稲船氏らはクラウドファンディングの金額に応じての段階的な開発ステージの提案はもとより、従来のように大手資本に頼らず、ユーザーからの直接支援を頼るという方法での展開を行いました。そして、そのクラウドファンディングの展開にあたって全面的なサポートを行った有限会社ハチノヨン(8-4)のマーク・マクドナルド氏の対談という形でGDC 3日目のセッションに立ちました。
今回のセッションはGDCにおける一般的な日本人が登壇するセッションとは変わったもので、ファシリテーター(司会進行)のマクドナルド氏からの質問に沿って稲船氏が回答するという形式がとられました。
はじめに稲船氏は、日本のゲームが海外で元気がないとおうことは自分も理解しているし事実だとしながらも、一方で、かつて日本がゲームコンテンツで世界の最先端を走っていたの時代があったことを強調しました。つまり、日本がそうだったように、他の国でも同じような状況は起こりうるということです。
しかし、決してこのような悪い話ばかりではなく、インディーズゲームシーンを見れば、日本のみならず海外でもインディーズゲーム開発者たちが、かつて自分たちがそうであったかのように目を輝かせてゲームを楽しく作っていることに注目しているということで、同時に、モノつくりという点では気持ちが健全になってきているのではないかと分析しました。
欧米と比較して、日本のインディーズゲームシーンは開発環境や資金など厳しい状況もあります。比較的規模の大きな開発スタジオのありかたについても、北米に比べると夢を見られる部分が少ないとも分析しています。しかし、良いものを創っている人たちの目に輝きがある限り、いずれは、その人たちがゲームのありかたを変えてくるのではないかと思っています、と話しました。
稲船氏は自身の過去を振り返って次のように述べました。
新人としてカプコンに入社した際、アーケードの開発チームと、コンシューマーの開発チームに別れました。当時のコンシューマーゲームは決して花型ではなく、オフィスも本社ビルから離れた場所で、主な仕事はアーケードゲームをファミコンに移植することでした。その中で『いつまでも移植の仕事ばかりは嫌だ』と立ち上げたのが『ロックマン』でした。コンシューマーチームとして初のオリジナルでした。その意味で『ロックマン』は当時のインディーズでした。そのインディーズ魂は言葉にしがたいものがあります。
『ロックマン』は当時6人で開発され、うち3人が新入社員だったそうです。経験が無いスタッフ達がやる気を糧に立ち上げた、まさにインディーズです。ちなみにその3人はいま『Mighty No.9』の開発に携わっているそうです。
成功裏に終わった「Kickstarter」のプロジェクトについて、ゲーム業界の最初の反応は「何それ」というものだったそうです。「Kickstarter」というモノ自体の認知が少なく、ましてや挑戦した経験のある人は皆無でした。稲船氏は、ゲームのクオリティが高いのは当然として、ハチノヨンのスタッフが中心となってキャンペーンを周到に準備を行なったことが決め手になったのではないかと振り返りました。ちなみに、ハチノヨン以外にもサポートをしてもらう会社の候補は2社あったそうですが、「最も稲船敬二と組みたいという強い思いを感じた」ハチノヨンと組む事になったそうです。
セッションの最後には最新のゲームプレイ動画も公開。キャラクターのアクションやエネミーの設定、クリアしていく爽快感は『ロックマン』の2014年的なアレンジともいうべきゲーム性を備えた作品となっていました。「バッカー(支援者)の皆さんの力が大切で、一緒に作っているという気持ちで頑張っていますので期待してくださいと」と話してくれました。
常に新しいチャレンジを恐れずに、その真価をマーケットに問う稲船氏、帰国したらまた新しいビルド(開発版)が出来上がっているということで、それを見るのが楽しみですという言葉と笑顔でセッションを締めくくりました。
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