
2025年10月4日と5日の2日間、大阪・梅田のグラングリーン大阪にてインディーゲーム展示会「大阪インディーゲームサミット(OIGS)」が開催されました。
初開催となった本イベントですが、関西圏のクリエイターはもちろん、日本全国、そして海外からも多数のゲームが集結。本稿では、韓国発の「オタク」がテーマのアドベンチャーゲーム『破滅のオタク』のプレイレポートをお届けします。
◆オンラインゲームと現実を往来して“破滅”を阻止……?
本作の主人公は、日本のオンラインゲーム「アイドル☆スター」の熱狂的なオタクであるジン・ダヨン。今日も仲良くフレンドと一緒に、アップデートされたゲーム内容の話題で盛り上がっていました。
そんな主人公のもとに、キャラクターをイメージした香水が公式グッズとして“日本限定で”発売されるという、ビッグニュースが舞い込むところから物語は開幕。

ハードルの高い海外限定グッズを手に入れるべく、オタク仲間たちはお得な「共同購入」を提案。過去に経験のあるダヨンは、その代表者を任されることになるのでした。

ゲームからログアウトしたダヨンは、さっきまでの煌びやか世界はどこへやら、現実ではゴミの溜まった部屋で1人暮らし。部屋が汚いのとオタクなのは別だと思いますが……。

早速、香水を購入せねばならぬダヨン。リッチなフレンド「ボードマーカー」さんからの多額の入金をはじめ、実際に多額の資金が振り込まれはじめたことで少々パニックになります。
そこへ大家さんが滞納家賃の督促にやってきたことで慌てたダヨンは、あろうことか購入資金から家賃を支払ってしまいます。これで回路が完全にショートしてしまい、ショッピングの虜になったダヨン。

気付けばあれだけあった資金は底をつき、このままでは泥棒となってしまい、リアルの生活も、そしてダヨンにとってかけがえのない存在であるオンラインでの生活も“破滅”待ったなし!
幸い香水の購入締め切りまでには14日間の猶予があるため、なんとかして帳尻を合わせねば……と、文字に起こしてしまうと同情の余地ゼロな事情が本作のスタートとなっています。
とりあえず大家さんに「アパートの住人に案内のチラシを配る」という仕事をもらったので、頑張ってみるために部屋の外に出ようとすると、なんと「SP」を1消費するらしい。いや、これ「スキルポイント」とかじゃなく、「社会性ポイント」なのかよ!

しかも住人はなにやらダヨンに負けじと曲者揃いの予感です。チラシを配るだけで良いなんて、世の中そう簡単に美味しい話は無いものですな。
外の空気を吸って疲弊したダヨンは部屋に戻り、布団に包まることに。これで1日が経過し、刻一刻とタイムリミットが近づきます。

翌日になると、ヘビーユーザーであるはずのダヨンが昨日ログインしなかったことを心配したフレンドにゲームへと呼び出され、再び「アイドル☆スター」の世界へ。事情を知らないフレンドたちは「香水買えた?」と質問を投げかけてきます。どうするダヨン!
ここで筆者は思わず「あと13日あるしな……」と思って誤魔化すことにしましたが、なんとダヨンは「もう発送されたらしいよ」と過剰なハッタリをかまし、事態は悪化の一途。しかも勘の良いフレンドから「本当に買った?」と疑いをかけられ、プチ裁判にも発展する始末。

その場は事なきを得たものの、精神的に非常に疲れるシーンだったため、筆者はしばらく「アイドル☆スター」の世界で過ごすことに。
現実ではお金を使いこんでしまったダヨンもゲーム内通貨なら残っており、買い物をしたり、NPCとミニゲームに興じたりと、普段と変わらない楽しみ方をしました。


「いや、そんなことをしている場合ではない!」と我に帰って、またチラシを配りに出ます。しかし貧弱なSPは2部屋回ったらすぐに枯渇し、もう眠るしかありません。これで破滅まであと12日!……と言ったところでデモ版は終了となりました。
タイトル通り“破滅のオタク”を描いた本作は、現実世界と「アイドル☆スター」の世界を行き来して、2週間を過ごすアドベンチャーゲームになっており、プレイヤーの行動次第でマルチエンディングへと分岐していく模様です。
なんとか借金を返そうと頑張るも良し、破滅を迎えるも良し。そして、電脳世界で良い感じに充実したオタクライフを過ごすだけでなく、現実でなけなしのSPを使いながら住人たちと交流し、新たな関係性を築いていくこともできそうでした。

完全に自業自得なダヨンに同情の余地はありませんが、全体的にポップな雰囲気で進行することもあって、とんでもないヤツとまでは感じません。グラフィックも可愛らしいので、「まぁ、なんとかしてあげたいな」と思わせてくれます。

そして、狭くてモノクロな現実世界とは対照的に「アイドル☆スター」の世界はかなりカラフルかつ広いマップになっており、このコントラストもインパクト十分。世界に合わせて変化するダヨンのビジュアルなど、豊富なパターンの立ち絵やグラフィックの作り込みも印象的です。

オンラインゲームがテーマとあって「〇〇さんって現実ではどんな人なんだろう」と想像してみたり、「海外の公式グッズが欲しい!」と盛り上がったりと、描かれる海外の“オタク事情”も興味深いところ。

韓国クリエイターによる作品でありながら、プレイできた範囲の翻訳は自然どころかかなり個性を演出するような口調まで作り込まれており、完成度の高さが伺えます。

KiwiSaurusが手がける『破滅のオタク』は、PC(Steam)にてリリース予定。ストアページではデモ版も公開されているので、“破滅のオタク”人生が気になった方はこちらをプレイしてみてはいかがでしょうか。













