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『グランツーリスモ』生みの親、山内一典氏インタビュー!映画「グランツーリスモ」からシリーズ26年目の想いまでを聞いた

映画「グランツーリスモ」は9月15日より公開です。

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『グランツーリスモ』生みの親、山内一典氏インタビュー!映画「グランツーリスモ」からシリーズ26年目の想いまでを聞いた
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9月15日より、映画「グランツーリスモ」が劇場公開されます。本作品は、その名の通りPlayStation用ソフト「グランツーリスモ」シリーズから生まれた「GTアカデミー by 日産×プレイステーション」(以下「GTアカデミー」)をテーマにした作品です。

なんと今回は、映画公開にあわせて「グランツーリスモ」シリーズの生みの親、「GTアカデミー」の発起人でもあり、映画「グランツーリスモ」のエグゼクティブプロデュサーも務めた山内一典氏へインタビューの機会をいただけることに!

映画「グランツーリスモ」オフィシャルサイト

映画の題材となった「GTアカデミー」に纏わる話から、『グランツーリスモ』の根幹にかかわる話までお答えいただけました。「グランツーリスモ」シリーズ開発元:ポリフォニー・デジタル(PDI)にて行われた、複数メディア合同インタビューをお届けします。

ポリフォニー・デジタルには多くの試遊台がずらり。リアルドライビング&カーライフシミュレーターである『グランツーリスモ7』(PS5/PS4用)だけあって、ずらりと並ぶ“運転席”は壮観のひと言です。

「グランツーリスモ」公式世界大会の優勝者に贈られるトロフィーまで展示され、説明によるとウンベルト・ボッチョーニの『空間における連続性の唯一の形態』をモチーフにしているとのこと。同作品は「ニューヨーク近代美術館(MOMA)」や英国の「テートモダン」に収蔵されています。かつて現物を見たことがあるのですが、トロフィーとして鋳造され“『グランツーリスモ』の優勝トロフィー”として新たな意図を付与されており、こちらも負けず劣らずアーティスティックです。

そんな中で行われた映画「グランツーリスモ」の原点とも言える山内氏へのインタビューは、プレイヤーの方々はもちろん映画を観る方にとっても一読の価値あるものとなりました。

◆「GTアカデミー」にかけた想いから「グランツーリスモ」シリーズ26年目についてまで!山内一典氏インタビュー

――まずは、映画を見てどう思われましたか?

山内氏:この映画は紆余曲折を経て完成したのですが、結果的に素晴らしい作品になってよかったなと胸を撫でおろしています。いわゆるエンタテインメントで、観た人をポジティブにさせてくれる作品だと思うのですけれどものすごく丁寧に作られていましたね。

――この映画のもとになった、「GTアカデミー」を立ち上げられたきっかけについて教えてください。

山内氏:2004年のニュルブルクリンクで、日産のダレン・コックスから「『グランツーリスモ』のドライバーってプロになれるかな?」と聞かれました。僕はそこには確信があったので「なれると思うよ」と応えたところから「GTアカデミー」が始まりましたね。ゲームプレイヤーが『グランツーリスモ』を通じて学んだドライビングテクニックがリアルでも通用するということには、全く疑いを持っていませんでした。

だけどその後「GTアカデミー」のプロジェクトが始まって、僕もだんだんモータースポーツの世界を知っていくわけです。ひとりのドライバーをあれだけのチームでサポートしながら勝負させるモータースポーツは、まるで戦場に近いと感じました。

そんな中で、同時に僕は選手の心配もしていましたね。事故もそうですが、次から次へと勝負し続けなければならない世界なわけで……そういう彼らの人生を心配していました。

――『グランツーリスモ』を手がけ始めた当初は、ゲームプレーヤーが実際のモータースポーツにデビューするということは想像されていましたか?

山内氏:「グランツーリスモ」でドライビングテクニックが学べて、スキルとして身に付けられるっていうことはわかっていたけれども、それと実際にレースに出るということはまた別ですよね。当たり前ですが、それ以外の色々な要素がないとレースには出られないわけです。お金もかかりますし。

だから、こうなるとは全く想像してなかったです。ただいつか、そういうことをやれる機会が出来たらいいなぁ、とは思っていました。

――ゲームの進化によって物理シミュレーションがリアルに近づいてきて「『グランツーリスモ』が実際のレースに対応できる!」と思われたタイミングがあると思います。どの作品あたりでそう思われたのでしょうか。

山内氏:それに関しては割と早く『グランツーリスモ2』(PS用)、『グランツーリスモ3』(PS2用)あたりですね。ですので「GTアカデミー」ができた当初でそういった不安はなかったです。必ず結果を出してくれると思っていました。

――ドライバーについて心配されていたとのことですが、「GTアカデミー」で最も大事にしようと考えていたことを教えていただけますか?

山内氏:日産の皆さんと僕が感じていたことは同じではないかもしれませんが、あの世界でトッププレイヤーになるような選手たちは人間としても素晴らしいんです。

8月にアムステルダムで行った「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2023 Showdown」期間中に映画の特別上映会も行いました。そこで歴代の「GTアカデミー」ウィナーのみんなと再会できたのですが、勝負に勝ち上がってきた人間だけが持っている魅力があって、人物としてとても素敵です。頭もよくて努力家で、物事に対する見方もシャープだし。

そういう若者たちが、あの時代を共有してお互い友達になって、チームだったりメカニックと交流して人間的に成長できたというのが、最も良かったのではないでしょうか。

――「GTアカデミー」は「『グランツーリスモ』のトッププレイヤーを本物(リアル)のプロドライバーに育成する」というプロジェクトですが、その逆、「プロドライバーを『グランツーリスモ』トッププレイヤーとして育成する」ということは検討されたのでしょうか?

