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【JGMレポート 3】日本ゲーム博物館館長 辻哲朗氏インタビュー(後編) − 現状、今後、そして愛情

ゲーム文化 カルチャー


日本ゲーム博物館(以下JGM)館長辻哲朗氏へのインタビュー、後編。前編からの続きです。最初にこのページヘいらっしゃった方は、まず第1弾レポートからごらんください。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

――2階にあるオルゴールや時計といったお父様から受け継がれた資産は今後どうされますか? 形が残らない可能性があるものを残すというスピリッツとして展示を続けられますか?

あれは親父の趣味なんでねえ。機会があれば圧縮してしまおうかなと思っています。それで、回廊になっている部分にピンボールをずらっと一周並べようかな、という構想もあります。今ピンボールが160台ありますが、きちんと組み立てて動いているのが36台あると思います。実際直したものでは50台くらい動く状態で所有していますが。

ともかく、120-130台くらいが展示されていないわけです。2階に上がって行ったらドラピン(ドラム式ピンボール)がずらっと並んでいたら素敵でしょうね。コンテナは近くにありますが、海上コンテナなどを買ってみて、展示していないものをそこにストックしていくという発想もあります。

ほかには、まずこの建物は吹き抜けと高さがあるわけです。これを活用するという案。回廊から内側に向かってみると梁があるでしょう。そこにプロジェクター・スクリーンを設置するんです。そこで月替りかなにかで私の基板コレクションを展示するとか、『TX-1』が直ったら、そこで稼働させるとかいうのも良いでしょう。

――世界最大の3画面プレイですね。

あと、ここはライブハウスの機能もあります。スタジオでもあったので、PA機材も潤沢にあるのです。そこで、大スクリーンとライブハウスの音響でゲームをやったらすごいだろうな、と考えています。

――ちなみに、今ここ(取材場所)は修理部屋として機能しているのですか?

いえ、ここは音楽教室です。今日もボーカル教室をやっていました。パーカッション教室、ダンス教室もやっています。アコースティックライブをやったりもします。ゲームだけじゃ食えませんから(笑) 隣でやっているドッグランも収益事業ですね。

――ということは、すべては辻様が切り盛りされている?

JGMを食わせるためにやらないといけません(笑) なぜこのライブハウスだけ残してあるかというと、あまりTwitterには書かないのですが、ライブハウスを3年ほどやるに際し、ピックアップ(マイク)の特許を何年か前に取ったのです。ここを生かすためにどうすればいいのだろう、と考えた結果ですね。

開館日が金・土・日で、スタッフは出勤していてもオープンしていません。人が来ませんからね。その間に何か収入になることを、と考えて新型のピックアップの特許をとって、今年になってから国際特許も申請しています。これがそこそこ売れています。自分が製造販売しているピックアップをモニターしてもらい、ミュージシャンに意見をもらうための場として機能しています。

収支は何で成り立っているかというと、ドッグランと、音楽教室と、ピックアップです。JGMはまあ、足を引っ張っている方ですね。でも今年中になんとかなりそうな感じではあります。去年11月にゲーム博物館になってから、お客さんが3倍4倍のペースにまで増えています。GWもたくさんいらっしゃいました。今はGWあけで若干落ち着いていますが、これからどうなるかなというところです。5000〜6000人になれば経営面は安定するでしょう。1週間に100人というところでしょうか。

――今日も盛況で、少なくとも30人くらいは入っているように見えました。

入っていますね。だいたい午後から増える傾向があります。今のペースでも5000人レベルで順調に来ています。これが1万人になったら、アメリカに行ってR360を買ってきます(笑) これがまったく不可能な数字だとは思えないんです。たとえばGWやその前でも、多い時は1週間に150人くらい来客があったことがあります。これが200人になれば1万人です。上り調子にあるのは確かです。

1つ重要なことがあります。今もありますが、時計やオルゴールの展示は、お客さんは来るのですが「うわーすごいねー」で二度と来ないんです。でも、ゲームを目当てに来たお客さんは繰り返し来ていただけるのです。これは大きな違いです。


――ここでしか遊べないゲームがたくさんある以上、ここに再び来るのは当然といえば当然かもしれません。

それがいいところです。今、主に面白いなと思っているのはセガの85〜95年の大型体感筐体です。これはじつに面白い。

――それはどういう意味で面白いのでしょうか? 勉強して、最初から作り直しているくらいのご様子ですが。その過程が面白い?

