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異能×学園RPG『シカトリス』攻略のコツを現役教師に訊く!“生徒の正しい導き方”を教わって実践してみた

『シカトリス』攻略のノウハウをリアル先生に訊いてみました。生徒とのコミュニケーションに役立てながらゲームプレイにも挑戦!

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異能×学園RPG『シカトリス』攻略のコツを現役教師に訊く!“生徒の正しい導き方”を教わって実践してみた
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日本一ソフトウェアが6月29日にPS5/PS4/ニンテンドースイッチ向けにリリースした異能×学園RPG『シカトリス』。主人公は教師として“異能”という超常の力を持つ生徒を指導し、交流や育成を重ねながら“異能”が関わる事件に立ち向かっていきます。

ざっくりとあらすじだけを見ると、超常能力と学園青春モノを組み合わせたエンターテインメント作品に見えるかもしれませんが、“シカトリス”とはフランス語で“傷跡”という意味。本作に登場する生徒は皆が心に傷を負っていて、「異能」を理由としたトラウマを抱えています。そんな背景もあり、展開はややダーク……。ただ“学園で過ごす日常”を淡々と楽しむRPGにはとどまらない、奥深いストーリーが語られます。

本記事ではそんな本作のプレイレポをお届け……したいのですが、はたして筆者にトラウマを抱えた少年少女たちの心と向き合うことなんてできるのでしょうか? 自分の本当の気持ちだってわからないのに……。

というわけで、今回は迷える青少年の強い味方である“生きるための学習塾”「タカ塾」、オンラインフリースクール「and」オーナー兼塾長である中川貴士さんにインタビューを実施。現役教師でありながら学習塾とオンラインフリースクールを運営する中川氏に、『シカトリス』作中に登場する生徒たちとの接し方を教わりました。本インタビューをもとに『シカトリス』をプレイすれば、筆者だってゲーム中の生徒たちや自分を救えるはずです!

「タカ塾」「and」とは?

「タカ塾」は福岡で運営されている、不登校・引きこもり・発達障害などの方を専門とした“生徒さんが生きるために必要な自己肯定感を育む学習塾”です。また、フリースクール「and」では、ZOOMなどを通じて全国の生徒さんと向き合った活動をされています。

また、「and」ではゲームを使った活動も実践されていて、パーティ系ゲームや『マインクラフト』など親しみやすいオンラインタイトルを使いながら生徒さんたちと活動を行っているそうです。対象年齢は6歳から18歳としていますが、18歳以上の方も利用できるオンラインフリースクールとしてWebサイト上から無料体験の申し込みを受け付けています。

「タカ塾」Webサイト「and」Webサイト

◆『シカトリス』ってなに? まずは6月29日発売の本作からチェック!

「タカ塾」「and」を運営する中川氏へのインタビューの前に、『シカトリス』について紹介しましょう。本作は「異能」という超能力を発現してしまった7人の生徒たちと、それを導く先生(主人公)の物語です。7人の生徒たちは学生でありながら「異能」対策機関のメンバーとして動員され、異能使いが起こした事件、さらには精神世界で自分の分身と対峙していくことになります。

本作はストーリーにかなり力が入っており、プレイヤーが驚くようなギミックも盛り沢山です。また、かなりシビアな戦闘をクリアしていくことになり、それにあわせてキャラ育成もかなり自由度が高いシステムを採用しています。

難易度は高めであるものの、イージーモードも用意されているのでシミュレーション系やハードコアなRPGが苦手な方も安心。過酷な現実を生徒と生き抜くために入念にカリキュラムを練っていく、“先生視点での学園モノ”なゲームプレイを体験できます。

◆「タカ塾」「and」塾長・中川貴士さんインタビュー!子どもたちと向き合うのに重要なのは「修正力」

ーー今回はよろしくお願いします! 早速ですが、まずは「タカ塾」「and」の活動内容についてお聞かせください。

中川貴士氏(以下、中川):「タカ塾」というのは不登校だったり発達障害だったり、ひきこもりの方などを専門にしている学習塾です。不登校の生徒さんの在籍が多いので、皆さんがよく耳にする「学習塾」とは毛色が少し違います。

