「禁酒法」の裏では“カクテル”が発展していた―『エンパイア・オブ・シン』の舞台・1920年代米国を揺るがした悪法を「お酒」と共に紐解く | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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「禁酒法」の裏では“カクテル”が発展していた―『エンパイア・オブ・シン』の舞台・1920年代米国を揺るがした悪法を「お酒」と共に紐解く

「壮大な実験」とも評される「禁酒法」とは。

家庭用ゲーム PS4
「禁酒法」の裏では“カクテル”が発展していた―『エンパイア・オブ・シン』の舞台・1920年代米国を揺るがした悪法を「お酒」と共に紐解く
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PS4/ニンテンドースイッチ向けにセガより発売される『エンパイア・オブ・シン』。2月25日に発売を迎える本作は、1920年代の米国・シカゴを舞台に、様々なマフィアのボスキャラクターたちから一人を選び、シカゴの頂点を目指すクライムストラテジーとなっています。

『エンパイア・オブ・シン』プレイレポ


この『エンパイア・オブ・シン』では、敵から奪った金や施設をもとに密造酒を作り、「もぐり酒場」や「裏カジノ」などに卸すことで巨万の富を築き、暗黒街の支配者を目指していきます。お酒に関する事柄が、ゲームを進めていく上で重要な要素として盛り込まれているのです。1920年代の米国といえば、有名な「禁酒法」の時代。この時代だったからこそ、お酒は多くのマフィアの資金源となりました。果たして、「禁酒法」の実態とはどのようなものだったのでしょうか。

荒川英二氏:1954年生まれ。大阪・北新地のBar UK・オーナーバーテンダー、バー・エッセイスト。新聞社在職中から全国のバーを巡りながら、2004年以来、バー文化について自身のブログで発信。クラシック・カクテルの研究もライフワークとしてきた。2014年の定年退職と同時に、長年の夢であった自らのバーをオープン。切り絵作家の故・成田一徹氏没後に出版されたバー切り絵作品集「NARITA ITTETSU to the BAR」では編者をつとめた。公式Blogはこちら


今回、この禁酒法を「お酒」のエピソードから紐解き、『エンパイア・オブ・シン』の時代設定をより深く楽しみ、理解するべく、カクテル史研究家にして大阪・北新地の「Bar UK」のオーナーでもある荒川英二氏にリモートでの取材を敢行しました。本記事が『エンパイア・オブ・シン』へ興味を持つための一助になれば幸いです。

――今日はよろしくお願いいたします。まず最初に、荒川さんのプロフィールをお聞きできればと思います。

荒川英二氏(以下、荒川)大学を卒業した1977年から長らく新聞社に勤めていたのですが、仕事の傍らバーへよく通っていました。その後、バーを通して様々な方たちと親交を深めていく中で、40歳を過ぎた頃から、「定年後に自分でバーをやってみたいなぁ」という夢を漠然と抱く思うようになりました。開業資金を貯めながら、ウイスキーのボトルも少しずつ買い集める一方、お酒やカクテルの歴史も個人的に勉強・研究して、ブログなどで発信するようになりました。禁酒法時代のことも、そうした研究の中で学びました。


バーの切り絵で知られる故・成田一徹氏とは20代後半に出会って以来、彼が亡くなる(2012年)までの30年間、ずっと親しい飲み友達でした。そして、成田さんに背中を押される形で、ちょうど60歳になった2014年に自分のバーを開きました。今年でちょうど8年目ですね。店は一人で営んでいますが、バーテンダーとしての仕事からトイレ掃除まで、なんでもやっています(笑)。

大阪・北新地「バーUK」店内

――バーテンダーとしてのスキル的な部分も、お酒の勉強をする中で身につけていったのでしょうか。

荒川そうですね。独学で学びながら、仲の良い神戸のバーのマスターに時々教えてもらって修業していきました。ちなみに、バーテンダーを「バーテン」と呼ぶ方も居るかとは思いますが、これはバーテンダーという職業を「一段低く見てきた時代の蔑称」なので、嫌がる同業者もいます。現在のバーテンダーはみんな、自分の仕事に誇りやプライドを持っています。「バーテンダー」と正しく呼んでもらえると嬉しいです。

――なるほど、気をつけます。では早速『エンパイア・オブ・シン』の舞台となっている「禁酒法」の時代についてお話を伺えればと思います。

荒川「禁酒法」という名前自体は有名ですが、その実態については知られていないことも多いようです。「禁酒法」というのは米国で1920年~1933年まで、約13年間も続いた法律ですが、その成立の背景には、1914年に勃発した第1次世界大戦の戦争準備があります。戦争に備えて法律で飲酒を禁止し、労働への意欲を高めなければならないという動きが1910年頃から起こってきました。そして元々「酒を飲むことは罪悪」と考えていた敬虔なピューリタン(清教徒)の影響があったと言われています。米国は様々な国からの移民で出来たのですが、英国からの移民であるピューリタンが「反飲酒運動」で影響力を持っていたことも大きかったと言えます。


