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【Indie Japan Rising】傑作フリーゲーム『魔王物語物語』『ムラサキ』のカタテマが語るゲームデザインと物語

【Indie Japan Rising】傑作フリーゲーム『魔王物語物語』『ムラサキ』のカタテマが語るゲームデザインと物語

February 21, 2015(Sat) 17:00 / by shinimai


illustrated by tac_tis  

国内のインディーゲーム開発者にインタビューを行う本企画。今回は『魔王物語物語』や『いりす症候群!』などのフリーゲームで知られるカタテマのてつ氏にお話をうかがった。カタテマは2003年の『勇者御一行様殺人事件』の発表以降、頻繁にフリーゲームを公開。独創的なゲームデザインと個性的なストーリーテリングを持つ作品には国内外を問わず多くのファンが存在する。

特に2007年に公開された『魔王物語物語』はRPGツクールを使用したシンプルなグラフィックスのRPGながらも傑作として名高い。歯ごたえのある戦闘と自由度が高いマップ、断片的なテキストから読み解くストーリーといった個性により幅広い人気を獲得した。2013年にはPlayismによる公式英語ローカライズがなされ、2014年にはPHP研究所から小説版が出版されている。2014年10月には久しぶりの新作『ムラサキ』が公開された。ブロックにショットを撃ちこみ、爆風で敵の弾幕を消し去るという斬新なシューティングゲームだ。和風の世界観とジャズやフュージョンのBGMという組み合わせも独特で、昨年のフリーゲームの中では個人的なGOTYだ。

今回は新作『ムラサキ』にこだわらず、カタテマのゲームデザインの美学にまで広く話題が広がった。てつ氏のゲーム制作のきっかけからカタテマの経歴、アーケードゲームで培われたレスポンスへのこだわり、『ロマサガ』から着想を得たゲームにおける物語のあり方まで、じっくりと読んでいただきたい。

「超大作」の挫折から『魔王物語物語』の完成まで



Game*Spark:
てつさんは既に10年以上、フリーゲームを制作してきたベテランです。まずはこれまでの経歴やゲーム制作のきっかけなどを教えてください。

てつ:
フリーゲームを初めて公開したのは2003年の『勇者御一行様殺人事件』です。ただそれ以前にもBasicなどでゲームのようなものは作っていました。小学生の頃から『マイコンBasicマガジン』を読んでプログラムを打ち込んだり、ノートにゲームブックのようなものを作ったり。兄が新しもの好きで家にPC88や98があったんです。当時、『週刊少年ジャンプ』の投稿コーナー「ジャンプ放送局」というのがありましたよね。あの企画でHP、攻撃力、守備力、素早さを合計100ポイントにして戦う遊びがあったんですが、あれをプログラムにして優勝者に勝てる組み合わせを探していました(笑)。

Game*Spark:
その頃はファミコン全盛期でしたよね。ゲーム自体は何をプレイしていましたか?

てつ:
ファミコンは本当に大好きでした。『ドラクエ2』を遊んだのが小学生の頃で、それが最初のRPG。その時は遊び方がわからず、城の周りを回って死んだら兄と交代するという変な遊び方をしていました。『ドラクエ3』で一気にRPGというジャンルがメジャーになりましたが、正直最初はよくわからなかった。『ドラクエ2』のただ歩いていて不安になる感じはRPGの原体験として強く印象に残っています。

Game*Spark:
なるほど。その後もゲームを作ったり、プログラムを書いたりしましたか?

てつ:
PC88、98は途中で壊れて買い換えなかったのでブランクがあります。大学生の頃にようやくWindows95のPCを買って、インターネットにつなぎました。PC自体は父のものでしたが、インターネットで最初にやったのは格ゲーのフォーラムをのぞくこと。そこで情報交換したり、オフ会をしたり。それがメインの用途でした。それが何年か続いていたんですが、2001年にたまたまインターネットコンテストパークの存在を知りました。エンターブレインが主催していたアマチュアのゲームコンテストです。ちょうど『盗人講座』というゲームが金賞を取っていて、プレイしました。これはすごい、これを個人で作れちゃうんだと感銘を受けました。

Game*Spark:
それがきっかけで制作を始めたのですね。


デビュー作となる『勇者御一行様殺人事件』。

てつ:
そうですね。最初は知り合いが登場するような内輪向けのゲームを作りました。それが好評で、そろそろ超大作を作ろうかなと思ったら、意外と大変で結局は頓挫。全体像を把握しないまま作っていたのです。結果的に創作ではやってはいけないすべての地雷を踏んでいました。

Game*Spark:
その失敗から学んでいったわけですか?

