自動生成やパーマデス(一度死ぬとすべてを失う)など、さまざまな要素が絡み合い、何度遊んでも楽しむことのできるゲームジャンル「ローグライク/ローグライト」。今回の「げむすぱローグライク/ローグライト部」第25回では、個人ゲーム開発者である定期的な宝物が開発・販売を手がけるプログラミングオートバトルローグライト『オートローグ』をご紹介します。
なお、開発者氏のXでのポストによれば同作は既に25,000本を売り上げているとか。
『オートローグ』とは

本作『オートローグ』は猫耳が付いたスライムのような、不思議な生物が主人公のオートバトルRPGです。物理攻撃に優れる白い子と、魔法や召喚技能を得意とする黒い魔術師帽を被った黒い子のどちらかを操り、彼らの「ママ」の目を盗んで、いざ冒険の旅へと出発します。

冒険の旅の道中ではさまざまなモンスターと遭遇しますが、本作が他のローグライク/ローグライトと一線を画すのがその戦闘システムです。プレイヤーは習得した「スキル」と「条件」を組み合わせて「作戦」をプログラミングし、その作戦に従って自動戦闘を行います。
戦士系のスキルを主に習得する白い主人公であれば、最初に敵からの攻撃に対しシールドを張る「まるまる」と、敵に小ダメージを与える「ずつき」を習得しています。敵からダメージを回避したいので「まるまる」は優先したいですが、単純に「まるまる」「ずつき」とスキルを並べると延々と「まるまる」を実行し続けてしまい、敵にダメージを与えることができません。かと言って、「ずつき」「まるまる」と並べると、敵からの攻撃を無視して延々と攻撃を仕掛け、いつかは敵の攻撃でやられてしまいます。
そこで登場するのが「条件」です。スキルを「まるまる」「ずつき」の順番で並べ、「まるまる」の使用条件に「防御が(敵の)攻撃より小さい」を設定することで、敵が攻撃を仕掛けてくる場合のみ「まるまる」でシールドを張り、それ以外の場合は「ずつき」をする……という、防御と攻撃を兼ね備えたプログラムが完成します。この「防御が攻撃より小さい」という使用条件を駆使して、適切にシールドを張っていくのが白い主人公では重要になります。

なお、魔法系のスキルを操る黒い主人公では新たに「MP」などのリソース管理が加わります。「MP」は特定のスキルの使用に必要になるリソースで、「魔力シールド」などの一部のスキルやレリックで回復することができます。黒主人公の初期スキルはシールドとMPを稼ぐ「魔力シールド」とMP10を消費して敵にダメージを与える「高出力光線」の2つで、最初は「MP10以上なら高出力光線を使用、それ以外は魔力シールド」というプログラム構成になるでしょう(なお、本作では「使用不能なスキルはスキップされる」仕様のため、実は上記の高出力光線の「MP10以上なら」という条件は不要。でもこの条件文を加えたくなるのは筆者が元プログラマー故でしょうか)。
この戦闘システムは『ファイナルファンタジー12』で採用された仲間キャラクターのコントロールシステム「ガンビット」によく似ており、同作をプレイしたことがある方なら馴染みやすいかもしれません。

敵を撃破すると「スキル」がランダムに提示され、どれか1つを習得することができます。こうして習得したスキルをどのようにプログラムに組み込んでいくかはプレイヤーのアイデアが問われます。

また、戦闘によってはさまざまな特殊効果を得られる「レリック」も報酬として出現することがあります。これは持っているだけでさまざまな影響を与える道具で、やはりランダム選出されたものから1つ選択して獲得する形式です。多くのローグライトゲームと同様、「こ……こんなことが、こんなにすさまじい効果が許されてもいいのか!?」と思わず言いたくなるような「スキル」と「レリック」の組み合わせもあるので、プレイヤーの皆様の手で探してみましょう。

