『KOF XV』は何が“新鮮”なのか?新キャラ・イスラのこだわり、新システム、ネットコード…その全貌を開発陣に訊く【TGS2021】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『KOF XV』は何が“新鮮”なのか?新キャラ・イスラのこだわり、新システム、ネットコード…その全貌を開発陣に訊く【TGS2021】

前作から5年、ついにTGS2021にて『THE KING OF FIGHTERS XV』が全貌を明らかにしました。インサイド編集部ではさらに詳細を知るため、開発者の小田氏と空中氏にお話をうかがいました。

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『KOF XV』は何が“新鮮”なのか?新キャラ・イスラのこだわり、新システム、ネットコード…その全貌を開発陣に訊く【TGS2021】
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前作から5年――東京ゲームショウ2021(以下、TGS 2021)にて、ついに『THE KING OF FIGHTERS XV』(以下、KOF XV)が姿を現しました。前作から引き続き、新主人公・シュンエイの物語が描かれ、彼と対を成す新キャラクター・イスラが登場するなど、新たな闘いを予感させています。

前作『THE KING OF FIGHTERS XIV』から進化を遂げ、新たなステージへ突き進む『KOF XV』には、どのような開発コンセプトがあったのでしょうか? 今回編集部では、SNK ゲーム開発本部長で本作チーフプロデューサーの小田泰之氏、ゲームディレクターの空中海人氏にお話をうかがいました。

新たなるストーリーとキャラクター

左から、小田氏、空中氏

――今回の『KOF XV』では “新鮮味”をキーワードにしているとうかがっています。開発に置いて具体的にどの点を新鮮にしようとされましたか。

小田泰之氏(以下、敬称略)新鮮味というのは「まったく何もかもが違って新しい」というものではありません。それはもはや別物になりますし、逆に新鮮味が無くなりますから。

今回私たちが目指した“新鮮さ”は、『KOF』の長いシリーズの中で、今までのものと比べても印象が良くなるようにするという意味です。端的に言えばグラフィックの表現や、サウンドをパワーアップさせるといった点ですね。

――試遊してみてそれは感じました。

小田ありがとうございます。当然、PlayStation 5やXbox Series Xにも対応するので次世代ハードのマシンスペックも加わって、さらに新作らしくなっています。今回、会場ではPS5版を展示しましたが、起動や試合が始まるまでの時間も大幅に短縮されているのは体感してもらえたのではないでしょうか。

そして、新しいキャラクターと新しいシステムも追加して、今までの『KOF』シリーズにも新たな波風を上手に生み出しているようにしています。機能的にはオンラインモードにも様々な調整が加えられたり、新たなシステムが追加されたりしていますし、対戦以外の部分でもサウンドモードではBGMのカスタマイズなども行えるようになりました。

――空中さんはゲームディレクターとして、開発していて新鮮味をどのように織り込みましたか。

空中海人氏(以下、敬称略)小田からもありましたが、すべてを「完全に新規」としてしまうと『KOF』ではなくなってしまうので、従来のシステムは踏襲しつつ、新しい展開を狙いました。

たとえば、システム面では本作からの新システムとして「シャッターストライク」を導入したり、遊び方という面では、オンライン対戦にドラフトVSという、プレイヤーが1キャラずつピックし、同一キャラは選択できなくなるルールの対戦モードを追加したりしています。

――『KOF』といえばストーリーモードの魅力もありますよね。前作『KOF XlV』から新主人公シュンエイのストーリーが始まりましたが、『KOF XV』からはどのような物語が展開されるのでしょうか。

小田ストーリーの見どころとしては、シュンエイの持つ“幻影の手”というのが一体何なのか? という謎を掘り下げていく点ですね。

そんな彼のライバルキャラとして、イスラというキャラクターが登場します。彼女とどういう因縁があるのか、物語の中でどういう活躍をするのかというところが見どころとなります。

――『KOF』のこれまでのストーリーを振り返っても、たとえば初期のオロチ編など日本神話的な趣があったり、ネスツ編ではSF色が強いものになったりしています。今回のKOF新章からはどんなストーリーを予定していますか。少しキャラデザインからライトノベル的な雰囲気もあるのかな、と感じました。

小田いままで京や庵、K´、アッシュといったキャラは自立した主人公像でしたが、今回のシュンエイは彼らと比べると少し年齢も低く、精神的にも不安定なキャラクターなんです。

シュンエイとイスラはパッと見ると……若いじゃないですか。そういうのもあってライトノベル的だと感じられたのかなと、お話をしていて感じました。

――恐縮です(笑)。

小田おそらくこれまでの独立不羈の精神を持つ芯のある主人公とは違った面白さを感じてもらえると思います。ちょっと僕の昔の話をすると、過去『餓狼伝説』や『龍虎の拳』にも携わっていたのですが、昔のタイトルの主人公はガシッとしているじゃないですか。そこから時代が下った、『餓狼 MARK OF THE WOLVES』の主人公、ロック・ハワードはちょっと不安定なキャラだったと思うんです。彼を軸に据えたストーリーで描いた面白さに近いかもしれませんね。