そうですね。それに、創った人の勢いや情熱を感じるというのもあります。たぶん、創った人も楽しかったんだろうな、という気がするわけです。そういう気持ちでなければこういうものは創りあげられないだろうと。

私はピンボール博物館やJGMを始めてから、現地調査を兼ねてゲームセンターに行って調べたりします。まあ、私はゲーマーでありませんから。現状はどうかな、と。すると、地方のゲームセンターはほとんどコインゲームとプライズゲームに占領されていて、いわゆるゲームというイメージの筐体は片隅に1台か2台ある程度ですよね。

1995年以降、情熱を感じる進歩があったかというと、おそらくないでしょう。私もいくつかドライブゲームはプレイしてみましたが、それには『レイブレーサー』や『セガラリー』から感じる、「1995年にこんなものがあったのか!」という感動がないのです。画面や音は綺麗になりましたが、これは映像やオーディオの進歩にすぎません。ネットに繋がってカードでうんぬん、というのもゲームの進歩とはいえません。たしかに画面や音のクオリティは向上しましたが、創っている人が楽しんでいるとは思えません。会社からの「なるべく儲かるように」との意図が透いて見えるようで面白くありません。

ガンシューでもドライブゲームでも、85〜95年の日本のアーケードゲーム黄金期に創られたものを超えるものがあるのか? となると、ない気がします。

Twitterにもちらっと書きましたが……ゲームを商売にしている方には申し訳ありませんが、はっきり言ってアーケードゲームの時代はもう終わったと考えています。戻ってきません。ゲームの中心はすべてネットに行ってしまいました。アーケードでやる理由はどこにもありません。若者も、自分の子供も含めて見てみると、携帯などを使って遊んでいますよね。

商業的な側面を分析するに、アーケードゲームに注力してきた会社はおおむね苦戦していますよね。アーケードゲームはすでに終わり、いまゲームセンターに残っているコイン機やプライズは、私はゲームだと思っていません。お年寄りがプレイされているのをしばしばみかけますが、あれはパチンコ・パチスロの代替です。パチンコ・パチスロではおカネが大量にかかりますが、ゲーセンだと安いという理由に基づきますよね。

ゲームはすべて暇つぶしといってしまえばそれまでですが、スキルアップを目指す面白みであるとか、いわゆるゲームにあるべきものがありません。


――たしかに、プレイヤーの介入する要素が非常に少ないですね。ピンボールではTILT寸前の行為までのテクニックを含めいろいろとありますが、パチンコ・パチスロは法的に制約されていることもあり、そうした楽しさはありません。

ゲーセンの生き残りはぽつぽつといますが、「苦しんで創っているんだな」と感じます。たとえば『モナコGP』なんか、最初見た時に驚いたものです。「やれることは全部やれ」という思想のもとに創られているはずです。エアシリンダーを5本くらい使って、コンプレッサーもレギュレーター2本積んで高圧低圧あって、それをコントロールしている。それにより微妙なニュアンスが表現されている体感機なのです。

この前、『ナイトストライカー』の海道賢仁氏がいらっしゃったときに、公開はしていなかったのですが、特別にお見せしたところすごく感動されて、「今の技術でもこんなの難しいですよ」とおっしゃっていました。

――ある意味では、もうゲームセンターに置けないものの1つですね。普通のオペレーターではメンテナンスできません。

私は現役世代にゲームセンターにいませんでした。体感機は短命で、次々に消えていったといいます。自分で生き残った体感機を修理して思うのですが、たぶんゲーム屋さんの修理の範疇を超えてしまっていますよ。

