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【特集】世界最低の映画監督ウーヴェ・ボル引退記念―酷評されたゲーム映画群を振り返る

去る2016年10月21日、カナダの新聞メディア「Metro」トロント版は、ウーヴェ・ボルという偉大なドイツ人映画監督が引退すると報じました。今記事では、引退を発表したボル氏の輝かしい映画人生を紐解き、多くの反響を呼んだゲームの映画化作品を振り返ります。

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◆ウーヴェ・ボル監督が手がけた伝説のゲーム原作作品の数々をご紹介。
    ■2003年
    『House of the Dead(邦題:ハウス・オブ・ザ・デッド)』


    言わずと知れたセガの世界的大ヒットアーケードゲーム『ハウス・オブ・ザ・デッド』の初映画化作品。友人たちと南国の孤島を訪れた主人公は、そこで恐るべき実験によって生まれたゾンビに襲われ……。原作ゲームにあったシチュエーションはほとんどないものの、ゾンビと銃撃を繰り広げるアクションシーンでは、何の脈絡もなくゲーム映像がインサートされるというファンサービスが。今作は、アメリカの著名映画サイト「Rotten Tomatoes」にて2000年代の最低映画ベスト100で、見事41位にランクイン。Metascoreでは100点満点中15点を記録するという異業を達成しています。ちなみに700万ドルの製作費に対してアメリカでの興行収入は約1020万ドル。後に世界中で公開されそこそこの売れ行きを見せていることから、興行的には成功した作品と言えそうです。2005年に公開された続編の『House of the Dead 2(邦題:ハウス・オブ・ザ・デッド2)』は、別監督により純粋なハリウッド映画として製作されています。こちらも製作費は同じ700万ドルで、一部ではそれなりに評価されている模様。

    ■2005年
    『Alone in the Dark(邦題:アローン・イン・ザ・ダーク)』


    ボル監督のゲーム映画化作品2作目で、『バイオハザード』の原型ともなった同名のゲームが原作です。こちらもカナダ・ドイツ・アメリカ合作。超常現象調査員のエドワード・カーンビーは古代文明の遺物を巡る陰謀に巻き込まれ、やがて闇の存在が明らかになっていくという物語。ラヴクラフトのクトゥルー神話をベースとした原作ゲームの面影は一つもなく、主人公の名前以外はほぼオリジナルと言っても問題ない内容に仕上がっています。申し訳程度なホラー要素に無駄なガンアクションが目立つものの、(最低と言われる映画としては)思ったより楽しめる作品となっています。今作は、アメリカでアカデミー賞と並ぶ著名な賞、ゴールデンラズベリー賞で最低主演女優賞と最低監督賞にノミネートを果たしました。総製作費はおよそ2000万ドルで、アメリカでの興行収入は約513万ドル。

    『BloodRayne(邦題:ブラッドレイン)』


    Terminal Reality開発の同名のアクション・アドベンチャーゲームが原作。時は18世紀、最強のヴァンパイアと人間の望まれない子として生まれたレインの物語が描かれます。『ターミネーター3』で女ターミネーター「T-X」を演じたクリスターナ・ローケンが主演。時代は異なるものの、ゲームの設定やビジュアルはある程度忠実な今作でしたが、野暮ったい物語進行やイマイチキレの悪いアクションシーンといった全体のテンポの悪さが、ゲームのファンだけでなく一般の観客にすら受け入れられなかったようです。約2500万ドルの製作費に対し、アメリカでの興行収入は155万ドル。

    ■2007年
    『In the Name of the King: A Dungeon Siege Tale(邦題:デス・リベンジ)』


    Gas Powered Gamesが開発し、マイクロソフトがパブリッシャーを務めたアクションRPGゲーム『Dungeon Siege(ダンジョン・シージ)』を原作としたファンタジー映画。モンスター軍団に連れさらわれた家族を奪還すべく、主人公のファーマーたちが立ち上がる物語。『トランスポーター』シリーズのジェイソン・ステイサムを主人公に迎え、およそ6000万ドルの予算をかけて製作されたファンタジーアクション巨編。これまでの反省を生かし、原作ゲームの雰囲気をできるだけ壊さないような心がけが伝わって来ます。しかし、様々なファンタジー映画から影響を受けた(パクった)演出が観客の心を掴むには今ひとつだったようで、アメリカでの興行収入は約453万ドルに留まりました。また、今作では他の監督作品ではノミネートだけであったゴールデンラズベリー賞で、最低監督賞をついに受賞。そのほかにも、最低作品賞・最低脚本賞・最低助演男優賞・最低助演女優賞・最低スクリーンカップル賞でノミネートしています。さらにボル監督は、1987年の第7回ゴールデンラズベリー賞で『ジョーズ』『ジョーズ2』『ジョーズ3-D』のゴム製サメのブルースくんに贈られて以来となる、最低功労賞という非常に"不"名誉ある賞を授与されました。

