表現したい大事なものがあるとか、そういうところを見逃さないようにしています。
ディレクターもそうですが、その各クリエイターたちもその細部に触れながら、自分のできることを全力で投球していく。そんなふうに働く姿勢というか、ゲームを作る姿勢のようなところが強かったというのが、結果的に今お話いただいている演出の強烈さというところに繋がったのかなと思います。
スラッシュアクションを “いい焼き加減に”作っていく
――そういう意味で、『NINJA GAIDEN』はスラッシュアクションそのものを虚飾なく体験させるゲームだとも思うんです。変な例えかもしれないですが、素材そのもののサンマの丸焼きが美味しいというのを大事にしているような。
対照的にプラチナゲームズさんは、ソースなどの調味料から料理を盛る皿まで作りこんだものをやろうとしている印象です。でもTeam NINJAとしては、『NINJA GAIDEN 4』を作るに当たって「もう少し素材そのものにしたいんだけどな」というすれ違いなどはなかったのでしょうか。

平山: 逆になのですが、先ほどアートの話に紐づくのですが、我々としても、いわゆるそのダイナミックなアクションというだけではなくて、我々では出せないダイナミックなアートスタイルのようなところも、プラチナゲームズさんの特徴の1つだなという風に思っています。
そういった意味ではプラチナゲームズさんの方で、こういうアートがいいんじゃないかというところを見た時、できるだけ取り入れようとしつつ、両者で議論しました。我々としてはどちらかというとそこは尊重していましたし、そこも一緒の開発ならではのポイントなのかなと思っています。
たとえば、ゾンビが踊るクラブのようなステージがあったりします。初めて見た時に、絶対思いつかないなと思いました(笑)。でも、『NINJA GAIDEN』として成立しているし、そういう面白さというのはプラチナさんのアイデアがあったからこそ入れられたポイントかなと思っています。
―― 「NINJA GAIDEN」ならこの世界観もありだろうと、プラチナゲームズのアート班の皆さんが狙って考えて実装しているあたりに両者が混ざっている雰囲気を感じますね。
中尾:そうなんですよ(笑)。先ほどのサンマの話で言えば「光る大根おろしを入れよう。とりあえずもう少し味の濃い材料を入れよう。器を変えよう」といった感じがあって。
――やはり味を濃くしてしまうような(笑)。
中尾:いつもだとそれを全部やってしまうのですが、今回に関しては、いわゆるサンマの部分をしっかり今まで通りの形で磨いていくというか、いい焼き加減にしていくような、そんな作り方ですね。
――普段の「NINJA GAIDEN」シリーズよりも、プラチナゲームズさんのアートによってサンマを乗せるお皿が豪華になったように思います。そういう意味で、中尾さんはじめプラチナゲームズさんへのフィードバックとして「もう少し味を落としてくれ」とか「ここまで豪華な演出は控えてくれ」というような反応はTeam NINJAさんからもあったのでしょうか。
中尾:演出面においては、もともとシナリオのプロット段階からみっちり話したりしていた時期がありました。また、それこそ私の中で自信のある部分として、ある意味私がシリーズのことを大好きなのもあったので、演出回りだとかシナリオ部分だとかというところの大きいところに関しては、あまりそのブレは起きなかったかなと。
なので、何回も話戻ってしまって申し訳ないですが、調整なんですよね。
―― やはり最終的にはアクションの調整で、両者の文化的な違いが1番出たとも言えるのでしょうか。
中尾:そうですね、手触りは1番出ましたね。
平山: 絶対そこだと思います。
――クリエイターの作家性というべきかはわからないですが、企業の開発からインディーゲーム開発者までいろいろお話を聞いていると、アクションゲームって手触りに1番、クリエイターの生理的なレベルの反応がゲームデザインに出てくるように思うんですよね。だからこそ、調整の部分に中尾さんの生理的な部分が1番出ているんじゃないか、と気になります。

中尾:正直、細かくやったので、もう何日でも語れるぐらいではあるんです。既存のテクニックの中で良かった部分を伸ばすことや、少しした部分で、私は好きなキャンセルの具合の調整とかをそのまま入れたりだとか。マニアックに作っていたので、アクションはずっとずっと触っていましたね。
先ほどのヒットストップについても、これもディープな話になってしまうのですが、技ごとに違うんですよ。特定の場所では必ずこの量のヒットストップが発生するとかではなくて。アクションの内容とか状態とかによって細かく変えています。
