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海外メディア絶賛の3DSインディータイトル『SteamWorld Dig』が日本版リリース決定!開発者特別インタビュー

10月に日本版がリリースされることが決定されている『SteamWorld Dig』は3DS向けのスチームパンク風アクションゲームです。今回、東京ゲームショウのために日本に訪れた開発者IMAGE&FORMのCEO、Brjann Sigurgeirsson氏にインタビューを行いました。

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10月に日本版がリリースされることが決定されている『SteamWorld Dig』は3DS向けのスチームパンク風アクションゲームです。日本ではほとんど知られていないタイトルですが、海外のニンテンドーeショップのランキングでナンバーワンを獲得、現時点でのメタスコアが82点と評価も極めて高い作品。

今回、東京ゲームショウのために日本に訪れた開発者IMAGE&FORMのCEO、Brjann Sigurgeirsson氏にインタビューを行いました。スチームパンクという世界観へのこだわり、練りこまれた背景設定とゲームデザインの他、インディーデベロッパーになるまでの苦労話などを存分に話していいただきました。

――それではまず自己紹介と『SteamWorld Dig』について説明していただけますか?



Brjann:
IMAGE&FORMのCEOのBrjann Sigurgeirssonです。『SteamWorld Dig』は「掘ること」をテーマにしたアクションゲームです。僕たちは「マイニングプラットフォームアドベンチャー」と呼んでいます。

世界観はスチームパンクとウエスタンをミックスしたものになっています。意外な組み合わせのように感じるかもしれないですが、実際にはよくマッチしていると思います。というのは、イギリスのビクトリア朝を舞台したスチームパンクとアメリカの西部開拓時代を舞台にしたウエスタンは、どちらも19世紀末から20世紀初頭の世界観です。

物語の背景には、19世紀に初めてコンピュータを作ったチャールズ・バベッジの存在があります。彼は実在する科学者で機械式のコンピュータを作りました。彼のコンピュータはその後、普及しませんでしたが、このゲームの世界では普及したことになっています。

――その設定はまさにスチームパンクの起源、ブルース・スターリングのSF小説『ディファレンス・エンジン』と同じですね。

Brjann:
そのとおりですね!僕たちはその設定を引き継ぎながら、もしもその後、機械式コンピュータで動くロボットが登場したらどうなったのだろうかという風に話を膨らましました。もちろん、電気ではなく蒸気機関で動くロボットです。人間たちは機械式コンピュータと蒸気機関のテクノロジーでロボットを生み出し、それらは軍事力として利用されました。そのテクノロジーは瞬く間に普及した結果、第一次世界大戦が現実よりも50年も前に発生することになっています。

強欲と怠惰に陥っていた人類は、この世界大戦で滅亡しています。残されたロボットは彼らだけで生活を行い、技術的にも少しずつ進化していきました。ゲームの舞台は世界大戦から200~300年後の世界です。

――設定だけ聞くと、王道のスチームパンクかつ非常にシリアスな世界観ですね。

Brjann:
そうですね。これだけ聞くと非常にシリアスで悲劇的な背景です。でも、この世界のロボットたちは幸福に暮らしています。実際にこういった世界の背景はゲームでは直接、描かれておらず、今後の続編でプレイヤーに体験してもらうことになります。

――すでに続編の開発は決定しているんですか?

Brjann:
そうです。『SteamWorld Dig』自体もシリーズの第二作目です。最初の作品は『SteamWorld Tower Defense』というタイトルでDSiウェアからリリースされています。残念ながら日本ではダウンロードできませんが、ロボットが強欲な人間から金鉱を守るという内容のとてもシンプルなタワーディフェンスゲームです。

ただこのシリーズの世界観は、前作『SteamWorld Tower Defense』で「ロボット=善、人類=悪」という設定の理由を考えることから出来ました。前作を作った後、会社のランチブレイクで「なぜこのような設定になったのか」について議論を行った結果、『SteamWorld Dig』の世界観が決まったのです。

――それでは、ゲームの内容について教えてくれますか?



Brjann:
主人公はラスティというロボットです。ジャンプと地面を掘るというアクションを基本としながら、どんどん地中深くを探索していきます。メトロイドみたいなプラットフォームタイプのゲームですね。

ゲームのスタート地点は「タンブルトン」という鉱山の町です。ラスティはおじさんから手紙をもらい、この町にたどり着きますが、おじさんはすでに亡くなっています。ゲームの目的は、地中を掘り進めることで、おじさんの死と寂れてしまったこの町の謎を解き明かすことです。

――地中を掘り進めることで何が明らかになっていくのですか?

Brjann:
地中には3つの世界があり、最初の世界は「アルキア」という西部の鉱山で化石生物などが存在しています。さらに掘り進めると「オールドワールド」という世界に出会いますが、そこにはなんと人類が生き残っています。人類は地上が危険になったため、地中に逃げて生活していたのですね。おっとこれ以上はネタバレになっちゃいますね(笑)。

――なるほど(笑)。どんどん地中に潜っていくというのは、ローグライクゲームのようですが、ダンジョンはランダム生成なんですか?

Brjann:
基本のダンジョンはランダム生成です。アップグレードが可能な洞窟がいくつか存在していて、それらの中のマップは固定になっています。様々なアイテムや武器でアップグレードしつつ、より地中深くの世界を目指していきます。深く潜れば潜るほど難易度が高くなっていきます。登場する人類も西部劇に登場するような荒くれ者なので、非常に危険です(笑)。

――Tシャツに描かれているように、主人公のラスティ以外にも、可愛いデザインのロボットが登場するようですね?