てつ:
そうです。その超大作をダラダラ作っていたら完成しないままインターネットコンテストパークが終了してしまった。そこで頭を切り替えて、平行して作っていた小規模な作品を完成させました。それが『勇者御一行様殺人事件』で、後続のコンテストに応募したら銀賞が取れました。反響もそこそこ良かったです。このゲームの感想を書いてくれたことがきっかけで知り合ったきむらさんには、後に『魔王物語物語』で絵を描いてもらっています。だから『勇者御一行様殺人事件』は僕の中では創作活動の大きなきっかけですね。

Game*Spark:
その後は定期的に作品を発表していますよね。

てつ:
そうですね。2008年までに1年に1作は出しています。偉いですね(笑)。超大作の方も諦めきれず、確か2004年までダラダラ作っていました。ところが2004年7月にRPGツクールXPが発売されました。ツクールXPは複雑なシステムをプログラムで作れるようになっていたので、今までのデータを思い切って捨てて乗り換えました。そしてまず『オトツカイ』と『タイムアタック!RPG』という短編を作りました。これらは、ツクールXPに慣れるための制作でもありました。


『魔王物語物語』の戦闘システムのもとなった『タイムアタック!RPG』。

Game*Spark:
『タイムアタック!RPG』の戦闘システムは『魔王物語物語』に直接影響を与えていますね。フィールドでエンカウントしてそのまま戦闘が始まる。

てつ:
そうです。もともとは、勇者が魔王を倒すまでの過程を超ハイスピードでやらせるゲームにするつもりでした。そのためものすごく速く終る戦闘システムを作りたかった。

Game*Spark:
その後は『愛と勇気とかしわもち』や『いりす症候群!』といった短時間で遊べるパズルも作っていますね。

てつ:
『タイムアタック!RPG』、『窓の中の宇宙戦争』、『愛と勇気とかしわもち』の3作は、当時開催されていた「3分ゲーコンテスト」に応募する目的で制作したように思います。『愛と勇気とかしわもち』はRPGツクールXPのRubyスクリプトであるRGSSの経験を活かしてC++で開発しました。RPGツクール以外で制作する初めてのゲームだったので、短くなるように設計したという側面もあります。『いりす症候群!』は長編の『魔王物語物語』の後だったので、コンパクトなゲームを作りたいという欲求があったと思います。

Game*Spark:『魔王物語物語』はカタテマのRPGとしては集大成ですね。

てつ:
RPG大好き人間はRPGツクールに出会うと、衝撃のあまり「ぼくのかんがえた最強の超大作RPGをつくろう!」と意気込んでしまいます。僕もその夢を果たそうと、制作していた当時は多少無理をしていました。当時は仕事も忙しく、23時に帰宅しても24時から「よし、あと2時間くらい作業できるな!」という感じで。毎日、リポビタンDやエスタロンモカを飲んでいました。『魔王物語物語』でRPGを作りたいという夢を果たした後は、健康を害してまでやるようなことではないので、一定のペースで長く走りつづけたいと思っています

試行錯誤と共同制作の果てに――『ムラサキ』制作秘話


昨年発表された最新作『ムラサキ』。

Game*Spark:
その後は2008年の『いりす症候群!』から2014年の『ムラサキ』まで結構なブランクがありますね。

てつ:
一応、2011年に『愛と勇気とかしわもち』のiPhone版を出しています。

Game*Spark:
iPhone版はご自身でつくったのですか?

てつ:
そうですね。単なる移植なので、技術的な関心で作ったという側面はあります。iPhoneでアプリ作ってみたい。Objective-Cを書いてみたいという。

Game*Spark:
このブランクは本業が忙しいといった理由ですか?

てつ:
いや、単純に『ムラサキ』を作るのに時間がかかったのです。チームを組んで本格的に制作が始まったのは2013年の5月ですが、その前の研究期間がかなり長かった。シューティングにパズル要素を組合あわせたらどうかと、試行錯誤を繰り返していました。最終形はシンプルですが、最初は複雑で面白くないゲームになってしまっていて、そこからの試行錯誤が長かったです。

Game*Spark:
制作開始はいつなんですか?


