2025年11月5日発売予定のグランドストラテジーゲーム『Europa Universalis V』。全世界を舞台とし、中世後期から近代初頭までの約500年間を描くシリーズ最新作です。前作『Europa Universalis IV』が発売されたのは2013年。シリーズファンにとっては実に12年ぶりとなる待望の新作です。
今回「東京ゲームショウ2025」の開催を機に、『Europa Universalis V』で3DCGチームコーディネーターを務めるステファン・フォンボー・ラング(Stefan Vonboe Lang)氏に話を訊くことができました。日本語が堪能な人物で、インタビューは終始和やかな雰囲気の中で進められました。

これまでの集大成にして史上最高を目指す野心的な作品
――本作はこれまでのParadox作品の集大成とも言うべき野心的な作品です。前作が過去12年間で築き上げた膨大なシステムを継承しているだけでなく、他のシリーズからも積極的にメカニズムを導入し、そのシステムはこれまでのどの作品よりも大規模です。
非常に野心的でロマンあふれるプロジェクトですが、素人目にはあまりに無謀な挑戦にも思えます。なぜ、これほど大掛かりなゲームを作ろうと思ったのか、その発想の原点を教えてください。
ステファン・フォンボー・ラング氏(以下、敬称略)私たちは前作『Europa Universalis IV』を超えたいと考えていました。しかし同時に、『Crusader Kings』や『Victoria』の強みも認識していました。そこで、そうしたゲームの最良と思われる部分を本作に取り入れることで、史上最高のグランドストラテジーゲームを作ろうとしたのです。

――本作の開発では最初にどのような目標を掲げましたか。
ステファン私たちは歴史的な正確さではなく、歴史的な可能性に主眼を置きました。つまり、歴史的に正しいルートを進むか、サンドボックス的に遊ぶかを、プレイヤーが自由に選択できるようにしたかったのです。プレイヤーはどんな決断でも思いのままに下すことができます。
――その目標は現在までにどれだけ達成されましたか。
ステファンほぼ達成できたと言って良いでしょう。歴史的な正確さも、自由に選択してプレイできるサンドボックス的な要素も確保できています。ゲーム内のイベントには複数の選択肢が用意され、歴史的に正確な選択肢には小さな目印がついています。それ以外の選択肢も心ゆくまで自由に選べます。望むなら、歴史通りのルートを進むことも可能です。
心に留めておいていただきたいのは、これはあくまでもゲームであり、歴史ドキュメンタリーではないということです。ゲームですから、現実では起きなかったことも起こり得ます。

――本作のような歴史ストラテジーゲームでは、歴史を正確にシミュレートするだけでなく、プレイヤーを楽しませる工夫が必要になります。歴史的な正確さとゲームとしての面白さはどのように両立させているのでしょうか。
ステファンその二つを両立させるのは難しいことです。幸い、私たちのチームは歴史的な正確さを求める人々と、面白さを求める人々が上手く調和しています。その両方を達成できるバランスの取れた素晴らしいチームなのです。
初心者からベテランまで幅広く楽しめる作品を目指す
――本作のシステムは驚くほど奥が深く、ベテランプレイヤーでも最初は戸惑うのではないかと心配になるほどです。初心者をサポートする機能としてチュートリアルやヒントが用意されていますが、他にも初心者の助けになる要素はありますか。
ステファン私たちのファンコミュニティはいつも非常に優れた攻略情報やチュートリアルを提供してくれます。きっと、私たち以上にゲームを愛してくれているからでしょう。
――経験を積んだプレイヤーが気になるのは、システムに慣れた後の操作の煩雑さです。ふんだんに用意されたメカニズムを駆使するためにマイクロマネジメントが必要になる心配はありませんか。
ステファン私たちは本作を史上最も奥深いゲームにしたいと考えました。しかし同時に、その奥深さにプレイヤーが圧倒されてしまわないようにしたいとも考えています。その目標を実現するため、ゲームには多くの自動化メカニズムを導入しています。ゲームの一部分だけをプレイしたい方は残りの部分をAIに任せることができますし、ゲームの腕前が上達するにつれてAIによる制御を外していくことも可能です。
理想を言えば、自動化機能はプレイヤーがしたくないと感じるような、あらゆる退屈なマイクロマネジメントをなくしてくれるはずです。しかし、一つ一つの細かい設定作業それ自体が好きなプレイヤーがいることも認識しています。ですから、プレイヤーに選択の余地を残すため、手動での管理機能もゲームに含めています。とはいえ、ほとんどのプレイヤーは好まないでしょうから、そうした方には自動化機能をお勧めします。

――本作は『Victoria 3』に続いて発売当初から日本語に公式対応します。しかし、一部のプレイヤーからは翻訳の品質を不安視する声も上がっています。本作における日本語ローカライズはどのように行われているのでしょうか。
ステファン私たちは翻訳、特に日本語への翻訳を非常に重視しています。正直に申し上げて、社内に適切な品質の翻訳を行う能力はありません。そのため、専門の日本の翻訳会社、つまりサードパーティに翻訳を依頼しています。そして、ベータテストの段階で必ず日本のプレイヤーにチェックしていただき、適切に翻訳されているかを確認しています。
「東京ゲームショウ2025」で試遊していただいた日本語版はかなり古いバージョンのものです。私たちはすでに改善版を用意していますが、準備の都合上、今回の試遊ビルドにすべての翻訳を盛り込むことはできませんでした。適切な翻訳は現在社内にありますが、まだ表には出ていません。もちろん、製品版は完璧な状態でリリースされます。

――本作はこれまでになく野心的な作品ですが、それだけに動作環境も高く設定されています。現時点で推奨動作環境を満たすPCを用意できるプレイヤーはそれほど多くありませんが、最低動作環境のPCでも満足のいくゲーム体験ができるのでしょうか。
ステファン最低動作環境でも十分に楽しめると考えています。推奨動作環境は4Kモニターで60fpsを出すためのものです。それは最高級の環境を求めるプレイヤー向けの設定で、必ずしも本作のプレイに必要不可欠ではありません。
――本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。
『Europa Universalis V』はPC(Steam)向けに2025年11月5日発売予定です。