授業内容も固定化されたものは一切なく、本人に寄り添った形で作っておりますので、本人が分からないところから「学び直し」を行うこともあります。生徒さんの状態によっては予定していた授業を一切せずに気分転換に遊びに行ったり、ゲームをしたりする日もあります。

――学校の授業を予習復習したり、受験勉強をするような学習塾と大きく異なりますね。

中川:そうですね。生徒さんと顔を合わせたときに「今日は調子が悪いのかな?」と思ったら、生徒さんの話を聞きつつ、予定を変更することも多々あります。感情の動きが大きい生徒さんも多いので「今日はゲームでもやろうか」「近くのカフェでお茶でも飲んで帰ろうか」と“本人の今”に寄り添った形で授業時間を過ごしています。基本的に1対1、多くても1対3の形式で、オンライン・対面問わず活動しています。

――なるほど。

中川:それ以外に「体験活動」もしています。不登校の方は学校との関係が断絶されている状態で生活していることが多いので、喋る相手がご家族しかいないというような状態になることも珍しくありません。なので一緒にショッピングモールに遊びに行ったり、体育館で運動したりしながら、外界とつながる機会を作っていきます。

勉強については保護者の方はとても不安に思われますが、その先には「今後、自分の子どもは自立して生きていけるのか」という不安もございます。その不安は生徒さんも感じている場合が多いので、社会に出る0.5ステップとして弊塾の理念に共感している企業様に職業体験のお受け入れもお願いしております。

あとは居場所づくりとしてカフェもオープンしているので、そこを生徒さんや保護者の居場所としてもらう、なんてこともあります。

「and」オンライン活動の様子

中川:オンラインスクール「and」は「タカ塾」とはまた雰囲気が違って「一歩踏み出したいけど、まだエネルギーが湧いてない子どもたち」がオンラインをメインに繋がり、心のエネルギーを充電する場所なんです。なので「and」では一切勉強をしていません。

――学習塾とはまた異なる、交流の場といったところなのですね。

中川:『マインクラフト』のRealmsで集まってサバイバルしたり建築したり……。どっちかというとオンラインの「居場所づくり」というのがメインです。カメラもマイクも必須ではないので生徒さんの参加の仕方も様々で、顔も声も知らない生徒さんも在籍しています。

でも『マインクラフト』の中で自身が操作するキャラクターを通じてお辞儀をしたりチャットでコミュニケーションをとったりできるので「どういう形でもいいから、あなたはいろいろな人と繋がれるんだよ」ということを教えてあげられる、“心のつながり”を与えられる場所がオンラインスクール「and」だと思っています。

――公式サイトを拝見しましたが、その他にも多様な活動をされていますね。

「and」の生徒さんが手がけたイラストでパッケージングされたオリジナルコーヒー

中川:オンラインでエネルギーがたまってきた子に向けて、オリジナルコーヒーの販売体験をしています。生徒さんが自分で描いたイラストをそのままパッケージにしてイベントで販売する。ちょっとした職場体験のようなイメージです。自分のやったことが評価され、それと同時に自分の存在が社会から認められている、必要とされているという経験をしてもらうような活動をしています。

そして、ゲームと教育は相性がいいんですよ。コミュニケーションツールにもなり、勉強にもなる。文明の利器だと思っていますね。娯楽でもあり、教育でもあります。

――ゲームメディアとしては嬉しい言葉です! 「タカ塾」「and」ではどのような生徒を指導されていますか?

中川:不登校の生徒さんが多いんですけど、うちは年齢で区切っていません。本人の困りごとを聞いて、うちでサポートできることであれば対応させていただいています。年齢でいうと30代後半の方から、小2の子まで在籍経験があります。例えば、就職はしたけれどメンタル的に問題を抱えており、社会生活に難しさを感じている。しかしそれでも就職したいという思いがある生徒さんと「外に出る習慣」「社会と関わる習慣」を学び、身につけていくような活動もしています。

――「タカ塾」では「ひとりひとりに心豊かな人生を歩んでほしい」という方針を掲げていらっしゃいますが、このメッセージにはどのような想いや意図が込められているのでしょうか。

