パネリストはアクションMOゲーム『WarFrame』を手がけるデジタルエクストリームCEOのジェームズ・シュマルツ氏。オンラインFPS『Blacklight: Retribution』を手がけるゾンビスタジオのスタジオディレクター、ジャレド・ジェリツィン氏。そしてアメコミヒーローが大活躍するMMORPG『DC Universe Online (DCUO)』のパブリッシャーである、ソニー・オンラインエンタテインメントSVPグローバルマーケティング&セールスのローラ・ナビアクス女史と、ローンチタイトルが勢揃い。モデレータはSCEAのサラ・トマソン女史が務めました。
本セッションは個人的にも興味がありました。というのも、これらのタイトルはすでにPCなどで実績のあるタイトルだったからです。『DCUO』はPCとPS3向けで、すでに2年近く運営が経過している定番タイトル。『Blacklight: Retribution』も2012年4月にPCで運営が始まり、登録者が200万人を突破しています。『WarFrame』もPCでオープンβが始まっています。
つまり、ある意味で目新しさは乏しく、ローンチタイトル不足をこれらのF2Pタイトルで補ったという見方もできます。またコアユーザーの中には(特に北米では)F2Pゲームにネガティブな見方もあります。逆に成功すれば、今後PS4でもF2Pゲームの増加や、PCとのマルチプラットフォーム化が見込まれるでしょう。
はじめにトマソン女史が現状を簡単に説明しました。PS3は全世界で80万台、PS4は6万台を販売しており、F2PタイトルはPS3が12タイトル近く、PS4も上記3タイトルがリリースされています。
■おしなべてPCより成績の良かったPS4のF2Pタイトル
結論から言うと、このF2Pタイトル群はみな成功しました。トマソン女史はその理由を「PS4はゲーマーのためのハードだから」「ローンチ時はタイトルが少なく認知度が高かった」「他のプラットフォームより安かった」「コンソールの初期F2Pだった」「課金になれているPS3のユーザーが、PS4にそのまま流れ込んだ」という5つの理由を挙げました。
一方でさまざまな革新も求められたと言います。無限に続くかのようなQAテスト、半永久的に続くパッチやアップデート、販売の計測と分析、F2Pに即したマーケティングなどです。これらはソーシャルゲームなどでは当たり前のことですが、パッケージビジネスになれたコンソールの開発者には、やはり大変だったようです。特にPS3でF2Pが出始めた頃は、まだまだ(アメリカでは)F2Pが盛んではなく、運営も手探り状態でした。
ただし、営業的にはそれだけの効果がありました。まずPS3では、PS3版とPC版で同じタイトルが出ている場合(『DCUO』など)、おしなべてPS3の方がARPPUが高くなりました。F2PユーザーではPS3をプレイする時間が他のコンソールを上回る結果となり、長時間プレイするユーザーほど課金額も高いという結果が出ました。
しかもPS4ではPS3版より、さらにARRPUが上昇するという驚きの結果に。オンライン接続率が90%、アイテムをダウンロードした経験のあるユーザーが80%を記録するという、これまでのコンソールにない数値をたたき出しました。この結果、F2Pでの売上が昨年対比で50%上昇し、課金率も3%から15%を記録。F2Pユーザーの平均プレイ時間も1.5時間程度となっています。
タイトル別に見ると『Blacklight: Retribution』では85%のユーザーが自分のキャラクターをカスタマイズし、PC版よりPS4版の方が1.5倍も多いユーザーを獲得。課金率も順調に上がっており、ユーザーにF2Pが受け入れられたと言います。
また『WarFrame』ではPS4ユーザーはPCユーザーより2倍近く課金額が高いことが判明。課金率もPS4の方が2倍以上高い結果となりました。『DCUO』ではPS3とPS4で800万人近いユーザーが登録しており、トータルの課金額でもPS4版はPC版より70%増。デイリーアクティブユーザーあたりの課金額もPS4はPS3の2倍と、おしなべてPS4>PS3>PCという傾向がみられました。
■積極派? 慎重派? 手探りの続くメーカーの対応
現状に対してシュマルツ氏は「コンソールでのゲームを開発は初めてだったが、『WarFrame』のプレイヤー層とPS4の購買層がよくマッチしており、ローンチタイトルとして最適だった」とコメントしました。
ジェリツィン氏は「中国やロシアなどではユーザーがF2Pになれているが、欧米ではここ2年くらいで市場や開発者がF2Pになじんできた。プラットフォームがフレキシブルで、ユーザーからのフィードバックも早い。どんどん改善して、ユーザーエクスペリエンスを高めたい」と言います。
ナビアクス女史は「弊社では長くMMORPGを運営してきたが、2011年からポートフォリオを組み替え、F2Pタイトルを前面に押し出した。これはゲームの民主化という流れにも沿っている」と回答しました。
またF2Pゲームの将来について、シュマルツ氏は「FP2ゲームの市場はさらに拡大し、タイトルも大型になっていくだろう」とコメント。特に新興国市場に適しており、さらなるクオリティ向上が求められていくとして、自分たちもより優れたゲームを作っていく姿勢を示しました。
一方でジェリツィンシ氏は「ほとんどのユーザーは課金しない」と、現在のビジネスモデルが一握りのユーザーによって支えられている点を強調。「FP2ゲームは一つの選択肢にすぎない」として、若干慎重な姿勢を示しました。またナビアクス女史は「F2Pゲームはプレイヤーのライフサイクルにも関係している」として、よりユーザー分析を進めていく姿勢を示しました。
長くコンソールではパッケージの売り切りビジネスが主流でしたが、PS4ではパッケージ販売、ダウンロード販売、DLC、F2Pなど、さまざまなビジネスモデルが入り乱れています。はたしてスマホアプリのようにコンソールでもF2Pが主流になるのか。まだまだ現状は混沌としていますが、少なくとも新たな胎動が感じられた本セッションでした。
【GDC 2014】PS4のローンチF2Pの成績は? メーカー担当者が一堂に会して振り返りを披露
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