RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る

ラジコンを使うRCカーのレースは、本物の車のそれとはまた違った魅力があります。

連載・特集 特集
RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る
  • RCカーレースゲーム『シューティング・スター Recharge』を通して、「タミヤ」田宮俊作会長の功績を振り返る

ラジコンを使うRCカーのレースは、本物の車のそれとはまた違った魅力があります。

たとえば、段差や急斜面を乗り越える際は、直前でスピードを落とさなくてはいけません。全力疾走のまま斜面に突っ込むと、頂上に達した時に車体がひっくり返ってしまいます。また、RCカーは人間を乗せるわけではないので、他の車と容赦なくぶつかったりしても怪我人は出ません。本物の車よりも激しいアクションを繰り広げることが可能、というわけです。

そんなRCカーレースを再現した『シューティング・スター Recharge』というゲームがSteamに登場しました。今回はこのゲームをプレイしつつ、RCカーを普及させた2人の功労者についても触れたいと思います。

単純な構造だからこそ

RCカーは、実際の車よりも遥かに構造が単純です。

何しろ、これは電池で動く代物。ガソリン車にある多段ギアやエキゾーストパイプ、エンジン点火機構等の複雑な仕組みは一切ありません。電池、モーター、それらを接続するESCがあれば、とりあえず動きます。

構造が単純な分だけ、多少の知識があれば誰でも手軽に改造が可能です。

より走行性能の高いモーターを搭載すれば、RCカーは速く走ることができるようになります。しかし、それがオフロードであればどうでしょうか。速過ぎるせいで走行時のバランスが安定せず、すぐに車体がひっくり返るということが起きてしまいます。また、オンロード用の小さなホイールでオフロード走行というのは、やはりいろいろな無理が生じます。

性能の良いモーターとは、基本的に大きな電力を消費するということでもあり、そのあたりに合わせたバッテリーも用意する必要があります。考えれば考えるほど、RCカーというものは様々な改造の在り方を見出すことができるのです。

『シューティング・スター Recharge』は、そんな奥深いRCカーの世界を再現した1本。

本作は現時点では早期アクセス中で、“実装予定”としている(つまり、今の時点で未実装の)モードや機能もまだまだあります。ですが、そのような未完成状態ということを鑑みても、この作品のレースはマジでアツい!!

視点はマシンの後方斜め上から見下ろす伝統的な三人称で、シングルプレイではプレイヤーも含めた最大12台でのレースができます。筆者としては、参加台数はできるだけ多くすることをお勧めしたいところ。これにより、仁義なき衝突合戦がサーキット内で繰り広げられるようになります!

CPU同士でごっつんこ!

ところで、かつて日本物産が発売したPCエンジン向けソフト『F1サーカス』というゲームがありました。

これは発売年の1990年には既に古典的と思われていた、トップスクロールタイプのレースゲーム。しかし、そのあたりの古臭さを補って余りある要素がありました。それは、「実際のF1以上に派手な多重クラッシュが発生しやすい」という点です。

この現象は、なんとCPUのマシン同士でもよく発生していました。特にスタート直後は、この多重クラッシュのカオスをどう切り抜けるかがプレイヤーの腕の見せ所。まるで50年代のF1のような、安全対策は無視したレースが展開されるゲームでした。

『シューティング・スター Recharge』のゲーム性は、それに近いものがあります。上述のように参加台数を12台に設定すると、CPUのマシン同士がごっつんこごっつんこ! 何だか『マリオカート』を思わせる光景です。

衝突合戦に巻き込まれて、プレイヤーのマシンが真っ逆さまに横転することも。その場合はFキーを押して元に戻しましょう。

また、コース上の凹凸や急斜面の手前では必ずスピードを落とさないといけません。これも上述の通り、全速力で斜面を駆け上ると、ひっくり返ったり勢い余ってコースアウトしたりしてしまうから。

しかし、こうした点もRCカーの醍醐味と言えます。本物の車では起こり得ないアクションがあるからこそ、RCカーレースならではのアクシデントも発生するのです。

ただ、『シューティング・スター Recharge』に現時点で実装されている改造パーツは、まだまだ数が少ない……とも思いました。プレイヤーレベルに応じて新しいパーツが解禁されていくというシステムですが、たとえばシャシーは3種類しかありません。ゲームとしては、まだまだ未完成であることが随所に表れており、今後のアップデートを期待したいところです。

RCカー普及に貢献した「お兄さん」と「会長」

そんなRCカーの普及に大きく貢献した人物が、2024年に亡くなりました。アナウンサーの小倉智昭さんです。

小倉さんは、タミヤの提供番組「タミヤRCカーグランプリ」でナレーター兼レースアナウンサーを務めていました。「小倉のお兄さん」と呼ばれたその声は、本物のカーレースのアナウンサーのそれとは一線を画す親しみやすい調子で、またRCカーレースの内容とよく合致する軽快さも持ち合わせていたのです。

「タミヤRCカーグランプリ」が始まる以前、RCカーは自前の可処分所得を持つ大人だけの趣味でした。その裾野を子供にまで広げたのはまさに番組の功績であり、小倉のお兄さんが我々にくれた贈り物と表現することもできます。

そして――日本から世界に最先端のRCカー文化を発信し続けた、タミヤの田宮俊作会長が、今年7月に亡くなりました。

タミヤは元々は製材業者で、日々の業務の中で発生する端材を利用して模型を製造し、本業と並行して販売していた……という経緯があります。そんなタミヤは「購入後のアフターサービス」に定評のある企業としても知られていますが、その姿勢がRCカーを「誰でも楽しめるホビー」にしたのです。

それと同時に、スペアパーツの製造に乗りだしました。当時のRCカーは、時速二十~三十キロで走りました。そのスピードで走れば、壁に衝突したり転倒したりすれば、かなりのダメージになります。破損したら、直してまたすぐ走らせたいはずだと思い、スペアパーツを迅速に供給できる体制をきずきました。これはやがて、走行性能を競ったり、セッティングする楽しみへと発展していきました。コースに合わせてギヤー比やタイヤを選び、コーナーリング性能を調整することにつながるのです。のちに、これらの電動RCカーの技術は、そのままミニ四駆に生かされるようになりました。

(「田宮模型の仕事」田宮俊作 文春文庫)

RCカーならではの「改造の楽しみ」を提供し、それをテレビ番組を通じて全国の子供たちに伝えた小倉さんと田宮会長の功績は、今の我々の足元にある「豊かなホビーカルチャー」を確立するに至ったのです。

【参考文献】「田宮模型の仕事」田宮俊作 文春文庫(電子版:2023年発行)


田宮模型の仕事 (文春文庫)
¥770
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
田宮模型をつくった人々 伝説のプラモ屋 (文春文庫 た 45-2)
¥880
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ライター:澤田 真一,編集:八羽汰わちは

ライター/ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

+ 続きを読む

編集/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top