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Game*Sparkレビュー:『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』―2009年の歴史的傑作との比較は避けられない

旧Infinity Wardの比類なき名作は、いまも伝説であり続ける。

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Game*Sparkレビュー:『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』―2009年の歴史的傑作との比較は避けられない
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【注意】
本記事の内容には『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』のネタバレが含まれます。
ストーリーの展開をご自分で楽しみたい方は、閲覧にご注意ください。

2022年10月28日に、Activision Blizzardから発売された『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2(Call of Duty: Modern Warfare II)』。現在、記事執筆時点でまだ3日しか経っていませんが、さっそく本作の総合的な判断を下す機会に恵まれたので筆者の思うところをレビューとしてお届けしたいと思います。

本作は、2019年の『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア』に続く、同名のオリジナル作品のリブート版です。筆者は他でもない2009年のオリジナル版『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』をシリーズで最もプレイし、歴代最高傑作として信仰しています。

画像は『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』。

アカウントを作り直すことになって記録は消失しましたが、可愛いネコちゃんのプレイヤーカード(プレステージ9周目の特典)が欲しかったという理由で丸1か月分の時間をやり込み、いわゆる“金ドクロ”のプレステージカンストも達成しました。

というわけで、今回は恐れ多くも同じ名前を冠むった本作がオリジナル版を超えているのか、この歴史ある『コール オブ デューティ』シリーズの最新作としてふさわしいものであったかを主な論点として述べていきます。

なお、筆者はPS5版で累計17時間ほどプレイし、キャンペーンはクリア済み。バージョンは1.004.000以前であり、マルチプレイに関しては最新の状態で追記している場合があります。本作の大まかな概要はプレイレポを参照していただければ幸いです。

印象に残りにくいストーリー

本作のキャンペーンを簡単に説明すると、イランの過激派が核ミサイルを手に入れてアメリカへのテロを計画し、それを阻止すべく主人公たちは世界規模で追跡を開始。その過程で事件の黒幕がシェパード将軍だと判明すると同時に、彼の一味が敵となり、なんやかんやで過激派とミサイルを止めるというものです。

画像は『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』。

一方、オリジナル版はロシアの過激派が自作自演のテロを起こし、その報復を大義名分としてロシア軍がアメリカに侵攻。ホワイトハウスや議事堂が燃え上がる中、極東シベリアに監禁されていたプライスソープたちに救出され、強奪した潜水艦の核ミサイルでアメリカ本土のロシア軍を崩壊させます。ロシアの過激派を追いつめ、ソープたちを口封じに抹殺しようとしたシェパードは、激戦の末に倒される内容となっていました。

これは筆者の思い出補正もあるとは思いますが、本作はオリジナル版と比べて地味な展開が多く、いまいち盛り上がりを感じませんでした。ステルスなどの特殊部隊らしい演出はあるものの、リアリティに傾けすぎた結果、派手な演出が減ったうえにキャラクターの動きまで重くなってストレスを感じる場面が多々あります。

敵になると名前が赤くなる。

そのうえ、ストーリーの整合性も微妙であり、さっきまで肩を組んでいたグレイブスが裏切るシーンも唐突に始まります。単に“気に入ったから”という理由で基地を占領し、テロリストを探すために町の人々を虐殺しますが、その居場所を知っているのは麻薬組織の女ボス・ヴァレリアだけです。彼女もまた基地の中に監禁されており、拷問するなりして聞き出した方が手っ取り早いのではないでしょうか。

リブート作品として新しい展開を模索する意図は分かりますが、風呂敷を広げるだけ広げて畳むことができず、むしろ見劣りする印象です。

全員、主人公補正で誰も死なないハッピーエンド。

そもそも“『CoD』らしさ”とはなんなのか

ここ最近のシリーズとは少し距離を置いていたのですが、少なくとも筆者がプレイしていたころの『CoD』は“スポーツ系FPS”でした。軽快な動作でステージを駆けながら、“QS(クイック・ショットまたはクイック・スコープ)”などの技を繰り出し、スナイパーライフルで接近戦をこなしていた時代です。

