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『Horizon Forbbiden West』「機械獣」はもうすぐあなたの側に!身近に広がる生物模倣「バイオミメティクス」の研究【ゲームで世界を観る#33】

工業製品こそ自然から学ぶところがあります。

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『Horizon Forbbiden West』「機械獣」はもうすぐあなたの側に!身近に広がる生物模倣「バイオミメティクス」の研究【ゲームで世界を観る#33】
  • 『Horizon Forbbiden West』「機械獣」はもうすぐあなたの側に!身近に広がる生物模倣「バイオミメティクス」の研究【ゲームで世界を観る#33】

『Horizon Forbbiden West』でアーロイ達の住む未来の地球は「機械獣」と呼ばれる生物を模した機械によって支配されています。テクノロジーを失った人類は槍や弓で対抗し、SFでありながら太古のイメージを併せ持つユニークな世界です。

機械獣には猿やヒョウ、鳥から恐竜まで様々な種類が登場しますが、生物の性質や構造を模倣する研究は「バイオミメティクス(生物模倣)」という分野で実際に進められています。古くは鳥の翼をまねたグライダーで滑空したり、人間型ロボットを造って人間の作業をさせようと考えたり、生物がそれぞれに持つ機能を獲得しようと思ったら、ゼロから再発明するよりも、進化の過程で合理化された生物の構造をそのまま使った方が近道なのです。

現在のバイオミメティクスに通じる研究のはしりはやはりかの天才レオナルド・ダ・ヴィンチ。解剖学を軸に生物の構造を観察していたレオナルドは『アサシンクリード2』にも登場するグライダーや羽ばたき式飛行機を設計し、多くのスケッチを残しています。グライダーの開発は9世紀後ウマイヤ朝のアッバス・イブン・フィルナスが先に試みており、これもまた雁の翼をモデルにした構造を使っています。

バイオミメティクスは様々な分野で活用されていますが、一般に使う身近な製品にも取り入れられています。生物の構造は省エネルギー化と相性が良く、家電大手のシャープ社は生物模倣を研究する部署を2008年に立ち上げました。鳥の翼は風をコントロールする能力に優れていて、扇風機やエアコンでファンを多く扱う同社には格好の研究対象でした。最近の扇風機は流線型のカッコいいファンを見かけますが、これには長距離飛行をするアホウドリやアマツバメ、蝶のアサギマダラの形状を取り入れてあり、最大で約50%も風量が向上した機種もあります。ユニークなものでは掃除機にネコの舌の仕組みを使ってホコリをまとめる機能を付けました。

500系新幹線の特徴的な長い先頭車両はカワセミのくちばしがモデルです。カワセミは抵抗力の強い水中に飛び込んでも深くまで突き刺さります。新幹線はトンネルに突入するときに、高い気圧の発生によって強烈な空気抵抗が生まれます。大きな衝撃音や耳が痛くなるのはこの気圧上昇が原因です。カワセミのように「突き刺さる」ような構造にすれば空気抵抗を軽減できるということで、あの特異な長い車両になったのです。当時の開発担当者だった仲津英治氏は日本野鳥の会の会員でもあり、パンタグラフの形もフクロウの風切り羽を取り入れて静音化し、500系は騒音と省エネで大幅な改善を達成しました。

ロボット工学のバイオミメティクスで、現在先頭を行くのが米企業のボストン・ダイナミクス社です。犬のように動く4脚ロボットはどこかで観たことがあると思います。同社ではDARPAの支援の下、軍事の運搬で主に利用されているほか、2020年からは74,500ドルで「スポット」民生用の一般販売を始めています(日本からも購入可能)。

ボストン・ダイナミクス社の特徴は優れたバランス維持能力で、これまでの脚付きロボットは「よろけ」への対処が難しく、崩れたバランスを感知、対応を計算、正確かつ高速な脚の制御と、人工ではソフトハード共にかなり難しい技術が必要です。同社は動物の脚の動きを研究し、強く押し倒そうとしてもうまくこらえる足運びを実現しました。同社の2足歩行機「アトラス」ではすでにパルクールの動作も実行しており、滑らかに動くロボットが今後もっと登場するでしょう。

ドイツのFesto社は飛行の生態模倣に力を入れており、蝶やトンボ、コウモリなどの試作機を見本市で披露しています。機構自体はシンプルな羽ばたきではあるものの、翼の形は本物に近く、動きを止めてもしっかりと滑空ができています。

ドローンと比べるまでもなく音は静かで、将来的にはカメラを載せて飛ばす用途がありそうですね。他の会社が開発した鳥形ロボットでは、小鳥を追い払う鷹の代わりとして実際に使われています。

災害現場の探索では日本で開発されたヘビ型ロボットが最も有力視されています。東京工業大学が開発した「ACM-R5」はヘビのうねりの研究から水中でも泳げる特性を持ち、2006年のグッドデザイン賞を受賞しました。現在日本は破損した福島原発の内部探査を喫緊の課題としており、管や瓦礫の隙間を進み、かつ水中で活動できるヘビ型の探査機が求められています。

不測の事態が多発する場所では、単純にあれこれ機能を増やしていくだけでは対応しきれません。様々な状況に対して汎用的に対処できる生物の動きを借りているのです。動物なら当たり前にできるそのような環境での適応力は、ロボット工学にとってはまだまだハードルは高いもの。それでも、ロボットがペットのように労働を手助けする時代はもう始まっているのです。


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