■「JRPG」と日本のRPG
ここまで、私が日本のRPGをどのように捉え、それがどのように変遷していったかを書いてきました。主に取り上げてきた『ファイナルファンタジー』シリーズを筆頭に、これまで私が書いてきた「日本のRPG」というのは、実は「RPG」というジャンルにおけるひとつの形に過ぎません。元来、RPGというジャンルには、他のジャンル以上に不確定性や多様性があります。
さて、ここで「JPRG」です。
私が「JRPG」という表現を知ったのは、実はすごく最近でした。2009年末の『JRPGの下降は進化の不足が原因、未だに同じ体験しかできない』というの当サイトの記事が記憶に残っています。当時は、BioWareやBethesdaといった海外メーカーによるRPGが席巻しており、その対比として「JRPG」という言葉はしばしば否定的なニュアンスで使われていました。
では、そもそも「JRPG」とは何なのか? 単純にいえば「Japanese role-playing game=日本のRPG」の略称であり、「海外から見た日本のRPG」のことだ、ということができます。しかしこの「JRPG」という言葉には、それにはとどまらない含意がある気がするのです。
例えば、海外でも支持を集めた『Demon's Souls(デモンズソウル)』や、海外RPGの特徴を取り入れた『Dragon's Dogma(ドラゴンズドグマ)』は、海外でも「JRPG」と呼ばれることがありません。アクション要素があるから、というゲーム性の違いだけでは、“J”がつかない理由とはなりません。日本のRPGなのに、JRPGではない。その違いはどこにあるのでしょうか。
日本を代表するRPGである『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』シリーズは、これまで海外でも発売されてきましたが、日本ほどの成功を収めたとは言えません。また、日本で発売されるRPGの全てが海外でも発売されているというわけではありません。日本版を輸入するような好事家はともかく、多くの人にとって日本のRPGとは、一部の作品にすぎませんでした。
そこでは、マリオがアクションゲームにおいてスタンダードになったような一般化はなく、常に特殊なものとして扱われてきました。もともと日本のRPGが、海外の『Ultima(ウルティマ)』や『Wizardry(ウィザードリィ)』といった作品に影響を受けて生まれたにもかかわらず、です。
こと日本のRPGは、物語を伝えるというそのゲーム性によって、他のジャンル以上に高い言葉の壁に直面してきました。翻訳によって言葉の意味は理解できても、本質に触れることは難しい。そこには我々が海外RPGに触れるときのような、異文化体験や海外旅行気分といったものが、常につきまとっているのではないでしょうか。
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