あくまで見た目は最先端のグラフィックで表現しつつ、とことん非現実的なゲーム性を追求していたのが『CoD』であり、ストーリーに関しても深いドラマ性ハリウッド顔負けの戦争アクションの融合が代々シリーズに求められてきたものでしょう。

画像は『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』。

核を追いかけて三千里……のような使い古された三流ドラマではなく、アメリカの本土が火の海となり、星条旗が踏みにじられる。いわば“アメリカが負ける物語”を描いたオリジナル版の衝撃はいまでも鮮明に思い出せますし、さらには主人公が射殺されて燃やされる様を彼の視点から覗いたり、敵と敵が殺し合う戦場に主人公が介入して三つ巴の展開になったりと最後までお腹いっぱい濃厚でした。

もちろん、空港での有名なテロシーンもさることながら、最後の最後にQTEでラスボスと格闘を繰り広げた熱い展開も忘れてはいけません。ゲームとして、非リアル系のFPSとして『CoD』が目指すべきなのは、特大の打ち上げ花火のようなインパクトに尽きます。

また、本作には他作品のストーリーで見られた展開や演出を思わせるシーンが多数登場します。ガンシップやギリースーツのミッションはオリジナル版の『CoD4』のものということでお茶を濁すこともできますが、途中で主人公が銃を無くし、ナイフや爆弾を手作りして戦うシーンは『The Last of Us Part II』の後半シーンにかなり近い印象を受けました。

本作は、クリーチャーに囲まれた世紀末が舞台でもなく、何百発という弾を景気良く撃ちまくっていくFPS。クラフト要素がゲーム体験を向上させるものかどうかは疑問を感じるところで、システムを前提にストーリーを用意したのではとも感じました。最終決戦でも丸腰となってクラフトで打開することになりますし、キャンペーンの一部ミッション以外では使わないシステムであるため、プレイヤーの体験を敢えて制限する“縛り”の要素/演出としても、不格好に見えてしまいます。

いっそクラフトを前提としてシステムを作った方が新しくて自然ですし、過去のシリーズにあった「オールドスクール」や「感染モード」よろしく、マルチプレイの変わり種のルールとして活用してもらいたいです。

主人公が喋るどころか、いちいち顔まで出てきて醒めてしまう。

本作はキャンペーンの脚本もそうですが、システムも含め、オリジナル版と多くの部分で根本的に異なります。カットシーンが多用され、そのたびにゲーム的な何かが頭をよぎって感情移入が解けるほか、プレイヤーが乗り移る対象もチームメンバーをローテーションするのみ。

全く立場の違う人物を頻繁に行き来するのではなく、一個人の物語を追う『ブラックオプス』系列に近いものがあり、この演出に関しても、オリジナル版やこれまでの『CoD』シリーズのアプローチとは大きく異なる印象でした。主人公が大々的に露出するのなら、キャラクタークリエイトで一から主人公を作って操作する形にすれば、愛着を持って眺められます。

少なくともスペシャルオプスではない

画像はPS3版『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』。

オリジナル版では全5章、計23個の協力プレイ専用のミッションが用意されていましたが、本作では広い箱庭ステージで行われるミッションが現時点で3つ。この時点で何か思うところがあるのはさておき、マップ自体は広々としてオープンワールド的な構造になっており、乗り物などの要素も用意されていました。

ただ、はっきり言って良くも悪くもそれだけで、キャンペーンで使ったマップを流用してまばらに敵を散りばめた印象を受けてしまいます。あとはプレイヤーに“よろしく”と言って投げて寄越し、これといって演出もギミックもありません。肝心の協力要素も乏しく、大抵は気が付いたら味方が消え、難易度もノーマル基準なのでソロでも問題なくクリアできます。

筆者としては、行動の制限と引き換えに、一本道のコースに様々な演出や仕組みを盛り込むのが『CoD』シリーズの伝統であると感じています。オリジナル版の「スペシャルオプス」は、キャンペーンモードに準じた様々な工夫を凝らしたミッションが取り揃えられ、ボリュームも本編に劣らず盛り沢山。ここでも、オリジナル版を踏まえた上での期待とズレを感じてしまいました。

