「意図していた以上に風変わりなものになってしまった」学園生活戦略RPG『Demonschool』【開発者インタビュー】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「意図していた以上に風変わりなものになってしまった」学園生活戦略RPG『Demonschool』【開発者インタビュー】

気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Necrosoft Games開発、PC/Mac/Linux/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/スイッチ向けに11月19日にリリースされた学園生活戦略RPG『Demonschool』開発者へのミニインタビューをお届けします。

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気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Necrosoft Games開発、PC/Mac/Linux/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/スイッチ向けに11月19日にリリースされた学園生活戦略RPG『Demonschool』開発者へのミニインタビューをお届けします。

本作は、デーモンハンターの末裔であるフェイと仲間たちが、謎めいた島で学園生活を送りながら巨大な魔物と戦う戦略RPG。学校での時間割を決めて仲間たちの能力を強化したり、友情を深めたりしつつ、盛りだくさんのサイドクエストを通じて展開していくホラーテイストの物語を楽しめます。日本語にも対応済み。

『Demonschool』は、3,520円で配信中


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?

BrandonBrandon Sheffieldです。Necrosoft Gamesのクリエイティブディレクターです。私はとにかく様々なメディアが大好きな人間で、毎晩必ず映画を1本観ますし、仕事中はほとんど一日中音楽を聴いています。中森明菜のアルバムでは、「不思議」が断トツで最高傑作だと思っていますし、最近では地元のレコードショップでカセットテープを探していた時、柏原芳恵のシンセサウンドが前面に出たアルバム「LUSTER」を発見しました。また、刀根麻理子の「PURPLE ROSE」も、ここ最近かなりの頻度で聴いています。

さて、お気に入りのゲームをひとつ選ぶのは不可能ですが、PCエンジンとセガサターンは特に思い入れのあるゲーム機ですね。PCエンジンでは、『イースI・II』、『ゲッツェンディーナー』、そして『精霊戦士スプリガン』のキャラバンモード。セガサターンでは『魔法騎士レイアース』、『ナイツ NiGHTS into Dreams…』、『BLACK/MATRIX』、そして『心霊呪殺師 太郎丸』といった作品から大きな影響を受けました。

――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?

Brandon『Demonschool』は、レベルアップや経験値の概念が存在しないRPGです。これはかなり珍しいゲームデザインだと思います。その代わりに、プレイヤーはアビリティを装備することでビルドを変化させていきますが、キャラクターの基礎ステータス自体は変わりません。

本作のタクティカルバトルは、どちらかというとパズルを解くのに近いものです。独自の移動システムを採用しており、慣れてしまえばキャラクターの操作は非常にスピーディになります。ただし、どう動くのか考える時間はいくらでも取れるようになっているのです。バトルは計画フェーズとアクションフェーズに分かれています。計画フェーズでは、自由に行動を計画し、動きを巻き戻して何度でも試すことができます。納得できたらアクションフェーズに移行し、そこでキャラクターたちは同時に行動します。

キャラクターはアクションポイントシステムに基づき、直線移動、斜め移動、横移動を行います。この操作は非常にテンポが良く、直感的です。このシステムは、「考えること」こそが最も面白くなるようにデザインされています。キャラクターを動かす操作自体は、素早く、シンプルであるべきだと考えているからです。

――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?

Brandon本作は、目に見えるものからそうでないものまで、非常に幅広いものから影響を受けています。『女神異聞録デビルサバイバー』は、時間進行システムという点で大きな影響を受けましたし、『龍が如く』シリーズからの影響もあります。本作では、各時間帯ごとにひとつの主要ストーリーノードが存在し、それは常にマップ上に表示されています。プレイヤーは次のメインストーリーに進む前に、サイドクエストやミニゲーム、その他のイベントをすべてこなすこともできますし、それらを無視して物語だけを進めることも可能なのです。

バトルシステムについては、『戦場のヴァルキュリア』、『幻想水滸伝』、『テラ ファンタスティカ』から部分的に影響を受けています。ただし、何かに影響を受ける場合でも、それはあくまで出発点であり、1対1でそのまま再現するようなことはほとんどありません。この点については後ほど触れたいと思います。

映画の影響としては、1970年代のイタリアン・ホラー映画が大きな存在です。ライティングやテーマ、そして美しい音楽が流れる中で恐ろしいものが現れるという演出に強く惹かれました。音楽についても、当時の映画で実際に使われていそうな音色に限定して使用しています。

ビジュアル面では、映画における特殊効果の考え方に影響を受けました。例えば、ゾンビの内臓が飛び出すシーンでは、それが本物でないと分かっていても、画面に映っている「物体そのもの」は確かに実在しているため、観る側の期待との間に不思議なズレが生まれます。

また、映画「怪談昇り竜」のクライマックスシーンに登場する、あり得ないような渦巻く雲の背景も印象的でした。もちろん現実ではありえませんが、観客に強い心理的効果を与えます。これをゲームでどう表現できるのか、私たちは考えました。その答えが、2Dと3Dの融合、そしてやや「3D的」なエフェクト表現です。それが上手く伝わっていれば嬉しいですね。