中川:“心の豊かさ”というものは、人によって定義が違うと思います。僕にとっての“心の豊かさ”というのは「未知なものを経験・体験する」「見える世界を広げる」の2つ。だけど、未知なものに飛び込んで行くことって、誰しも不安があると思うんですよね。

中川:自分も高校や大学の入学時など、先の読めない未知な状況は不安でした。でも、いざ飛び込んで見ると楽しかったり、充実していたり、人との輪が広がったりしました。まさに新たな体験、そして見える世界が広がった感覚です。知らないことは「不安」であるけど、その「不安」を乗り越えないと自分が思っている“心の豊かさ”は味わえない。それを乗り越えるためには「成功体験」が必要だと感じています。「不安」と「成功体験」を天秤にかけ「成功体験」が上回った時、人は未知なものに飛び込んでいけるのではないかと思います。なので、学校に行けない、勉強ができないなどのメンタル状態で未知への挑戦は難しいんです。

だから「君はできるんだよ」という思いを活動を通じて生徒さんたちに伝え続け、自尊心や自己肯定感を高めてもらいたいのです。生徒さんによって伝える際の言葉選びは変わりますが、根底にある思いは変わりません。そうして「やりたいことをやる、会いたい人に会う」などして自分の世界を広げ、次の行動を自分で選べるようになってほしいんですよね。

人間は、ただ息を吸って吐いたりするためだけに生きているわけではありません。生徒さんには価値観や自分の世界を広げていく人生を歩んでほしいな、という私の思いがタカ塾の理念に繋がっています。

――「若くて多感な時期にある子ども」を指導するとき、中川さんが特に大事にしていることについてお聞かせください。

中川:まず大事にするのは「姿勢」です。本当に生徒の皆さんは聡明で、人を見る目はたしかなものがあります。「対人関係におけるアンテナ」は僕よりも数倍優れている。生徒指導に関して一律的なメソッドはないんですけど、僕は生徒さんのことを「理解しよう」という姿勢を忘れないように常に心掛けています。生徒さんのことを隅々まで完全に理解することは難しいかもしれませんが「分かろうとする」姿勢は持ち続けています。教員の先入観で勝手に決めつけたりせず、何か出来事があったら「どうしたの?あなたはどう思う?」というスタンスを持ち続けています。

――では、続いて『シカトリス』について聞かせてください。ゲーム内に登場するこの2名の生徒を上手く指導するためのアドバイスを頂けるでしょうか? 中川さんであればどのような方針を取りますか?

涼平 春樹(すずひら はるき)

「異能使い」として特殊な事件を解決する組織(RAUT)のメンバーでありながら、高校一年生としても生活している。いつも笑顔で明るく元気なムードメーカー。お調子者だがプレッシャーに弱い一面もあり、手に入れた異能の力で何かできないかと浮足立っている。

中川:「RAUT」という組織に在籍している時点で「心に何かを抱えている」という子たちが集まっているわけですよね。“涼平 春樹”という子は……表面的な性格は明るく見えます。ふざけがちで、物事を真剣に捉えてないように見える場面もあるかもしれないけど、それが本心ではないところが透けて見えます。そういう振る舞いも、ある種の自分を守るための行動と発言なのかもしれませんね。

――なるほど。

中川:髪を派手に染めているところも、周囲から見られる自分を気にしているんじゃないのかな……。染めたりするということは「素の状態の自分」を受け入れるのが難しいのかも。髪を染めることによって安心できている、ということもありそうですね。そういう行動がエスカレーションすると、極端な例では自傷行為だとか、必要以上にピアスを開けてしまうということに繋がる可能性もあります。

教員としてどう関わっていくかというと、「表面的な行動に惑わされないようにすること」が大事です。ふざけているのがその子の本心じゃなくて、「その裏に何かあるのでは?」としっかり汲み取るのを前提として付き合っていくべきでしょう。

なので、表面的な部分だけで指導したり叱責したりはしません。それは表面的な部分が本人にとっても不本意な自己表現である可能性があるからです。本人の状態にもよりますが、目をつむる場面も少なくないかもしれません。ちょっとふたりになってたまに話しを聞いてあげることもあると思う。何とは言わないけど「大丈夫だよ」と安心してもらう関係を築くことを優先するのが良さそうですね。

