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【JRPGの行方】第1回 1997年の「アニメ化」と「観る物語」

「JRPGの行方」などと題しましたが、本稿の目的はそれほど大仰なものではなく、かつてゲームジャンルの王であったRPGを、いかなる形であれ話題にすること。90年代後半以降の日本のRPGを考えます。

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【JRPGの行方】第1回 1997年の「アニメ化」と「観る物語」
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1)1997年の「アニメ化」と「観る物語」

■物語はさらにドラマチックに

さきほどご紹介したさやわか氏は同著の中で物語に焦点を当て、長いゲーム史の切断線を1997年に置き、その象徴のひとつとして『ファイナルファンタジーVII』を挙げています。

RPGの歴史に名を残すFFシリーズにおいても、特に重要な作品といえる『FF7』。メディアがCD-ROMへ移行したことも影響し、ゲーム表現が大きく変わっていきました。とくにプリレンダムービーは、以降のFFを象徴するものになっていきました。

FFのドラマチックな、ときにプレイヤーの意思に反した物語りの典型として「プレイヤーキャラクターの死」があります。『僕たち』では『FF2』のヨーゼフを挙げていますが、それ以外にも『FF5』のガラフや『FF6』のシャドウなど、プレイヤーが望むはずのないキャラクターの死は、劇的に物語を動かすために使われてきました。『FF7』ではそこにプリレンダムービーという要素も加わって、ドラマチックな演出はひとつの完成形を迎えることとなります。

■鑑賞する物語

優しい音楽が流れる中、エアリスに突き刺さるセフィロスの凶刃ーー。ヒロインの死、という物語のクライマックスを、プレイヤーが関与できない(むしろうっかりボタンを押してスキップすることを怖れるあまりコントローラーを置いてしまうような)状態で「鑑賞する」というスタイルがそこにはあります。

「ボタンを押すと反応する」ことをゲームの定義としながら、RPGは物語においてボタンを押さないことを強要していった。その象徴であり、きっかけともなったのが、『FF7』といえるでしょうか。

上記は批判的な記述のように思えます。ただし、重要なシーンのムービー演出がFFの魅力のひとつだったのは疑いようがありません。『FF7』の話ではありませんが、私はそろそろムービーが来そうだな、という段になるとおもむろにコーヒーを用意していましたし、友人のひとりは、ムービーが始まる直前のセーブデータでメモリーカードを一杯にしていました。美麗なグラフィックのムービーを見るためにゲームを進める、というのは本末転倒ともいえる状況ですが、ひとつのゲームの楽しみ方だったのは確かです。

以降はあらゆるメーカーが映像をウリにしたRPGを発売していきます。ムービーの増加ともに、競い合うように増えていくディスクの枚数。個人的には、格闘ゲームでおなじみのSNKがRPGを発売(開発は別ですが)! なんとディスク4枚組! という衝撃をもたらした『クーデルカ』をその好例として挙げておきたいと思います。

■ゲームのアニメ化

もうひとつ、1997年に発売したRPGで、以降のモデルとなっていく作品があります。『テイルズ オブ デスティニー(TOD)』です。『ファンタジア』でなくこちらを挙げる理由としては、アニメ調のキャラクター、声優の起用、主題歌、アニメーションムービー、といった“アニメセット”が揃ったのがデスティニーだから、としておきます。アニメ表現や声優の起用などは1989年の『天外魔境 ZIRIA』にすでに見られますが、元々アニメの企画だったとされる天外魔境ではなく、ゲームとしてアニメの手法を取り入れたこと、シリーズが今も続きながら、その特徴を更新し続けているという点でテイルズを推します。

■傍流から本流へ

こうしたゲームの「アニメ化」は、テイルズオブシリーズの特徴であり、当初は傍流だったはず。当時、ゲームでアニメのカットシーンが入ることやキャラに声がつくことに違和感を持っていた人もいたのでは(私もそのひとりです)。しかしながら現在を見てみると、むしろこちらが本流になっているような風景が広がります。開発環境やゲーム以外の文化的要因など、様々なことが考えられますが、ここでは詳述しません。

デスティニーをこの「アニメ化」の源流とするかどうかは議論の分かれるところかもしれませんが、流れを大きくすることに寄与したのは、シリーズの歴史の長さからもうかがえると思います。以降、シナリオ全編「フルボイス」、アニメ調のキャラが動く「トゥーンレンダリング」、アニメとゲームの「メディアミックス」といった要素でゲームのアニメ化は拡張していきました。

■1997年

『FF7』の発売が1月31日、『TOD』の発売が12月23日ーー。年の始めと終わりに、日本のRPGにおけるマイルストーンが置かれた1997年は、ゲーム史だけでなく、RPG史においても重要な一年だったといえるのではないでしょうか。

その後、90年代後半から2000年代にかけて、プレイステーション、プレイステーション2を舞台に、両者の特徴をとりいれたRPG作品が続々と発売されていくことになっていきます。
《Kako》
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