そしてもう一つの背景には、当時米国の酒造業界で主流だったビールやバーボン、ライ・ウイスキー業を牛耳っていた人たちにドイツ系移民が多かったこともありました。どういうことかというと、第1次世界大戦では米国はドイツを敵国として戦うことになります。そこから、ドイツ系移民への反感が高まり、彼らが造る酒まで憎しということになったのです。実際、戦争は1918年まで4年間続きました。このような背景から、「禁酒法」が1919年に公布。約1年の猶予期間の後、翌1920年に施行となりました。

――その実態はどのようなものだったのでしょうか。名前だけ見ると、飲酒や製造は一切禁止されてるようなイメージもありますが。

荒川これは意外と知られていないのですが、実際は「アルコールの製造・販売・輸送・輸出入」が禁止されていただけであって、「家庭内での飲酒や医薬品としてのアルコール販売」までは禁止されてはいなかったんです。当時、医師はバーボンウイスキーなどを、「医療用」として処方することもでき、国民は医者の処方箋さえあれば、薬局でお酒を買うことができたんです。他にも、自身で消費するための自家製ワインやシードルも禁止されていませんでした。かなり抜け穴だらけの法律だったというわけです。

ゲーム内ではブラックマーケットで買うことになるが、
このビターズも薬として利用されていたアルコール飲料の一種。

――ですが、当然お店で飲むのはダメだった、と。

荒川「建前上は」ダメでしたね。しかし、『エンパイア・オブ・シン』のゲームにもあるように、「もぐり酒場(スピークイージー)」という酒場が多く開かれていました。この「もぐり酒場」は、最盛期は全米で20万軒ほどあったとされ、その程度もピンからキリまでありました。富裕層が通うホテル付属のバーや高級クラブでは、禁酒法公布から施行までの1年の間に、たくさんのお酒を買いだめして隠し、施行後にそれらを秘密裏に提供しました。一方、こんな高級なクラブなどには通えない庶民たちは、もっと安い「もぐり酒場」へ出向いたり、粗悪な密造酒を手にして家で飲んでいたのです。

「もぐり酒場(スピークイージー)」での資金稼ぎは本作の重要な要素のひとつ


――そこまでくると、法律としてはあってないようなものですね……。

荒川だからこそ、ゲーム内でも資金稼ぎの要素として盛り込まれているように、マフィアたちの裏稼業の場として使われたのです。彼らはこの法律の裏をかいてお酒を密造し、そして他国から密輸入していました。この「禁酒法」は、あくまで米国内でのみ有効だったので、主に隣国のカナダから陸路でお酒を密輸入したり、南のカリブ海の島国からは、ラムを海路で密輸していました。しかし、これらの密輸入されたお酒は比較的高級品で、一般庶民へは密造したジンやウイスキーや、実際はそこそこアルコール度数はあるのに、見かけは「合法なアルコール度数0.5%以下」をうたったビールが出回っていたようです。

――『エンパイア・オブ・シン』のゲーム内でも、アルコールは大きな要素の一つとなっていますし、飲むと健康を害するようなお酒を作っていたというエピソードも見ることができます。色々お話を聞いていると、人間のお酒への欲望の強さがわかりますね。

荒川お酒(アルコール)を飲みたいという人間の欲求を法律で禁止するなど、土台無理があったんでしょうね。後世の歴史家は、「人類史上のある種の壮大な実験だった」とも言っています。ただ、米国は、最近でもトランプ氏のようなおかしなキャラクターの人が大統領にまでなってしまうなど、何かのスイッチが入ると、国民が一方向へ一斉に走り出してしまう国民性があるので、「酒を禁止する」なんて、いまの時代ならあり得ない法律でもあれよあれよと成立してしまったんでしょうね。

ゲーム内にももちろん、密造酒の「醸造所」が物件として登場


――ゲームで描かれるのはそんなマフィアたちが蔓延り、もぐり酒場が軒を連ねた禁酒法の時代なのですが、逆にこの時代に発展し、今なお飲まれているお酒というのはあるのでしょうか。

荒川実はこの時代、米国内のバーボン業界、ワイン業界は壊滅的な打撃を受けましたが、カクテルは、意外かもしれませんが「もぐり酒場」を舞台にして発展していったんです。優秀なバーテンダーは禁酒法の施行に合わせてヨーロッパなどへ逃げ出していったのですが、そこまでできないバーテンダーは「もぐり酒場」で働くことになりました。彼らは禁酒法の摘発逃れのために、「お酒に見えないようなお酒」、つまりカクテルの創造にチャレンジしたのです。「これはジュースである」とごまかせるようなカクテルや、生卵やはちみつを使ったカクテルが発展したのもこの時代ですね。