とくにメンテナンスが難しいのはコンプレッサーまわりです。私は修理工場でずっと扱っていましたから違和感なく作業できますが、町中の普通のゲーセンのお兄ちゃんができるかといえば不可能でしょう。新品が入ってきてから3ヶ月くらいはメーカー保証があるそうですけれど、そのあとは高い修理代がとられるとのことで、嫌気がさすのでしょう。

『ジュラシックパーク』は最初期に直した1号のようなものなのですが、その修理中に『モナコGP』が入ってきたのです。そして開けてみたところ、まったく同じシステム・仕組だったのです。

――セガの系譜であった、と。

エアドライブの初代が『モナコGP』で、最後が『ジュラシックパーク』なんです。最後のやつを最初に触って苦労したわけですね。『ジュラシックパーク』は千葉県から自分で運んできた思い入れのある一品ですね。一種の賭けだったのですが。モニターからコントローラーからコンプレッサーから、全部修理しました。

コンプレッサーはオーバーホールで直したのですが、苦戦しました。コンプレッサーは回すとタンクに水が貯まるのですが、普通タンクが錆びないようにその水を定期的に抜くんです。しかし、いざタンクを見てみたら半分以上が水で埋まっていて、空気室はほとんどカラに近い状態でした。誰もそういうメンテナンスをしてなかったんでしょう。コンプレッサーのオイルはない、タンクは水でいっぱい。

みなさん、商売で運用されているなかで、もちろんゲームが好きで愛情がある人もいらっしゃるのでしょうが、ほとんどの人がゲームそのものではなく中に入っているカネに愛情を持っているにすぎません。それゆえ、メンテナンスをしないのでしょう。

『ジュラシックパーク』についていうと、エア配管はウレタンチューブを買ってきて切って全部繋ぎ直しました。直せなかったのはレギュレーター。コンプレッサーの圧力をエアシリンダーに持って行く時に平滑する装置のことです。それが『ジュラシックパーク』だと5キロで、『モナコGP』だと4.5キロと2キロの2系統あるんです。だから『モナコGP』はドーン!という感覚とコンコンコン、というフィーリングが切り替えて表現できるんですね。ちなみに今修理している『ラピッドリバー』は2キロ1系統です。波を越えていく表現だけですからね。

今まで直してきたコンプレッサーものでは、レギュレーターがほとんどイカれています。だいたい空気漏れを起こします。では今パッキンのキットがあるか?となると絶対ないので新品で買わざるをえません。

そしてエアクリーナー。コンプレッサーから異物を排除し、水分を取ってドライに保つための装置です。これもたいていダメになっています。というか、物理的にパッキンがダメになっています。コンプレッサーを直して配管を替えてもそこからシューッと漏れてしまう。

レギュレーター交換、エアクリーナー交換、配管、継手といったところ。ワンタッチ継手は結構高かったりします。『ジュラシックパーク』で使った材料というと、エア系に継手、ウレタンチューブ6ミリと10ミリ、あとはモニター。全然映っていなかったので、型番を調べてヤフオクでジャンク品のモニター基板を取り寄せて載せ替えたら動きましたね。

――モニター基板がヤフオクでピンで出品されていた?

当時はアストロとかですよね。モニター基板は型番がありますから、調べたらたまたま出てきたというところです。普通はモニター基板を修理に出すところなのですが、早くやりたかったので調べたらジャンク基板があったのでそちらを採用しました。

前のコンパネもボロボロだったのですが、あそこは、綺麗に残っているものを撮影して、カラープリンタのシール向け台紙を利用して造りました。

――手製のコンパネ……!

今手がけている『TX-1』も同じアプローチです。『ポールポジション1』『2』の筐体が使えるはずなんです。たとえばネットで検索すると写真が出てくるじゃないですか、それを活用すればほぼオリジナルに近いデザインが再現できるのではないかと考えています。『スピードレーサー』や『マッハGoGoGo』もゲットしているので同様に再生したいですね。

見ての通り、ドライブゲームはもう置き場所がありません。『TX-1』や『マッハGoGoGo』、『ファイナルラップ』あたりを月替りにしてビッグスクリーンでやってもらおうかなと考えています。


