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探索し、戦い、猫を撫る?謎が謎を呼ぶサイコホラー『In Sound Mind』の世界を読み解く

好奇心に殺されないように気を付けて…

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デズモンド・ウェールズが目を覚ますと、ミルトン・ヘイブンの町は一変していた。洪水が押し寄せたかのように辺りの建物は水没し、真夜中の月明りの下、彼のいる建物だけに電気が通っている。懐中電灯を片手に暗闇を歩いて行くと、正体不明の怪物が辺りを徘徊していた。

セラピストのデズモンドには、どういうわけかこの異変に心当たりがあるらしい。彼の患者との音声記録、そこから生まれる別世界に鍵があるようだ。患者達の身に何があったのか、暗中模索の中でデズモンドはその秘密と対峙する―

『In Sound Mind』はPS5とニンテンドースイッチ向けにオーイズミ・アミュージオより2月16日発売されるホラーアドベンチャーゲームです。

本作を手がけるWe Create Stuffは、『Half-Life 2』のMod、そしてSource Engineのフリーソフトとして公開され、MODDBでも9.5/10の高評価を得た『NIGHTMARE HOUSE 2』の開発チームとして知られており、『In Sound Mind』は初の商業作品となります。

『NIGHTMARE HOUSE 2』と同じホラージャンルということで、好評を博したホラー演出で怖がらせてくるのか…と思いきや、実際に本作をプレイしてみると大きく印象が異なりました。それは「理不尽な怖さ」ではなく、ホラー初心者にもお勧めできる「克服できる怖さ」です。

プレイヤーを追い詰めると見せかけて、落ち着いてよく見てみろ、と恐怖からの出口を用意している。プレイヤーの好奇心を奥へと誘う、少し変わったホラーゲームなのです。

In Sound Mind 公式サイト

『In Sound Mind』のゲームシステム

『In Sound Mind』のステージは、セラピストのデズモンドが患者とのやりとりを記録したカセットテープと結びついていて、プレイヤーでテープを再生すると、その患者の恐怖から生まれた世界の扉が現れます。デズモンドはその世界の中を探索することによって、その患者が何を感じていたのかを身をもって体験するのです。彼らのトラウマに触れるような仕掛けがいくつも施されており、それを解くことで理解が進んでいくのですが、それを邪魔するように正体不明の敵がデズモンドに立ち塞がります。

敵との戦いはキーアイテムを除いて拾えるのは弾薬のみで、シューターに近いプレイ感覚です。回復アイテムは持ち運べず、落ちている食料をその場で食べて体力を回復します。体力の初期値最大は100で、ひとつにつきおおよそ5~15程度の回復量。接敵した際の弾薬と体力の消費量は多いので、避けられるところは避けて、こっそりと物資を回収して進むのを優先しましょう。

とはいえ、どうしても戦わないといけないときはあるのですが、弾薬温存のために周囲のオブジェクトを使います。ステージには明らかに怪しく光る薬品コンテナが多数設置されており、この爆発を利用すれば大きなダメージを与えられるでしょう。そしてこの爆発物こそが、敵が迫ってくる恐怖に打ち克つ鍵でもあります。

多くのホラーゲームだと死角から襲いかかってくる敵に驚かされますが、『In Sound Mind』では見通しの利く場所の遠くにいるというシチュエーションが待っています。敵の動きは素早く、接近されると横の動きを増やして射撃を当てにくくなりますが、こちらを発見してすぐはゆっくりと歩いてくるだけです。このとき、大抵近くに爆発コンテナが用意してあるので、しっかりとタイミングを待ち構えるのが最善です。自分よりも動きの速い敵相手に、下手に走り回ったり闇雲に撃ったりしてもかなり消耗するため、爆発物の場所を戦う前に確認し、そこに引き寄せて戦うことを心がけましょう。

敵に恐怖を感じる大きな理由は「効果的な対処法が分からない」のが主な原因で、対処法を1つ持っているだけでも怖さを大きく和らげられます(外したときには余計慌てますが…)。本作ではプレイヤーに対処する猶予を与えることで、怖さそのものよりも、「怖いものを見据える」という点に重点が置かれています。

患者の心の闇が具現化したステージの主は、銃の攻撃では倒せません。一時的に動きを止められますが、世界の一番奥にあるトラウマを解消しない限り、デズモンドを執拗に襲ってきます。ステージの道を閉ざすギミックを解く鍵となるのが、本作で最も重要なアイテムである「鏡の破片」です。

通常使う懐中電灯は電池を消耗するので、必要ないときには消灯して暗い中を歩き回ります。ネコのトーニャが言うには「見えないものが見える」ので、後ろをのぞき込むと重要なオブジェクトや敵の位置がハイライトされます。すぐに振り返るとハイライトが消えずに大まかな位置が分かるので、これを頼りにアイテムを探しましょう。また、鏡の破片が散らばっている場所で使うと、ギミックを解くための意味深なメッセージが浮かび上がります。鏡のメッセージが示さないと発見できないオブジェクトもあり、行き詰まったと思ったときには鏡の使いどころを探すべきです。

