
旅客機、鉄道、バスなどの旅客輸送業界は、常にテクノロジーの進化と共にあります。
それはインターネットやスマートフォンの普及といった通信手段の進化を指すだけではなく、より長距離を飛行できる旅客機の登場や、今まで採掘不可能だった岩盤に、トンネルを作って新しい道路を開通させるという具合の技術的進化も含まれます。そうした過程を踏んで新設される移動ルートは、新しい形の旅行を我々にもたらしてくれます。
8月23日にSteamでの配信が始まった『Worldwide Rush』は、そんなあらゆる移動手段を提供する旅客輸送会社の経営ゲームです。
我が地元・静岡市も登場!

『Worldwide Rush』の舞台は、メルカトル図法の世界地図。この地図の上に書かれた都市名をクリックし、そこを拠点に指定します。
これが、結構細かい! 各国の大都市だけでなく、多くの人が知らないような地名が記載されていたりもします。
たとえばインドネシアの場合は首都・ジャカルタ、第2の都市・バンドンは当然書かれているのですが、ジャワ島中部・南海岸沿いには「ワテス」という都市が。10年くらい前は畑と田んぼが広がる目立たない地域だったものの、ジョグジャカルタ国際空港が隣にできたために栄えるようになったところです。

ジョグジャカルタ、筆者は一時期この町で沈没生活を送っていました。

さて、日本に目をやってみると東京都や横浜市、名古屋市、大阪市(大阪府ではない)以外にも八王子市、北杜市、そして我が地元・静岡市も! おおおおっ、素晴らしい!
というわけで、今回は静岡市を拠点にしてプレイしたいと思います。

まずは、同じ静岡県の浜松市を往復するマイクロバスの路線を作りましょう。静岡ー浜松間の道路を作り(このゲームでは道路を作るのは旅客会社の役目)、車両を選択します。とりあえず、一番安いマイクロバスを用意しましょう。

拠点に指定した都市の住民がどこに行きたいかということは可視化されるため、よほどの放漫経営でなければ倒産には至らないであろう程度の難易度です(ぶっちゃけ、結構簡単)。
最初は近隣の都市、軌道に乗ったらもう少し遠い都市への移動ルートを設定していけば、順当な成長を見込めます。
夢の静岡―名古屋間フェリーも
もちろん、『Worldwide Rush』ではバスだけでなく、船や飛行機を繰り出すこともできます。

筆者が驚いたのは、「静岡市は港を持っているから船を出せる」という概念を持っているという点。確かに現実でも静岡市の清水港には数多くの豪華客船が停泊するし、清水と西伊豆の土肥を結ぶ駿河湾フェリーというのもあります。
でもこのゲーム、やろうと思えば静岡―横浜間、あるいは静岡―名古屋間のフェリーを開通させることも可能です。実際には、効率や収益などでバスに太刀打ちできる移動手段ではないと思いますが、まぁ良いじゃないですか。ゲームなんだもん!
ゲームを進めて収益を上げられるようになると、拠点に指定した都市がだんだんと発展していきます。そうなると、トランジットのお客さんが利用するためのホテルを建てる必要も。これ、現実世界でも結構大事な要素です。
筆者自身、海外旅行にはよく行くので「経由地で1泊する」ということは何度も経験しています。手頃なホテルが空港周辺にあれば良いけれど、なければ空港のベンチに横たわって……という事態になることも。そのようなお客さんもいるため、ホテルは必要不可欠です!

こんな具合に、『Worldwide Rush』では「あったらいいな」と夢想しているルートを実現させられます。
そのため、このゲームにはキナ臭い国際情勢は一切反映されていません。なんと、韓国のソウルから北朝鮮の平壌までのルートを新設することも可能。イスラエルのテルアビブから、パレスチナ自治区のガザまでの鉄道を作ることだってできちゃうのです!

日本ではなかなか実現しない「MaaS」

『Worldwide Rush』は、ひとつの会社が陸海空の乗り物を一元的に管理・運営するゲームです。
そうした会社は地方の交通事業者が存在感を発揮する日本では非常に珍しいと思いますが、実は「あらゆる交通手段をひとつにまとめて、それらの経路検索や予約を1回で完結させられるプラットフォームを作ろう」という取り組みが世界各国で模索されています。
「Mobility as a Service」の略語MaaSは、スマホアプリなどで自分の行きたい場所を指定すると、様々な交通手段を包括したそこまでの経路と料金、そしてそれを決済するための手段を提示してくれるという概念です。
仮に、筆者が静岡市から成田空港へ向かい、そこから飛行機に乗ってインドネシアのジョグジャカルタまで行くとします。しかし、静岡市から成田空港、そしてジョグジャカルタ国際空港からジョグジャカルタ中心部までは、バスか鉄道を利用しないといけません。それらを個別に探して席を手配する……となると、やっぱり結構大変です。
スマホの普及とネットインフラの確立で、目的地までの移動にかかる決済をシームレスに実行しようというMaaSは、2025年の今では当たり前のものになっている……と言いたいのですが、なかなかそうはいかないようです。
上述の通り、日本は地域ごとに独自の交通事業者が存在する国。MaaSを実現させようとすると、それら事業者の利害を一致させて統一プラットフォームを作る……という大仕事を経る必要があります。「話し合い至上主義」の国では、会議に参加している全員が賛成しないと話が前に進みません。そうしたこともあり、日本のMaaSは“地域単位の事業”に留まっています。
しかし、『Worldwide Rush』にはそのような煩わしさはありません。自分の地元から世界へ飛び出す“国際規模のMaaS”を実現させるだけでなく、それを自分自身で企画・運営できる仕組みになっています。
他社買収の概念も

また本作では、最大100のAI(競合他社)を参入させることができます。
ただし、本当に最大数でやっていくと、早々に豪華客船を繰り出す会社も現れる一方で、何もできずに倒産する会社も続々と現れます。中には他社に買収される企業もありますが、ロクな路線すら作らずに借金だけ抱えて消え去る会社が多いこと多いこと……。
しかし、これもあながち嘘とは言い切れず、たとえば“LCCの雄”と呼ばれるエアアジアは、ワーナー・ミュージックのアジア地域役員だったトニー・フェルナンデス氏が、たった1リンギット(約35円)で買収した航空会社です。
もちろん、この時点でのエアアジアは莫大な負債を抱えていました。当初は新しく航空会社を作る予定だったはずが、マレーシアのマハティール・ビン・モハマド元首相による「我が国には破綻した航空会社がたくさんある。それを買収するのはどうだ?」という言葉がきっかけで、エアアジアを買収したとのこと。今の出世を考えると面白いですね。
『Worldwide Rush』では、そうした企業売買も体験することができます。価格は2,780円(税込)、PC(Steam)で配信中です。