――確かに昔の格ゲーのキャラは基本的に実力一本な世界観とも相まって、すごく自立したキャラが多いですよね。シュンエイのキャラクターというのも、時代の変化もあるのでしょうか。

小田世の中の変化もありますし、自分自身も年齢を重ねて、主人公に対する価値観も変わっていると思います。

――新キャラのイスラはどのようなコンセプトでデザインされましたか。

小田最初は設定やデザインについてノータッチで、アーティストやデザインチームから上がってきたものにリアクションするかたちでキャラデザインはスタートしました。

正直なところ、第一稿を見たときにはほぼ今の感じだったので、見た目からインパクトがありました。今でこそ馴染んでいますが、このタイプのデザインのキャラを格闘ゲームに出すというのは、正直不安があったのは事実です。

とはいえ、とてもインパクトのあるキャラデザインだと思ったので、そのまま台詞やゲーム中の動きと言ったキャラクター作りが進むにつれ、どんどん絵と噛み合っていきました。

――空中さんはイスラのキャラクター作りについてはいかがでしょうか。

空中キャラ設定として「幻影の手が常に出ている」というのは、キャラの動作を作る段階ですでに決まっていたんですよ。じゃあどういうふうに幻影の手を使うかというところから考えていきました。

幻影の手はイスラの相棒のような立ち位置なんです。使い魔みたいなものというよりも、協力して戦うことを意識して、アクションを作りこんでいきました。

――試遊でイスラをプレイしてみたところ、不思議な魅力のあるキャラだと感じました。癖は強い印象ですが、中~遠距離で戦うのが面白いと思いました。これから彼女を使うプレイヤーには、どのような戦い方をしてほしいですか。

空中性能としてはトリッキーな技が多いんですよ。しっかり使おうと思ったら、たぶん初心者には難しいところはあるんです。ですが全部の技を使わなくても、たとえばリーチが長い強パンチやふっとばし攻撃を用意しているので、完全に性能を理解していなくてもそれなりに戦えるはずです。

小田も話したように、とにかくキャッチーな見た目なので、初心者でも使ってみたいと思うんですよね。使った結果、「トリッキーすぎて面白くないかも」と思われてしまうのは残念なので、「性能を使いこなせなくてもある程度、遊べますよ」というところでいろいろ調整をかけています。

――イスラはシュンエイとはストーリーではどのように絡むのでしょうか。

小田彼女はシュンエイのライバルという立ち位置なので、ストーリーにもガッツリ関わってきます。まだ話せないことも多いですが、シュンエイとの駆け引きもありますし、イスラ自身の掘り下げもありますし、彼女を通じてシュンエイはどんな存在なのかということも掘り下げているので、ぜひ楽しみにしてください。

――『KOF XV』の開発に当たって、前作の反響をどのくらい参考にしましたか。前作はナンバリングタイトル初の3Dグラフィック化など、さまざまな反応があったと思われますが。

小田前作のリリース時、前々作にあたる『KOF Xlll』から時間が空いていたのもあって、コミュニティが一度鎮静化したような感じだったんです。またオンライン対戦も『KOF Xlll』の時は今ほど活発ではありませんでした。

しかし『KOF XlV』のときに世界中のコミュニティが一斉に息を吹き返してくれたといいますか、活動がまた盛んになったんです。まずそこのコミュニティから来る意見には耳を傾けましたし、国内に止まらず海外でも熱心に大会を開催してもらったり、そこからフィードバックをいただけたりということも大きかったですね。

その人たちが私たちの財産といいますか、その人たちのゲームプレイにまるっきりリセットがかかるような作品にはせずに、みんなが『KOF XV』へ違和感なくスライドできるゲーム内容にすべく開発を進めています。

――『KOF XV』では前作に引き続き、3Dグラフィックを採用しています。今作ではそんな3Dグラフィックの方向が定まった印象があります。どのように調整しましたか。

空中ビジュアル面では、ライティングなど光の表現を格段にパワーアップさせています。陰影であったり、キャラクターの表情であったりが魅力的に伝わるようになっていると思います。

キャラクターモデルに関しても調整を重ねて、試行錯誤を繰り返しながら完成に持っていっています。ただ、細かい作り込みをすればするだけ処理負荷の問題も出てきてしまうので、その辺は上手くバランスを取ってキャラの魅力が伝わることを念頭に置いて作っていっています。

――長引くコロナ禍によって、開発が難しかったということはありませんでしたか。

小田どこの会社も同じだと思うのですが、完全にリモートワークにすると抜けがけっこう多発しました。SNKが在宅ワークに切り替えてから、3ヶ月くらいで発覚してきたかなと思います。

