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Game*Sparkレビュー:『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』―深刻なマンネリを吹き飛ばしたシリーズの新たな一歩。しかし“ワンダー”に欠ける要素も目立つ

約11年ぶりの2Dマリオ最新作。新たな試みが山盛りの本作はどのような仕上がりに?

連載・特集 Game*Sparkレビュー
Game*Sparkレビュー:『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』―深刻なマンネリを吹き飛ばしたシリーズの新たな一歩。しかし、“ワンダー”に欠ける要素も目立つ
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筆者は、2D横スクロール型の『スーパーマリオブラザーズ』シリーズ(以下、2Dマリオと呼称)が大好きですが、同時にやや複雑な感情を持っていました。その感情の正体は「シリーズが完全にマンネリに陥っていた」ということから来ています。

2006年にニンテンドーDSで発売した『New スーパーマリオブラザーズ』から続いた「New」シリーズは、Wii、3DS、WiiUと続きました。いずれも「はじめてプレイする2Dアクション」として非常に優れた体験を提供する作品でしたが、その反面シリーズを追うファンにとってはどれも似たり寄ったりで新鮮味が薄く、「マンネリ」を感じざるを得ない内容だったのです。

そんなこともあってか、2Dマリオシリーズは『スーパーマリオメーカー』や『New スーパールイージU』などのスピンオフははさみつつも、正統な新作といえるものはしばらくの間発売されませんでした。そんな中、2023年6月に発表された『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は、およそ11年ぶりの新作となります。

本記事では、10月20日に発売された『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』のレビューをお届けします。収集要素のコンプリートは行っていませんが、十分な数のコースをクリアし、スタッフクレジットまでプレイした段階でのレビューとなります。一部ネタバレを含む場合がありますので、ご注意ください。

また、Game*Sparkでは本記事含めて計2本の『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』のレビューを掲載します。異なるライター、異なる切り口からのレビューは以下記事からご覧ください。

Game*Sparkレビュー:『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』―コンプリートまで楽しめるが時に苦しくもある、不気味で新鮮な2Dマリオ

本作は、シリーズ最新作となる2Dプラットフォーマー型アクションゲームです。ジャンプが基本となるシンプルなアクションや、パワーアップアイテムによる攻撃などを駆使しながら右方向へ進んでいき、ゴールを目指して進んでいくというオーソドックスなルールを踏襲しています。その上で、アートスタイルやパワーアップ、コースのつくりなどを刷新し、様々な新要素を備えた「2Dマリオ」の再発進と言える作品となっています。

ストーリーは、マリオたちが新たな舞台となるフラワー王国に訪れるところから始まります。マリオたちがフラワー王国の住民と交流していると、突如クッパが出現。不思議な力を持つ「ワンダーフラワー」を悪用し、お城と融合した「城クッパ」に変身してしまいます。ワンダーな力を得た城クッパは、その力を使って征服を企みます。

操作キャラクターは総勢12名用意されており、うち7名はキャラ性能差が設けられていないため、スキンを付け替える感覚でプレイできます。ヒーローのマリオとルイージから可愛らしいピーチとデイジーの2人のプリンセスなどプレイアブルキャラのバランスも良好。ローカルマルチ時の同キャラ選択はできませんが、性能や見た目の面で選びたいものを選べなくて渋々使いたくないキャラを使う……ということは起きづらいようになっています。

4色のヨッシーとトッテンは初心者向けキャラとして設定されており、敵の攻撃でダメージを受けないかわりにパワーアップアイテムも取れないようになっています。トッテンはシンプルにアクションに不慣れなプレイヤー向けという設定になっていますが、ヨッシーは単なるイージーモードというだけにとどまっていません。