    『BloodRayne 2: Deloverance(邦題:ブラッドレインII)』


    ボル監督初の続編作品ですが、アメリカとドイツではビデオ作品としてリリース。なぜかフランスとUAEでは劇場公開されています。前作でレインを演じたクリスターナ・ローケンは思うところがあったのか続投はなし。今作では、あの人気格闘ゲームのハリウッド実写映画『DOA: Dead or Alive(邦題:DOA/デッド・オア・アライブ)』であやねを演じたナターシャ・マルテがレインに扮します。前作では18世紀のルーマニアが舞台でしたが、今作は西部開拓時代のアメリカが舞台に。また、ビジュアルが原作に近かった前作とは一変して、まるで1930年代のアメリカ映画のような古めかしいセンスの絵作りで、ストーリーも原作とはかけ離れたものへとなっています。製作費は1000万ドルとされており、UAEでの興行収入は38万UAEディルハムに到達しています。

    『Postal(日本未公開)』


    日本でもカルトな人気を誇る残虐アクションPCゲーム『Postal』シリーズが原作。原作ゲームでのブラックユーモアや非常にお下品な下ネタに安っぽさなど、今作はボル監督の作風と奇跡的なほどマッチ。ゲームの主人公ポスタル・デュードはもちろん、実在のテロリストや元アメリカ大統領など、原作に忠実な不謹慎極まりない内容となっています。さらに、2011年にリリースされたシリーズ最新作『Postal 3』ではボル氏がゲーム中に登場。ゲームの出来栄えが非常に問題のあるものであったため、この最新作の存在が認識できないユーザーもいるとのこと。本映画は約1500万ドルの製作費に対し、アメリカでの興行収入は1800万ドル以上。余談ですが、今作でポスタル・デュードを演じたザック・ウォードは、PS4/XOne/X360/PC向けタイトル『Rise of the Tomb Raider』で主人公ララの敵となるコンスタンティンのボイスアクターを担当しているなど、ゲームの声優としても活躍中です。

    ■2008年
    『Alone in the Dark II(邦題:アローン・イン・ザ・ダーク II)』


    前作『Alone in the Dark』の続編という位置付けで一部設定を継承しているものの、主人公のエドワード・カーンビー役はアジア系アメリカ人リック・ユーンへ変更されています。舞台をニューヨークへと移し、異形の者たちと戦い続けるカーンビーが描かれている今作。原作に近いホラー的な演出が多く、B級ホラー好きには意外と楽しめる内容となっています。脇を固めるのは、『エイリアン』シリーズのビショップ役やテレビシリーズ『ミレニアム』で主演を務めていたランス・ヘンリクセンと、ロバート・ロドリゲス監督作品でおなじみのダニー・ドレホ。製作費はおよそ460万ドルで、興行収入は不明。

    『Far Cry(邦題:G.I.フォース)』


    人気サバイバルFPSシリーズの1作目『Far Cry』を原作としたドイツ・カナダ合作の本作。Crytek社とはドイツつながりで気持ちが分かり合えるのか、パッケージを含め、他の作品以上に原作に雰囲気が近い作品になっています。しかし、ゲームに登場するミュータントの代わりとなる存在は白っぽいただのおじさんなので、原作ファンは違和感を覚えるかもしれません。日本ではアルバトロスの配給によりビデオリリースされているため、『G.I.フォース』というタイトルでアルバトロスなパッケージでリリースされています。製作費はおよそ3000万ドルとみられ、ドイツでの興行収入は約56万ユーロ以上。

    『World of Warcraft(未遂)』

    企画のみ。ボル監督がBlizzard Entertainmentと映画化の交渉をしたものの、「(お前にだけは映画化して欲しくないので)映画の権利は売ることができない」と断られています。

