
みなさん、唐突ですが“あのキャラを動かせるゲームがあったらな……”なんて夢はありますか?
執筆時点の2025年、PCゲームではModで無理やり好きなキャラクターを登場させる手段もあるかもしれませんが、コンソールでも『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の「Miiファイター」といったキャラメイクで再現したり、疑似的に登場・操作できる機能が備わったタイトルも少なくありません。

しかし、20年以上前になる2004年には当時の他タイトルはもちろん、現代のタイトルと比べても高めの自由度でキャラクターを作成できるゲーム『ラクガキ王国2 魔王城の戦い(以下、ラクガキ王国2)』がリリースされています。

『ラクガキ王国2』とは、『スペースインベーダー』で知られるタイトーが開発・発売した“ラクガキ変身アクションゲーム”であり、『ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国(以下、ラクガキ王国)』の続編です。

前作は“プレイヤーが描いたラクガキを使役して戦うRPG”でしたが、今作は”プレイヤー自身が描いたラクガキに変身&直接操作して戦うアクション“となっています。

筆者は『ラクガキ王国』シリーズ未経験でしたが、自身がファンである東方Projectシリーズ、その原作者のZUNこと太田順也氏が関わっているということもあって前作を初プレイ。

同氏デザインの隠しキャラである「ハクレイのミコ」にも会えたほか、同作の戦闘システムの戦略性にも感動しました(詳しくはGame*Spark記事「【特集】奥が深いぞ『ラクガキ王国』!初プレイの東方ファンが「ハクレイのミコ」に会いに行く」を参照)。
前作はゲームとして奥深さを感じさせつつも、改善の余地も見られましたが、“「ハクレイのミコ」が続投されている”という噂も聞き、『ラクガキ王国2』も続けてプレイしました。

本特集では前作との違いを含めた本作の印象、そしてGame*Sparkマスコット「スパくん」…っぽい何かを描いて挑んだプレイの様子を紹介していきます。なお、本記事に掲載の画像は、PS2実機でのプレイをキャプチャーデバイスで録画したものから取得しています。
快適さ大幅アップ!進化した「ラクガキノート」

まず、本作を紹介するにあたり、欠かせないのは作品の肝である“ラクガキを描ける「ラクガキノート」”でしょう。本システムはラクガキの描写と管理ができる機能となっており、カーソルで描いた“丸”や“四角”といった形を描き、パーツを付け足していくことができます。

前作にも同名のシステムが実装されていたものの、本作では最初から使えるカラーが多いだけでなく、ライン(線)をある程度自由に引けたり、描いたパーツの形を調整できたりと、ゲーム序盤から理想に近いラクガキを作成できます。

ゲーム進行(レベル)に応じて機能が追加されていきますが、後から新たに解放されたパーツに差し替えたくなった場合、特定のパーツを指定しての削除に加え、一度描いたパーツの種類(挙動)やコピー&ペースト等々、作成済みのラクガキの調整も容易になっています。

また、前作は使われた色などに応じてゲーム側がラクガキの技を自動で割り振っていましたが、本作ではある程度、自分で好きにエディットできるため、“外見だけでなく挙動も理想に近づけやすく”なりました。
RPGからアクションへの大胆な転向!堅実な3Dプラットフォーマーとなったゲームプレイ

戦闘システムを見てみると、前作は“じゃんけん”のような運要素と状況を制御する戦略性が特徴のRPGだった一方、本作は比較的シンプルな3Dプラットフォーマーに。雑魚敵と戦いつつマップを探索し、最後にはゴールで待ち受けるボスを倒す、ゲームプレイ部分は“探せばありそうな3Dアクション”に仕上がっています。

様々な種類のラクガキでのプレイを想定しているためか、良くも悪くも堅実なステージ構成が多めです。ジャンルが違うので単純な比較は難しいものの、ラクガキ要素抜きでもRPGとして独自の強みがあった前作に対し、本作はラクガキ要素ありきで個性が成り立っている感もあり、この点は好みが分かれるかも知れません。
待っていろ魔王!我らが「スパくん」…っぽいラクガキがいざ出陣


それではゲーム攻略に移りますが、本作のストーリーはいたってシンプル。封印されていた魔王「メディウム」の復活をうっかり招いてしまった王子「ピクセル」、“ハコイヌ”姿の少女「パステル」に言われるがまま、「ラクガキの杖」を使いラクガキに変身して魔物と戦うことに…というところからお話が始まります。

本作は上述の通り、ゲーム序盤でもある程度ラクガキを好きに作れるため、さっそく「スパくん」を描いていきましょう!まず円柱型のボディに白くまん丸な頭と小さい手足を用意します。

そして顔部分の装飾として、小さい鼻に水色のほっぺ、特徴的な眉毛を描き足し、複雑な形状の目と口は“もよう”で代用、最後に電顕コードのような尻尾を付けて完成!我ながら “それっぽく”なった気がしますが、これを「スパくん」本人とするのは先達のイラストレーターの方々に忍びないので、名前は「スパもどき」にしました。

それではゲーム内でのモーションを確認……するとそこに現れたのは怪しい動きをする何か。丸いヘッドが付いた円柱が高速で振動する姿は、まるで“地上で暴走する電動マッサージ機”です。

戦闘力という点においても、パンチやキックは手足が短すぎて攻撃手段としては焼け石に水、全身を使う“タックル”はまだ使えなくもないリーチなので、これを頼りに攻略を進めていきます。

行く先々で待ち受けるのは逆立ちした猿“さかざる”、オムツを履いた“おむつカエル”、その名の通り“へんないぬ”等々、珍妙な連中を相手に奇怪なマスコットが戦う構図には、“割と「スパもどき」も世界に馴染んでいるな…”と思わせられます。