本作独自の戦闘報酬には「条件」もあります。これは他のスキルの使用条件とは違い、「スキルに特殊な効果を付与する」エンチャントのようなものです。少し見ただけでは使い道がわかりにくいものも多いのですが、上手く活用すれば戦闘をより有利に運べるものばかりです(敵に与えたダメージをHPとして吸収するスキル「ブラッドクロー」に、スキル使用時HPを減らすが消費エナジーも減らす「等価交換」を組み合わせ、ブラッドクローの攻撃回数を増やしまくるとか)。

こうして道中で得たさまざまなスキルや条件でプログラムを組み上げ、試行錯誤して強力な敵を撃ち破ることが本作の魅力です。
母は強し!?それはともかく幅広い難易度とプログラミングの楽しさを存分に堪能できるオートバトルローグライト

本作はEASY、NORMAL、HARD、そして「?」Lv1~Lv5の計8段階の難易度が用意されています。難易度が高くなれば高くなるほど敵のHPや行動ルーチンが強化され、そして「制限ターン数」も短くなります。

本作は「ママ」が眠っている間に子どもが勝手に冒険に出た、という設定であり、「ママ」が主人公に追いつくまでが「制限ターン数」です。各戦闘について3ターンを基準として、それ以上戦闘に時間がかかるとそれだけ「ママ」が追い付いてきたということで制限ターン数が減っていきます。

制限ターン数が0になると……「ママ」が子どもの危機に駆けつけてきます。しかも敵をワンパンで沈めて。相手がスライムの王や、強大なドラゴンであっても。「子どもと同じ格好の強い母親キャラが出てくる作品は人気が出る」というごく一部でまことしやかに囁かれる法則がありますが、おそらく本作最強の存在である「ママ」が出てくる本作はまさしくそれに当てはまっているといえるでしょう。

それはともかく、制限ターンを過ぎ、ママがやってくると連れ帰られてゲームオーバーです。低難易度では制限ターン数が問題になることはほとんどありませんが、高難易度では制限ターン数にほぼ余裕がない状態が続くため、多少ダメージを食らってでも敵を早く倒すことを重要視するか?という判断も問われます。

とは言え、中途半端な攻撃特化では敵の攻撃でHP0になることも多々あります。高難易度では上手くバランスを取ったプログラミングができるかどうか……が重要になります。幸い、本作は何度やられても同じ戦闘をやり直すことができます。1度負けた戦闘でもプログラムを組みなおせば勝機が見つかるかもしれません。
また、どうしても「詰んだ……」と判断した場合は、画面右部の歯車アイコンのオプション画面から冒険を放棄して最初からやり直すこともできます。

ここまで書いてきた記事の内容だと、「本作は難易度が高いのではないか?」と印象を持たれた方もいるかと思いますが、それは「HARD」以上の難易度の話です。難易度「EASY」「NORMAL」であれば本作のリソース管理にもかなりの余裕ができ、あまりプログラミングに自信がなくともある程度は進めるような難易度となっています。

そして、本作の敵撃破時の派手で気持ちいい宝箱の演出や、さまざまな強力なスキル・レリックが揃い、敵を容易く捻り潰すプログラムが組み上がったときの快感は、他のローグライトにはない楽しみです。
これは筆者が元職業プログラマーであったことから強く主張したいのですが、プログラマーが一番楽しいのはプログラミングを行っているときです。仕様書を読んで、その要求を自分のセンスでどう効率よく、かつ可読性もメンテナンス性も高く、しかも安定したプログラムを組みあげていくか……を考えて、コーディングするときがプログラマーとして至福の時なんです!(仕様書やテスト手順書の作成、テスト作業は見なかったことにしたい)
そんな「プログラミング」の楽しさだけを取り出した、このゲームが面白くないはずがないではありませんか。同様のことを筆者は『FF12』やロボットプログラミングシミュレーター『カルネージハート』シリーズを遊んだ時にも感じましたが、このゲームはそれらのタイトルと並ぶだけの価値が充分にあります。

「プログラミング」の楽しさと面白さ、そしてデッキ構築型ローグライトゲームにも通じる「スキルやレリックの組み合わせでゲームをぶっ壊す」面白さが、本作『オートローグ』には詰まっています。筆者は文句なしにおススメするタイトルです。
『オートローグ』は、PC(Steam)にて690円(6月3日まで586円)で配信中です。












