気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Brainoid Games開発、PC/Mac/Linux向けに11月19日にリリースされたローグライクデッキ構築神経衰弱『ネコピペ』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、猫のカードを使ったローグライクデッキ構築神経衰弱。ただの神経衰弱ではなく、強力なデッキを組み上げ、ゲームを変えるアイテムで常識を打ち破り、奇想天外な戦略で高スコアを目指します。行動数追加、自動めくり、ターン操作、倍率強化など、様々な効果を組み合わせられるのが特徴。日本語にも対応しています。
『ネコピペ』は、1,200円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
BoraBoraです。『ネコピペ』を一人で開発しているソロデベロッパーです。出身はトルコのイスタンブールで、3か月前にベルリンへ引っ越しました。UIは外注しており、猫のエモート用イラストは友人のspacey3dが制作してくれました。ゲームデザイン、プログラミング、音楽、効果音はすべて私が担当しています。
私はモバイルゲーム業界で長年働いてきましたが、ある時、それが自分の魂をすり減らしていると感じるようになりました。そこで、本当に好きだったPCゲーム開発に切り替える決断をしたのです。
好きなゲームを聞かれた時は、大作とインディー作品に分けて答えるようにしています。大作では、初代『BioShock』、『Half-Life』シリーズ、そして『バルダーズ・ゲート』シリーズが大好きです。実は『ネコピペ』の中には、『Half-Life』を元ネタにした小道具が登場したりもします。一方、インディータイトルでは、『Slay the Spire』、『Sunless Skies』、『FTL: Faster Than Light』が特にお気に入りです。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Bora『ネコピペ』は、ビジュアル面でもゲームプレイ面でも、他の作品にはない独自の魅力があると思っています。紙のような質感と華やかな雰囲気のビジュアルに、遊び心のある猫ミームを組み合わせた点を、多くのプレイヤーが楽しんでくれているようです。
ゲームプレイ面では、「記憶」を軸にしたローグライク・デッキビルダーという点が特に面白いと感じてもらえているようです。開発中に多くの記憶系ゲームをプレイしましたが、正直なところ、それらのゲームプレイには満足できませんでした。
『ネコピペ』がプレイヤーの皆さんに気に入っていただけている理由は、ゲーム全体の流れ、プレイの手応え、そしてシステムを破壊するような自由度にあると思っています。これらが組み合わさることで、『ネコピペ』ならではの面白さが生まれているのだと思います。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Bora私は「裏向きのカード」というシステムにハマっていまして、『ネコピペ』を作り始める前から、様々なゲームでこのシステムを実装してきました。
そしてある時、『Balatro』をプレイしたのです。はい、正直に言うと、一番最初のインスピレーションは間違いなく『Balatro』です。プレイヤーを一瞬で引き込み、しかも非常に高いリプレイ性を持っている点に本当に衝撃を受けました。
2つ目のインスピレーションは、『Slay the Spire』です。この作品と同様、『ネコピペ』でもゲームのルールを変えるアイテムの所持数に厳密な制限がありません。一方で『Balatro』は、その点がデフォルトで制限されています。特に気に入ったのが、アイテム一覧を見ながら戦略を考えられる点でした。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Bora『ネコピペ』のプロトタイプ開発を始める数週間前、猫のエモートを描いているアーティストのspacey3dが、彼女がTwitchチャンネルで使っている猫エモートをすべてまとめたZIPファイルを送ってくれました。そして、「好きなように使っていいよ」と言ってくれたんです。
そして私は実際に本作のプロトタイプを作っている最中、「まあ、せっかくだし使ってみるか」と思いました。すると、自分自身がそのプロトタイプをとても楽しんでいることに気づき、友人たちにも送ってみたのです。友人たちの多くはspacey3d本人や彼女の作品を知っていました。
みんな大喜びで、私はその反応を見て「これはもう、これらの猫エモートを使い続けるしかないな」と思ったのです。当初、あくまで仮のアート素材のつもりだったのですが、気づけば猫エモートがゲームのビジュアルの中核を担う存在になっていました。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Bora正直に言うと、開発中は「これは記憶ゲームにするべきじゃないんじゃないか」とか「ミスした時にカードが裏返るのが嫌だ」といった、ちょっと笑ってしまうようなレビューもありました。なので、リリース後には否定的な意見が来るのではないかと少し不安もあったのです。
しかしふたを開けてみると、驚くほど素晴らしいコミュニティに恵まれました。Steamでは247件のレビューのうち、99.5%が好評なのです。多くの人がとても優しい言葉で感想を書いてくれていて、ときにはゲームの細かい部分一つひとつについて語る、長文のレビューを目にすることもあります。私はそれらをすべて読んでいますし、レビューでいただいた提案は必ず今後の参考にさせていただいております。
特にお気に入りなのは、「記憶ゲームは好きじゃないけど、このゲームは…」というようなコメントですね。実は、これこそまさに私が目指していたことだったのです。確かに本作は記憶ゲームですが、デッキ構築要素により、記憶力ではなく戦略で攻略するゲームになっているのです。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Bora現在は、たくさんの快適性向上を行っているところです。もちろん、バグ修正も進めています。今後については、間違いなく新しいカードや新しい小道具を追加していく予定です。ただし、ゲームがごちゃごちゃしすぎないようにもしたいと考えています。
そのため、コレクションには有効/無効を切り替えられるシステムを追加することを検討しています。コンテンツをたくさんアンロックしても、プレイが不利にならないようにするためです。また、『Slay the Spire』のような「プレイ履歴」を実装して欲しいという要望も多く寄せられています。これはぜひ前向きに検討したいですね。
そして移植についてももちろん考えています。ゲームの売れ行き次第では、2026年にコンソールやモバイル向けに移植する可能性もありますね。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Boraはい、もちろんです。『ネコピペ』はどの配信プラットフォームでも安心して配信できます。ゲーム内の音楽はすべて私自身が制作しているので、DMCAの問題は一切ありません。配信者の皆さんには、ぜひ『ネコピペ』をプレイし、どんどん広めていって欲しいと思っています。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Bora猫が好きで、ミームが好きで、ローグライクのデッキ構築ゲームに何時間も費やしているようなら、ぜひ『ネコピペ』も遊んでみてください。もし記憶ゲームが苦手でも、記憶に頼らなくても戦えるデッキを構築できますので、安心してください。
そしてインディーゲームを応援してくださる皆さん、本当にありがとうございます。ソロのゲーム開発者としてPCゲームを作り、生き残っていくのは決して簡単ではありません。ウィッシュリストに追加したり、ゲームを購入したり、フォローしてもらえることは、私たちインディーゲーム開発者にとって何よりの励みになるのです。
こうして自分の気持ちを伝える機会をいただけたことにも、心から感謝しています。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に900を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