一方ステージは自然をモチーフにしたものもあれば、子供部屋をそのまま大きくしたようなものもあり、別ゲームで例えるなら『ピクミン』をカートゥーン風味にした雰囲気です。

難易度の観点では、平地で戦闘を繰り広げたり、宙に浮いた足場を乗り継いだりする場面が多めで、“カメラワークのぎこちなさ(特に壁際)”さえ受け入れられれば簡単な部類と言えます。

そしてステージを進んでいくとトリを飾るのはボス戦、いずれもシンプルな挙動ですが、雑魚敵を召喚して攻撃後の隙を数の暴力で無理やりカバーするパターンが多く、対策しないと難しめなギミック的な要素のあるボスも存在します。

正攻法で1対1を楽しめるボスは少な目で、ディレイでプレイヤーを惑わすようなモーションもないため、ガッツリとしたバトルを期待すると肩透かしを食らってしまうかもしれません。

なお中盤以降のストーリーですが、基本的にボスが現れコミカルなやり取りを挟みつつ討伐→そして次のステージへ、という流れを繰り返しており、前作がシリアス描写を含む“全年齢向け”なら、今作は敵も味方も憎めないキャラ付けの“子供向け”といった触感です。

主人公に関しては説明書で“好奇心旺盛でイタズラ好きだけど、面倒くさいコトは嫌いなナマケ者”と“トラブルメーカー”と“ヤレヤレ系”を組み合わせたようなキャラ付け。

イベントでヒロインを盾に敵のビームを防いだかと思えば、敵サイドから寝返り自身を庇って倒れた男友達には感傷的になるなど、作中での扱いからも公式で“色々な意味でいい性格”の人物として扱われています。

そんなこんなでゲーム終盤までトントン描写で進み、魔王城まで突入!この頃には「スパもどき」も遠距離攻撃を使えるようなり体格の不利は克服したほか、“ダッシュ”をはじめとする回避手段も取得し、一体のキャラとしての完成度も上がって、どこか愛着が湧いてきました。


例に漏れず雑魚敵を召喚し数の暴力に頼る魔王を倒すと、前述の男友達が登場し、実は“主人公の「ラクガキの杖」とその力を奪い、新たな魔王に成ろうと画策していた”ことを告白します。

真のラスボス戦が始まり、何とこちらは1対1のバトルで攻撃もプレイヤーのラクガキに準拠したような正攻法ばかりです。

筆者も一度敗北&撤退して「スパもどき」に“はね”や”スパナ”を追加しアップグレード、ラスト限定の強化フォームは男のロマン!

相変わらず短いリーチに、“やっぱりいらなかったんじゃないか”と思いつつも、真正面からの撃ち合いに興じます。

……が、満を持して現れた正統派ボスとはいえ、攻撃の挙動が素直過ぎて避けやすく、強さ自体は他ゲームの中盤クラスがせいぜいといったところで、あっさり終わってしまいました。

そうしてラスボスを倒すも、「ピクセル」王子は最終的に自らを利用した男友達だけでなく魔王も見逃し、魔物と人が共存する世界が訪れてめでたしめでたし、となります。
おわりに―「ハクレイのミコ」も添えて

これにて『ラクガキ王国2』の特集は以上となります。クリアまでのプレイ時間は5時間程となっており、おおよそ筆者が前作をプレイした際の半分ほどですが、本作はロード時間が短くなっていたり、様々な機能へのアクセスのしやすさが改善されていたりするため、ボリューム自体はそこまで変わらない印象でした。

なお、ゲームとしての魅力は半減してしまうかもしれませんが、本作には雑魚敵のデザインをそのまま転用する機能もあれば、マップ上に隠されたカードから特別なデザインも入手できるので、ラクガキを描きたくなくても純粋なアクションゲームとして遊ぶことができます。

ZUN氏の「ハクレイのミコ」も特別なラクガキの一つであり、その外観は旧作「博麗靈夢」のものからWindows版の「博麗霊夢」に寄ったものに変更されています。

これは『ラクガキ王国2』発売が2004年9月とWindows版シリーズ始動からそこそこ経ち、『東方永夜抄 ~ Imperishable Night.』がリリースされた頃であることも関係しているのかもしれません。

本ラクガキは後年のイベントで“休日に急に呼び出されたZUN氏が描いた”と裏話が明かされており、エンドクレジットにもZUN名義で名前が掲載。

デザインを「ラクガキノート」で見てみると、細かくパーツ分けされてあり、ラクガキに飛行能力を付与するのに必要な“はね”をリボンに偽装しているなど、凝った作りになっています。

「ハクレイのミコ」は2P対戦やボスとの再戦機能で使うこともできるため、東方ファンならぜひ…と言いたいので、『ラクガキ王国』『ラクガキ王国2』ともに現行機種で遊べるようにならないかと願う次第です。

また筆者個人としては、前者はロード時間等の快適性を改善すればそのまま遊べるポテンシャルを感じた一方、後者については本編の協力プレイに対応し、プレイヤー同士がラクガキを見せ合いながら遊べれば、長らく楽しめる作品になるのではと勝手ながら思います。
ちなみに、どうやらタイトーは執筆時点で「ラクガキシステム」を使ったアトラクション『あそんで!そだてる!らくがキッズ』を展開しているようですが、残念ながら「中学生以上の大人の方単独でのご入場はお断り」とのこと。
いい歳した筆者が自由に入れる空間ではないので、本アトラクションで「ラクガキシステム」の魅力に触れた子供たちから、新作または過去作移植の需要が生まれれば…とも願います。














