2020年の『アクションゲームツクールMV』コンテスト 「ゲームデベロップチャレンジ」にてダブル受賞を果たし、PLAYISMがパブリッシャー、Kibou Entertainmentが開発を担当する『ティモシーとムーの塔』が2022年8月9日にリリースされました。
今回は、どこか懐かしいドット絵とチップチューン楽曲が特徴のレトロ風2Dアクション『ティモシーとムーの塔』を実際にプレイし、その魅力に迫ります。なお、本作はコントローラーに対応しており、筆者のようなコンシューマーゲーマーでも安心して楽しめます。もちろん、日本語にも対応しています。
『ティモシーとムーの塔』とは
5月の「INDIE Live Expo 2022」で発表された際には、懐かしい『ファザナドゥ』『光神話 パルテナの鏡』『デモンズブレイゾン 魔界村 紋章編』『ワンダと巨像』など、レトロゲームの黄金期を代表する名作に影響を受けたと紹介されていた本作。古典時代のファミコンから近代のPS2まで、幅広い世代のDNAを受け継ぎ、現代的で洗練された「高難易度」に仕上がっています。
その難易度はアクションゲームが得意な人なら10時間以内、そうでなければ40時間以上かかるとされ、すでにその難しさが垣間見えます。『DARK SOULS』シリーズや『モンスターハンター:ワールド』のトロコン作業で幾度となく精神崩壊を起こした筆者としては、良い意味で嫌な予感がしてきました。
簡単だからこそ難しい
ゲームを開始すると、導入のカットシーンからスタート。おじいさんと幸せに暮らしていた主人公ティモシー少年でしたが、不幸にもおじいさんが亡くなり、彼を蘇らせるために「どんな願いでも叶う」という伝説のムーの塔へ挑む……というのが大まかな筋書きです。
「撃って」「飛んで」「滑って」のダイレクト操作
このようにファンタジー的な物語の幕がすぐに上がりますが、本作の主人公・ティモシーは勇者でもなんでもない、ごく一般的な人間らしさを感じる性能です。ジャンプとごく短いスライドダッシュ、そして、パチンコによる射撃が彼の全て。これから起きる困難や敵との戦闘は、この3種類のアクションを駆使して乗り越えなければなりません。
よく言えば、シンプルで簡単です。パッド上でも、ボタン1個にひとつずつ機能が配置され、すべて右手の親指でワンタッチの直感操作が楽しめます。
しかし言い換えれば、レベルを上げ、便利な装備や強力な武器を使って攻略するようなことができません。当然、ソウルシリーズのように友達を呼んで助けてもらうこともできず、何度も何度もリトライを繰り返して自分を磨きます。
基本的に、敵は全てパチンコで倒せるようになっていますが、高低差を考えたり、タイミングを測る判断も求められます。強引に突破しようとせず、常に平常心で冷静に、かつ最適な答えを頭の中で当てはめていかなければなりません。
ストレスやプレッシャーといった課題を与え、ひたすらプレイヤーのスキルだけを純粋に要求されるのもあり、甘えたプレイングを許さない構造になっていました。
過酷な旅を支えるアイテムたち
はっきり言って本作は難易度の高い作品で、肝心の“塔”に入る前から難しいのですが、セーブ地点や体力を全回復する泉が要所に配置されており、携帯式の回復アイテムを売ってくれる商人も登場します。
敵やトラップによっては即死しますが、たとえ死んでしまっても最新のセーブからリトライできるので、もし難しいと思ったら準備対策のうえで再挑戦しましょう。なお、本作にはオートセーブはありませんのでご注意ください。
ちなみに、筆者の場合はアイテムを何も買わないという縛りプレイとなりましたが、最低2つあるだけでも道中かなり楽だと思います。お金は宝箱やドロップで入手でき、敵は何度でも復活するので稼ぐことも可能です。
己の精神力と向き合う激ムズダンジョン
ゲームに慣れてきたのもつかの間、さらに奥にあるボスダンジョンは数段上の難しさで待ち受けます。床には当然のようにトゲ(当たれば即死)が張り巡らされ、殺人扇風機や自動の踏み場、壁を抜けて攻撃してくる新しい敵が登場します。
本作は『アクションゲームツクール MV』で制作されており、ステージの入り組んだ構成や敵配置など、ツクラーならではのユーザー目線に立った「いやらしさ」が感じられます。
アクションでありパズルでありRPGでもある
全部で5つあるダンジョンの攻略も重要な要素ですが、そもそも、ダンジョンにはカギが施されています。その他にも道が隠蔽されていたり、塔の住人などNPCとの会話やイベントによって進行したりと、RPGの要素も取り入れられています。
進むべき道を見つけたと思ったらそれが別の難関ステージに繋がっていて、最深部までカギを取りに行くことになる……という演出には心が折れました。
まさに“死んで覚えさせられる”ボス戦
セーブポイントや回復アイテムの存在もあり、どちらかというとボスに至る道のりの方が圧倒的に辛いです。それでも、ボスが強敵であることに変わりはなく、いろんなアプローチの攻撃を繰り出して追い詰めてきます。
慣れれば単調に思えるかもしれませんが、追尾攻撃で移動を強制したり、弾を打ち出してジャンプを妨害してきたりと情け容赦ありません。
額にある弱点の目を狙うためには、ブロックを上ってドクロの手すりからジャンプしなければなりませんが、これも一苦労です。
難易度選択もないので苦戦しがちですが、必要なら戻って回復アイテムを用意し、態勢を立て直しましょう。
本稿執筆のためのプレイでは、およそ5時間かけて最初のダンジョンまでをクリアしました。ファミコン世代から第一線のゲーマーな方々には想定内の難易度かもしれませんが、ゆとりを通りこして「さとり世代」の筆者には、なかなか応えるものがあります。
ポップで柔らかい印象とは裏腹に、高難易度を謳うゲームの本質は健在です。とにかく難しいゲームがしたいというプレイヤーだけでなく、どんなゲームか興味があるという方も、まずは体験版から手に取ってみてはいかがでしょうか。
『ティモシーとムーの塔』はSteamにて配信中です。