――もはや真の博物館、いやそれ以上の領域です。

やはり自分が面白いと思えなければお客さんは来ません。キャンプ場もそうでした。池にイカダを浮かべてBBQをやるという企画を考えたのですが、それが予約満員になるまでウケたんです。そのときに「早く自分もやりたいな」と悶々としました。それくらいに楽しめないといけません。

今だったら、私は「うちにきたら楽しいですよ」「TDLより楽しいですよ」だなんて言えますよ。まあ、ゲーム好きの人だったら本当にそうじゃないかな。ビッグスクリーンでレトロゲーをド迫力でプレイできたら楽しいでしょうね。

――施設をすべて活かす形と。

そう。あとは、裏と表でバーサスシティにするなんてプランもあります。セガの3Dドッグファイトゲーム『ウイングウォー』は対戦ができます。ドッグファイトといえば『アフターバーナー』にしろ『スカイターゲット』にしろ普通コンピューター相手ですよね。でも、『ウイングウォー』はツイン筐体で『バーチャロン』みたいに対戦できます。それをスクリーンでプレイすれば、本当に大空を飛んでいるような感覚をえる、いわばトリップできるのではないか、と考えました。

――あの大きさ、なんとなくイメージできます。

今月は『ウイングウォー』、今月は『TX-1』みたいな感じで運用できたらいいな、と今思い描いています。

――率直な疑問として、物理的な制約がありました。つまり、大型筐体をたくさん扱うと、ゲームが硬直化し同じゲームが展示され続けるのではないか? というものがありました。それは、すでにお持ちの倉庫から回転させることで、月替りといった通常のゲームセンターではまずありえない解決策があるということですね。

今でもJGMに展示しているもの以外にたくさんあります。近くのコンテナに満載です。テーブル筐体なら40〜50台はあります。ほかにも諸々があります。今のところ日の目を見ていませんが、いつか入れ替えてやるつもりです。

――では、ゲーム博物館はいつ来ても新しいゲームがあると。

あのねえ、1週間前の情報はもう古いですよ(笑) 本当に。

――そんなに頻繁に入れ替えていらっしゃるのですか!

インターネットを見るとたまに悲しくなるのは「JGMはピンボールが主流だ」とか書いてあったりするのです。そんなの去年の話だよ、と。ブログもTwitterも訂正されるわけではないですから。今ここをみてピンボールを主力だとはあまり思えないでしょう。


――ちなみになんですが、年間1万人を達成しR360を購入したあかつきには、物理的にどこに置きますか?

やってみないとわかりませんね。一区画はまず潰さないとならないでしょう。どこかを壊して入れるか、外に建物を建てるか、どちらかですね。

あと、じつはピンボールの上のフロアは去年張ったんです。JGMにするにあたり、面積を増やしたのです。この建物は面積を増やそうと思えばまだ場所はいっぱいあるんです。建物自体は三階建て構造なんです。新設したのが3スパンです。この面積だと逆側のホールを潰せば8スパンできます。だから、新設するよりもこの建物の中をできるかぎり増築しきるほうが望ましいですね。

――限界までいくと、まず3階建てになって、さらに2階の吹き抜けが埋められて、そこにずらっとピンボールが埋められて、みたいな形になるわけですね。

そういう拡張になるかな。しかし、皆さんにどれだけ支持していただけるかです。ピンボールを100台並べました!とやったところで、プレイしてくれるのが2人や3人じゃあやっていられません。ピンボールを増やすか、他のゲームを増やすかは今後のお客さんの動向次第です。

不思議と、ピンボールが多い日とゲームが多い日って偏るんですよね。

――別に団体で来ているから、というわけではなく?

違いますね。

まあ……なんというか……R360が来たら来たでやり方はいくらでもあります。やろうと思えばできます。

――哲学ですね。「やればできる」。

ここまで来るのに一番苦労したのって何かわかります?

