嗚呼、水島作品よ永遠に!オールスターゲーム『激闘プロ野球』などを通して見た“野球狂の世界”―追悼・水島新司 2ページ目 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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嗚呼、水島作品よ永遠に!オールスターゲーム『激闘プロ野球』などを通して見た“野球狂の世界”―追悼・水島新司

代表作もいくつか紹介しています。水島先生、本当に長い間お疲れさまでした。

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嗚呼、水島作品よ永遠に!オールスターゲーム『激闘プロ野球』などを通して見た“野球狂の世界”―追悼・水島新司
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筆者の水島愛による作品紹介。読み飛ばしてもOKです!

ここからは筆者による漫画紹介。部屋の本棚に目をやると「ドカベン」「野球狂の詩」「ストッパー」「一球さん」「男どアホウ甲子園」「光の小次郎」「白球の詩」などのコミックスの姿が目に入ります。

■ドカベン

山田太郎たちの活躍を描く「ドカベン」は言わずと知れた水島漫画の超代表作。緻密な作戦が楽しめる濃密な野球シーンや決して王道だけでない展開など、どの場面を切り取っても文句無しで楽しめます。31巻の試合は野球漫画の歴史に残るものだと思います。魅力的なライバル達も多数登場、個人的に好きなのは不知火・小林・犬神などです。

特に小林は本編で中学時代から明確な“山田のライバル”として登場しながらも、さまざまな経緯で高校での対決が叶わなかったという、ある意味でリアルな境遇のキャラクター。「ドリームトーナメント編」にて再登場し、山田とバッテリーを組んだときに、筆者はついに報われたその瞬間に震えていました。「山田とライバルがバッテリーを組む」というのはとても好きで、「プロ野球編」のオールスターで不知火―山田バッテリーなども感激したものです。

作中で有名な「ルールブックの盲点」は、2012年の甲子園で熊本代表の済々黌高等学校が再現。監督の話によると「ドカベン」を読んで実際に狙ったという話なので驚きです。松井秀喜氏が1992年に体験した「全打席敬遠」も、実は山田が体験しているのもクローズアップされていました。

■ダントツ

個人的に筆者の大好きな作品。「ドカベン」と「大甲子園」の間を埋める物語で、主人公の“ダントツ”こと三郎丸三郎が、超弱小チームの光高校野球部を甲子園の西東京代表まで導いていくストーリーです。両投げの異色投手・荒木新太郎やキャッチャー竹馬などの加入、ダントツの奇抜な作戦なども見どころです。

作品としては全7巻で短め。迫力満点の青春野球漫画……という内容だけでは決してなく、他の作品では見れないようなユニークな展開も楽しめます。「大甲子園」での光高校vs南波高校との対決は見どころですよ。

■野球狂の詩

こちらも水島新司先生を代表する作品。全17巻で10巻までは、東京メッツやその周囲の野球選手や人物の人生を描く短編形式、以降は日本初の女性プロ野球選手・水原勇気をメインとするストーリー漫画になるのが特徴的です。

水原勇気は、今でも女子野球関連のニュースで名前を見ることがあるほどに鮮烈な存在。彼女を中心としたストーリーは「女性がプロ野球に挑戦する」という大きなテーマに挑んでいます。野球協約との戦いや女性がプロ野球に挑む答えとして「たった一球のワンポイント起用」の駆け引き、魔球“ドリームボール”を巡る展開など、リアルさと漫画としての面白さが満載です。

もちろん短編時代も、異色の経歴や曲者揃いのプロ選手どころか野球を知らない素人までも主役にした名作ばかり。漫画家の里中満智子さんと合作した「ウォッス10番」シリーズなども有名です。個人的には自由契約になったベテラン選手が、知り尽くした球場の癖を利用して活躍する「どしゃぶり逆転打」が大のお気に入りです。

本作は「野球狂の詩 平成編」「新・野球狂の詩」と続編作品も後に掲載されています。岩田鉄五郎の持つ“50歳の現役投手”の肩書がファンタジーだった連載当時、まさか現実で登場することになるとは思ってもみなかったことでしょう。

■ストッパー

「野球狂の詩」のメインキャラクター・岩田鉄五郎を語る上で、この作品は絶対に外せません。大企業の次男という経歴の主人公・三原心平がプロ野球界で巻き起こす旋風を描いた物語です。

三原は高校時代に大きな成績を残していないものの、あの手この手を駆使してプロ入り。プロ入りしてからは投手として、さまざまな「騙し」「駆け引き」「違反投球」などを駆使し、その後は身体能力を活かして外野手との“二刀流”の野球選手として活躍しています。大谷翔平氏の二刀流の活躍を聞くと、個人的にはいつも脳裏に浮かぶキャラクターです。