『ムラサキ』のシステムの元となる『いりす症候群!』。

てつ:
昔の日記を確認したら、シューティング風のゲームは2008年から研究していました。その頃はまだ普通に弾を撃って敵を倒す感じです。その後、2011年の『愛と勇気とかしわもち』iPhone版のリリースの後、ずっと1人で開発を続けてきました。最初は物理エンジンの要素はなく、誘爆させるシューティングをつくろうと思いました。しかし、そういうゲームは既にたくさんあったので、『いりす症候群!』の物理エンジンの要素を加えたんです。ところがそれでは思ったようなゲームにならないんです。画面上に意識する要素が多すぎて、何に集中したら良いかわからない。そこから要素をかなり削って、ようやく脳への負荷が許容範囲に収まり普通に遊べるゲームができた。それが今の形です。

Game*Spark:
最初からはっきりとしたコンセプトがあったというよりも試行錯誤で生まれていった感じですね。

てつ:
紆余曲折ばかりです。これは絶対守るというゲームの柱はいくつかありました。このゲームの場合、まず本能的に破壊する快感を満たしたい。さらにパズル要素や体力ゲージにこだわりたい。そういった柱を満たすために試行錯誤を繰り返しました。

Game*Spark:
ちなみに音楽はかなり独特ですが、どのようにディレクションしましたか?

てつ:
あんまりシューティングらしい曲を作っても面白くないので、方向性を示しつつも、基本自由にやってもらいました。作曲をはじめてもらったのは、システムが固まってある程度遊べる段階になってからなので、プレイ動画や設定資料等も渡しています。ものがない状態でお願いするのは難しいので。

Game*Spark:
しかしながら予想以上に和風の世界観とマッチしていて驚きますね。

てつ:
方針だけ示して自由に作ってもらっても、意外とうまくいきます。変に僕のイメージ通りに作ってもらうことにこだわるよりも、良い物になると思っています。シューティングは初めてだったのでいろいろ不安なところはありました。あと音楽に合わせてステージ作ったところは多いです。ステージ作った後、音楽をつけて、その後に音楽に合わせて修正していく感じです。『斑鳩』や『ダライアス』はやはり音楽とステージが同期してかっこいい。そういったところに憧れていました。

Game*Spark:
『ムラサキ』の5面にも音楽と同期した演出がありますね。あれはどうやって作っていったのですか?



てつ:
まず何人ボスキャラがいるかを決める必要がありました。設定上の都合もあり、僕としては4人にしたかったので、4種類を前提とした楽器編成をどのようにするかを、音楽担当のwatsonさんに相談する必要があった。そもそも4つの楽器で楽曲が成り立つのかどうかもわからない。そしてまず楽器の見栄えの問題があります。たとえばピアノを使うとなると、ピアノのキャラが後からピアノを持って登場するわけにいかない(笑)。なのでピアノがいるんだったら、音楽的にもピアノから始まる必要がある。そういったさまざまな制約を踏まえつつ、音楽のwatsonさんと話し合いながら決めていきました。そしてピアノと弦楽器を含めた4つでいけそうだと。それから絵師の蓬餅さんと相談して、4つの楽器を持ったキャラクターを描いてもらった。それをもとにステージや演出を作っていく。かなり大変でした。曲も構成も楽器に大きく制約されます。特に打楽器が使えないのが大変だったそうです。

Game*Spark:
なるほど。しかしあの音楽と演出は本当に素晴らしいですね。

てつ:
これは昔からやりたかったことなんです。『迷宮組曲』で楽器を取っていくと音が増えていく演出があります。ああいった演出を自分なりに表現したかった。制作タイミング的にシューティングゲームに合わせることになったんですが、すごく大変でしたね。当たり判定のないようなゲーム、たとえばRPGで作ったほうが楽だったと思います。この演出の作業で3人とも死んでました(笑)。全体の労力の何割かが5面のボスにかかっています。それぐらい大変で最後の最後まで本当にうまくいくかわからなかった。

Game*Spark:
シューティングのレベルデザインはどうやってやるべきかは、前回のインタビューでも話題になりました。結論はひとりで全部やるのが良い(笑)。

てつ:
井内ひろし方式」ですね。『斑鳩』はやはりすごい。ステージ構成のリズムもすごく気持ちいいし、敵を早回しにしても音楽とタイミングがあうようになっている。こういった方向性は、待つ行為が重要な『ムラサキ』のシステムと相性が悪いこともあり、さすがに真似するのは無理だなとは思いました。そもそも自機に当たり判定があるゲーム自体初めてだったので、製作前も製作中も不安だらけだった。ただ新しいものに挑戦して成長できたと思います。