[微妙な間]

嫁の反対ですよ(笑) 一番強力でした。どれだけ反対されたか。置き場がないからやめろ、ゴミを買ってくるな、その他もろもろ。

――確かに……。見方によってはゴミ寸前に思えるかもしれません。

見方によってはね。動かなかったらまさしく大型ゴミですから。

――ただ、このリングを直して付け替えることによって、おそらく日本で唯一まともに稼働する『ラピッドリバー』になるのでしょう。

体感筐体もね、「動いていないけどゲームはできる」みたいなものもありますが、それでは体感筐体の存在意義がありません。

IDYAも今は調子が悪いですが、動きますからね。あれ、伊勢に日本に最後の1台がありましてね。いつも助っ人に来てくれる三重県のお客さんが情報を仕入れてきてくれて、オペレーターさんに連絡を入れてくれたんです。早速救出しに行きました。修理自体は案外楽で、半日くらいで動きました。

今更ですが、JGMは電源が足りないのですべてを常時稼働させることができなかったりします。IDYA、あれは怪物ですね。1台で25A食います。アパート1件分ですよ。すぐには動かせないのです。1ヶ月2ヶ月くらい置いておいたら調子が悪くなってしまいました。

機械ものというのは、動態保存しようと思えば適度に動かしていなければなりません。そういう意味でも10時から17時までの営業で、普通のゲームセンターよりかは短い。営業日数も半分以下です。おそらく1/4か1/5しか動かしません。だから、長く保存するには良い状況なのです。

――ところで、アメリカなどからしばしばピンボールを輸入されているようですが、そういったルートはどうやって開拓されたのですか?

そりゃあ、持っているところにメールを自分で書くんですよ。普通e-bayで落とせる基板程度でしたら、UPSとかFedExとかで来ますが、大型になると扱ってくれません。どうしても船になります。コンテナをシェアしてくれる会社を探して、メールを出して、「これ買うんだけどどうにかして運んでくれないか」と。

ショップに対しても「輸出梱包してくれないか」と頼まないといけません。輸出梱包は結構厳しく、検疫の問題があるのです。煮沸した特殊な木じゃないとならなくて、これが結構高いのです。国内ならパレットをカンカンと組み立てて対応するところなのですが、そうはいきません。そこで輸出梱包をどこかに頼まなければなりません。一番いいのは出荷してくれるショップにお願いすることですが、嫌がられることもあります。そこで拝み倒して、お金払うからやってと話をつけて、しかるのちに国内で輸送してくれるところを探さなければなりません。自分が話をつけておいたシッピング代行会社のヤードまで運んでもらって、そこからコンテナの一部をシェアして入れてもらう形ですね。


――大きなものをしばしば輸入されているようなので、いったいどういう風にされているのかと思っていましたが、そんな秘密があったのですね。

秘密じゃあないですよ。道無き道ですけれど。

――まさに「やればできる」と。

そう。情熱があればできます。ただ、ピンボール4台を輸入した時、あのときは一番円高だったのであれは運が良かったな(笑) それでも結構なお値段でした。それを、現物も見ていないのに先払いしなければならないわけです。モノが来るかどうかもわからない状態です。支払いを済ませてから到着するまではドキドキものでしたね。けれど、まあ、やればできるな、と。シッピング会社も懇意にさせてもらっています。

今探しているのは『アフターバーナー』のダブルクレイドル筐体です。じつは2件くらいツバをつけているのですが、できれば国内の生き残りを救出したいのです。運賃もバカになりませんしね。九州と北海道にあるらしいのですが、手放すつもりはなさそうです。ともあれ、あらゆるルートを考慮し、国内にあるダブルクレイドルを調達したいと考えています。それがダメならアメリカから輸入します。

――そこまで『アフターバーナー』にこだわられる理由というのは?

