最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。
今回は2023年2月16日に、DANGEN EntertainmentよりPC向けにリリースされた『Loretta』について生の内容をお届けしたいと思います。
『Loretta』とは
Yakov Butuzoff氏とDaria Vodyanaya氏の2名で構成される開発チームにより制作された作品。プレイヤーがヒロインと“共犯関係”となり、自身の作り出した悪夢の中へと手を引かれてゆくサイコスリラーアドベンチャーです。
舞台となるのは1940年代のアメリカ。ニューヨークから田舎の農場町へと引っ越した主人公ロレッタ・ハリスと、その夫ウォルター・ハリスは、環境の変化と生活の困窮によって関係が冷え切っている状況です。
とある日、作家であるウォルターに、多額の生命保険がかけられているのを知ったロレッタ。冷え切った夫婦の不関係はもとより、夫が不貞を働いていたことなど、多くの要素が絡み合い、静かに、恐るべき計画がはじまろうとしています。プレイヤーはロレッタを取り巻くドラマを操作しながら、その結末を見届けていきます。
ヒッチコックやリドリー、スティーヴン・キング、ウラジーミル・ナボコフなどの作品から影響を受けたという本作。フィルム・ノワールの手法やアンドリュー・ワイエスやエドワード・ホッパー作品からの影響も取り入れ、なんとも雰囲気と語り口の良い作品になっています。
『Loretta』の実内容に迫る!
本作は横スクロール画面でキャラを操作しながらオブジェクトを調べるタイプのアドベンチャー。キャラの会話シーンでは選択肢が出たりしますが、比較的オーソドックスな操作システムでしょう。筆者はコントローラーでプレイしたのですが、オブジェクトによって押すボタンが違うのは少しユニークです。
物語は1947年、突如としてウォルターが失踪したというハリス邸に、私立探偵を名乗るチャンバースという人物が訪れるシーンからスタート。チャンバースはウォルターが借金を抱えていて、返済を迫る人々から自分が雇われたことをロレッタに告げます。


家でのいくつかの会話の後に、ロレッタに夫が失踪したことに心当たりがあるか聞くチャンバース。いつしか場面は家の裏にある井戸の前に移っています。ここでに驚きの展開と事実が突きつけられ、物語は現在から2週間前へと遡ります。
そう、本作のシナリオはロレッタの過去に何が起きたのかを、プレイヤー自身の選択で決めていく物語なのです。


ロレッタの過去に何が起きたのか?
本作はチャプター制で、物語は第2章からしばらく過去の話が続きます。各章は基本的に決められた舞台の中で、アイテムを調べたり、会話をしたり、時にはある決断をしたりしながら進めていきます。その選択によって、ロレッタの過去の運命は大きく変わっていきます。
例えばウォルター宛に届いた手紙を「勝手に開ける」か「開けない」か。望まぬ来客中にかかってきた電話を「取る」か「取らない」か。そういった些細なことだけでなく、嘘や殺人にまみれた選択がいくつも用意されているのです。なお、この選択肢について、基本的に現在の物語に紐づいている「結果」だけは変えることができません。



ウォルターの失踪事件は、不倫相手であるマーガレットや出版社の友人、そして夫の前妻が残した子供とその恋人、地元の警官まで、さまざまな人々を巻き込む大きな騒動へと発展します。その中でロレッタは、ウォルターが隠していた大きな秘密を知り、思っても見なかった事件に巻き込まれることにもなるのです。
ちなみに、各チャプター間ではロレッタの心情を表すようなパズルやシューティングのミニゲームが挟まります。急なロールシャッハテストもあったりしますが、果たしてこれはゲームに影響を与えるのでしょうか……?



上質な物語を支える日本語翻訳!
『Loretta』の物語には、いろいろな人々の秘密や過去、嘘が絡みあっています。さらに、ストーリーが進むと過去や現在、そしてロレッタの精神世界などの描写が絡み合っていきます。ただ、テキストは非常にわかりやすいので、プレイヤーとしてもしっかり自分の意志を持って決断できると思います。
ちなみに本作では、メニュー画面のチャプターモードからいつでも前の場面に戻ることができます。また、戻った場合でも、それ以前の「プレイヤーが選んだ結果」は引き継がれるため、もしあの時に別の道を選んでいたら……という展開を見ることも可能です。一部の展開はスキップもできるのも嬉しい要素です。



もちろんこのシステムはしっかりゲームにも活かされています。あるキャラクターの事情を知り、その内容がロレッタにとって良いものではなかった場合、元のチャプターに戻ってどうするのか。そういった要素を潰していくことで、展開やエンディングも複数変化していきます。
そして、このゲーム性を支えているのが日本語翻訳のレベルの高さ。会話はもちろん、ちょっとした演出やオブジェクトなども訳されていています。会話の内容が重要なアドベンチャーゲームで「キャラクターの個性がおかしくなっていない作品」というのはそれだけでも非常に遊びやすいものです。


このゲームをプレイするならば、まずは最初に自分の思うままに進んでみてください。その結末を見届けるのがとても楽しく、良い本や映画を見ているような気分になれますよ。そして、なるべくは雰囲気抜群のBGMを堪能できる環境で遊んで欲しいと願います。




ここまで紹介してきた『Loretta』。ひとつの事件から始まる「過去」をプレイヤー自身が操る物語は、さまざまな思惑や別の「過去」が絡み合うことで読み物としてもゲームとしても優秀です。色々な決断を振り返り、最適なルートを見つけ出すことで見えてくるものも多く、また、新たな謎も生まれます。
筆者もすべてのSteam実績をコンプリートしているのですが、それでもまだ「これ以上の結末があるのではないか?」と思い、何度か繰り返しプレイしています。なお、本作はクリアした人向けに少し難易度が高くなる「ノワールモード」も用意されています。

ただ、色々なミニゲームや手法を取り入れることで、物語を楽しむことを少し阻害してしまっているかな、と思う部分も。ミニゲーム自体はその心理状態などを推理するのに重要なのですが、一部ちょっと面倒なものもあるので、スキップ機能はあっても良かったかもしれません。
『Loretta』はPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)向けに配信中です。
タイトル:Loretta対応機種:PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2023年2月16日
記事執筆時の著者プレイ時間:5時間
価格:Steam 1,700円/Epic Gamesストア 1,460円/GOG.com 14.99ドル
¥1,599
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)