カプコン新作『エグゾプライマル』は面白いのにもったいない。現状抱える“惜しい点”は何か?【特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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カプコン新作『エグゾプライマル』は面白いのにもったいない。現状抱える“惜しい点”は何か?【特集】

何度も繰り返し申し上げますが、各要素は高水準なのです。それにもかかわらず全体として今ひとつまとまりきれていないのが本当に勿体ない。

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カプコン新作『エグゾプライマル』は面白いのにもったいない。現状抱える“惜しい点”は何か?【特集】
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今回はカプコンが、2023年7月14日に、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けチーム対戦型マッシヴアクション『エグゾプライマル』をご紹介s……って、あれ?この出だしは前にも見たぞ?


そうなんです。実は前々回、前回と先行プレイレポと製品版リリースに際してのプレイレポを執筆しましたが、今回はそこからもう少し突っ込んで、筆者が感じた『エグゾプライマル』の“惜しい部分”について述べていきます。誤解のないように申し上げると、コアとなるゲームモードは非常に楽しいです。筆者としても、コア部分への評価は「カレーの王子さま」くらい甘口です。

しかし黙々とプレイを続けていくうちに、どうしても辛口になっていくと言いましょうか。ゲームに対して、しばしば蒙古タンメン中本「北極」にならざるを得ない部分があったという次第です。北極美味しいですけども。ともあれ、せっかくポテンシャルがあるのにもったいない……!という気持ちを胸に早速やってまいりましょう。


『エグゾプライマル』とは?

改めて、本作の概要を紹介。『エグゾプライマル』は西暦2040年の地球を舞台に、恐竜が突如現れては暴れまわる「災害」に対抗すべく、パワードスーツに身を包んだ「エグゾファイター」達が戦うチーム対戦型アクションゲームです。プレイヤーは5人からなるチームに所属し、相手チームとミッション達成の早さを競い合います。次々と現れる恐竜の群れを殲滅し、時には相手を妨害しつつ、チームで協力して目標達成を目指しましょう。

23年3月に行われたオープンベータテストでは、高回転でミッションを何周もこなしながらの「恐竜もみくちゃお祭り騒ぎ」が非常に楽しかった本作。かっちょいいスーツ!SF!大量の恐竜!殴り合い!というコアのプレイバリューに、製品版ではカスタマイズ、アップグレード、ストーリーなどさらに多くのコンテンツが追加されました。

『エグゾプライマル』の“キモ”となる要素は何なのか?

筆者としては、オープンベータテストで感じた『エグゾプライマル』の魅力が製品版では空中分解を起こしかけていたように感じました。複数の魅力的な要素をひとつにまとめようとして、結局どれを一番の“売り”にしたいのかわからなくなった印象を受けます。オンライン対戦を充実させたかったのでしょうか?それとも豪華なストーリームービーなどシングルプレイ的な要素をアピールしたかったのでしょうか?

過去の記事でも述べましたが、『エグゾプライマル』におけるプレイ体験のコアは間違いなく「ディノサバイバル」です。ひとつの大きなマップ内を移動しながら各所で発生する複数のミッションをクリアしていくこのゲームモードは、1回およそ10~15分程度の短時間でクリアできます。そのため「対戦後にすぐ次の対戦」という高い回転率でプレイが進み、実際にオープンベータテストではその勢いがあったからこそ「お祭り騒ぎ」を楽しめたところがあります。

ところが製品版になると、シングルプレイを意識したような演出や、操作しづらいユーザーインターフェースなどがこの勢いにブレーキをかけてしまい、ちょっとしたストレスを感じるようになりました。特にストーリームービーは、マッチング前後で強制的に挟まれてしまうこともあり、一応スキップ可能ではあるものの、プレイを始めるまでの体感時間を間延びさせていました。

ムービーとユーザーインターフェース

ムービーは、キャラクターや芝居などに若干の古臭さはありますが、面白い世界観と先が気になる内容ではあるので、ゲームを牽引するフックとしての機能は十分に果たしていると思います。しかしPvP突入前に展開するほどの内容ではなく、割り込んでくるタイミングが悪いとも感じます。

拠点のメニュー画面「分析」から、ビジュアルノベルのような形で状況を追うシステムは非常に良かったので、強制介入してくるムービーや演出を初めからオフにできる設定項目が欲しいところですね。または完全にシングルプレイモードとして独立させるとか。あとはせめてログ会話くらい早送りできたら……!