私は現役ではありませんでしたから具体的には知りませんが、集めるときにはまずインターネットで調べるわけです。そうすると、80年台のアーケードゲームの金字塔・最高傑作とあるわけです。あるところの記事を読むと「『アフターバーナー』をプレイしてパイロットになった」と書いてあったのです。人の人生を変えるくらいのパワーがあるのか、と。それで欲しくなりました。

『アフターバーナー』を海外で買おうと思うと、たぶん6000ドルから7000ドル。安いといえば安いのですが、そこに輸入コストが大きくのしかかってきます。そこがネックですね。

私の認識では、今一番興味がある分野でもありますが、体感筐体では最も人気があったのが『アウトラン』、その次が『アフターバーナー』、そして『スペースハリアー』、『パワードリフト』その辺かなと。それだけやればやりきった感が出るでしょう。

ピンボールもずっと集めてきたのですが、『マッドネス』と『アタックフロムマーズ』が日本国内になく、最後までどうしても集まりませんでした。それで、前から欲しかった『プレイボーイ』と合わせて入れたときに、「ピンボールは一応やりきったな」という感覚があったのです。ともあれ、『アフターバーナー』だけはどう転んでもなんとかしようと思っています。難しいのはどちらかというと『スペースハリアー』と『パワードリフト』かもしれません。こちらも在るところには在るのですが、絶対に手放す気がないようです。たぶん、今後そういう傾向は強くなると思います。

――意外なお宝だと認識し始めると。

みんなそれをお目当てに来るんですよ。マニアが全国各地からね。業者の方も言っていましたが、ひとつの傾向として、今の新しいゲームはサーバー接続必須ですよね。だから、中古にはなりません。放棄すればがらんどうの箱にしかなりません。逆に言うと、地方のホテルや施設にはそういう制約を受けないものを求めているわけです。


[ ここで17時をオーバー。閉館にあたり、同伴者らも入室。彼らを連れて大阪から来た個人的な経緯を説明しました。]

――意外に大阪からだと近いんですよね。3時間もかかりません。

大阪くらいからなら毎週いらっしゃる方がいらっしゃいましたよ。関東もかな。大阪の方は近鉄特急の回数券を使っていたようです。その場合は、名古屋駅からバスで1時間です。どちらかというと近場の人より遠くからの方が多い印象です。

――固定客もたくさんいると。

結構最近中毒になっている方がいらっしゃるようです。

――来るたびに違うものが入っているし、ということで。

そういうのもありますけどね、直しても直しても壊れるんですよ(笑) たとえば今日『レイブレーサー』がダメだったでしょう。あれを目当てでやって来た方がいらっしゃったら申し訳ないです。故意にやっているわけではないのでご容赦していただきたいところです。何が壊れるかわからないのです。


――ところで、2階に山積みになっていたテーブル筐体や、1階の奥に押し込められていたものは、何か意図があるのでしょうか?

入れるところがないんです。倉庫に入れてもいいのですが、そうしてしまうとしばらくまた眠ってしまいます。

テーブル筐体は、ゲームよりもブラウン管やモニター基板の保全という側面があります。とくにブラウン管は2003年で製造中止されています。しかし、ブラウン管はそれだけで買うと高いのですが、テーブル筐体だと安上がりなのです。

――いざというときのニコイチ用のパーツと。

そう。そういう意味も兼ねています。私は麻雀ゲームなんて欲しくありませんが、モニターと基板は欲しいですから。

バックヤードをご覧いただければ伝わると思うのですが、これだけのゲームを維持していこうと思うとかなり余分なストックを用意しておかなければなりません。時間をかけて部品を探すという手もありますが、ある程度のものを手元においておきたいのです。

たとえば『セガラリー』とか『レイブレーサー』といった稼働しているものは、あれだけ置いてあるかというと、違います。動かすためのサブ基板も持っています。「このモニタが壊れたら? 基板がいかれたら?」と常に考えています。すべてに対応することはできませんが、原則としてチャンスがあればダブルで持つようにしています。

――素晴らしい。

素晴らしいというかね、長くやるために必要なことなのです。動かなくなった時点で大型ゴミと同義です。

――アーケードゲーム大型筐体に冗長性の概念があるとは……

そう。『ラピッドリバー』も、もし基板が出れば買いますよ。それがなければあの大型筐体すべてがただのオブジェに成り下がるのですから。同じシステムが出たら買います。ROMが出ても買います。どれが必要になるかはわかりませんが、何かをダブルで持っていれば延命させるチャンスになりえます。

『セガラリー』も『アウトラン』ももう1台組めるくらいありますよ。


――個人的な話ですが、『ビーストバスターズ2』が大好きだったのですが、ポンプの手応えの部分まできちんとメンテナンスされているのがとても良かったです。スカスカになっている店舗もままありますから。

