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「日本のやり方はうまくいかない」韓国のe-Sports協会「KeSPA」合同取材で見えた日本のビジネスモデルの穴

2月11日の「闘会議2018」で、韓国のe-Sports協会「KeSPA」へのメディア合同インタビューを実施。韓国のe-Sports事情に詳しい方々に、自国と日本のゲーム文化の違いをはじめプロライセンス制度の課題などを語ってもらいました。

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「日本のやり方はうまくいかない」韓国のe-Sports協会「KeSPA」合同取材で見えた日本のビジネスモデルの穴
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前回の「IeSF」に続き、2月11日の「闘会議2018」にて韓国のe-Sports協会「KeSPA」のメディア合同取材が行われました。

この「KeSPA(KOREA e-SPORTS ASSOCIATION)」は、これまでに数多くのプロゲーマーを育成・管理し、e-Sportsの放送やイベント運営などを通じて、韓国を世界随一のe-Sports大国となるまでに寄与してきた団体です。その歴史はさかのぼること18年前、韓国の行政機関・文化体育観光部の承認を得て設立されました。


今回インタビューに応じたのは、「KeSPA」ビジネスマネージメント戦略室アシスタントマネージャーのJustine Lee氏(写真右、以下Lee氏)、PRマネージャーのLucy Jung氏(写真左、以下Jung氏)。取材前に行われた『クラッシュ・ロワイヤル』の日韓親善試合に出場していたChasyu Riceさんを挟んで、韓国のe-Sports事情や、それと比較した日本の課題点などを詳しく語ってもらいました。

――今や韓国はe-Sports大国と呼ばれていますが、その成り立ちを教えてください

Jung氏:韓国に行ったことのある方はご存知かもしれませんが、韓国には“PCバン”という漫画喫茶に似たすごく安い施設が20年前くらいからあり、ゲームが国民に浸透しやすかったというのが、ここまでコンテンツが育った要因だと思います。普段の生活の中にゲームができる環境があり、小さい子や大人までゲームに触れる機会が多い。それに伴ってテレビなどで放送番組などができていきました。

――そうなると、韓国ではPCゲームが人気なのですか?

Jung氏:韓国は世界有数のIT国家ですので、通信速度がすごく早いんですね。政府が推し進めていたということもありますが、そういう背景でPCゲームがすごく発展していきました。

Lee氏:コンシューマーゲームだと一人プレイで遊ぶ場合も多いんですけど、PCだとみんなでチームプレイができたりするので、そういった部分がe-Sportsの普及に繋がっていったのだと思います。


――韓国でe-Sportsが発展していった歴史の中で、特に大きな存在となったゲームタイトルは何ですか?

Lee氏:一番は『スタークラフト』(*)ですね。

Jung氏:まず、スタークラフト1と2はすごい人気が出ました。最近5~6年で考えると『 League of Legends(LoL)』ですね。韓国のe-Sportsはそういったゲームとともに成長してきました。
(*)米・ブリザード・エンターテイメントより発売されたリアルタイムストラテジーゲーム

――韓国での国産タイトルの人気はどうなんでしょうか?

Jung氏:国産ゲームだと『サドンアタック』などは結構人気だったんですけど、やはり主流といえるのは外国産のゲームです。しかし最近リリースされた『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)』は反応がいいので期待しています。

――PCゲームの普及は通信環境が整っていたからとのことですが、モバイルゲームはe-Sportsとしていかがでしょうか?

Jung氏:モバイルゲームにもいろんな種類があるので一括りには言いづらいですが、今回日韓戦を行った『クラッシュ・ロワイアル』はe-Sportsの枠に収まると考えています。ただ、どうしてもモバイルゲームはPCゲームと比べると単純なゲームが多い。複雑で戦略的なゲームの方が、視聴者はスポーツのように楽しめますので、そういった面では成熟にもう少し時間がかかると思います。



――これから日本においてはプロライセンスを持つ人がプロゲーマーと定義されるようになりますが、韓国ではどのような人をプロゲーマーと呼ぶのですか?

Jung氏:実は韓国でも、『スタークラフト』が流行していた頃には同じようにライセンスを発行していたんです。しかし現在は“名簿リスト”といったものを協会が管理しており、そこに名前が載っていればプロゲーマーと定義されます。とはいえe-Sportsはまだまだ発展途上。どうしても制度は日々変わっていきますね。

――そのライセンス制度は、今も存在するのでしょうか?