Game*Spark:
シューティングゲーム好きから見ても良くできています。

てつ:
シューティングが苦手の方に向けて作ったのですが、そういう方にも楽しんでもらえて良かったです。



Game*Spark:
意図的に簡単にした部分はよくわかります。通しプレイを前提にしていない、ヘルス制、しかも回復するとか。でも根本的な部分でシューティングゲームの良さを守っています。ひとつには一発のショットで形成が変わるという部分。これはある種のシューティングの醍醐味です。

てつ:
画面上に一発しか弾が出せないのは最初から決まっていたことです。

Game*Spark:
インベーダー以来の伝統ですよね。シューティングゲームというと、どうしても避けるというイメージを持たれがちです。そこで狙い撃つというところにフォーカスを当てたのは見事だと思います。あとは2面の初見殺しの部分。あれが初心者でも許せるのはすぐに再プレイできるからですね。

てつ:
あれはアーケードでやったら怒られます(笑)。あれはRPGでよくある負け確定バトルみたいなのを入れてみたいというのが動機のひとつ。あとはステージに変化が欲しかった。

Game*Spark:
ただ通しプレイの実績をとるためにプレイするとき、忘れているんですよね。2面の最初の初見殺しを。

てつ:
(笑)

Game*Spark:
あれが3面あたりだとブチ切れますね。あとはボムの挙動も面白い。すぐに発動しないため押しタイプのボム。結果としてすべて決めボムにしなきゃいけない。これは意識されましたか?

てつ:
ボムの仕組みをため押しにしたのはいくつか理由があります。まず能動的に使ってもらいたかった。ため押しにすると反射的にボムが使えないので、能動的に使う必要があります。防御的に使おうと思っても少しくらってしまう。

Game*Spark:
反射的に使えないことが、かえって初心者に優しいですよね。あらかじめ決めボムで使うのが前提になる。

てつ:
そうですね。シューティング作っている人にとっては、ある程度、決めボムを使ってほしいと考えますから。

Game*Spark:
シューティングには決めボムというテクニックがあるわけですが、なかなか初心者の人にはわかってもらえない。でも『ムラサキ』は決めボムのように使うしかない。

てつ:
それは気づかなかったですね。能動的に使ってもらうために考えたシステムですが、副次的にそういう効果もありますね。

アーケードの直感性とRPG的物語の両立――カタテマのゲームデザインの美学



Game*Spark:
こうして過去の作品を振り返ってみると、意外にもアーケードゲーム志向が強いように思えますね。どの作品もレベルやステージがコンパクトにまとまっていて、クリアするごとに何かご褒美があります。

てつ:
それはあまり自覚がないですね。確かにアーケードゲームはよくプレイしていました。ただあらためて自分の作品を振り返ると、『魔王物語物語』や『ムラサキ』で取り入れた断片的なテキストによるストーリーテリングは、実は初期の頃からやっていたように思えます。『勇者御一行様殺人事件』も最小限の要素で物語を語っています。スタート時点でいきなり村が滅びている様子もマップで表現している。ステージをコンプリートすると日記が読めるというてストーリーがわかるという作りになっています。昔からこういうのが好きだったみたいですね。

Game*Spark:
この独特なストーリーテリングは何かに影響を受けたものですか?

てつ:
『ロマサガ』シリーズの影響は大きいです。普通の小説や映画は、用意されたストーリーラインを順番に見ていくものですよね。もちろん中には「時系列シャッフルもの」のような形式も存在しますが、その手の物語も、受け手はシャッフルされたものを作り手が用意した順番通りに見ることが前提となっています。他方、ゲームの場合は自分で好きなところにいって好きな順番で物語を拾い集めることが可能です。それを『ロマサガ』はやっていたんです。こういった物語の展開の仕方はゲームじゃないとできない。そしてこれこそゲームでやるべき表現だと思います。

Game*Spark:
それは同感ですね。思うに河津秋敏さんはゲームシナリオを敵側の目線で構築しているようです。『ロマサガ』はフリーシナリオであるため、プレイヤーの側にははっきりとした物語が提示されません。しかし、敵側の目線に立つと実はかなり明確なストーリーが作られているんです。『ロマサガ1』ではサルイーンの復活のために、各地でミニオンが暗躍します。『ロマサガ2』でも復讐のために各地で七英雄が活動する。これらの行動は時間軸にそってはっきりと決められています。でもプレイヤーがそれらの敵と対峙する場所は毎回異なってくる。結果としてプレイヤーは断片的な出来事の中からその背後を読み解くことになります。

