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「ゲームはアート だと信じる」 ネクソン代表オーウェン・マホニー氏に訊く

先週ロサンゼルスで催されたE3 2015の会期中、ネクソンの代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを行い、 同社の思想や、ゲーム業界の潮流をどう見ているのかを語ってもらいました。

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アジア市場が主戦場の オンラインPCゲームカンパニー という立ち位置から、最近では欧米市場を狙ったパブリッシング、インディーゲームスタジオへのアプローチ、M&A展開など、積極的な動きを見せているネクソン(Nexon)。先週ロサンゼルスで催されたE3 2015の会期中、同社の代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを行い、 同社の思想や、ゲーム業界の潮流をどう見ているのかを語ってもらいました。

――ソニーやマイクロソフトをはじめコンソールゲームメーカーの発表会がすべて終わって、E3が開幕しました。今年のE3の印象はいかがですか。

オーウェン・マホニー(以下マホニー): E3は、欧米市場に特化した伝統的な見本市で、出展企業の多くは北米やヨーロッパの会社です。ゲームビジネスにおいてたくさんのイノベーションが起こっていますが、個人的な見解では、それはアメリカだけでなく中国や韓国、日本でも起こっていて、とりわけアジアでは、モバイル、PC、コンソール問わずオンライン関連のイノベーションが盛んです。

私は、(E3の主催団体)ESAの役員も務めています。今日、ESAのCEOや別の役員とも話したのですが、彼らに伝えたのは、もっとアジアのゲーム会社にE3に出展してもらう必要があるということでした。やはり企業が成功するためにはグローバルな展開が求められるからです。

実は過去24時間でいくつかの欧米デベロッパーやパブリッシャーと商談していて、もうひとつ感じたのは、 彼らはアジアのゲーム会社から多くを学びたいと切望していることです。ネクソンはおよそ10年前からFree-to-Play(F2P)のモデルを運用し改良を重ねているので、素晴らしいゲームプレイ開発の経験を持つ欧米デベロッパーが我々のようなF2Pのノウハウを持つ企業に対して 興味を示しているのはチャンス なのです。

――ここ数年のオンラインPCゲーム市場のトレンドをどう見られていますか。

マホニー: 日本、北米、韓国など地域によって状況は異なるのですが、全体的にひとつ言えることは、PCは依然として極めて優れたプラットフォームだということです。市場規模は大きく、本当にたくさんの素晴らしいPCゲームを遊ぶことができます。しかし、時代の流れと共に、PCビジネスとモバイルビジネスはひとつに収束していくと見ています。例えばMacBook AirとiPadはとても似通った存在になりつつあるし、今私が持っている前世代のiPhoneですら、GPUやネットワーク機能は非常に高性能で、PCとモバイルデバイスの差は縮まっていくでしょう。私は、あと2~4年ほどで2つの市場がひとつになると推測しています。

――ネクソンのM&A戦略における考え方を教えてください。

マホニー: 我々はゲーム が“Art(芸術作品)”だと信じています。ゲーム業界の中にはそう考えていない人もいるかもしませんが。もしゲームをアートだとするなら、M&Aにおいて注力すべきことは、偉大なアーティストを見つけ、彼らが素晴らしい作品を生み出せるように勇気を与えることです。さらに、そのアートを徐々に大きくしていく必要があります。つまり、M&Aプロセスによって、開発チームとIP(コンテンツ)の規模をスケールさせていくのです。もちろん、M&Aを検討するにあたっては、開発チームとIPはリーズナブルな価格かどうか、また両社の文化がマッチするかという点 も非常に重要になります。アートを作るのにカルチャーはとても大切ですから。

私が挙げたポイントに該当する企業は、とりわけ欧米においては、あまり存在しないのが現状です。そういう事情もあり、ネクソンはここ最近M&A案件が少ないのですが、かわりに、IPのライセンスやパブリッシングといった契約を結ぶことが多いです。しかし資金力は潤沢にあるので、基準に見合うところがあれば迅速に動くことができます。

――VR(バーチャルリアリティー)は本年度E3のメイントピックのひとつです。マホニー社長の見解と、ネクソンがVR市場に参入の予定があるかを教えてください。

マホニー: 短期的には懐疑的、長期的には刺激的なものだと見ています。各所で興味深い議論がなされていますが、VRの市場が活発にはなるにはあと4年はかかるのではないでしょうか。VRでどれだけ没入感が得られようと、ゲームそのものが面白くなければ意味がないし、今言われている価格帯はマスマーケットには高すぎるので、我々はまだVR市場に参入の予定はありません。

もし、VRデバイスが1000万台売れる理にかなったシナリオを誰かが提案できるなら、ビジネス観点で興味深くなるでしょうが、まだそのような話はなく、発売すらされていません。業界中で大変期待されていますが、実際に収益が見込めるようになるまで相当な時間がかかるはずです。ネクソンのスタンスとしては、おそらく今後VRを研究して情報収集を行うでしょうが、業界が求めるような大がかりなものを市場に投じるのは何年も先になるでしょう。とはいえ、本当に楽しくてクールな話題で、個人的にValveのVR製品には興奮しています。

――ネクソンとして改善していきたいと思う、今のゲーム業界の問題点は何でしょうか。

マホニー: ゲーム業界におけるたったひとつの大きな問題は、月日の流れと共に、同じ過ちが繰り返されることです。その過ちは、業界をリードしている人々によって起こされています。先ほども言ったように、私はゲームが芸術作品であると信じています。偉大なゲームを作るには偉大なアーティストが必要で、成し遂げるのは本当に困難です。

私が愛してやまないネクソン以外のゲームを見てみましょう。『シヴィライゼーションV』、『マインクラフト』、『GTA』、『マリオカート』、『Pong』。どれも驚くほどユニークで、夢中になる面白さを備えています。ところが、いくつかの企業は、ゲームの面白さを追求するかわりに、マネタイズのことばかり考えている。それは大きな誤りです。我々も過去に同じ過ちを犯しました。もっとユーザーを喜ばせるためにゲームを作れば、長い目で見て結果的に成功できるはずです。ゲーム業界は、時が経つにつれそれを忘れてしまうのです。

また、グラフィックの解像度 ばかり追い求めるのも問題です。グラフィックは確かに重要ですが、ゲームを作る上での要素のひとつでしかありません。『マインクラフト』や多くの任天堂ゲームのように、グラフィックの解像度が低くても素晴らしいゲームはたくさんあります。 ネクソンとしては、常に過去を振り返り、CEOとして周囲の声に耳を傾けて、本当に面白いゲームなのか社内で十分テストを行うことに注力していきます。

――本日はありがとうございました。
《Rio Tani》
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