なので在宅でやる部分と、出勤でやる部分を併用して、今は問題なく対応できるようになっています。

――今回は新システムにシャッターストライクという攻撃が追加されました。相手にコンボなどで攻め込まれていても、1ゲージを消費して一気に攻守を交代できる効果があるユニークなシステムです。この攻撃からどのような戦い方の変化が生み出せそうでしょうか。

空中『KOF』は従来攻め側が強いシステムになっているのですが、そうじゃなくて全キャラ共通のシステムとして、守りを強化するシステムを入れて、新しい展開や遊びを提供できたらな、と思って導入しました。

ただシャッターストライクを入れたことで、『KOF』の今までの遊び方が根本から覆ることはありません。アクセントのひとつとして遊んでいただけたらいいかなと思っています。

――シャッターストライクを使ったおすすめの攻め手はありますか。

空中相手の攻撃に合わせて打つと、ガードしつつこっちが攻撃を当てることができるのでそれが気持ちいいです。コンボに組み込むことも可能で、その場合はゲージ回収として優秀です。

また、ガードした時にしか使えないといった縛りはないので、単純にガード付きの攻撃として「突然出してみる」みたいな使い方もできると思います。

――オンライン対戦に関しまして、本作のネットコードについて教えていただけますか。現在、ロールバック方式を採用したことまでは伺っています。

小田コロナ禍によって、オフラインで遊ぶということが難しくなってきているので、大会を開くのもオンラインが主流になっています。

そのような状況に加えて海外のファンの方から「ロールバック方式をお願いします」という熱い要望があったことも本作のネットコード策定に大きく影響しています。その頃には、グローバルな展開をしていくにはロールバック方式は必須だという考えは開発チームでも共通認識としてあり、本作ではロールバック方式を採用しています。

――まだリリース前ですが、本作は発売後のアップデートやDLCなどでキャラクターやチームの追加などは考えていますか。『KOF XV』の参戦キャラを見ても、シリーズの人気キャラで「あのキャラいないんだ」と思いまして。

小田今発表しているDLCキャラクターとして、チーム1とチーム2の計6キャラクターが今後追加されます。どのタイミングでどういうチームかっていうのは、できるだけ発売前に情報が出せるように準備しています。そちらも楽しみにしてください。

その後で、そこまで出てこなかったキャラクターが今後出てくるかというのは、まだ明言できない状態です。「当然、そういう声がでてくるだろうな」と想定して、いま身構えているところです(笑)。

――『KOF XV』では、さきほどおっしゃっていたサウンドモードや、ギャラリーモードでアニメーターの大張正己さんによるムービーを観ることができるなど、こうしたおまけの部分でも新たな要素が追加されていますよね。

小田BGMに関しては、ユーザーからの要望はずっとあったんですけど、今回はようやく歴代のBGMにも変更できるモードを実装することができました。これは結構よかったと思います。

ステージに対して特定の曲を当てることができ、ステージごとに設定できるため、試合の前にチェンジできるシステムになっています。このBGMのモードは、特に古くからの『KOF』ファンに楽しんでいただけるはずです。

――最後に『KOF XV』を待つファンに向けて、本作をどんなふうに遊んでほしいか教えてください。

小田『KOF XV』で一番分かりやすい特徴にはキャラクターが多いことがあります。

本作からシリーズを体験される方に向けては、コンボがまったくできない人でもボタンを連打したらコンボできる仕組みも準備していますので、まずはお気に入りのキャラクターを探してプレイしてもらえれば、必ずお気に入りが見つかると思います。

もちろん、古くからシリーズを楽しんでいただいているプレイヤーさんには対戦が盛り上がるような調整もしっかり図っておりますので、どうぞご期待ください。

空中格闘ゲームを遊ぶ方向性として、世界観を楽しむという方向と、競技的に対戦自体を楽しむ方向という二つがあると考えています。

初心者の方だったとしたら、自分はどっちの方向なのかを見つけていただければと思います。ストーリーを楽しみたいのであれば、上手にプレイすることよりも連打コンボなどを使って、それぞれのキャラクターが紡ぐ物語を堪能してほしいです。まずは難しく考えずに楽しんでいただきたいですね!


前作「KOF XIV」から5年の歳月を経て、いよいよ発売まで半年を切った最新作『KOF XV』。今回の小田氏と空中氏のインタビューからは、いかに過去の伝統を生かしながら新鮮味を生み出すかを考えている姿が印象的でした。

途中で『餓狼伝説』など、往年のSNK作品についての言及もあり、その頃と比べて時代の移り変わりもあって『KOF』にも色々な変化があったな、とお話を伺いながらしみじみさせられたところもありました。

『THE KING OF FIGHTERS XV』はPC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoftストア)/PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S向けに2022年2月17日にリリースを予定しています。

《葛西 祝》
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