てつ:
そうなんですよ。最初に世界を構築して、その上を歩くことで断片的な情報を拾い集め、ストーリーの骨格が理解できる。そういう点では自分の手法と似ているかもしれません。僕が『ロマサガ』に影響を受けているので当然ですが。あとフリーゲームではアンディー・メンテの作品にも影響を受けています。アンディー・メンテのゲームではスコアなどのプレイ状況をテキストファイルに出力できます。『魔王物語物語』のテキスト出力の直接の着想はそこにあります。他にも『ネフェシエル』や『イストワール』といったフリーゲームにも当然、影響を受けています。広大な世界を歩いて読み解いていくという点では、『イストワール』はすごく参考にしました。



Game*Spark:
『ロマサガ』シリーズから影響を受けているそうですが、印象に残っているエピソードなどありますか?

てつ:
あげるとキリがないですが、ベタなのは雑魚敵に「火の鳥」を食らって瞬殺されたことですね。目が点になりました。ただ真面目な話、これは今につながる貴重な経験にもなっています。というのも『ロマサガ』のこの手のトゲトゲしい部分は、当時のプレイヤーに「冒険している感」を提供していたのは間違いないと思うんです。そしてこの感覚は綺麗に上品に調整されたゲームでは、絶対に得ることができない。そのため、自分の作るゲームでも必ずどこかトゲトゲしさを残すことをいつも目標にしています。

Game*Spark:
ではカタテマのゲームデザインについてお聞きしたいと思います。いきなりですが、ゲームを作るときは最初に何を考えますか?

てつ:
ストーリー面とゲーム面では別々ですね。ゲーム面でこだわっているのは、レスポンスの良さやシンプルな操作性、気軽に始められること。おおむね直感的な部分ですね。ボタンを絞ることにもこだわっています。『ムラサキ』も2ボタンでまとめました。

Game*Spark:
それでもカタテマのゲームを難しいと感じる人は多いようですね。

てつ:
確かにそうかもしれない。だけど難しいといってもいろいろあります。再プレイしやすく作っていれば、たとえ難しくても何度も挑戦できる。『魔王物語物語』もその辺は重視しました。死んでもすぐに再開できる環境を確保したつもりです。全体がスピーディーになれば、再プレイもしやすい。そして何度も挑戦して、以前やられたところを突破する達成感が得られるのが理想的です。



Game*Spark:
『ムラサキ』でも特にステージ構成が独特ですよね。再プレイしやすいように通しプレイが前提になっていない。

てつ:
そうですね。通しプレイというのはシューティングが苦手な人の巨大な壁なんです。なので初期段階で通しプレイをしなくてもクリア可能なものに決めたんです。ただデメリットも大きかった。1面2面とパワーアップして自機が強くなり、音楽や背景で気分を高めてラスボスに到達する。通しプレイのステージ構成は演出面でとても理にかなっています。そういった演出もやりたかった。

Game*Spark:
つまり通しプレイには通しプレイの盛り上げ方や演出があるというわけですね。

てつ:
アーケードのシューティングや東方Projectもいきなり6面から始めるとなんか違うなと思いますよね。しかし『ムラサキ』では、通しプレイが可能にする優れた演出という大きなメリットを捨て、ステージ選択性による遊びやすさというメリットをとりました。

Game*Spark:
他にシステムの面でこだわりは?

てつ:
さっきあげたボタン数ですね。物理的なボタンを減らすというのもありますが、体感的なボタン数を減らすこともこだわっています。

Game*Spark:
体感的なボタンというと?

てつ:
たとえば『スト2』などのカプコンの格ゲーは6ボタンあります。普通、6ボタンを駆使するのはかなり困難ですね。ただ『スト2』が素晴らしいのは上がパンチで下がキック、弱中強と並んでいるのでかなり直感的。自然に受け入れられるため把握がそれほど難しくないんですよ。別の例では、2つのボタンを使用するとしても、まったく別の機能をバランスよく駆使するゲームと、ほぼ片方のボタンしか使わないゲームだと体感的なボタン数は違います。『ムラサキ』もその点、2ボタンなんですが、基本的に1ボタンゲームにしたかったんです。必殺技という要素のために2ボタンなんですが、実際には使う機会は少ない。なので僕の中では1.2ボタンゲーム(笑)。

Game*Spark:
なるほど。

てつ:
そういう風に体感的なボタン数を減らしていくことで操作をシンプルにしていくのが好きです。



Game*Spark:
再プレイをしやすくする、ボタンを絞る。どちらにせよシステム面ではミニマルなものを志向しているのですか?