また、セガサターンの美しいゲームが持つ独特の感覚にも強く影響を受けています。今にも限界を超えそうで、どれだけ手間がかかっているかが伝わってくるあの感じですね。

より実務的な話をすると、テクスチャ制作のスタイルは『BLACK/MATRIX』から大きな影響を受けました。あの作品は、2D環境を非常に生々しく見せるのが上手く、その手法を私たちは3D背景に応用しています。

最後に物語面ですが、「家族を自分で見つける」という考え方、そして血のつながりよりも友情のほうが大切になることがある、というテーマを重視しました。また、困難な状況の中でお互いを思いやることの大切さも描いています。

トーンの面では、林田球氏の「ドロヘドロ」から影響を受けました。この作品では、どれほど凄惨な状況でも、登場人物たちは前向きだったり、情熱的だったり、あるいはどこか達観していたりします。私は、人がどんなにつらい状況でも軽やかさを見つけようとする姿を描きたかったのです。少し風変わりに感じる人もいるかもしれませんが、それが私自身の生き方でもあるのです。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。

Brandon個人的に最も嬉しかった瞬間のひとつは、本作の初期プロトタイプを友人の家に持っていった時のことです。彼女の夫が本作に興味を示してくれたのですが、彼はとてもこだわりの強い人でした。好きになるものや、好きになる状況がかなり限定的で、しかも本人も非常に優れたアーティストだったのです。正直、彼のリアクションに対して少し不安がありました。

ところが彼は椅子に座るなり、すぐに本作のバトルシステムにのめり込みました。何度も行動を巻き戻しながら、できるだけ多くの敵を最適な形で倒す方法を探していたのです。私と友人が会話している間も、彼は黙々と戦闘を進め、最高評価を取るために試行錯誤を続けていました。その光景を見た時、「これは本当に良いものができたかもしれない」と強く実感したのです。

――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。

Brandon面白いと思ったことのひとつは、プレイヤーの皆さんがそれぞれ自分自身の関心や好みをこのゲームに重ね合わせ、「きっとこれに影響を受けたのだろう」と解釈してくれる点です。物語については、ドラマ「バフィー ~恋する十字架~」と比較されることが多いのですが、実は私は一度も観たことがありませんし、ゲームプレイについても『ペルソナ2』に似ていると言われますが、こちらも遊んだことがありません。それでも、プレイヤーの皆さんが自分の好きな作品と本作を結びつけてくれるのは、とても嬉しいことです。

その中でも特に心温まったのは、ゲーム内でのLGBTQ+テーマの描かれ方を評価してくれる声でした。とてもさりげなく、世界観の一部として自然に存在していて、特別に強調されたり、トラウマとして描かれたりするものではなく、本作では日常の一部として扱われています。同様に、相互扶助や資源の分配といった、ややマルクス主義的とも言える価値観の表現が共感を呼んだ時も、とても嬉しかったですね。

あとそれから、作中でとあるキャラクターがレビューしている映画の数々が、実はすべて実在する作品だと気づく人が出てくるのを見るのも楽しいです。中には、ゲームを進めながら彼と一緒にその映画を観ているという人もいて、それは本当に素敵なことだなと思いました。

――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。

Brandonもちろん、バグ修正には継続して力を入れていますが、それと同時に無料のコンテンツアップデートにも取り組んでいます。このアップデートでは、メインキャラクターではない者同士の友情イベント、ニューゲーム+、そしていくつかのミニゲームを追加する予定です。正確な配信時期はまだお伝えできませんが、そう遠くないうちに実装されることは間違いありません。

――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?

Brandonプレイヤーの皆さんには、どんな形でも自由に本作を配信していただきたいです。すでにホロライブの方にも配信していただきましたし、後戻りはできません!!

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

Brandon正直なところ、意図していた以上に本作は風変わりなものになってしまった気がします。今回はもっとメインストリーム向けの作品を作ろうとしたのですが、結果的には「変わり者向けのニッチなゲーム」以外の何ものとしても受け取られなかったようです(笑)。

もしかなり幅広く、しかもとてもピンポイントな趣味嗜好を持っているタイプの人なら、本作はきっと刺さると思います。でも、刺さらないかもしれません。いずれにせよ、きっと何かしら強い意見を持つことになるはずですし、その意見がどんなものになるのか、ぜひご自身で確かめてほしいと思っています。

――ありがとうございました。

◆「注目インディーミニ問答」について

本連載は、リリース直後インディーデベロッパーメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に900を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。

ライター:Chandler,編集:Akira Horie》

ライター/バイク乗り Chandler

ゲームと風をこよなく愛する暇人。趣味は多い方だったはずが、最近は家でぼーっとしている時間が増えてきた気がしている

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Akira Horie

編集/『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam/Nintendo Switch好評発売中! Akira Horie

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