『Mouthwashing』や『No, I'm not a Human』など、リリースごとに話題をさらう気鋭のパブリッシャーCRITICAL REFLEXと、デベロッパーのBastinus Rexが贈る、一人称カードADV『CARIMARA: Beneath the forlorn limbs』が10月6日に配信されました。日本語表示にも対応しています。
本記事では、恐ろしい雰囲気ながらもどこかゆったりとした時間の流れる、本作の魅力をお届けします。なお、記事の制作にあたってはSteamキーの提供を受けています。

舞台はむかしむかし、鬱蒼とした森の中のあばら家。プレイヤーは物言わぬゴブリンの魔法使い「カリマラ」として、小屋の主である「老婆」からある依頼を受けます。依頼の内容は、地下室に住まう「幽霊」を退治すること。カリマラは幽霊の謎を解くため、家の中を探索していきます。
カリマラは言葉を発することができませんが、その代わりに「カード」の魔法を使うことができます。いろいろなオブジェクトにインタラクトすると、手札にそのカードが追加されます。それを老婆などのNPCに使用することで、さまざまな手がかりを手に入れることができるのです。なお、カードは人間だけでなく、様々な動物にも使用可能。言葉を発せないカリマラだからこそ、カードでそれぞれの話を聞く事ができます。

ちょうど、『逆転裁判』シリーズの「証拠」システムのような作りといえば理解しやすいのではないでしょうか。正直に言って、システムだけ抜き出せばカードである必然性は感じられません。しかし俗に言う「会話デッキ」を組み立てるような面白さもありますし、オブジェクトを指して「これは何?」と質問するというシステムは、どこか“なぜなぜ期”の子供のような気分も感じられます。
また、中には宝箱など、ある特定のカードを使用しないとインタラクトできないオブジェクトも存在。なんにせよデッキを強化し、手がかりを集めていくことが重要です。謎解きに関してもNPCから適度にヒントが与えられるため、全てのカードを試してみればとりあえず詰むことはないでしょう。
また本作のもう一つの魅力は、まるでグリム童話から抜け出してきたかのような、恐ろしくもかわいらしいNPCたち。依頼してきた老婆は非常に恐ろしい見た目で言動も物騒ですが、時にはこちらを心配する素振りもみせ、意外に優しい側面も見られます。

他にも、嫌味をたれながらも、嫌われ者である老婆の様子をひっそりと見守る「フクロウ」や、4つ目のクリーチャーなど多様なNPCが存在。ホラーとして恐ろしさも感じられつつ、どこか人間味あふれるキャラクターたちに、筆者はなんとも言えない魅力を感じました。あえて例えるなら、「バイト先のちょっと怖い先輩」のような微妙な距離感のキャラクターたちは、本作の恐ろしいながらもユルい雰囲気に深みを与える“スパイス”となっているのです。
そして、本作のストーリーについて。もちろん詳しいディテールは語りませんが、本作のストーリーは“言葉を話せない”カリマラならではのものとなっています。先述した通りカリマラは言葉を発せないからこそ、カードを使って質問し、キャラクターたちの話を聞くこととなります。そしてキャラクターたちに共通するのは、プレイヤーにとっても、世間にとっても「恐ろしく、不気味な存在」であること。

社会から顧みられなかった彼女たちにとって、自身の話や歴史を“聴いてくれる”存在は、主人公であるカリマラだけであり、そして画面の向こうのプレイヤーだけです。そうした、一般の歴史には残らない「外れ者の個人史」を、プレイヤーは垣間見ることができるのです。
本作は30分~1時間ほどでクリアできるコンパクトなゲームですが、その分濃度の高い体験ができました。ゆったりとした時間の流れるあばら家で、恐ろしくも優しい物語を体験してみてはいかがでしょうか。
『CARIMARA: Beneath the forlorn limbs』は、PC(Steam)向けに10月6日リリース。なお、日本語表示に対応しています。