てつ:
そうですね。

Game*Spark:
そういった部分は海外のインディーゲームにも似ていますね。難易度は高いが再プレイが速くてストレスにならない。『Super Meat Boy』なんかはまさにそんな感じです。ボタンも1ボタンです。おそらく昔のアーケードやファミコンのゲームが持っていた良さで、現在の商業ゲームが忘れている部分をインディーゲームもフリーゲームも求めているのかな。

てつ:
そうかもしれない。僕がゲームを作り始めたのはSFC時代も終わったプレイステーションのころです。ただあの読み込み時間が昔から大嫌いで……。そういった中で初めて触れたアンディー・メンテのゲームがサクサクと操作できることに感動したことを覚えています。そういったレスポンスの良さによる快感を提供したいという思いは昔からあります。自分の作るゲームは今でもそういった部分を大切にしています。

Game*Spark:
さきほどインターネットで格闘ゲームのフォーラムをのぞいていたという話がありましたが、他にも格闘ゲームからの影響はありますか?

てつ:
一昨年くらいに『P4U』にハマっていましたが、最近は時間を作るためなるべく格闘ゲームに手を出さないようにしています。格ゲーから得たこととしては、さきほどの体感的なボタン数以外にはフレーム感覚や快感の先取りといったことがあげられます。フレーム感覚というのは、技の発生フレームの体感のことで、ゲームを調整するときにも役に立っている気がします。

快感の先取りというのは、どういうときに気持ちよくなれるかに関する経験則です。例えば、相手の波動拳に絶妙のタイミングで跳べると、その後に気持よく連続技を決めれます。ここで気持ちよくなるのは連続技を決めている最中だと思いがちですが、実は人間はうまく跳んだ瞬間にすでに気持ちよくなっていると思うんです。やってくる素敵な未来を想像によって先取りして興奮する。すこし時間差があった後に、その期待に応えてくれる快感の本体が後からやってくる。人間はその一連の流れに深い快感を覚えるのではないかと、自分の経験・体感から考えるようになりました。理屈があるわけではなく、単なる個人的な経験則なんですが。

Game*Spark:
なるほど。

てつ:
作るときも快感の予兆、時間差、快感の本体という部分をセットで提供するのが良いと思います。『ムラサキ』においてもそういった設計を行っています。

Game*Spark:
ではストーリー部分に関してはどうですか?

てつ:
『魔王物語物語』と『いりす症候群!』ではゲームの外部にテキストファイルを出すという試みをしています。あれは僕なりのこだわりなんです。これまた『ロマサガ』の話ですが、昔はインターネットもなくて手探りでプレイしていました。ストーリーとかもほとんどわからなかった。ただやっているうちに世界やキャラを断片的に把握できてくる。その後に攻略本や資料集といったゲームとは別なところで設定を理解するのがとても楽しかった。あの酒場のいたやつはシェラハだったのかとか。そのように、ゲームから一歩引いたところでテキストを読んで理解することに、独特の楽しさを体験した思い出があり、これを再現したいという思いがありました。ただ僕のゲームには攻略本はないので、それを擬似的に再現した、それがあの外部に出力されるテキストです。


物語の真相がテキストファイルで出力される『いりす症候群!』。

Game*Spark:
先ほどアンディー・メンテもテキストを外部に出していたと聞きましたが、フリーゲームのある種の常套手段だったんでしょうか?

てつ:
僕が知っている限り、アンディー・メンテ作品が出力していたのはレベルなどの数値的なものです。ストーリーを出力するゲームは自分以外にはよく知らないですね。自分はやはり副読本感覚を作りたかったというのが大きい。それと単純にゲーム内で長いテキスト読むのが苦手です。『ムラサキ』でも言えますが、読みたくないときに長文を読まされるのは本当に苦痛なんです。長文読むこと自体は良いのですが、突然長話とか始まると頭に入ってこない。ゲーム中のテキストはなるべく最小限にしておきたい。そうすればゲームを進めたい人の邪魔はしないし、ゲームシステムにしか興味ない人も楽しめる。ストーリーに興味ある人はさらに長文を読んで楽しめる。これで両方のニーズに対応できると思うんです。実際に『魔王物語物語』はストーリーに一切触れずに褒めてくれる人もいれば、シナリオを褒めてくれる人もいます。だから狙いはそこそこ達成できたと思います。

