いまインディーゲームファンの間で熱い注目を集めているローグライクアクション『Megabonk』。その魅力を語るうえで欠かせないのが、多彩かつ中毒性抜群のサウンドトラックです。その楽曲は一騎当千の迫力を彩りながらもどこかコミカルなテイストで、プレイヤーを『Megabonk』の虜にしてしまう魔力を秘めています。
そんな『Megabonk』の音楽を手掛けるのはメキシコ出身の作曲家・プロデューサーであるミゲル(Miguelangell960)さん。子どもの頃から音楽制作を始めたそうですが、ミュージシャンとしての道のりは決して簡単なものではなかったようです。
『Megabonk』を愛してやまないGame*Sparkは、同作開発者のVedさんへの取材に続き、ミゲルさんへのインタビューも実施! 音楽的ルーツはもちろんのこと、Vedさんと生み出していった音楽の制作過程についても深く伺いました。
――最初に、日本の『Megabonk』ファンに向けて自己紹介をお願いします。また、ミゲルさん自身と音楽的なバックグラウンドや、ゲーム音楽制作を始めたきっかけについてもお聞かせください。

ミゲルこんにちは、私はミゲルです。27歳のメキシコ人作曲家・プロデューサーです。13歳で音楽制作を始めました。19歳のときには音楽制作工学を学ぶために大学に進学しましたが、手や耳の怪我(それが徐々に聴力を失わせることになりました)によって、途中で大学を辞めざるを得ませんでした。
コロナ禍の間に「Fiverr」というアプリ(※海外のクラウドソーシングサービス)を見つけ、そこでゲーム音楽作曲家として活動を始めました。最初に携わった大きなゲームは『Tiny Rogues』でした(最初の楽曲はたった5ドルで提供したのを覚えています)。このゲームをきっかけに、作曲家として認知されるようになりました。
――『Megabonk』に関わることになった経緯についてお聞かせください。 Vedさん(『Megabonk』開発者)とはどのようにして出会いましたか?
ミゲルVedがFiverr上で私のプロフィールを見つけ、そこから『Tiny Rogues』の仕事を気に入ってくれました。最初に『Megabonk』の1曲を依頼され、数ヶ月後に再び連絡があり、新たに10曲の制作を依頼されました。そしてさらに追加でもう10曲。正直、私は多くの人からゲーム用の楽曲制作を依頼されますが、そのうち7割のゲームが最終的にリリースされません。そのため『Megabonk』の大きな成功、そしてVedの情熱とクオリティにはとても驚かされました。
――『Megabonk』の音楽スタイルや雰囲気は、どのようなものからインスピレーションを受けて制作されたのでしょうか。
ミゲル『Megabonk』の音楽は『Vampire Survivors』『Castlevania(悪魔城ドラキュラ)』『アンダーテール』『Megaman X(ロックマンX)』へのオマージュと言えます。これらが大きなインスピレーションでした。最も象徴的なゲームたちの異なる時代を統合し、プレイヤーが親しみを感じるような、そして現代的なサウンドと融合した音楽を目指しました。
――『Megabonk』のサウンドトラックを手掛ける上での制作工程を教えてください。作曲時には、ゲームをプレイするのですか?
ミゲル実は、ゲーム音楽を作るときにそのゲームを自分でプレイすることはありません(笑)。いつも開発者から求めている雰囲気や音楽のリファレンスを提示してもらい、それを元に制作します。今回の場合、Vedは最初から「『Vampire Survivors』っぽい音楽が欲しい」と明確に伝えてくれていました。

『Megabonk』の制作開始時も『Vampire Survivors』風を目指したのですが、私はいつも様々なゲームのサウンドや構造、アイデアを組み合わせて新しいものを作るのが好きです。制作プロセスのほとんどは、たくさんのゲーム音楽を聴いてインスピレーションを集めることから始まり、その後ドラムやジャンル(ロック、メタル、エレクトロ等)を決定します。例えば「この『ロックマン』のシンセとこの『悪魔城ドラキュラ』のギターリフを組み合わせてみよう」といったように。そして、メロディや曲構成を試行錯誤しながら作ります。いつも新たなパズルを組み立てるようなワクワク感があり、納得できる形が見つかるまで試します。
――主にどんなソフトや楽器、機材を使って作曲しているのですか?
ミゲル私の機材はとてもシンプルです。Macbook、ヘッドホン、Ableton Live 11(音楽制作用のソフトウェア)、そしてプラグイン(sf2, Chipsynth, Magical 8bit Plug, Arturia lab V, Serum, Kontakt, Ableton純正のものや多くのレトロゲーム音源・サンプルなど)を使っています。プラグインの約8割は無料のものです。私にとって一番大切なのは高価な楽器やエフェクトよりも、「クリエイティビティ(創造性)」なんです。
――『Megabonk』の中で特にお気に入りの楽曲と、その理由を教えてください。
ミゲル「CL4NK'S THEME」が誇りです。理由は「バーチャル楽器っぽさ」を感じさせない音作りができたこと。また私はMuseの大ファンで、子どもの頃から「Knights of Cydonia」が大好きでした。そのエネルギーや雰囲気、サウンドを自分なりに再現できたこと、そしてたくさんの人にこの曲を気に入ってもらえたことが本当に嬉しかったです。
――Vedさんとはどのようにやりとりしながら、制作を進めているのでしょうか。例えば曲を制作したあと、どのようなフィードバックが届きますか?
ミゲルVedとの仕事は本当にやりやすいです。私が曲を送ると彼が聴いて、修正依頼があることはほとんどありません。本当に自分のゲームのビジョンに合わない場合だけ修正を求められるくらいで、私には大きな創作の自由を与えてくれます。そこが彼の素晴らしいところです(ありがとう、Ved!)。
――最後に、日本の『Megabonk』ファンとハードコアゲーマーに向けてメッセージをお願いします。
ミゲル『Megabonk』の音楽を応援してくれて本当にありがとうございます。実は最近、音楽活動を辞めようか迷っていたのですが、このサントラにみなさんが寄せてくれた愛情のおかげで、曲一つひとつに込めた努力や情熱が報われ、救われたような気持ちになりました。みなさんには心から感謝しています。ありがとう!
――ありがとうございました!

『Megabonk』は、PC(Steam)向けに1,200円で配信中です。また、ミゲルさんが制作した『Megabonk』のサウンドトラックはbandcampで配信中。200メキシコペソ(約1,600円)以上の価格を支払うことで、24曲入りのアルバムを購入できます。
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