その三原のライバルとして登場するのが東京メッツの岩田鉄五郎。「野球狂の詩」ではほとんど打たれるシーンばかりだった鉄つぁんですが、本作では熱い投手戦を展開したり、気迫や知恵で相手を抑えたりと素晴らしい活躍を魅せてくれます。鉄つぁんはほかの水島作品でもゲスト出演が多いのですが、「ストッパー」では選手としての魅力が最大限描かれていると思います。

三原は最終的に自身の所属チームを買収し、新球団「大阪ドリームス」の選手兼オーナーになる驚きの展開を見せます。元々は、三原をメインとしてペナントレースストーリー中心の作品だったのですが、ドリームズ編からは新選手たちの主役短編が増えます。構成が「野球狂の詩(短編→ストーリー)」の逆になっているのは水島先生が意識しているのかは不明ですが、とても面白い対比になっていると思います。

■一球さん

野球素人の忍者の末裔・真田一球が、野球の名門である巨人学園で大波乱を巻き起こす物語。作品としては単体としても楽しめますが、水島先生の代表作「男どアホウ甲子園」の続編として描かれています。藤村甲子園や左文字、“豆タン”こと岩風も登場しますよ。

野球愛があまりに深い水島先生は、その知識を活かして数々の作品で「野球音痴」を登場させています。真田一球こと“一球さん”もその代表なのですが、なにしろ忍者の末裔ということもあって身体能力や精神力がずば抜けた存在。だからこそ助かるシーン、だからこそピンチに陥るシーンなど、試合ごとに異なる魅力が描かれています。

また、エリートチームの巨人学園の絶対的エース・大友との関係も見どころ。エリートゆえに精神力が弱い大友やチームメイトと、一球さんと仲間たちの関係性、そしてやがて迎える巨人学園野球部の決断と、一球さんがとんでもないチームで挑むことになる最終戦のテーマと結末は、あまりにも「巨(おお)きい」のです。

藤村甲子園の弟・球二と球三は残念ながらゲームに登場せず。

■男どアホウ伝

さまざまな雑誌で掲載した読切作品を集めた短編集。料理人とプロ野球選手、それぞれ異なる道を歩みつつ野球人生にすべてを捧げた2人のストーリーを描く「出刃とバット」、ベテランと大型ルーキーの2人のキャッチャーの人間模様を描く「赤いプロテクター」、死んだはずの野球選手があの世で“八百長”を条件に生き返る「幻球秘話」など、個性豊かな作品が収録されています。

最終巻では実在のプロ野球選手である、江川卓氏と田淵幸一氏を描く5篇の作品を収録。水島先生は江川氏の高校時代に知り合い、それから家族ぐるみでの付き合いがあったと言います。「ドカベン」では江川氏や弟の中さんをモデルにしたキャラクター・中二美夫(二美夫は父の名前から)が登場しています。

ちなみに、序盤でドラフト会議という制度に立ち向かう「光の小次郎」という作品では、三角トレードなど、いくつかの点で江川氏がプロ入りするまでのさまざまな騒動をベースにしたと思われる物語が描かれます。「光の小次郎」では、冒頭に札幌ドーム球場が登場。作品が描かれたのは1981年で、日本初のドーム球場・東京ドームが完成したのが1988年なので、この時期に札幌ドームを“予見”していたのは驚きを隠せませんね。

※キリがないため、作品紹介は一旦ここまでとさせていただきます。「球道くん」「極道くん」「白球の詩」などの代表作はもちろん、短編の「草野球の神様」「草野球列伝」「くそ暑い夏」など、書きたいことはいくらでもあるのですが……。「銭っ子」「父ちゃんの王将」など野球作品以外も素晴らしいですね。

筆者のコレクションのほんの一部。

水島先生は、2018年の引退前にすべての連載作品を完結させてくれました。(雑誌廃刊で終了した作品などもありますが)未完作品を出さずに代表作品を終わらせてくれたことは、作者のファンとして深い感謝しかありません。ただ、素直な感情としては、もう一作でも読切などが読みたかったな、という思いは否めません。


《Mr.Katoh》

酒と雑学をこよなく愛するゲーマー Mr.Katoh

サイドクエストに手を染めて本編がなかなか進まない系。ゲーマー幼少時から親の蔵書の影響でオカルト・都市伝説系に強い興味を持つほか、大学で民俗学を学ぶ。ライター活動以前にはリカーショップ店長経験があり、酒にも詳しい。好きなゲームジャンルはサバイバル、経営シミュレーション、育成シミュレーション、野球ゲームなど。日々のニュース記事だけでなく、ゲームのレビューや趣味や経歴を活かした特集記事なども掲載中。

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