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「TPP協定」大筋合意 ― 「著作権」の項目でゲーム・漫画・ボカロなどの二次創作文化が受ける影響は?

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TPP政府対策本部(ウェブサイト)
  • TPP政府対策本部(ウェブサイト)
  • TPP閣僚会合 甘利経済再生担当大臣 記者会見の様子(YouTubeより)
TPP政府対策本部は、米国アトランタで開催されたTPP閣僚会合において、「TPP協定」が大筋合意に至ったと発表し、「TPP協定の概要(暫定版)」を公開しています。

「TPP協定(環太平洋連携協定)」は、日本を含む太平洋を囲む国々において、関税を撤廃するなどして、自由な経済圏を作るための取り組みです。さまざまな分野がその対象となっており、著作権などを含む知的財産についても協議が進められてきました。これについては、これまで「ニコニコ」を運営するドワンゴおよびニワンゴ、「コミックマーケット」を運営するコミックマーケット準備会などが、主に知的財産の条項において慎重な議論を求めるよう声明を発表しています。

■インサイド 掲載記事(外部サイトリンク)
・ドワンゴ、ニコニコにTPP協定に関する意見を掲載 ― 「ネット文化の危機的状況」打開協力を呼び掛ける
・コミケが「TPP協定」に関する声明発表 ― 著作権侵害が第三者でも公訴できるようになる“非親告罪化”を危惧

大筋合意に至った「TPP協定」における知的財産の条項における著作権に関する内容は、以下の通りです。

【TPP協定の概要(暫定版)】
■第18章 知的財産
TPP協定で対象となる知的財産は、商標、地理的表示、特許、意匠、著作権、開示されていない情報等である。知的財産章は、これらの知的財産につき、WTO協定の一部である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)を上回る水準の保護と、知的財産権の行使(民事上及び刑事上の権利行使手続並びに国境措置等)について規定し、もって、知的財産権の保護と利用の推進を図る内容となっている。

●著作権
著作権に関しては次のルール等が規定されている。

・著作物(映画を含む)、実演又はレコードの保護期間を以下の通りとする。
(1)自然人の生存期間に基づき計算される場合には、著作者の生存期間及び著作者の死から少なくとも70年
(2)自然人の生存期間に基づき計算されない場合には、次のいずれかの期間
 (i)当該著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年の終わりから少なくとも70年
 (ii)当該著作物、実演又はレコードの創作から一定期間内に権利者の許諾を得た公表が行われない場合には、当該著作物、実演又はレコードの創作の年の終わりから少なくとも70年

故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。

・著作権等の侵害について、法定損害賠償制度又は追加的損害賠償制度を設ける。

※TPP協定の概要(暫定版)より抜粋
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo.html#201510atlanta_goui

「ニコニコ」や「コミックマーケット」が特に慎重な議論を行うよう呼びかけていた「著作権侵害の非親告罪化」は、多少歩み寄った内容が含まれたものの、ほぼ当初の内容が採用された形となっています。しかし、現時点では「故意による商業的規模の著作物の違法な複製」や「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合」といった曖昧な表現も多く、著作権侵害と判断されるラインがどこに引かれるのか、具体的な収益規模なども示されていない状況です。

【補足説明】
現在、日本国内の著作権侵害は親告罪であるため、著作権侵害があった場合、その著作者(漫画であれば漫画家や出版社、音楽であれば作詞者・作曲者、著作権管理団体など)しか公訴できません。これが非親告罪化すると、第三者(警察や検察など)でも捜査・起訴できるようになり、著作者の意思とは関係なく、二次創作物などに対し、一般からの違反指摘の通報をきっかけとした公訴が提起される可能性が出てくるようになります。

「TPP協定の概要」の文面通りにとらえると、例えば、「コミックマーケット」自体は存続できても、そこに並ぶ二次創作物(同人誌や同人ゲームなど)は、出展サークルの売上規模によって、著作権侵害か否か問われる状態となると解釈できます。また、二次創作物の委託販売を請け負っている商業店舗は、二次創作物を販売する中間手数料による収益によって経営が成り立つ側面を持っているため、これまで通りに存続できるのか微妙であると言えそうです。

「ニコニコ」でもほぼ同じことが言え、再生数が多い二次創作物(動画・作品)ほど、著作権侵害と判断される可能性が高くなることを意味します。


◆合法となるケースも?


著作者が二次創作を許可している、あるいは二次創作物を著作者と権利をシェアするなどの方法で、二次創作物を複製・販売(頒布)したり、インターネットに公開したりすることが合法化される場合があります。

■ゲーム(実況)プレイ動画の場合
ソニー・コンピュータエンタテインメントのPlayStation 4に搭載されている「SHARE機能」は、ソフトごとに対応するか否かがメーカーに委ねられています。そのため、対応ソフトは実質的にオンラインに動画をアップすることが許可されていると言えます。

また、任天堂も「Nintendo Creators Program」や、「ニコニコ クリエイター奨励プログラム」(参考記事リンク先:インサイド)に参加することで、許可されているタイトルであれば、プレイ動画をオンライン(YouTubeおよびニコニコ)にアップできます。

「ゲームプレイ動画」は今や世界中に広く浸透しているため、今後メーカーが定めたルールに則り、合法化される流れが強まることに期待したいところです。

■ボーカロイド音楽・イラストの場合
「ボーカロイド」のキャラクターを使用した音楽やイラストの場合、オンラインでの二次創作物の無償公開は各ソフトメーカーが基本的に許可しているため、一部例外を除き、著作権侵害行為にあたりません。ただし、同人でCDやイラスト集などを頒布する場合はソフトメーカーごとに個別のルールが設けられているため、それぞれで確認が必要となります。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

上記のように、二次創作を許可する場合も少なくありませんが、このような事例は全体のほんの一部に過ぎません。特に最も深刻な「二次創作同人誌(漫画)」は、これまでグレーゾーンでずっと発展してきた文化であり、今回のように、二次創作物の制作者側も、著作者・出版社側も、白黒はっきりさせることを望んでいなかった文化であるとも言えます。「TPP協定」による影響を最も受ける分野であると言えるかもしれません。

「TPP協定」で定められた内容が適用されるのは、順調に進めば2017年になるとのこと。それまでに、業界各社がルールを整備するか、国会等でより具体的に数字などを明示するかしなければ、いざ動き出した際にパニックを引き起こしかねません。今後は、業界一丸となったルールの整備や、国内で運用される「TPP協定」の具体的な内容の精査が求められます。


記事提供元: インサイド
《インサイド》

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