敵を飲み込めたり、ふんばりジャンプで落下を回避できたりと有利な要素がある一方で、敵に触れるとノックバックしてしまうため、コースによっては通常キャラよりも難しい場面もありますし、背中に他のキャラを乗せることも可能。「苦手なプレイヤーは通常キャラを使い、逆に上手いプレイヤーが苦手な場面だけ背中に乗せてエスコートしてあげる」というようなプレイもできるのです。パワーアップがない以上、どうしても体験としては王道から逸れたものになりますが、ただの初心者キャラではない調整は非常に巧みです。

ではアクション性能は基本のものだけなのかというと、そうではありません。ゲームを進めるごとに入手できる「バッジ」を付け替えることで、様々な効果があります。

しゃがみ大ジャンプができたり、カベにくっついた状態でBを押すと一度だけジャンプできたりとピンチを回避できるようなものから、スタート時に必ずキノコを取った状態から始まったり、穴に落ちても一度だけ復活できたりとアクションをサポートしてくれるもの、常に飛び跳ねてしまったりキャラが透明になったりと上級者向けの縛りが追加されるものなど、種類は豊富です。


一方で、横につるを放ってカベに張り付くという「つるショット」など使い道の少ない「死にバッジ」が存在しているという問題もあります。そもそも、結局のところ多くのバッジは劇的な変化は起こらないので積極的にいろんなバッジを使ってみたい!という気はあまり起きず、ゲームを進めるごとにバッジを付け替えること自体が面倒になりがち。自分で難易度を調整できるという試み自体は買いたいものの、まだ詰めの甘い部分があると感じます。

『スーパーマリオ』シリーズといえば、新作が出るたびに新たなパワーアップアイテムが加わります。今回も3種類の新パワーアップが登場。ゾウになって鼻で攻撃したり巨体でブロックを破壊したり水をまいたりできる「ゾウマリオ」や、地面に潜ってダメージを回避し地面から飛び出て天井にも潜れる「ドリルマリオ」、泡を出して敵を包んだり、ジャンプ台としても使用できる「アワマリオ」が存在します。

過去作に登場したパワーアップに比べるとやや直感性には欠け、開発者によって想定された使い方にたどり着くのに苦労することも。しかしながらプロペラやマントなど使うとコースの仕掛けをスキップできて「ただただ強い」という性質のパワーアップはなく、どれも使い方を考える場面が用意されているのはアクションゲームとしてしっかりと手応えがあります。

すべてのコースがワンダーに満ち、「飽きる」ことを忘れさせてくれる

しかし、本作においては新パワーアップはメインの要素ではありません。本作で用意された体験のコアは、一にも二にも「ワンダーフラワー」によってもたらされています。各コースにはどこかにワンダーフラワーが隠されていて、それを取るとワンダー状態に突入。コース内に数々の変化が現れます。

変化はどれもユニークで、パックンフラワーが突如歌いだしたり、プレイヤーがクリボーになったり、壁を歩けるようになったり、玉になって転がったり……と“ワンダー”な仕掛けが次々と出現。ほとんど同じものはなく、すべてのコースで想像もつかないようなワンダーが起きます。

ワンダー状態はステージ上のどこかにある収集要素「ワンダーシード」を獲得するまで続きます。ワンダーシードの隠し具合はステージによってさまざまですが、多くはワンダーフラワーで出現した仕掛けをうまく使うことで取得できるというデザインがメインです。

本作の楽しさには、おしゃべりフラワーの存在も欠かせません。コース中に点在するこのフラワーは『マリオ』としては珍しく日本語ボイスで喋るキャラクターとなっており、プレイヤーの行動に反応したり、ヒントを与えてくれたり、おかしなことを言って笑わせたりしてくれます。

直接的にゲームプレイに干渉してくることはありません。絶妙にハスキーでクセになるそのボイスは退屈させすぎず、鬱陶し過ぎもしないちょうどよい塩梅でワンダーフラワー共々“飽きる”という感覚を忘れさせてくれます。

ワンダーフラワーやおしゃべりフラワーの存在によって、コースごとに「どんな仕掛けが待ち受けるのだろう」とワクワクさせてくれますし、ほとんどネタ被りがないリッチなつくりは驚異的。これまでの2Dマリオとは一線を画している……というよりも、そもそもコースにお題が設定されていて、決められたことをこなすというよりメリハリのついた遊びへと変化していると感じます。