最初の「バージニア」のステージは、荒れ果てたスーパー「ホママート」が舞台。カウンセリングを受けていた彼女はホママートで殺傷事件を起こし、仮面を被った亡霊のような姿で彷徨っています。バージニアは周囲の人々の「視線」を忌避しており、それに合わせてギミックも視線を使ったものになっています。入り口の自動ドアは普通に進もうとすると閉まったまま通れません。近くにあるヒントによると、どうやらこのドアは人の視線を感じ取る「不具合」を起こしているようです。さて、くぐるにはどうするべきか…

弾丸では倒せないバージニアは大きな鏡で彼女自身の姿を見せて弱らせます。彼女はけがのために容姿のコンプレックスをコンプレックスを持っており、それを無理矢理自覚させることで精神的ダメージを与えるのです。セラピストにあるまじき行為ですが、これも真相に辿り着くため…

2つ目の「アレン」は光と影に過敏で、灯台守をしていたところ火事を起こしたようです。アレンの心理世界に迷い込んだデズモンドの方も、灯台の強い光に当たるとダメージを受けてしまいます。

影の怪物と化したアレンは、光の当たらない場所にいるデズモンドを地面に引きずり込もうとしてきます。それを撃退するには電気の流れを操作して電灯を付けるか、懐中電灯の光を当てて押し返します。ここでは懐中電灯の電池を切らさないことが大切で、探索の時も全ステージ以上に節約を心がけましょう。

本作の恐ろしくも魅力的な世界

水没した市街地、真っ暗なビル、正体不明の敵、物理法則を超えた謎の扉……ミルトン・ヘイブンには常識を越えた異変が満ちています。撃つと爆発する怪しい薬品に原因がありそうですが、それと同時に、デズモンド自身の心理状況が強く反映されている様子が見て取れます。壁に掛けられた絵、時計の針など、カセットテープの入れ替えに伴って変化が起きており、「町の異変」にしてはあまりにもデズモンドへの影響が大きすぎます。

その一方でミルトン・ヘイブンにも謎の現象がいくつか発生しているようで、この世界が彼の妄想に過ぎないのか、それとも本当に町全体が狂ってしまったのか…どちらかは不明ですが、彼自身は町の異変に対して自身にも責任があると感じているようです。

本作のキーアイテムである「鏡」は、自分自身を見つめ直す、目を逸らしていた事実に向き合うという意味合いがあります。人間は社会生活の中で自分を誤魔化したり誇張したり、本心とは異なる生き方を迫られるものです。そうして見失った本当の自分を再認識する。夢に出てくる鏡は深層心理を表すものとして解釈されます。

鏡を使うと見えてくる患者の言葉は、デズモントが目を逸らしていたもの、見ようとすらしていなかったものかもしれません。異変の前に町で起こっていた事件や事故に自分の患者が関わっていると知り、自分の「見落とし」が原因になってしまった、ということでしょうか。黄色い立ち入り禁止のテープは鏡を入手するまでは通れず、それに向き合う覚悟ができていなかったと解釈できそうです。おそらくは、真実を見つめ直す鏡によって初めてそのテープを切り落とせるようになったのです。

デズモンドの危険な探索には時々手助けをする味方が現れます。謎のマネキン人形「デイブ」と、猫のトーニャです。バージニアのステージで何故か主人公の手助けをしてくれる「デイブ」は、彼女と親しかった「デイビッド」というホママートの職員を投影しているようです。世界の主が心を許していた人物は、ゆがんだ世界の中でも大切なものを預かり、脱出口へと導いてくれるのでしょうか。

バージニアのテープの世界から事務所に戻ってくると、デズモンドの飼い猫「トーニャ」が出迎えてくれます。いつものように撫でてやると、なんと人間の言葉を喋るのです!(トーニャはプレイヤーが任意で撫でることが可能)孤独で辛い戦いの中で唯一の心安まる相手をしてくれる、しかもかわいい。他のテープは後にしてずっとトーニャを撫でていたい…しかしここはデズモントの心理世界でもあります。もしかしたら、彼が勝手に心の声を投影しているだけかもしれません。

さらに、冒頭では気がかりなことが。デズモンドを監視するように電話をかけてくる謎の男は「猫はオレが殺したんだ。好奇心は猫をオレの元に届けただけさ」と謎めいた言葉を投げかけます。この「猫」とはトーニャのことなのでしょうか?それとも一瞬姿を見せた黒猫?あるいは他の何かの暗喩?そしてトレンチコートの男は何者なのか、その答えは恐怖の向こう側にきっと隠されているに違いありません。


好奇心は猫をも殺す、とはよく言いますが、ホラーゲームは恐怖心に好奇心が勝るからこそプレイしたくなるものです。『In Sound Mind』はプレイヤーをおどかして怖がらせながらも、「その恐れから目を逸らすな」と道を示し、物語の真相に迫りたくなる「ホラーらしからぬホラー」なのかもしれません。さあ、あなたも鏡の向こう側を覗いてみませんか?

『In Sound Mind』は、PS5とニンテンドースイッチ向けにオーイズミ・アミュージオより2月16日発売予定。価格は、デジタルアートブックとサウンドトラックが付属するDX Editionが4,939円(税込)、ダウンロードのみの通常盤が3,980円(税込)です。

In Sound Mind 公式サイト
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