Jung氏:いえ、もうなくなってしまいました。……今から言うことは確定事項ではないのですが、これからちゃんとしたライセンス制度を定めようと関係部署との協議を検討しているところです。

――つまり、それは日本と似たような形に?

Jung氏:具体的な方法・内容についてはお話しできないです。

――韓国にはプロゲーマーの名簿リストがあるとのことですが、それに登録するにはどのようなプロセスを踏めばいいんでしょう?

Jung氏:その名簿リストは、選手を登録するというよりチームを登録するものです。まず協会が、国際大会での成績などから実力を判断してチームを登録します。そして、その登録されたチームに所属または入団する選手が自動的にプロになるというのが現状です。

――もし韓国がプロライセンス制度を実施するのであれば、最終的にライセンスを発行するのは「KeSPA」からなのか、それとも国からなのか、どちらの方が現実的といえますか?

Jung氏:非常に答えにくい質問ですが……、まず選手の基準については協会が決めます。例えば今後e-Sportsがオリンピックの正式種目になるとすれば、どの選手が適任なのか、日頃の行動や実力を審査するのは協会が行いますが、それ以外については政府と相談する予定です。


――韓国では国産ゲームの人気が海外ゲームよりも少ないとのことでしたが、e-Sportsの大会はどんなビジネスモデルになっているのでしょうか。ゲームメーカーが主催するのではなく、第三者のメーカーがスポンサーになったりするのですか?

Jung氏:スポンサーに関しては、本当にプロ野球やプロサッカーと一緒です。例えば野球ならサムスンやLGがチームを持っていますが、それと同じで、まずスポンサーとチームが契約を行います。そして、所属選手たちが着るユニフォームに企業ロゴを入れたりする見返りに、スポンサーがチームにお金を払います。

――日本でこれから施行していくe-Sportsのビジネスモデルは、主催者であるゲームメーカーが賞金を出し、収益に関しては大会への一般参加だったり動画視聴だったり、さらにはグッズを含めたソフト以外のことまで見込んでいる状態です。それに対して、韓国の場合はゲームメーカーがあまり関わらないといった認識で大丈夫ですか?

Jung氏:日本のビジネスモデルと韓国のビジネスモデルは違います。日本のようにゲームメーカーがお金を出して大会を開催することは、もちろん反響という面ではいいかもしれませんけど、長期的に維持していくには体力的に難しい。そういった観点から韓国では、資本力のある企業にスポンサーとして協力してもらい、e-Sports文化をより定着させていこうと取り組んでいます。実はe-Sports大国と呼ばれながら韓国も非常に悩んでいるんですよ。ただ、それでも今の日本のやり方はうまくいかないと考えています。やはり信頼できるスポンサーたちを集め、しっかりとお金をe-Sports選手に還元すること。そうするとe-Sports選手に憧れる層も増え、コンテンツが成熟していくはずです。


――一度ライセンス制度を経験したことのある韓国から見て、これから日本がクリアしなければならない課題は何でしょうか?

Jung氏:例えばサッカーや野球は、30年経っても「サッカー」「野球」と概念が変わりませんよね。しかし、e-Sportsは流行が移ろいやすかったり、バランス調整が必要になったりと変化がとても激しい。例えば、あるタイトルのライセンスを発行しようと手続きに時間をかけていると、発行直前でそのゲームが衰退してしまうということも起こりうるので、それは大きな課題になると思います。どのゲームにライセンスを出すべきなのかは難しい問題で、韓国も『スタークラフト』のライセンスを出したら『LoL』の方が人気になってしまったといった経験をしたことがあります。

――それにもかかわらず韓国もライセンス制度導入を考えているそうですが、そのメリットはどこにあるんでしょう?

Jung氏:まず協会からすると管理がすごく楽になるのが一番のメリットですね。実力の高い選手は海外の大会に出る機会が多いのですが、そこでちゃんとした報酬がもらえてなかったり、何かトラブルがあったりしたときにサポートしやすくなります。とはいえ、ライセンスを持っていないという理由で、有能な人材が潰れてしまう可能性があるというデメリットもあります。




大部分の人間がコンシューマーゲームを支持し、なおかつ国産タイトルに恵まれてきた日本。反対にPCゲームが主流で、海外タイトルを中心にゲームシーンを盛り上げてきた韓国。真逆ともいえるゲーム文化を持つ2国ですが、それぞれプロゲーマーのライセンス制度を取り入れることがどんな未来につながるのか、非常に気になるところですね。
《矢尾新之介》
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