グラフィックもカラフルかつアニメーション豊かで、マリオたちはもちろん敵キャラの表情も豊富。多くの敵キャラが刷新されており、まったく新しいデザインのものから『スーパーマリオワールド』を彷彿とさせる顔のキャラなどバラエティ豊かに仕上がっています。サウンド面でも耳に残るメロディのメインテーマやインタラクティブに音色が変化するブロックなど仕掛けに満ちており、これまたどんなものが出てくるか楽しみになります。

『New』シリーズの欠点であった味気なさ(よく言えばシンプルさ)や、似たような作品が続いていたマンネリ状態を解消したというのは間違いありませんが、過去作の完全な上位互換というよりも、2Dマリオというシリーズにおいて新たな方向性を示した作品であると感じます。

一方で、ボス戦どこか“ワンダー”が足りないと感じます。各ワールドのラストステージであるパレスで戦う相手はすべてクッパJr.。トゲこうらにこもって追いかけてきたり、噛みつくマスクが追いかけてきたりといった基本的な技に加え、徐々に攻撃手段が増えていきます。空中に浮かぶ泳げる水や、ネバネバでジャンプしづらい床がでてくるなどワンダーによる変化があるものの、ステージの仕掛けもクッパJr.の攻撃もインパクトが弱く対処も簡単なため、同じようなことばかりしているような印象を受けます。

簡単であること自体は悪いことではありませんが、簡単であることとすべてが同じボスであることが重なることで「飽き」という感覚を思い出してしまうような仕上がりになってしまっており、ビジュアル的にもゲームプレイ的にも通常コースのワンダーさに伴っていません。

過去作でも避けて踏むという流れは同じでしたが、少なくともクッパ7人衆などワールドによって異なるキャラがそれぞれ違う攻撃手段で襲ってきましたし、特に『New スーパーマリオブラザーズ』ではザコ敵の亜種をボスに据え、ビジュアルでもプレイヤーを楽しませてくれました。しかし残念ながら本作のボス戦にはそういったバリエーションが欠けているのです。

パレスステージもボス部屋にたどり着くまでには通常コースのようなワンダーな要素がありますし、最終ボスは本作らしい仕掛けのある楽しいボス戦でした。そのため悪いところばかりではありませんが、通常コースであれだけのワンダーを起こせたのですから、道中のボス戦でもワンダーを期待したかったところ。アクションゲームの華とも言えるボス戦としては物足りなさを感じました。

ゆるくつながるマルチプレイは楽しい、しかし一部問題も

2Dマリオシリーズはこれまでオンラインマルチプレイに恵まれてきませんでしたが、この度ついに実装されました。しかし、完全な同時協力プレイではなく、『DEATH STRANDING』や『DARK SOULS』などを彷彿とさせるゆるいつながりとして実装されています。

仕組みとしては同時にプレイしている世界のどこかのプレイヤーが「ライブゴースト」という半透明のキャラクターで現れるというもの。自分の進行に大きな影響は与えてきませんが、隠しブロックのあるところをエモートで教えたり、死んでしまってもライブゴーストに触れれば復活できたりと、ゆるく助け合えるのが心地よいです。ワールドマップ上では多数のプレイヤーがいますが、コース上では最大4人までに制限されています。

筆者としては「『マリオ』でそういったオンライン要素が面白くなるのか?」とやや懐疑的でしたが、実際にプレイしてみるとその“ちょうどよさ”に気が付きます。これまでのマリオでは考えられませんでしたが、よりコース上での「やること」が明確になったことで、こういった助け合いでつかの間の友情が生まれる体験はマルチプレイが苦手な人でも怖がらずすんなりと受け入れられます。