画像はPS3版『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』。

ガンシップやギリースーツは本作の本編にも登場しましたが、オリジナル版のスペシャルオプスは、それをフレンドと2人でプレイ可能。ガンシップと歩兵に分かれて進む協力プレイ前提のミッションなども存在します。

参加プレイヤーが増えると必然的に難易度も下がるので、どうせやるならもっと徹底的に難しくしてほしいです。2人同時にアクションしないと進めなかったり、明確に役割が分かれていたり、せっかくの協力要素を活かすアイディアが足りない気がします。

“マルチ”は何でも美味しくする魔法の言葉

マルチプレイに関しては、やはり生身の人間と接するということで、開発者の意図しない出来事が発生します。それは良いもの悪いもの両方の意味があり、本作においては、幸いにも前者が多いように感じました。

10人いれば10通り”とはよく言いますが、マルチプレイは一種の人間観察です。マシンガンを持ってせわしく走り回るプレイヤーもいれば、堅実に戦略に基づいて、しっかりとした判断を下すプレイヤーもいます。そうした多様な人間模様が見られる戦場で、筆者はスナイパーライフルをメインに……というより、それしか使いませんでした。

オリジナル版はここまで動きがもっさりしていなかったので、スキル次第で器用にこなせたものですが、本作では重いものは重いということで、使いにくく調整されています。接近戦での取り回しが大きく低下したため、筆者は高所や敵の死角などに籠って定点から狙撃し、のんびりしつつも安定したプレイを楽しめました。

本作は基本的に2019年の前作と同じシステムとなっており、動作のひとつひとつが重く遅く、銃を固定して構えるなど“待ち”のスタイルに有利な構造です。武器の威力も割と強めに設定され、一撃で死亡することも多いため、積極的に動き回りたいプレイヤーにとってはストレスに感じるかもしれません。

逆にいえば、威力面での差がほとんどないので、どんな武器も工夫次第で活躍できます。筆者はメイン武器を2つ持てるパークが解放されたことにより、サブとしてショットガンを装備。開けた地形では不利な武器ですが、階段上やドアの前で構えて待っていると、面白いように敵をキルできます。キルペースが早ければ、ひとりで何人も相手にすることが可能なため、ソロプレイヤーには嬉しい仕様でした。

ただ、それによって重いスナイパーライフルと、軽いマークスマンライフルの差がほとんどありません。その証拠に、最初から接近戦用の照準器を装備し、なおかつ一撃で敵を葬れるマークスマンを使うプレイヤーの方が圧倒的でした。

また、自分の位置が表示されなくなるパークが後半にアンロックされるため、敵の位置を表示するUAVが非常に強力になっています。最も安価なストリークということもあり、ほぼ常に敵味方の位置がマップに表示され、裏取りやサプレッサーの意味が消えている事実には疑問を感じざるを得ません。

筆者のストリーク構成。その場を動かずに起動でき、かつ自律式のものを選択。

歴史的傑作の“リブート”としての評価

最近の修正で、ようやく自分のキャラが正しく表示されるようになった。

当然ですが、本作は発売したばかりの新作ということで、グラフィックはものすごく綺麗です。煙幕や土煙、雨や船のシーンなどは、本作の力の入った映像面を特に堪能することができます。現代技術の粋を集めた作品と言えますが、それに比例してユーザーの求める水準も天井知らずであり、それだけで納得してもらえるほど甘いものではありません。

前述のプレイレポでも述べましたが、本作に関してはバグの報告が多数あり、筆者もプレイを進めていくうちに少なくない頻度で遭遇することがありました。

フリーズやクラッシュといった重大な不具合の報告もあり、試合の開始直前に決まってフリーズする現象は筆者の環境でも確認。その他にも、突然に画面が暗転する、特定の武器カスタムを使用するとエイム時に腕が表示される……などなど。この手の問題はプレイヤーのQoLに直結するので、一刻も早い修正を望みます。