まだ多少はわかりやすい方だとは思います。

そしてユーザーインターフェース操作については、画面内の複雑さも相まって、辛口を通り越して口から火を吹かざるを得ません。筆者がPC版でプレイしたせいかもしれませんが、コントローラーで操作する場合はカーソルドラッグをスティック操作で行う必要があるのです。スティック操作で各項目を直接選択することができない上に、一部メニュー項目のアイコンは小さく、しっかり狙ってカーソルを合わせ、決定ボタンを押す必要があります。

キーボード&マウスによる操作のほうが遥かに触りやすいメニュー画面

LBやRBでタブ移動などはできるのに何故、スティック操作で繊細なカーソルドラッグをしなければならないのか。この操作感は、拠点におけるメニュー画面上であればまだ許容範囲なのですが、対戦中の忙しい時なども同じ調子なので、どうしても不親切さを感じてしまいます。キーボード&マウス環境であれば直感的にクリックできるため、全く問題のないストレスフリーにはなりますが……今後のアップデートでの調整を期待します。

コアバリューである対戦とゲームの目指したい方向性が……?

本作の「ディノサバイバル」は、大量の恐竜をさばく「PvE」と、相手チームと直接の殴り合いを行う「PvP」という、大別して2つのゲームルールから成り立っています。

この対戦モードでは、拠点防衛やオブジェクトの運搬といったミッションなどが含まれます。PvE中ではありますが、相手チームへの妨害チャンスなども用意されます。なおここで、ゲーム開始前にメニュー画面で「PvE」「ランダム」「PvP」といった優先項目を選択できるため、苦手なゲームルールを回避できる救済措置があるのはグッドです。

しかし、本作は1つのゲームモードの中に2つのゲームルールを落とし込んでいるためか、根本からの“噛み合わせ”が上手く仕上がっていないように感じています。

特にランダム設定で対戦をする場合には、相手チームとミッション達成の“速さ”を競争させたいのか、それとも殴り合って戦わせたいのか、そこの軸足がどっちつかずと言いましょうか。もちろんミッションそっちのけで直接相手を倒すことが推奨されている訳ではなく、あくまで「妨害」の範囲、という事にはなっていますが……。

そして何より、PvEのミッションを調子よく進んだところで、結局最終ラウンドのPvPで負ければ、対戦全体の結果が「敗北」扱いになるという点がいただけません。「敵チームよりも、目標を早く達成しています」と褒められてきた道中の頑張りが虚しくなってしまいますし、反対にそれまで劣勢で、最後だけ勝った途端に「おめでとう!」と勝利を祝われても素直に喜べないところもあります。いっそのこと最初からPvEまたはPvPのみで決着させてくれい、とも感じます。

ゲームルールに感じた“ズレ”は、オープンベータ時はまだテスト段階というところもあって、心の何処かで鷹揚に構えたものがありましたが、製品版として向き合ってみると違和感を覚えるものでした。ディノサバイバルというゲームモードの内部にPvEとPvPを置くのではなく、2つを完全に分けて独立させたゲームモードとして用意していたら、印象はまた大きく変わっていたかもしれません。

アンロック要素とダウンロードコンテンツ

対戦を通して地道にレベルアップしていく。

そういったプレイフィールに「レベルアップによるスーツなどのアンロック要素」が加わると、遊ぶモチベーションは下がってしまいます。オープンベータでは最初から全スーツと全装備(その時点における)が使用可能ということもあって、戦闘の状況次第で次々と換装しながら敵を蹂躙していく楽しさがありました。

製品版ではスーツや装備のアンロックには経験値によるレベルアップおよびゲーム内通貨が要求される形になっているため、この“楽しさ”はまた別の性質のものへと変化しています。

もちろんアンロック要素は必要ですし、プレイヤーレベルが上がった時に貰えるリワードには達成感があるので、個人的には好きな部分です。レベルが上がればそれだけ遊びの幅も増え、ゲームの歯ごたえも増します。

特にお気に入りのスーツを使い込むほど、レベルが上って更に強化されていくというのが熱い……のですが、その選べるスーツの数自体が制限されており、それが何を目的としたものなのかわからず疑問符が浮かびます。

もう少し詳しく説明しましょう。スーツには各種役割、「アサルト」「タンク」「サポート」という3つのロールが割り当てられており、対戦中は若干のリキャストタイムはあるものの、任意のタイミングでスーツを自由に切り替えることが可能。プレイヤーはチームのロールバランスを見ながら臨機応変に対応していくという戦い方も楽しめます。

ここは記事冒頭で触れた「勢い」にも通じるところで、状況を見ながら「よし!タンク出るぞ!」とか「今は攻撃で押し込みたい……アサルトだ!」などなど、流れに乗ってのバトルは本当に楽しいのです。野良で見知らぬ人たちと遊ぶ場合は難しいかもしれませんが、フレンドで集まってチームを組む場合、おそらくこの連携の楽しさは最強レベルになりましょう。