マルチプレイ前提としたコースはほぼないため、オンラインでは隠しルートに気づいてしまうなどの弊害もありますが、もちろんオフにしても遊べるので、ユーザーの好みや気分に合わせて切り替えられるのも好印象です。

一方で、細かい要素では至らなさを感じます。1人やローカルマルチでプレイしているときはオンラインの見知らぬ人とごちゃまぜになってプレイできるのですが、フレンドとのオンラインマルチプレイではフレンドしかいないプライベートセッションになってしまいます。フレンド同士でもオンラインであればライブゴーストとなりますが、それぞれ別々のコースをプレイできる仕様なので、打ち合わせをして同じコースを遊ぶようにしないとオフラインとほぼ同等になってしまいます。

フレンドマルチならではのレースモードも用意されてはいるものの、基本的には「ゆるいつながり」が形骸化しソロやローカルマルチから劣化しているため、わざわざフレンドとプレイする意義はとても薄いです。この点は普通に、フレンドと共にパブリックセッションで遊べる仕様で問題なかったのではないでしょうか。

もうひとつ、オンラインでのマルチプレイを前提としたコース「みんなの広場」も大きな欠点を抱えています。ゴールを目指すことが目的ではない謎解き的なコースになっており、特定キャラクターのみにしか見えない隠しブロックを見つけることを前提としたデザインになっています。この隠しブロックは12人全員(ヨッシーの色違いすらも)分の隠しブロックが用意されているという細かい仕様になっているため、オフラインでは何度もコースを出てキャラ切り替えを行わなければならず、非常にストレスが溜まります。

加えてコース上では4人までに制限されているので、オンラインであったとしても八方塞がりになることがあります。クリアに必須ではないためスキップしても大丈夫ですが、コンプリートを目指すためには避けては通れません。「ゆるいつながり」のコンセプトから外れ、言葉での会話もできない他のオンラインプレイヤーとしっかりとした連携をしなければならないという無理のあるデザインのこのコースはあまりにも工夫が足りていないと感じます。


『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は、ワンダーフラワーによってもたらされる“ワンダー”な仕掛けによって、これまでにない驚きに満ちた2Dプラットフォームアクションです。通常コースに用意されたユニークで予想のつかない仕掛けはプレイヤーを飽きさせることなく、最後まで力尽きずに満足させてくれます。ワンダーによってコースごとにお題が設定され、それをこなす……という新たなシリーズの方向性を示すことで、シリーズのマンネリを打破することに成功しています。

その一方で、通常コースの仕掛けに伴っていないボス戦や遊びづらいフレンドマルチプレイ、みんなの広場の仕組みやバッジの活用のしづらさなど一部の要素には“ワンダー”が欠けていて、まだまだ磨き上げる余地がある部分が多いのも事実。しかしながら本作は過去作の上位互換的な作品というだけではない新鮮な体験を提供したことで、シリーズとしても2Dアクションとしてもマイルストーンとして顧みられる作品になるでしょう。

総評:★★★
良い点
・ワンダーフラワーによる予想もつかない仕掛け
・ワンダーな仕掛けに負けないバラエティ豊かなグラフィックやサウンド
・干渉しすぎず心地よく助けあえるオンラインマルチプレイ

悪い点
・ワンダーの足らないボス戦
・活用しづらいバッジシステム
・フレンドプレイやみんなの広場など工夫不足なマルチプレイの一部要素



スーパーマリオブラザーズ ワンダー|オンラインコード版
¥5,850
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)



《みお》

超雑食の若年ゲーマー みお

2021年3月よりフリーでゲームライターをしています。現在はGame*SparkとIGN JAPANで活動し、稀にINSIDEにてニュース記事を執筆しています。お仕事募集中。ゲームの趣味は雑食で、気になったものはクラシックゲームから新しいゲームまで何でも手を出します。主食はシューター、ADV、任天堂作品など。ジャンルやフランチャイズの歴史を辿るのも好きです。ゲーム以外では日本語のロックやアメコミ映画・コメディ映画、髪の長いお兄さんが好きです。

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