そういう不具合は私は許せませんからね、きっちりとメンテナンスします。『EVIL NIGHT』も今問題発生中なのですが、バックアップ銃とバックアップ基板で運用しています。

それにしても、1995年『レイブレーサー』が地方によっては稼働中というのはおどろくべきことだと思うのです。今でも稼げるということですから。『デイトナUSA』も手配をかけているのですが、なかなか譲ってもらえないのです。なぜなら、まだクレジットが入るからです。すごいことでしょう。

ああいうゲームを買うとたいていカウンターを確認するとたいてい9万とか超えているんですよね。だいたい1台で1000万くらい稼ぐんですよね。大型筐体が高価で、たとえばIDYAが600万以上することを考慮しても、すごいことですよ。

あと、『ファンハウス』というピンボールがあるのですが、これのプレイステーション版があるそうで、それに関係して取材を受けました。その影響で、お客さんが増えたりしました。


――まさに「実機でやりたい」と。

しばしばあるケースです。移植版をプレイしてから本物へ、ということですね。

最近ですと、ゲームデザイナーの方がお見えになることがあります。自分のゲームがここに入った!と喜んでくださるのです。絶滅から救ってくれた、と。自分が情熱を傾けたゲームがここに残っているということで胸をときめかせてくださるようです。何か入荷します!とアナウンスすると製作者からメールが飛んできたりしますね。「入れてくれるんですか!」みたいな(笑)

――そろそろ時間です。これまで辻様のバックボーンやJGMの由来などをうかがってきましたが、今後JGMに来たいというみなさまへメッセージを頂戴できますか?

メッセージ(笑) まあ、お願いごとはあります。べつにゲーム博物館だからというわけではないのですが、もう20年も30年も前のマシンばかりですので、優しく愛情をもって扱って欲しいです。

――ああ……。それはたしかに難しいです。どうしても大型筐体はヒートアップしがちです。

それは、構いません。プレイしてもらうのは大歓迎です。ただ、ゲームをスタートしたのにそのまま放置して別のゲームへ行くとかは勘弁してほしいです。

また、この前実際にあったのですが、修理途中で電源も入っていないものを引きずり出してプレイしようとするのはいくらなんでもひどいです。コンプレッサーの部品がぶら下がっているところに起動されたら一発で致命傷になります。

あと、「動いているのが当たり前」だとは思ってほしくないです。動いていたらラッキー、壊れて止まっていて当然、くらいで来ていただけるとありがたいです。JGMはそもそもたくさんインカムを入れて稼ぐというスタンスではありません。第一の目的は貴重なゲームの動態保存です。長く保存することを目的としてやっています。

昔のようにプレイしていただいてもかまわないのです。ハンドルをガッと切ってアクセルをグッと踏んでいただいてかまいません。ただ、極力「この機械が長く動いていて欲しい」という気持ちを持っていただければ、自ずとプレイする態度も変わるのではないかな、と思います。たとえばクルマだって、30年も40年も前のものをフルスロットルで走れば壊れます。そういった気遣いがあると助かります。それで壊れたものは納得してまた直します。

申し訳ないのですが、ゲームの動態保存に反するような事態が頻繁に起こるようであれば、JGMのシステムを変えざるをえません。一般開放しないとか、期間限定にするとか、会員制にするとかですね。

お客さんに来ていただけるのはものすごく嬉しく、ありがたいことです。ですが、あくまでも機械を長く良好な状態を保つことがJGMの至上の使命なのです。そこに反することだけは極力避けてください。

――私のようにアーケードゲームに馴染んだ人間であれば、動いていないゲームを見れば「ああなにかあったんだろう」と推測するのですが、そうでない方が不平不満をたれることもやむなしといった感もまたあります。

そうです。しかし、アーケードのレトロゲームを動作させるにあたり、どれくらいの苦労があるかというのを想像していただきたいのです。地べたを這うような作業に徹しているのです。ネズミのフンをどけて、あちこちから部品を取り寄せて、と。そうやって頑張ったものをぞんざいに、愛情なく扱われるのはつらいです。