    ■2011年
    『BloodRayne: The Third Reich(邦題:ブラッドレイン 血塗られた第三帝国)』


    『ブラッドレイン』シリーズの3作目。前作に続き4年ぶりにナターシャ・マルテがレインを演じており、ようやく舞台が原作ゲームと同じ第二次世界大戦時のナチスドイツに。ヒトラーの不死化を目論むナチスの部隊はヴァンパイアの弱点を克服したレインに目をつけ、つけ狙います。映画としては映像のクオリティは決して低くはなく、アクションの見せ場も多いためにそれなりに楽しめる作品へと仕上がっています。製作費は1000万ドルとされており、興行収入は不明です。

    『In the Name of the King 2: Two World(邦題:デス・リベンジ2)』


    『ダンジョン・シージ』を原作とした第2弾ですが、前作とはストーリーにつながりはありません。現代社会を生きる男(ドルフ・ラングレン)の家に謎の襲撃者が現れ、助けられた女性と共に異世界へと飛び込みんだことから壮大な冒険が始まります。今作の主人公役は、テレビ東京の午後のロードショーでおなじみのエクスペンダブルな男、ドルフ・ラングレン。今作はドルフ・ラングレンによるドルフ・ラングレンのためのドルフ・ラングレンな映画となっており、ドルフ・ラングレンのマッチョイズムが最大限に発揮されているドルフ・ラングレン作品です。ドルフ・ラングレンが主役ですが『ダンジョン・シージ』が原作ですので、ファンタジー世界で選ばれし者としてドルフ・ラングレンが襲い来る敵やドラゴンと戦います。ドルフ・ラングレンの相手役となるヒロインは、ボル作品の常連となってしまったナターシャ・マルテ。ドルフ・ラングレンのファンだけでなく、『DoA』のあやねのファンも必見です。製作費は450万ドル(フ・ラングレン)で興行収入は不明。以上、ドルフ・ラングレンでした。

    ■2013年

    『Zombie Massacre(邦題:ZMフォース ゾンビ虐殺部隊)』

    1998年にAmigaにてリリースされた同名のゲームの映画化。ボル氏はプロデューサーとして参加。

    『Postal 2(企画のみ)』

    2013年にkickstarterキャンペーンとして企画がスタート。自身も出演すると公約していた今キャンペーンですが、50万ドルの募集に対し、集まった金額は約3万ドル。目標金額の1/10にも達することができなかったため、キャンセルとなってしまいました。

    ■2014年

    『In the Name of the King 3: The Last Mission(邦題:デス・リベンジ ラストミッション)』


    『ダンジョン・シージ』を原作としたシリーズ3作目。『ダンジョン・シージ』を異世界召喚ものと思い込んでしまったボル監督が、『ミッション:インポッシブル2』や『ブレイド3』のドミニク・パーセルを現代の殺し屋役に抜擢した作品です。主人公は他のゲーム『ヒットマン』のような冷酷な殺し屋でしたが、異世界へ迷い込んでしまいドラゴンなどと戦うことになります。ドルフ・ラングレンが出演した前作を踏襲した形ですが、『ダンジョン・シージ』を原作にする理由は売名行為以外見当たらない一本。製作費は350万ドルで興行収入は不明。なお、今作はカナダとブルガリアの合作です。

    ■2015年

    『Zombie Massacre 2: Reich of the Dead(邦題:超科学実験体 ゾンビロイド)』

    2013年に製作された『Zombie Massacre』の続編。こちらもボル氏はプロデューサーとして参加。


上にあげたゲーム原作の作品以外にも、精力的に映画を製作し続けていたウーヴェ・ボル監督。中でも2009年に公開された『Rampage(邦題:ザ・テロリスト)』は初めて評論家から高評価を受け、脱Z級監督を期待されていました。残念なことですが、DVDやBlu-rayなどの売れ行き悪化を理由に『Rampage: President Down』を最後に監督を引退すると報じられました。報じたのはハリウッドの映画メディアではなく、カナダの有力紙(の地方向けのネット版)でした。そんなボル監督の引退を惜しみつつ、残していった奇作の数々をこの記事とともに記憶に留めていただければ幸いです。
《Daisuke Sato》
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