Game*Spark:
断片的なテキストからプレイヤーが物語を読み進めていく手法は、「環境ストリーテリング(enviromental storytelling)」と呼ばれるものと似ています。これは海外のインディーゲームでも用いられる手法なんですが、環境というかオブジェクトを利用して物語を語らせるものです。例えば、机の上に日記があって、その内容をプレイヤーが読むことで物語が明らかになるといった手法。それによってプレイヤーに想像を触発していく。

てつ:
なるほど。ただプレイヤーに想像させるというのは結構難しいことです。作者側から変に意図的に情報を抜くとプレイヤーは冷めてしまいます。その辺のさじ加減は難しい。最初に世界を作りこんだ上で、自由に探索してもらうように作ると不明確な部分は自然に出てくる。そういった過程で作られる想像の余地が、ちょうど良いのかなと思っています。「想像させてやるぜ」という意図を全面に押し出すのは自分も嫌だし、プレイヤーも気づくと思うんですね。

Game*Spark:
なるほど。ところで『愛と勇気とかしわもち』や『いりす症候群!』の場合、ゲームと物語に関連性が薄いですよね。そういった場合、ストーリーの必要性は何なんでしょうか?


見た目に反する衝撃的なストーリーでプレイヤーを驚かせた『愛と勇気とかしわもち』。

てつ:
単純に自分の中にストーリーを書きたい、表現したいという動機がありますが、他の側面としては、プレイヤーのモチベーションを向上させるためです。やっぱりこういうゲームでは点数を意識してプレイしてほしい。ところがSTGでも実際に点数を気にしている人はほんの一握りだと思います。何らかの目標がないと点数を意識するのが難しい。『愛と勇気とかしわもち』や『いりす症候群!』は点数を意識してこそ面白いものに作っています。そのため、5万点とか20万点という点数でストーリーが進むようになっています。

Game*Spark:
なるほど。ハイスコアを目指すモチベーションのためのストーリー。

てつ:
同時にゲーム部分にしか興味がない人にはストーリーは無視してもらっても良いように作っています。僕は昔からシューティングが好きでしたが、点数を意識したことはあまりなかった。『怒首領蜂』は2周目条件に点数があったので稼ぐことを意識しました。そこで目標があれば点数を意識するし、点数を意識した方がもっと楽しいことに気づいんたんです。『ムラサキ』も点数を意識してもらいたかったので、点数を条件とした実績を配置しています。

Game*Spark:
最後にストーリーとシステムをどうつなげるかも重要です。『魔王物語物語のつくりかた』(『魔王物語物語』のメイキング同人誌)では「システムとシナリオの癒着」と表現していますが、これは具体的な方法はありますか?

てつ:
正直、明確な手法はありません。ただずっとシナリオとシステムのことを考えているとどこかでリンクする。それの積み重ねです。例えば、『魔王物語物語』では「なんでも装備システム」というのがあります。普通のRPGだと装備品は兜は頭に取り付ける等、パーツによって固定ですよね。なんでも装備システムは、いろいろな装備品を自由に組み合わせることを可能にさせ、幅を広げるためのものです。これはシステム側のアイデアです。一方、プレイヤーキャラの一部は謎の生物に取り憑かれていて、そいつらが記憶を司ったり吸収したりする設定があった。そこでこれらを癒着させ、そのなんでも装備は謎の生物が装備していることになっています。だから取りつかれていないキャラクターはなんでも装備欄がないのです。どこにも書いてないですが(笑)。

Game*Spark:
なるほど、全然知らなかった(笑)。やはり1人でやっていることが大きいのですか。

てつ:
そうですね。別々でやっているとなかなか癒着している感じが出ない。東方Projectもこういった面が優れていると思っているのですが、やはりZUNさんが1人で作っているところが大きいと思います。

フリーゲームならではのマイペースな活動


遅い時間までインタビューに付き合ってくれたてつ氏。

Game*Spark:
これまではフリーゲームの世界で活躍されてきたと思いますが、今はインディーゲームという大きな流れがあります。そういった中でご自身を振り返るとどうですか?