とにかく「NINJA GAIDEN」シリーズの手触りと、プラチナゲームズの手触りのようなところを、上手いことミックスさせていきました。
―― それは面白い話ですね!平山さんからのフィードバックで、そうした中尾さんの調整に対して、Team NINJA側からこう直してほしいような部分って教えていただけますか。
平山: 非常にそのやり取りは多かったですね。基本的にはアクションの手触りのやり取りもいろいろさせてはもらいました。それ以外の部分だと、バトルシステムの部分が1番やり取りが多かったですね。
先ほど中尾さんの方からもおっしゃられたように、鵺の型って開発当初からかなり変わっているんです。そこでのやり取りはとても多かったです。昔の段階では、戦闘はもう鵺の型が一強だった時代がビルドを通じてありました。鵺の型を使っていれば勝てるというような。
―― 新システムの強さが目立つのはいいですが、ゲームバランスとしてはまずいですね。
平山: でも、そのプラチナさんらしいそのダイナミックさというのは、もうその当時から出ていました。とても可能性を感じるフィールドではありましたが、先ほど中尾さんがおっしゃっていたプリミティブな体験にどういう風に落とし込むのかというところを、むしろやり取りすればいいんじゃないかというところもあって。
結果的には細かい話というか、システムに依存する話になるのですが、たとえば通常のモードよりも鵺の型って敵を欠損させやすかったりするんですよ。欠損させると、過去作にあったエッセンスという赤い玉がでますよね。今回、それは結界という名称になっています。
今回絶技をする時、結界を吸収する技が入っています。結界が出ることによって、絶技に繋げ敵を倒すという、いわゆるシリーズにあったシステムに鵺の型を使うことによって、アクションのサイクルを回すことができます。
そういったシステムの消化というか、鵺の型の役割を『NINJA GAIDEN 4』に落とし込むやり取りをさせていただいて、今の形に落とし込んでいるところはありますね。
―― ありがとうございます。最後の質問ですが、古くはもうライバル同士とも見られた頃もあったTeam NINJAとプラチナゲームズが、手を組んで開発してきた実感が何かを一言いただけますか。
中尾:私が総じて良かったなと思っているのがアクションの手触りの繊細な部分で、『NINJA GAIDEN 4』はやはりそれがとても強かったので、その繊細さから得られる体験、それこそカタルシスが、今までのプラチナゲームズのゲームでは出せていなかったところだったりはします。
そこは勉強になりましたし、良かったなと思っています。いい学びを得られたところは、プラチナゲームズという、これからもアクションゲームを作っていく会社としては、とても大きなものを得られたと思ったので、コラボできてよかったです。
――Team NINJAの開発文化をひとつ学べたような。
中尾:そうですね。はい。
――平山さんはいかがでしたか。
平山:私自身も、少し繰り返しが多くなってしまいますが、プラチナさんが持っているそういったダイナミックさ、ケレン味、そういったパワーをうまく「NINJA GAIDEN」シリーズに取り入れることが、今回、一緒にタッグを組む1番の理由だと思いますし、最もユーザーの皆さんに向けての価値を出せるポイントだという風に思っていました。
そういった意味では、この3年間、このいろいろなやり取りを通じてプラチナさんの良さをシリーズに取り入れることをやりきることはできたのかなという風に思っています。端的に、プラチナさんとTeam NINJAが組んだら、こういう『NINJA GAIDEN』ができるんじゃないかと、皆さんがこう思い描くような体験にはできたのかなと思うので、ぜひ体験していただきたいと思います。
過去十数年以上にも及ぶ、ふたつのスラッシュアクションの開発チーム。両者の歴史的な邂逅となった『NINJA GAIDEN 4』では、まさしくアクションゲーム開発の美学が交錯した瞬間に溢れています。
ある年代以上のアクションゲーマーは、『ベヨネッタ』や『NINJA GAIDEN』で育ってきたことでしょう。その両者の歴史の総決算であるかのような『NINJA GAIDEN 4』はいよいよ2025年10月21日にPS5/Xbox Series X|S/Steam向けでリリース予定。また、Xbox Game Passでも同日に配信を決定しています。十数年以上に渡り、アクションを磨き上げ続けた宿敵同士の共闘が披露される瞬間が迫っています。