――ありがとうございます! 次は、こちらの女の子についての印象を聞かせていただきたいです。

篠森 若葉(しのもり わかば)

涼平と同じく、RAUTメンバーの高校一年生。思ったことはハッキリ言うまっすぐな性格で、面倒見の良い体育会系女子。中学時代までは陸上競技で将来を期待されるほどだったが、「異能使い」になってしまったことでその道が絶たれてしまった。

中川:将来を期待されるところが異能によって絶たれる……「本人が意図しないところで周りの攻撃の対象となってしまう」、いわゆる“いじめ”のような構造ですよね。まずは本人を受容し、言いたいことを言ってもらえるようしっかり傾聴することが大切です。思ったことをハッキリ言うという振る舞いは、ある意味涼平くんと同じかな。そういう“トゲ”は自分を守るための行動でもありますからね。

私なら、彼女が自分の中で消化できていない「陸上」の話題や、異能の話はなるべくしないようにします。異能についてはカリキュラム的に仕方ないとしても、陸上競技に触れる必要はないはずなので、その話題は私からは絶対に出しません。

――なるほど。敢えて、コミュニケーションの材料に使わないのですね。

中川:「本来であれば実現できたはずだったが、事情があって実現できなくなった子」というのは、“自分よりも上手く出来ている人”と比べがち。きっと、この子もかなりの劣等感を覚えている状態でしょう。それゆえ周りに対して攻撃的になっているところもあるのかな。で、私としてはそこを含めてすべて受け入れてあげたいんです。陸上についてどうしていくかは、本当に彼女次第。私から無理やり聞いたりはしません。あくまで「もし話してくれるのなら、先生は聞くよ」という心理的な居場所を作ってあげるのがファーストステップになるかなと。

――もしかしたらトゲトゲしいところがある生徒かもしれませんが、接するときにはどのようなことを意識すれば良いでしょうか。

中川:私なら、基本的にはどんな攻撃的な言葉も一度は肯定しますね。関わってきた生徒さんの中には「死ね!」と普通に言ってくる方もいました。でも、そういう「死ね」という言葉も言う相手を選んで言っているはずなんです。私はまず「そんなひどいことを言いたくなるくらい、キツいことがあったのか?」と考えます。「死ね」と口に出して言う行為は褒められることではありませんが、そういう言葉を使う生徒さんの“人格”が悪いわけではありません。

――彼女のほうから陸上の話題を振られたり、何かしらの理由で練習しているところに遭遇してしまったら、どうしたらいいでしょうか?

中川:「お疲れさま~」と軽く挨拶するぐらいですね。練習も隠れてやってると思いますし、未練があるのかな?とは感じるけど、「スゴイものを見ちゃった!」感は出さない。「先生、今仕事終わりで家でお酒飲みたいから帰るね!」くらいでさらっと流しちゃいます。

――本作には「生徒をひとり選んで週末に一緒に出かける」というシステムが登場します。中川さんが指導するとしたら、2人をそれぞれどのような場所に連れて行きますか?

  ●涼平との外出ではどうする?

中川:「外出」は、「生徒本人の内面をより深く知ることのできる機会」です。面と向かって堅苦しく話すと身構えちゃったりするので、公園に散歩に行って歩くことをメインに喋ってもらったりしたいです。敢えて「会話」に集中しすぎないイメージです。面談で「今後の進路について話そう」と言っても喋りにくいけど、ゲームしながら「春からどうする?」なんて聞くと、案外うまく進んだりします。それか、一緒にゲームをするのもアリですね。ゲーム自体もそこまで頭を使わないソフトを選び、FPS/TPSなどオンラインシューター系はなるべく避けます。理由は私もゲームに夢中になるからで、そうなると話したい話題に進めないですからね(笑)。

  ●篠森との外出ではどうする?