「捨てゲー」についても、やはり無料であるからという負の面があります。ピンボールで3ボールのところを2ボールで止めてしまうというのは、あまり愉快なものではありません。100円入れたら重みを感じてプレイするのでしょうが。


――かといってワンクレジットいくらという話にすると、ちょっと博物館ではなくなってしまうかもしれません。

そうです。そうするつもりはありません。だから、現状を維持できるようにご理解をいただきたく存じます。

最新のゲームをプレイしたければお近くのゲームセンターに行っていただければよいのです。JGMは、町中では見られないようなゲームを集めて、末永く保存し、楽しんでいただくというのがテーマです。機種にたいするご要望も、可能な限り応えるつもりですが、コスト的な面も含め限界があります。そうした点をご理解ください。

ちなみに、ピンボールが生き残れなかった理由は面白くなかったからではなく、経済的な問題です。プレイ時間が長い、場所をとる、メンテナンスが大変、いろんな事情で絶滅したのです。それをあえて陳列している負荷も小さくありません。

残念ながら、あきらかな悪意を感じることもあります。ボーリングのボールが入れ替えられていたり、配線が引きぬかれていたり、展示中と表示しているにもかかわらずコンセントを挿されたり。悲しいことです。

――難しいところです。「本当にここが博物館である」と認識していただくのが近道なのかもしれません。

そうなんです、そうなんです。しかし、「博物館だからプレイできませんよ」でしたらJGMの価値がなくなります。ただの展示物です。動くように直した意味がなくなってしまうので、それは避けなければなりません。それでありながら、動態保存の観点からある程度は動かさなければなりません。

あまりにも改善されないようでしたら、別のルールを作る必要が出てくるかもしれません。たとえば会員制にして、このエリアは会員しか遊べません、とかです。それも不便な話でしょう?

――大型筐体ゆえの難しさです。

永遠はありません。いつかどこかでゴミになるでしょう。私の使命は、そうなる運命を5年延ばせるか、10年延ばせるか、というものです。そこにみなさんのご理解をいただくことにより、1年か2年さらに延びるかもしれません。

懐かしいな、久々にプレイできて嬉しいな、と1人でも多く感じていただくために、ひとりひとりに愛情を込めて遊んでいただきたいです。

モニターも、ブラウン管で動かせるのもいつまでかわかりません。個人的にはモニター基板もブラウン管もストックしていますが、永遠ではありません。結構速いペースで壊れるのです。GWに『レイブレーサー』をみんな一斉にプレイしたら3台壊れたわけです。入ってきたときは1台しか映らなかったので、また壊れたという形です。

――人間がきちんと運用しているのだ、と。

そうです。

今、日本全国から80年代〜90年代のゲームはなくなりつつあります。それは残念なことですから、私は頑張ろうと思います。というわけですので、宣伝ご協力お願いします(笑) 年間1万人達成したらR360買いますので。

――私も、こうした文化が失われつつあるという事実を少しでも広められたらと思います。本日はありがとうございました。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


JGM、これ以上言葉にできません。いちいち楽しさを解説するのは無粋ですので、記者らが楽しんでいる部分については第1回のフォトレポートをごらんください。ともあれ、次は仕事抜きで遊びに行きたいです。

ちなみに、バイクで来て『ハングオン』をプレイして帰る人もいるとか。R360の入荷もけっして夢物語ではありません。

レトロにかぎらずゲームを愛するゲーマーのみなさん、ぜひ一度日本ゲーム博物館へ足を伸ばしてみてください。きっと感じるなにかがあるはずです。

なお、JGM公式Twitterでは日々のレストアの様子が実況されています。通常では見ることができない、あるいはありえない、あられもない姿をさらした体感機に興味のあるかたはぜひチェックしてみてください。

JGMは「愛」で運営されているのです。
【関連記事】【JGMレポート 1】日本ゲーム博物館へ行ってみた −レトロ・想い出・色褪せぬ楽しさ (フォトレポート有)
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《Gokubuto.S》

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