
2025年9月28日まで開催される「東京ゲームショウ2025」。その中で、間違いなく「一番狂っている」と言えるゲームがありました。その名も、『FEAR FA 98』。本記事では、本作のプレビューと開発者へのインタビューをお届けします。
『SILENT HILL 2』×『FIFA 98』……どういうこと?
本作は、血みどろで暴力的な狂気的サッカーゲームです。『SILENT HILL 2』ミーツ『FIFA 98』を掲げており……って、ナニソレ? ある男の愛をめぐるサイコホラーと、サッカーゲーム史に残るシミュレーション、いずれも歴史的傑作ではありますが……どうやったって掛け合わさるようには見えません。

ゲームとしては、昔ながらの見下ろし型サッカーゲームスタイル。プレイヤーは選手から操作できるキャラを適宜切り替え、パスやシュートを駆使して蹴り合います。プレイアブルキャラは殺人鬼や殺人ナースなどろくでもない面々で、ボールも人の頭やヤギの頭、脳みそなど“グロい”のが当たり前となっています。コートは笑っちゃうほど血まみれ。『SH2』みたいな血のメッセージも書いてる。あとなんか謎のデカいバケモノが徘徊している。見るだけで笑いが込み上げてくる絵面です。


ユニークな要素として、試合をただ遊ぶアーケードライクなモードと、ストーリーを楽しむアドベンチャーモードを行き来するというものがあります。アドベンチャーモードでカギがなくて入れない、どこを探してもない……そんなときは試合をすると、なんとカギをゲット。それを使えばアドベンチャーモードで使用できるというメタい仕掛けが施されています。

『SILENT HILL 2』の精神を引き継いでいる……かどうかは皆さんの感性にお任せしますが……とにかく、ヤバい作品であることは間違いありません。本作はインディーブースの「SELECTED INDIE 80」タイトルとして選出されていますが…これを選んだ元SIE インディーズイニシアチブの吉田修平氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平氏らをはじめとした審査員の方々も、かなりぶっ飛んでいるといえるでしょう。

何を思って作ったのか?開発者に訊いてみた
どういう気持ちでこれを作ったのか。 何を考えてたらこんなもの思いつくのか……!?ここからは、開発者であるJacob Jazzさんにお話を伺います。
――まず自己紹介をお願いします。
Jacob Jazz:スペイン出身のソロゲーム開発者、Jacob Jazzです。代表作に『Tamarindos Freaking Dinner』『Baobabs Mausoleum』があります。
――SELECTED INDIE 80への選定おめでとうございます。感想はいかがでしょうか。
Jacob Jazz:とても光栄で誇らしく思っています。日本は私にとって文化やビデオゲームの面で最も好きな国のひとつなので、この経験は本当に素晴らしいです。

――『SILENT HILL 2』と『FIFA 98』を組み合わせるという発想はかなりぶっ飛んでいます。どこから思いついたんですか?
Jacob Jazz:本作はもともと友人たちとの冗談から始まったんです(笑)。冗談で作った短い動画をXにアップして寝たところ、翌日多くのウェブサイトに取り上げられてちょっとしたバズになって、それで実際に本格的に開発しようと決めたんです。
影響を受けているのは『SILENT HILL』や『Manhunt』、『Rule of Rose』といったゲーム、そしてアニメの「エヴァンゲリオン」です。

――かなり強烈なゲームですから、スポーツブランド・NIKEとのコラボ作『NIKE MARE 98』は衝撃的でした。あれはどのようなきっかけで実現したのですか?
Jacob Jazz:私も本当に衝撃的でした(笑)。最初、Twitchから謎めいたメッセージが届いて、「ある秘密のブランドとのコラボをやらないか」と言われたんです。彼らはSteam Nextフェスで『FEAR FA 98』をチェックしてくれていて、「NIKEの夏のキャンペーンはホラー的な要素があるから、このホラーゲームとコラボしよう」と話を持ちかけてきたんです。
そこで私が承諾し、この企画が始まりました。こうして生まれた『NIKE MARE 98』はNIKEが関わった初めてのゲームであり、同時にTwitchも参加した初のプロジェクトになったのです。
――試遊版で体験できた、アドベンチャーモードと試合を行き来するというゲーム進行はかなりユニークですね。これはどのように思いついたのですか?
Jacob Jazz:本作はサッカーファンもターゲットにしています。もしアドベンチャーを必須にしてしまったら、サッカーファンはあまり楽しめないかもしれない……と思ったので、両方のタイプのゲームが好きな人のために、モードは分けつつもつながりを持たせることにしたんです。

――操作キャラやボールの種類はどれも狂っていて最高です。これはどのように発想し、デザインしましたか。
Jacob Jazz:キャラクターについては、ホラーゲームやホラー映画に登場する典型的な存在――たとえば殺人ナースやカルト信者など――から発想しています。ボールに関しては、ドラゴンの目やヤギといった完全に狂ったデザインにしました。
正直に言うと、こういうアイデアがどこから出てくるのか自分でも分からないんですが、ちょっとクレイジーなところがあるんだと思います(笑)。
――最近はローポリゴンのホラーがたくさんありますが、本作のアドベンチャーモードはさらに超低解像度の映像が良いです。映像やグラフィック面のこだわりを教えてください。
Jacob Jazz:私はHaunted PS1コミュニティのような、新時代ローポリホラーゲームの大ファンなんです。そして、自分が子どもの頃に感じたあの雰囲気も再現したいと思いました。9歳のときに『SILENT HILL』の体験版ディスクを遊んだときの感覚を、プレイヤーにも味わってほしいんです。
――本作を遊んだ人からの感想はどんな感じですか?
Jacob Jazz:いつも言われるのと同じ感想ですね――「お前は本当にクレイジーだ」って(笑)。でも、みんなゲームを気に入ってくれているので、TGSでは自分だけがイカれているわけじゃないんだと思えます。

――製品版では日本語に対応しますか?
Jacob Jazz:実は今のところ英語版しかありません(スペイン出身なのにスペイン語版すらなくて…)。翻訳システムを整える必要があるからなのですが、最終的には英語・スペイン語・日本語の3言語で遊べるように全力を尽くすつもりです。
――日本にも、暴力的なゲームや狂ったゲーム、ローポリホラーが好きな人がたくさんいます。最後に、アピールメッセージをお願いします。
Jacob Jazz:ぜひ一緒に『FEAR FA 98』を大成功させましょう!私の夢は、このゲームのアニメやマンガが日本で展開されることです。テレビで「キャプテン翼」が殺人事件と一緒に描かれるところを想像してみてください!
――(笑)。ありがとうございました!

TGS 2025最狂ゲーム『FEAR FA 98』は、PC(Steam)向けに発売予定。9~11ホールの廊下にあるSELECTED INDIE 80ブースE-72にて展示されているので、狂ったゲームが好きな狂ったあなたはぜひ遊びに行ってみてはいかがでしょうか。