中川:「外出」で行く先は生徒さんの好きなジャンルから選ぶことが多いです。ゲーム好きの生徒さんが多いので、だいたいゲームから入りますね。女子の生徒さんだとスマホの音ゲーを一緒にすることが多いです。篠森さんとならウィンドウショッピングは必ず行くと思います。ショッピングや自主トレの合間に、ちょろっと踏み込んだ話も聞くかもしれません。最初の数回は日常的な話がメインになるかもしれないですが、回を重ねるごとに少しずつ聞いていくとか。半年間から一年間くらいの長期的な目で見て、じっくりプランを立てたりします。

――中川さんにとって、「生徒との外出」の定番スポットはありますか?

中川:うちの生徒さんであれば、運動する機会がない方も多いのでアミューズメント施設で遊んだりします。男子生徒だとそのパターンは多いかもしれません。女子生徒だと、親御さんとランチやショッピングに行ったり、能動的に出かける生徒さんも多いですので、男子生徒と比べると外出の機会は少ないかもしれません。

――本作には他にも様々なキャラクターが現れ、そのうちのひとりである「浪崎 圭(なみさき けい)」からは「本当に教師が務まるのか」と先生としての資質・能力を疑われるシーンも存在します。教師または「タカ塾」講師として、生徒からこのような疑問を抱かれた経験はありますか?

中川:僕自身は、そういう経験はありません。生徒さんも気を使って言わないと思います。そして、もし疑ってるとしても、うちは学習塾なので直接言わないまま辞めちゃうと思います。……とはいっても、活動に取り組みながら「このままでいいのだろうか」と考えている生徒さんはいらっしゃいます。「本当に先生が言っていることをやってるだけでいいのか?」という疑問を感じるわけですね。

「タカ塾」の生徒さんは不登校である自分をある程度受け入れられており、かつ授業に参加するエネルギーがあるんです。無気力傾向の生徒さんは比較的少なく、むしろエネルギーに溢れている場合もあります。でもやる気がありすぎて、「人生は短距離走」みたいなイメージで頑張りすぎる生徒さんもいます。でも、それだとエネルギーが切れてガス欠しちゃいます。

――なるほど。

中川:エネルギーが満ちているゆえ、頑張ろうとして「もっと一気にいろいろな取り組みをしてみたい、今の自分なら出来るんじゃないだろうか」と聞いてくる生徒さんも、たしかにいます。出来ることを増やすのは素晴らしいのですが、人生は長距離走に近いものだとも思うので、私はじっくりゆっくりやっていく方向の提案もしていますね。

――ゲーム『シカトリス』で体験していく「生徒の指導」で、最も重要なポイントはどのようなものになると思われますか。「タカ塾」講師としてのアドバイスをもらえたらありがたいです。筆者がプレイしていくにあたって、重要な心構えを……。

中川:ゲームであろうと現実であろうと、こういった取り組みでは“修正する力”が大事です。「生徒理解」「計画性」「継続力」。この3つのポイントを重視しながら、ケース毎に考え方を変えていくのが大事だと思っています。「最初に決めたから初志貫徹しよう!」ではなく、生徒さんの今の状況を見定めて、最も適切なプランに変えていく修正力が大事だと思います。

「変える」ということは、教育においてもすごく勇気が必要なことです。当初の計画通り進まなかったら都度修正していく、という考え方は、ゲームにおいても教育においても大事だと思っています。

――ありがとうございます! 本インタビューを元に、ゲームをプレイさせていただきます!

中川:上手くいかなかったらごめんなさいね(笑)。


◆いざ、実践。『シカトリス』で悩める生徒たちを導くぞ……!俺はやれる……!

前述のインタビューにて中川さんのお話を聞き、思わず目頭が熱くなってしまった筆者。真摯に生徒さんに向き合っているその姿を見て、ゲームではあるものの自分にも「先生」としてのモチベーションが湧き上がってきました。ここからは、“異能”で悩んでいる『シカトリス』の生徒たちを中川さんのアドバイスに基づきつつ導いていきたいと思います。

本作のプレイヤーは、教師として「毎週の授業のスケジュールを立てて、生徒の能力を伸ばす」「事件を解決するため戦闘に挑む」などを繰り返していくことになります。授業パートではスキルを習得させ、その後に生徒の能力を構築。そうして戦い方を身に着けた生徒を「戦闘」パートで指揮していく……という流れです。

