昨年6月、Kickstarterで550万ドルという多くの資金調達に成功した『Bloodstained』。今回のE3ではXbox Oneのブースにて初のプレイアブル出展が行われました。今回はデモ版のインプレッションと共にIGAこと五十嵐孝司氏のショートインタビューをお届けします。
――今回は初めてのプレイアブルデモの出展ですね。短いデモですが、しっかりとした作り込みを感じました。
五十嵐孝司氏(以下、五十嵐):グラフィックスは今回表現したい水準まで仕上げました。またマップは単純な一本道ではなく、探索を意識した作りです。プレイヤーにはちょっとだけ迷ってもらおうかなと。ただチュートリアルが少し足らず、思ったよりデモをクリアするのに皆さん時間がかかってしまいました。製品版ではもっとしっかりチュートリアルを作ろうと思います。
――なるほど。攻撃や装備といったシステムも一通り出来上がっていましたね。
五十嵐:今回のメインとなるシステムはシャードというものです。敵の結晶を取り込み、スキルを使える。デモで必ず登場するのは「ディレクショナル」という種類のものでRスティックで攻撃方向を指定できます。走りながらも出せますね。ちょっと難しいですが、空中の状態で下に出すことも可能です。
さらにアイテムも何種類か用意しました。武器と頭装備と体装備とアクセサリーがありますが、頭と武器は装備品がビジュアルに反映されます。今回は武器アイテムのカンフーシューズを装備すると攻撃がキックになります。このキックの音はちょっとこだわっていまして、ジャッキー・チェンの映画を意識した音になっています。またこれまで僕が作ってきたシリーズのように隠し部屋とかもデモに仕込みました。
――ちなみにストーリーはどういった形で描写されるのでしょうか。今回のデモではあまり表現されていませんが。
五十嵐:せっかく3Dで作っているのでカメラアングルを動かしたカットシーンで表現します。今回のボス戦のような演出ですね。ただそれを全部やるのは色々と厳しいので、2Dのイラストとセリフで説明するところもあります。また今回はシェーダーにも力が入っていて、背景はリアル寄りですが、キャラクターはアウトラインが入ったイラスト風。なので、アニメ的な演出ができればいいなと思っています。
――今回のボスはなかなかにグロテスクですね。
五十嵐:ボスの上の綺麗なお姉さんはダミーで、下が本体。綺麗なお姉さんが溺れていると思わせて、近づいたらパックリ食べちゃうキャラクターです。ちょうどチョウチンアンコウの提灯みたいな感じ。基本的なコンセプトとシステムは出来上がりましたから、今後はマップやアイテムなどを増産していく作業に入ります。
――ボリュームはどれくらいを想定しているのですか。
五十嵐:実はKickstarterのバッカー(支援者)さんにはお約束していまして、マップは画面単位で合計1600。1600というのはちょっと多かったかなと思いますが、約束したので乞うご期待です。時間にすると初見プレイで10時間を想定しています。ただ宝箱やシャードの収集、マップを埋めるといったやりこみ要素はいっぱいあり、長く遊べます。さらに今回は錬金術がテーマなのでアイテム錬成のリストを埋めるといったやりこみも考えています。
――開発状況はどれくらいでしょうか。
五十嵐:今はまだ10%くらい。コンセプトや基本システムの構築がだいたい終わり、これから増産に入ります。
――機種も多いですよね。
五十嵐:Xbox One、PC、PS4、WiiUとVitaですね。今回は据え置き型をインティ・クリエイツさんにお願いしていますが、WiiUとVitaの移植はテキサスのArmatureという会社にお願いしています。今回のE3に出展している『ReCore』を開発している会社です。一番の懸念は最近の動向としてNXというものが、そろそろ出てきちゃったりすると、WiiUは大丈夫かなと思うところもあります。
――もしかしてNX用にもリリースするかもしれない?
五十嵐:それをやるとしても、一度、バッカーさんに相談します。やはりこのプロジェクトはバッカーさんの支援を受けてスタートできていますから。しかも、Kickstarterは今日みたいなデモを用意してお金を集めるのが普通ですが、僕らはただの企画書と変なビデオだけで始めました(笑)。それなのにお金を出していただいたので、バッカーの皆さんには本当に感謝しています。なるべく意見は汲み取りながらやりたい。
――なるほど。日本では五十嵐さん以前に稲船さんなども独立後にKickstarterでプロジェクトを開始しましたよね。今後もこういった開発のスタイルは続いていくでしょうか。
五十嵐:このスタイルでAAAタイトルを作ることはそうそうないと思います。ただ現在の環境はこういったスタイルの開発がやりやすくなっていますね。例えば、今回はマイクロソフトさんのブースで出展させてもらっています。プラットフォーム側がインディーを支援することによって市場が形成されつつあります。
なので大予算のプロジェクトは難しいと思いますが、コアなファンが求めるタイトルを作って収益をあげることは不可能ではありません。日本はモバイルのソーシャルゲームが主流ですが、そういったゲームで物足りなくなる時期が来ると思います。その受け入れ口として、こういったゲームもあってもいいんじゃないかと。だから希望的観測ですが、この状況が続けばいいと思っています。
――今回のプレイアブルデモは海外での発表ですが、次回の機会はいつでしょうか。
五十嵐:機会があればいろんなところで出展したいです。ただ今のデモ以上のものを作るのはなかなか大変なので、今回と同じデモになるかもしれません。また60ドル以上を出資してくれたバッカーさんには今のバージョンを配布する予定です。ただ展示会のデモと違って、細かいところを調整したりする必要があるので、まだちょっと時間がかかります。
――ぜひ日本でもプレイアブルデモを出展してください。ありがとうございます。
プレイアブルデモの内容は、簡単なチュートリアルを含む短めの1ステージでした。短めといっても、基本的な動作、インベントリと装備のシステム、本作の根幹をなすシャードシステム、マップの作りこみとゲームで重要となる要素はすべて取り入れられていました。
特にアクション部分はモーションも操作感もしっかりとした作り込みが感じられました。基本的なプレイフィールは非常にオーソドックスな2Dアクションですが、右スティックを利用するシャードのシステムがちょっとしたスパイスになっています。マップは分岐が存在し、ところどころにアイテムが配置されています。ジャンル名の一角をなすシリーズ生みの親の五十嵐氏であるだけに、ファンの期待を裏切らない正統派メトロイドヴァニアといって良いものに仕上がっています。
ステージラストに待ち構える巨大なボスキャラは3Dでの表現を活かした動きで襲いかかります。ゲーム自体はあくまでも2Dのスタイル。懐かしい横スクロールアクションの手触りが感じられ、五十嵐氏がこれまで築いてきたスタイルを現代の技術を持って再構成しているという印象です。デモ自体は10分以内に終わるものでしたが、作品の方向性をはっきりと示してたものに仕上がっていました。確かな手応えが感じられた初のプレイアブルデモ。今後の展開に期待したいと思います。
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