“ホラーゲーム界の白石晃士”727 Not Houndが送り出す『Exorcist: Oldest Tongue』は、人間が想像する「悪魔の恐怖」を描く意欲作だった【TGS2025】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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“ホラーゲーム界の白石晃士”727 Not Houndが送り出す『Exorcist: Oldest Tongue』は、人間が想像する「悪魔の恐怖」を描く意欲作だった【TGS2025】

日本のホラー映画界に白石監督がいるなら、日本のゲーム界には727 Not Houndがいる。世界よ!これが日本の革新的ホラーゲームだ!

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“ホラーゲーム界の白石晃士”727 Not Houndが送り出す『Exorcist: Oldest Tongue』は、人間が想像する「悪魔の恐怖」を描く意欲作だった【TGS2025】
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映画やビデオゲームにおいて「ホラー作品」は、どのようなクリエイターにもチャンスがある領域のようです。ホラー作品は「大企業が予算をかけて作る」以外の方法でも、衝撃的な作品を生み出せる可能性を持っています。たとえ低予算なチームと開発環境でも、特殊なアプローチひとつでジャンルをひっくり返してしまうことも考えられるわけです。

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近年“特殊なアプローチで、低予算からジャンルをひっくり返した日本のホラー映画”の代表的存在と言えば白石晃士氏でしょう。白石監督は「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズをはじめ、「ある優しき殺人者の記録」など “モキュメンタリー”という疑似的なドキュメンタリーのようなホラー映画を作ることで、頭角を現してきた人物です。

この手法によるホラーは、実話怪談的に感じさせるほかに「どこまでがフィクションなのか?」「映画と成立するために必要なものとは?」とまで考えさせる力を持ち、高い評価を獲得していくようになります。現在は「近畿地方のある場所について」といった人気ホラー小説を映画化するなど、広く活躍するようまでに成長しました。

もちろん、ゲームでもホラージャンルは大きく盛り上がっています。もしかしたら白石監督のような才能を持つクリエイターもいるのだろうか……? います。実験的なかたちでホラーのジャンルもゲームのジャンルも拡張してしまうような才能がいます。それが727 Not Hound氏(以下、727氏)です

一見すると727氏はSteamにて多くのホラーゲームを量産するという、Chilla's Artのようなスタイルのクリエイターのひとりに思えるかもしれません。

しかし、他のホラークリエイターと圧倒的に異なる点があります。すべてのタイトルが、独自のゲームデザインを持っているのです。ただ怖がらせるシチュエーションを用意し、プレイヤーを歩かせることで終わらせない。まったく別の体験を作ろうとしているのです。

Steamストアページより

そしてそのアプローチは、単なる恐怖を越えて「ホラーとは何か?」「ゲームの可能性とはなにか?」とまで考えさせる仕組みがあるのです。

東京ゲームショウ2025にて、そんな727氏の最新作『Exorcist: Oldest Tongue』が出展。今回はどんなアプローチのホラーなのかというと、「エクソシストになり、姿の見えない悪魔の名前を探し、祓魔を行う」という体験をさせるという、やはり独自性が光るゲームデザインを生み出しているのでした。

見えない悪魔の正体を探り、恐怖を克服する

バチカンは、ある特別任務のためにエクソシストたちを招集。彼らに課せられた任務は “VTNバベル”と呼ばれる謎の塔に閉じ込められた子どもたちの救出です。しかし子どもたちは、もはや普通の状態ではありませんでした。「全員が悪魔に憑りつかれる」という切迫した事態になっていたのです。

プレイヤーの目的は、エクソシストとして子どもたちに憑りついた悪魔を祓うこと。これがFPSなら退魔の波動か何かを悪魔に撃ち込むかもしれませんし、RPGならSAN値を気にしながらコマンドを選択して、悪魔と闘う体験になるかもしれません。

しかし、727氏はそのような既存のゲームデザインを一切採用しません。どのように悪魔と闘うゲームデザインを作ったのかというと……それは、悪魔の名前探しです。

塔の中で姿の見えない悪魔に対峙したら、すぐさま手持ちの辞典を取り出し、悪魔の情報を探すことからプレイヤーの戦いが始まるのです。辞典には目の前の悪魔と想定される、番号と名前のリストが表示されます

しかし詳しい情報を読もうとしても、辞典の文字は壊れており、何が書いてあるのかがわからない状況に追いやられるのです。

実体の見えない悪魔。文字が崩れた辞典。実態の見えない恐怖が覆っていく。悪魔が近づき命が危ぶまれる中、辞典でわずかに 聖句”と呼ばれる単語が見えるのがわかります。

聖句をクリックすると、目の前の悪魔の名前がどれなのか絞り込む情報が提示されます。辞典に登録された悪魔の番号「500番」以下の名前なのか? 番号は奇数なのか? そういった情報から、悪魔が何者かを確定させていくのです。

ただ、聖句はすべての単語をいくらでも参照できるわけではありません。マップ上に散らばる聖句を拾うことで、ランダムに単語を取得して初めて参照できるという、シビアな闘いを強いられるのです。

単語ごとにどの情報を提示できるか違っており、確実に悪魔の名前を見定められる保証はありません。そう、このエクソシストの任務はただ名前を当てるだけなのに、サバイバルホラーのような緊張感に溢れているのです。

恐怖は想像から生まれる

本作の「ホラーゲームとしての斬新さ」は想像してしまう怖さ”とゲームプレイの手ごたえを、密接に絡めているところにあります

昨今は「悪魔」をテーマにした漫画や劇場版アニメが大盛況で、どの作品も悪魔のビジュアルがかっこよく描写されていることが多いでしょう。そこで『Exorcist: Oldest Tongue』は、あえて「悪魔の具体的な描写」をほぼ完全に避けているのです。

Steamストアページより

悪魔というものは、人間の恐怖や怯えから生まれた想像の産物です。そのため言葉や文字、そして場の雰囲気から姿を思い描くことになります。

『Exorcist: Oldest Tongue』は、そういった“人間が悪魔を思い描く原点”に迫る体験を味わわせてくれる作品なのです。悪魔の名前を間違え、死に近づく度に「悪魔の存在感」に恐怖してしまうゲームデザインも、その感覚を押し広げていると言えるでしょう。

Steamストアページより

『Exorcist: Oldest Tongue』は現在開発中。727氏のホラーの可能性を切り開く情熱は、白石晃士監督の「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」が登場した時を彷彿とさせる、荒々しくも何かを確かに切り開いている力に満ち溢れています。

本作の前身である『Exorcist: Reviewer of Minds』は現在Steamでリリース中。この時点で「悪魔の名前探し」というゲームデザインは確定しており、新しいホラーゲームの可能性に触れられるのは確かです。本記事をご覧になって興味を持った方は『Exorcist: Oldest Tongue』リリース前にぜひ触れてみてほしいです。

……っていうか、727 Not Hound氏の作品は全部おすすめです。ホラーを軸にローグライト、FPS、アドベンチャーなど各ジャンルでゲームデザインの挑戦を続けている、稀有なクリエイターとして今後の活動にも注目です。


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ライター:葛西 祝,編集:キーボード打海


ライター/ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Sparkの編集者。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『恐怖の世界』。

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