涼平がチャラそうな見た目をしているのは、(おそらく)素の自分と乖離したキャラづくりなのでしょう。そして、篠森の辛辣な態度はなるべく受け入れる……そう心がけてプレイしていると、初めて会った生徒たちでも、かなり内面を理解できたような気になれました。実際に、話が進んでいくと中川さんに教えてもらった通りな内面が垣間見えてきたのです。

先生として料理を作ってあげたりしつつ、少しずつ生徒たちと距離を詰めていると異能使いにまつわる事件が発生。生徒たちと共に鎮圧に向かいます。

「レクリエーション」としては物騒すぎる仕事をこなしつつ、カリキュラムで生徒たちの能力を伸ばしていきます。休日には外出イベントも選択できたので、中川さんに教えていただいたプランを早速実行します!

VR施設というアミューズメントパークのようなものも選択肢にあったものの、さすがに生徒と会話はできなさそうなので、涼平を「山」に連れていくことに。しかし……お値段(出費)、まさかの25,000円! 山に行くためにいい靴を涼平に買ってあげたのでしょうか……? ちなみに、涼平と「山」に行った次の日は篠森を連れて外出。こちらも25,000円で、計5万円の出費です。

なんか全然喜んでくれない! 5万円もかけているんだぞ……と言っても仕方ないので、頑張って大人らしく余裕を保ちます。彼ら彼女らは命を懸けているんだし、出会ったばかりなので仕方ないでしょう。多感な時期の子どもと接するのは、そう簡単ではないということです。

ちなみに、この「外出」では生徒パラメータがアップします。休息とうまく使い分けていくことによって、バランスよく生徒たちの能力を向上させられるでしょう。戦闘で有利を取るためにはアドバイスをもらった涼平、篠森だけを贔屓していてはいけません。ちなみにこの段階で筆者が推したくなっているキャラは朝日 透真。涼平、篠森もムードメーカーで良い感じなのですが、朝日は新米教師である主人公に積極的な協力を見せてくれるのです。良い子……!

本作はイージーモードも用意されているものの、デフォルト設定での本戦闘は難易度が高め。油断すると一気に負けるというモノではありませんが、強敵ぞろいですので、毎週のカリキュラムや外出を通じて、自由度の高い育成システムの中でがっつりと計画を立てていくことが重要です。本当に先生を体験しているかのようなゲームシステムですね。

そんなこんなで、朝日にクッキーを焼いてもらったり、一緒にお茶を飲んだりしつつ、生徒たちとほんわかと親睦を深めながら教育していきます。時に“異能使い”の事件や、生徒たちの無意識が集合する「CUAD」に潜り、生徒たちの内面と向き合いつつも、穏やかな日々が過ぎていきます。これはかなり良い感じに生徒たちを導けているのではないでしょうか!?

朝日……? 突然の不穏なセリフを前に、思わずコントローラーを握る手が固まりました。先生に協力的だからと言って、彼女にだって悩みや迷いがないわけではないのです。冒頭で説明したように、“シカトリス”は“傷跡”という意味の言葉。プレイする方は、衝撃的な展開の数々に負けず生徒を導いてください…!


『シカトリス』は6月29日にニンテンドースイッチ/PS4/PS5向けにリリース予定。価格は7,678円(税込)です。遊びごたえのある戦闘と繊細な青少年の心情、そして一筋縄ではいかないダークな世界観を味わいたい方にオススメの一作です。

『シカトリス』公式サイト
ライター:高村 響,編集:キーボード打海,企画:Game*Spark

ライター/ゲームライター(難易度カジュアル) 高村 響

最近、ゲームをしながら「なんか近頃ゲームしてないな」と思うようになってきた。文学研究で博士課程まで進んだものの諸事情(ゲームのしすぎなど)でドロップアウト。中島らもとか安部公房を調べていた。近頃は「かしこそうな記事書かせてください!」と知性ない発言をよくしている。しかしアホであることは賢いことの次に良い状態かもしれない……。

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編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Spark編集長。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『絢爛舞踏祭』。

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