山内氏:特に企画としてそういうことを考えたことはないですね。しかし、いまモータースポーツの世界などを見ているとFIA-F4選手権で勝った選手が今週はグランツーリスモの公式世界大会「グランツーリスモ ワールドシリーズ」に出ていたりするので、そういったことは自然に起きていると思います。今の選手は同時に“シムレーサー”でもあるので、その境界はもうなくなってきているのでしょう。

――今の「グランツーリスモ」eモータースポ―ツ選手とかつて「GTアカデミー」でリアルモータースポーツのプロになられた方々の間に、共通点は感じられているでしょうか。

山内氏:その点で言うと、今も昔も全く同じです! 積極的にプロのリアルレーシングドライバーになろうとしていないだけで、勝ちあがってくる選手が持っている能力というのは何も変わっていないですね。

――映画の中では「シムレーサー」と言われていて初心者扱いされていましたが、実際の「GTアカデミー」でもそういった風潮はあったのでしょうか?

山内氏:2008年の開始当初はそうでした。ただ、「GTアカデミー」のウィナーは初めからリアルレースでも勝利を重ねていっていたんですね。たとえば彼らはレース経験がないからブロンズドライバーで登録されて出場するのですが、プロより速かったりするわけです。むしろ「あれ汚いだろ! 初心者じゃないだろ!」と言われてしまうこともありました(笑)。

――初代PSで『グランツーリスモ』が発売されて26年目を迎えています。当時からのシリーズファンだけでなく新しいゲーマーも映画を見て興味を持つと思います。そこで、『グランツーリスモ7』(PS5/PS4用)などではどのようなアプローチをされているかうかがってもいいでしょうか。

山内氏:特にこの世代を狙うという意識で作ったことは一度もないんです。「グランツーリスモ」シリーズはいつも全世代の方々へ向けて開発しています。新しい層を狙ってあえて開発する、というのはあまりうまくいかないんですよ。

――「特定の世代を狙わない」ということは、個人的な話ですが自分の父も興味を持っていた思い出などから実感できます!

山内氏:そうですよね。今の「グランツーリスモ」のトッププレイヤーたちは皆「親子揃ってのファン」なんです。彼らは親御さんと一緒に3歳や4歳の時からプレイしているんですよ。十数年やってきて、今「GTWS」に出てくる選手たちが、2世代にわたってファンであり続けてその子供たちが大成していくというのは、シリーズを26年間続けてきたことの価値なんだなと思います。

現場で必死になって作っていると26年の重みはよくわからないのですけどね。

――今回映画を観て、「夢がある世界じゃないかな」と戻ってくる方や新しく始める方もいると思います。何かお言葉があればいただけますでしょうか?

山内氏:映画から今の『グランツーリスモ7』を始めて、ドライビングテクニックを得るのでもいいし、車の文化を学ぶのでもいいし、車のデザインを知るのでもいいし、なにかそうやって、自分が成長できることに使ってくれれば嬉しいですね。

――山内さんの中で考える「グランツーリスモ」らしさとはどういうものでしょうか?

山内氏:「グランツーリスモ」はある種の哲学に基づいて作られています。それは言葉として発信しなくてもプレイヤーに伝わっているのではないでしょうか。そういうものだと思っています。

――「シミュレーター」というジャンルそのものに対しても「グランツーリスモ」は大きな影響を与えたと思います。それについてはどう思われますか?

山内氏:僕が『グランツーリスモ』(PS用)の一作目を作ったころは、きちんとしたシミュレーターは世界のどこにもなかったので、それこそ新しいジャンルを作れたんだと思っています。そのころティーンエイジャーだった人たちが企業の中核にいたりして、そういった人たちが今のシミュレーターを作って、それが新しい景色になっているのではないでしょうか。

――映画公開により、これまでゲームに興味を持っていなかった方が本シリーズを遊ぶ機会も増えるかと思います。そういった方々に向けて「グランツーリスモ」シリーズの魅力を、あらためて山内さんからお聞きしたいです。

山内氏:車の運転ってすごく楽しいものです。だけど今、車に乗るということはもう大変になってきていますよね。ガソリン代も高いですし(笑)。でも、運転の楽しさをひとりでも多くの人に気づいてほしいので、それぐらいの気楽な構えで遊んでもらえればと思います。

――今回は、ありがとうございました!


あらためて、映画「グランツーリスモ」は9月15日に全国の映画館で公開。リアルドライビングシミュレーター『グランツーリスモ7』はPS5/PS4向けに発売中です。

「グランツーリスモ」公式サイト
《高村 響》

ゲームライター(難易度カジュアル) 高村 響

最近、ゲームをしながら「なんか近頃ゲームしてないな」と思うようになってきた。文学研究で博士課程まで進んだものの諸事情(ゲームのしすぎなど)でドロップアウト。中島らもとか安部公房を調べていた。近頃は「かしこそうな記事書かせてください!」と知性ない発言をよくしている。しかしアホであることは賢いことの次に良い状態かもしれない……。

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