――ゲーム内でも、酒を求める不審者(実際には覆面警官)に「サイダーならある」と言うシーンが有るように、お酒をお酒として見えないようにしていたと。

荒川そうですね。また、この頃の一つの大きな変化として、カクテルの発展以外に、女性の酒場への進出というのも挙げられます。実は禁酒法が施行され、もぐり酒場が登場するまで、女性はあまりバーへ行くことがなかったのです。ところが、1920年代に入っては女性が様々な場で力を持ち進出してきたということもあり、それに合わせて「もぐり酒場」へ行く女性も多くなりました。女性にも飲みやすく喜ばれるカクテルが進化した背景には、このような理由もありました。


実在したステファニー・セントクレアや、本作の開発を担当する「Romero Games」のCOO ジョン・ロメロ氏の
曾祖母「Elvira Duarte Morales」をモデルにした女性ボスも登場する。


――なるほど。そういえばゲーム内にも女性のボスがプレイアブルなキャラクターとして何人か登場します。中には架空の人物もいますが、そうした背景も影響しているかもしれません。ちなみに、このとき生まれたカクテルにはどのような物があるのでしょうか。

荒川1920年代に生まれ、今でも残っているカクテルでいうと、例えば「オレンジブロッサム」などがあります。これは簡単に言えば、ジンのオレンジジュース割りのショートカクテル(※)です。スクリュードライバーの(ベースである)ウォッカをジンに変えたもの、というとイメージしやすいかもしれません。他にも「アビエーション」や「クローバー・クラブ」「ロングアイランド・アイスティー」などがこの時代に生まれたと言われています。やはり時代背景もあり、ベースになっているのはジンやブランデー、ラム、ウイスキーが多くなっていますね。

(※編集注:短い時間で飲むことを目的としたカクテル。通常は少量・氷なしで提供され、アルコール度数も高め。対になるロングカクテルは、ゆっくりと飲むことを目的としているため、量が多く氷も入り、度数も低めで提供されることが多い)


――やはり当時のマフィアたちもカクテルを飲んでいたのでしょうか。

荒川飲んでいたかもしれませんね。史実ではアル・カポネが支配し、このゲームの舞台になっている「シカゴ」の名を冠するカクテルも当時からありましたから。ただ、財力のあるマフィアは、映画の「アンタッチャブル」でもそんなシーンがありましたが、より高級なお酒であるシャンパンやブランデーを飲むことの方が多かったのではないかと想像しています。


――ゲームをプレイしながら、当時生まれたお酒を飲み、1920年代や禁酒法の時代に思いを馳せる、というのも良さそうですね。ちなみに、先程挙げていただいたカクテルの中で、飲みやすいものや、マッチするつまみなどはありますか?

荒川最初に挙げた「オレンジブロッサム」は比較的飲みやすく、シンプルなので家庭でも作りやすいと思います。アルコールに強くない方でも、ジンの量を調整してもらえれば弱めに作ることもできます。もちろん、氷を入れてロックスタイルで飲んでもいいと思います。シェイカーもあれば、ショートカクテルも作れるのでなお良しですね。つまみにはチョコレートやドライフルーツ、ミックスナッツなどがあうと思います。おそらく当時も、そんなつまみを楽しみながら、カクテルを飲んでいたことでしょう。


――自宅で当時生まれたお酒を楽しみながら、ゲームに浸る……。最高の楽しみ方だと思います。では最後に、荒川さんが考えるお酒の楽しみ方を教えていただければと思います。

荒川私自身がそうしてきたというのもありますが、ひとりでじっくり味わい、楽しむのがオススメですね。お酒そのものの香りや味などの個性、そしてお店の雰囲気を感じながら、マスターとの会話も楽しみながらじっくりと…。できれば、チェイサー(お水)を横に置いて、ストレートでゆっくり味わってみてください。こういうコロナ禍のご時世でもあるので、ぜひ、バーのカウンターや、あるいは時には自宅でも、そういう楽しみ方も試してもらえればと思います。


――『エンパイア・オブ・シン』もひとりでじっくりとプレイするゲームなので、荒川さんの考えるお酒の楽しみ方とマッチしそうですね。本日はありがとうございました。



「禁酒法」という法律は今日では悪法として有名ですが、その裏で動いていたマフィアたちや「禁酒法」という名前とは裏腹に、発展していったカクテルの動きなど、非常に興味深いエピソードの多い法律でもあります。

『エンパイア・オブ・シン』は、その禁酒法の時代を舞台に、濃厚なストラテジーゲームを体感できるゲームであり、同時に特殊な時代の面白さを味わえるゲームでもあります。1920年代アメリカへ思いを馳せながら、暗黒街の頂点を目指してみるのも良いのではないでしょうか。

もちろん、そのときは当時生まれたのお酒用意を忘れずに。

『エンパイア・オブ・シン』は、PS4/ニンテンドースイッチ向けに2021年2月25日発売予定。価格は5.990円(税別)です。

『エンパイア・オブ・シン』プレイレポ
《Game*Spark》

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