Brjann:
その通り!プレイヤーキャラクターはラスティだけですが、他のロボットたちは町が復興していく過程で戻ってきます。彼らは道具屋や銀行、武器屋といったお店を経営してラスティをサポートします。

――ゲーム内容については分かったので、開発者としてのIMAGE&FORMについてもお聞きしてもよろしいですか?

Brjann:
とっても長い話になりますよ(笑)。僕は13歳の時に初めてコンピュータを学校で触りました。それでゲームを作ったのがすごく楽しくて、まさに人生が変わりました。だから高校ではコンピューターサイエンスを学ぼうと思ったのです。

ですが、高校の最初の日に先生がこう言ったのです。「良いプログラムコードはすでにもう書かれている。君たちはそれを学びさえすれば良いのだ」と。僕は心底がっかりしました。だから、大学では文系に転身したのです。

その後、アジアにバックパッカーとして旅行しようと思い、お金を稼ごうと思って日本に来ました。ところが当然ながら、日本で簡単に仕事を見つけることはできませんでした。20社以上、就職活動をしましたが採用されず、結局、翻訳者として働くようになりました。

ところが当時の翻訳会社が、1991年にアップルが発売したMac OSのSystem 7でアプリケーションの開発を急に始めたのです。上司が「Brjann、君はプログラマーだったんだろ。うちにはプログラマーはいないから、今日から君はリードプログラマーだ」と突然言い出しました。マニュアルをはいどうぞって(笑)。そこでゲームではありませんが、パワーポイントのようなマルチメディアのプレゼンテーションソフトなどを開発しました。

1997年に母国のスウェーデンに引っ越して、プログラマーとしていろんな仕事を探しました。今度は日本とはまったく逆にすべての会社に合格しました。だったら、もう自分で会社を作って、好きなゲームでも作った方がいいんじゃないかと思い起業したのです。

しかしながら、スウェーデンのゲーム市場は非常に小さかったのです。ゲーム会社はほとんど存在しておらず、結局、Webサイトの開発がメインの会社になってしまいました。ようやく、2002年にあるパブリッシャーがゲームの企画を持ち込み、PC向けの子ども用シリアスゲームを開発しました。ゲームらしいゲームではなかったですが、とても嬉しかったです。

2008年までそんな感じでシリアスゲームを作り、会社は順調でした。でも正直つまらなかったです。そこでiPhoneが登場したので、これからは自分のゲームを作ろうと思い、iOSでゲームを作りました。2011年に開発した『Anthill』というゲームは、アップルの「今週のゲーム」に選ばれ、ヒットしました。でも、その後、作ったゲームは正直、あまり良いものがありません。

しかしながら、様々な制約があるため、パブリッシャーと一緒に仕事はしたくなかったのです。なのでインディーデベロッパーとしての道を模索して、去年の10月に『SteamWorld Dig』を開発始めました。今年の6月にリリースをする予定で、半年もかけてゲームを一本作るというの、初めての経験でした。

――「半年も」ですか?日本の感覚だと十分に短い期間だと思いますが(笑)。



Brjann:
僕たちはこれまで非常に短期間でゲームを開発してきました。その結果、つまらないゲームを多く作ってしまっていました。でも、本作には十分な時間をかけた結果、2月の時点で予算も尽きてしまいました。開発を止めるか、お金を借りるかという選択に迫られ、結果としてお金を借りて制作を続行しました。

正直、その頃にはこのゲームが面白いのかどうかよくわからなくなってしまいました。7月からスウェーデンでは夏休みが始まりますが、リリースした後、まったくPRやマーケティングをする余裕がなく自分ではもう失敗したんだと思っていました。自分の妻からも「なんでそんなに落ち込んでいるの?」と不思議がられましたが、自分はもう負け犬だと思っていました。

ところが蓋を開けてみると、今年の8月にオーストラリア、ヨーロッパ、北米のランキングのナンバーワンを獲得しました。メディアからの評価も予想以上に高く、本当に驚きました。何よりも大きかったのは任天堂ヨーロッパから評価され、社長の柴田聡さんが直々にニンテンドーダイレクトで紹介してくれたことです。たった1分間程度のものですが、ユニークなゲームということで紹介していただき、結果として口コミで大ヒットしました。

――なるほど、それは貴重な成功体験ですね。ところでゲームではどういうものが好みですか?

僕にとって史上最高のゲームは、チェスです。チェスはフェアで洗練されており、奥が深く、運任せではない。将棋や碁にも同じ事が言えますね。古き良きゲームセンター時代のもの中では『International Karate』、『ディグダグ』など単純明快で楽しいものが好きです。PCゲームでは、マイナーですがDelta Tao Softwareのストラテジー『Spaceward Ho! 』や、初期のミストシリーズが好みです。昨今では『リトルビッグプラネット』や『風ノ旅ビト』が素晴らしかったです。これらのゲームからは想像力があふれ出ているように感じます。

――それらのゲームは『SteamWorld Dig』にも影響を与えていますか?

そうですね。それ以外にゲームシステム、チュートリアル、バランスなどは『メトロイド』から影響を受けています。また「掘る」というテーマは、『ミスタードリラー』、『ディグダグ』、『マインクラフト』といったものからインスピレーションを得ています。さらに数多くのプラットフォームアクションの影響を受けています。中でも日本のゲームは、ストーリーやシナリオを台詞の掛け合いによって、とても効果的にプレイヤ―に伝えていると思います。なので、『SteamWorld Dig』は日本のプレイヤーにも楽しんでもらえると思います。
《Shin Imai》
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