マルチプレイについても少し付け加えておくと、ストリークはキル制とスコア制を問わず、どちらを選んでもデスによってリセットされるという仕様。報酬には見慣れているラインナップが揃い、『ブラックオプス4』で登場していたスナイパーネストやストライクチーム、走らせるだけでも楽しめた安価な爆弾ラジコンなどが欲しくなったところでした。

本作のマップは全体的に障害物が多く、屋根付きの建物などに防護されている比率も大きいので、航空支援の効果が極めて限定的。スナイパー専門の筆者としては、そこまでマップに悪い印象はありませんが、バンカーバスター超音波兵器があれば新鮮味もあっていいと思います。

現状UAVも強すぎるので、この状態を続けるのなら性能をあげたうえで、もっと後半のストリークに変えた方がバランス的にも妥当でしょう。

パークシステムは役に立つものほど後半にアンロックされ、プレイヤー間のレベル差が顕著に現れてしまいます。オリジナル版と同じぐらいパークが強ければ割り切ることもできますが、そこまで強くもないのに有効になるまで時間が掛かり、その間に無人機で位置を特定されて倒されるなど悪循環が続きました。

マルチプレイ用の武器カスタマイズ要素「ガンスミス」も、種類が豊富なわりには性能への影響が実感しにくく、サプレッサーやスコープなどの抜本的な変更を期待できるパーツが後回しになっている状況に、違和感を覚えました。

総評

腐っても天下の『CoD』シリーズということで、20年近い開発経験からくるノウハウもあり、FPSとしての基本的な土台はしっかり備わっています。これからFPSを始めるという初心者の方、筆者のように久しくシリーズをやっていなかった復帰プレイヤーへの入門用としては最適です。

ただ、オリジナル版に少なからず思い入れのある方にとっては、不満を抱く可能性が高い作品ですいろいろな部分でシリーズや他作品との差別化が難しく、フルプライスの単体作品として評価できるところも少ないので、プレイヤーのバックグラウンドによって好みが分かれるかもしれません。

個人的には、もしオリジナル版の体験がどのようなものであるか気になった方がいれば、ぜひプレイしていただきたいと強く思います。2020年に配信されたリマスター版『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』はストーリー部分だけですが、いまからプレイしたいという方には最適です。

結局、この選んで答える会話は何だったのか。

あまり過去にこだわりすぎるのも良くないですし、オリジナル版も“ワンマングレ”などの致命的な問題が存在し、決して完璧とは言い難いものでした。それでも、多くのユーザーに傑作と言わしめた2009年の作品の魅力が何であるか。それを再評価する機会を本作が与えてくれたことに感謝したいです。


『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』は、PC(Steam,Battle.net)およびPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに配信中です。

総評:★☆☆

良い点
・イマドキ珍しい“オーソドックスなFPS”が楽しめる
・大規模IPの末永いサポートに期待できる
・人気シリーズということもあり、プレイヤー数が非常に多い

悪い点

・オリジナルと比べ、展開に疑問が残るストーリー
・奥深さを感じられない協力プレイ
・新鮮味が薄いマルチプレイ
・「ガンスミス」など、冗長に感じる新要素



《りおちゃんこ鍋》

ニート10年ゲーム20年の大元帥 りおちゃんこ鍋

一般曹候補として徴兵されて1か月で脱柵後、ラノベ作家を目指すという名目でママの年金を喰い潰し、1秒も働かずに35万のPCを購入。若干8才で『パーフェクトダーク』をクリアし、『コール オブ デューティー モダン・ウォーフェア2』『レインボーシックス シージ』『Apex Legends』など、戦場を渡り歩く根っからのFPS畑。強さだけが全てという当時の業界に感化され、クソゲーとヌルゲーマーを許さない。現在は、エロゲソムリエを自称し、単身DLsiteにて潜入捜査中。好きなバイオは「アウトブレイク」、嫌いなエロゲは「紙芝居」。

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