てつ:
フリーゲームの世界ではマイペースでやっているので居心地は良いです。コミックマーケットに出たり、有料ダウンロードゲームも出したりしていますが、やはりフリーゲームがホームです。コミケは半年に2回という締め切りがキッカリとありますが、フリーゲームはその点、自由でマイペース。

Game*Spark:
ただ締め切りがないとモチベーションを保つのが大変ではないですか?

てつ:
確かに締め切りがないと制作はどんどん長引いてしまうものなのですが、どこかで諦めて終わりしないといけません。諦めるのは難しいことなのですが、協力してもらった方の手前もあるので。

Game*Spark:
その点、コンテストなどがあればリリースしやすいですね。

てつ:
そうですね。その点、『ムラサキ』に関してはリリースのタイミングがなかなか決まらなかった。通しでプレイが可能になったのが2014年の半ばでした。そこでテストプレイをお願いして、ガンガン改良していった。そしたら2014年の終わりくらいになっていました。僕もゲーム制作をはじめたきっかけはコンテストパークだったので、コンテストは盛り上がってくれた方が良いですね。

Game*Spark:
いくつかの作品は海外でローカライズされていますが、どういった経緯でなされたのでしょうか?

てつ:
基本的には野良パッチのようなものは勝手に出てきます。『魔王物語物語』に関してはPlayismさんが声をかけていただいたので、英訳してもらいました。

Game*Spark:
海外の評判は知っていますか?

てつ:
わからないです(笑)。

Game*Spark:
私が知っているのは英語圏では『いりす症候群!』が非常に人気なんですよ。

てつ:
そうらしいですね。確かにYouTubeでも動画があったりして不思議です。『愛と勇気とかしわもち』の方がテキストが少ないのでいいのかなって思っていました。

Game*Spark:
『ムラサキ』のローカライズはどうですか?

てつ:
オーストラリアの方からメールもらってリソースファイルを欲しいということを頼まれました。何ヶ月か前くらいに渡しましたが、その後はどうなっているのかわからない(笑)。

Game*Spark:
『ムラサキ』は英語のサイトも作っていますよね。

てつ:
『いりす症候群!』などは、ローカライズする人がデータを解析して言語パッチを勝手につくっているケースがありました。それだと無駄な労力がかかるので、ローカライズしたい人にはデータを提供しようと思ったのです。そういうことで英語のサイトも作っています。

Game*Spark:
『魔王物語物語のつくりかた』でも書いていましたが、これからもゲームを作るときのターゲットは自分自身のままでしょうか?制作を通して変化などはありますか?

てつ:
変わりませんね。自分が嫌な要素は絶対に入れたくない。ターゲット層は毎回なんとなくは想定します。『ムラサキ』ではSTGが苦手な人や好きだけど苦手な人。僕自身もそこに含まれています。なので自分自身がターゲットだというのは一貫している。周りの環境に合わせて作ろうとすると、自分のやりたくないことをやらなきゃいけなくなる。もちろん、周りに合わせることが楽しいならばいいのですが。

Game*Spark:
その点もマイペースですね。今後作っていきたいものは何かありますか?

てつ:
またRPGの要素があるゲームは作ってみたい。あとホラーゲームなんかは作ってみたいですね。

Game*Spark:
ホラーゲームは面白そうですね。カタテマのストーリーテリングの手法に合いそうです。ぜひ楽しみにしております。

『ムラサキ』は近日中に新たなハードモード等を追加したアップデートが予定。またカタテマは4月26日に開催される同人音楽イベントM3に参加。そこでは『ムラサキ』のサウンドトラックが頒布される。ゲーム内ではループしていた楽曲の先の展開が聞けるというものになっており、気になった方はぜひチェックしてみてもらいたい。
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評価の高いコメント

  • 2015年2月22日 00:17:53 ID: 1UOuewShoD3S
    5 ヒマリさんさん
    通報する

    まもも、いりす症候群をはじめとして、全部おもしろいです!
    願わくは、魔王物語物語の続編を!(切実)

  • 2015年2月21日 20:32:52 ID: 1JKyBh5jjQfM
    2 スパくんのお友達さん
    通報する

    かしわもちのストーリーはマジびびったなぁ

  • 2015年2月22日 00:31:19 ID: SksrnkyX/mwU
    6 スパくんのお友達さん
    通報する

    魔王物語物語は隠しボス倒すまでやったなー
    単純な続編に拘らず、カタテマの独創性を含んだRPGはまたやりたいですね

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