アンロックにはプレイヤーレベル40にするか、ストアで購入するか……。

とはいえ、同じ「アサルト」ロールの中でも、バランスの取れた射撃タイプ「デッドアイ」と近接格闘を得意とする「ゼファー」では、やはり操作感というかプレイスタイルはだいぶ異なってきます。オープンベータはその時点における全スーツにアクセスできたため、対戦での試行錯誤を通じてお気に入りのスーツを定め、それを使い込んでいくようなプレイの収束を見せました。

それであるにもかかわらず、製品版ではスーツのうちいくつかが制限され、例えばスナイパー系の「ヴィジラント」を使いたい!という場合は「アンロックにはプレイヤーレベル40が必要」「アンロック後はゲーム内通貨で交換可能」という方式が採用されているのです。

この解放要素には、個人的に引っかかるものを感じました。ゲームのコアにあるデザインとして、「短いスパンで何度も対戦を繰り返し、プレイヤーレベルを上げながら、スーツを使い込んで鍛えていく」という流れがプレイバリューであるはずなのに、そのウェイトの大部分を占めるスーツの選択肢自体を制限することに、プレイヤー側へのメリットを見出だせないのです。例えば同じスーツの強化版や新しいリグ武装などでアンロックが設けられて、レベル上昇とともに解放されていく……というのであれば、むしろモチベーションになりましょう。

誤解のないように重ねて申し上げますが、アンロック要素は設けられて当然ですし、頑張ったご褒美として嬉しいものでもあります。ただし本作の場合はそれが上手く機能していない印象なのです。

ウォーチェストと呼ばれる、いわゆる無料ガチャ(?)でもある程度はアイテムなど入手できますが、体感的には焼け石に水といったところ。

そこへさらにDLCといった課金要素が絡むと、印象は悪い方向へ傾きます。スーツのアンロックに時間はかかれど、無課金を貫いても常軌を逸した苦行にはなりません。しかしながら、プレイバリューの少なくない部分を占めるコンテンツが制限されたなかで、「さらにお金を払えばすぐにスーツを使えますよ」というようなDLCの存在に対しては、どうしても釈然としないものを感じてしまいます。

Game Passといったサブスクリプションならまだしも、製品版をフルプライスで購入していた場合は特に……。ゲームプレイにそこまで影響を及ぼさない装飾品やエモートなどを追加で購入したい、というのであれば十分理解と納得はできますが、現状は少々厳しい目を向けてしまいます。


例えば『エグゾプライマル』が“シングルプレイ”と“マルチプレイ”をそれぞれ独立したモードとして提供していれば、シングルプレイでストーリーを追いかけながら世界観にどっぷり浸って「いやぁ面白かった!」となり、マルチプレイで対戦に明け暮れるという導線ができたことでしょう。

あるいはストーリー後回しでとにかく戦いたいというプレイヤーに対しても、遊びやすいアプローチになっていたはずです。それが本作では、どちらの要素も盛り込もうとした結果、中途半端に混ざり合って方向性が迷子になり、せっかくの魅力的なコンテンツが渋滞を起こしてしまっているのです。

こちらの記事でも述べましたが、もし仮にシングルプレイに主眼をおいて、ストーリーをじっくり味わいながらマップを進んでいく『Titanfall 2』的なアプローチとバランスの取り方であれば、おそらく諸手を挙げて大はしゃぎできたかもしれません。またはいっそのことストーリーを廃してオンライン対戦に特化することで、eスポーツとしての足場を固めることだってできたはずです。それが、現状ではどっちつかずで非常にもったいないと感じています。

本作のコアであるディノサバイバルは間違いなく面白いのです。大人数でうおおおおおおお!!と大量の恐竜と殴り合うのは、本作だからこそ味わえるオンリーワンの楽しさです。正直このゲームモードとスーツが揃ってさえすれば十分に遊べます。それと比べれば、豪華なエモートとか装飾品といったコンテンツの数々はあくまでオマケ要素と言ってしまっても差し支えないはず。今後のアップデートでは、コアのプレイバリューに立ち返って、本作の方向性をハッキリと示してくれることを願ってやみません。

『エグゾプライマル』は、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中。サブスクリプションサービス「Game Pass」にも対応しています。


《麦秋》

お空の人。 麦秋

仕事であちこち渡り歩いては飛んでます。自分が提供するものが誰かのお役に立てれば幸い。編集部および他ライターさん達のこくまろなキャラに並べるよう頑張ります。

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